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2012-01-15(Sun)

小説・さやか見参!(126)

さやかの右腕がねじり上げられた。

イバラキの攻撃を受けた身体に痛みが走る。

目の前の下忍は手にした刀をさやかの二の腕に押し付けた。

さやかはどうにか右腕に力を込め引こうとした。

しかし腕を掴んだ下忍はぐいと押し返してそれを許さない。

刀が振り上げられた。

その瞬間、下忍の押し返す力を利用して、さやかは身を翻した。

体勢が入れ替わり、さやかが下忍を押さえ付ける格好となった。

先ほど無駄と知りながらも掴まれた腕を引いたのは、下忍が押し返してくる事を想定しての行為だったのである。

今の弱ったさやかでは力負けは見えている。

だが相手の力を利用すれば勝機はある。

下忍が掴まれた腕を振りほどこうとした。

さやかはその力を上手く使い、下忍の腕を使って、前方から来る刀を持った腕を絡め取った。

腕が絡まった2人の青装束の動きが止まる。

この間、瞬きするほどの出来事であった。

動きを封じられた状態から攻撃に転ずる、

これは虎組、雷牙が編み出した『眠る虎の爪』という技の応用だ。

残りの2人がさやかを捕らえようと迫った。

さやかは縺れたままの下忍を踏み台にして跳躍した。

追って跳ぼうとする下忍に手裏剣を打って牽制する。

手裏剣を躱して追っ手が遅れた。

その隙を突いてさやかが走る。

ここは逃げるしかない。

イバラキにやられた身体ではまともに戦う事など出来ない。

さやかは必死に走ったが、信じられぬほどに身体が重かった。

走れない。

このままでは追いつかれる。

さやかは背後から迫ってくる4人の気配を感じていた。

その時、

前方に人の姿が見えた。

忍びではない。

行李を背負ったその姿は―

音駒だ。

昨夜出会った医者見習いの若者だ。

彼が林に入ってきた事にさやかは気付かなかった。

傷ついた身体では己の身を守るだけで精一杯で、周囲の気配を感ずる余裕などなかったのだ。

しまった!

さやかは悔やんだがもうどうする事も出来ない。

追っ手は左右に展開しながら後方から迫っている。

頭上に跳ぶ力は今のさやかにはない。

前方に走るしかないのだ。

音駒がいると分かっていても。

下忍との距離が詰まった。

(射程距離だ)

さやかがそう思った瞬間、下忍達が一斉に手裏剣を放った。

躱すか!?

だが躱せば手裏剣は音駒に向かう。

どうする!?

さやかの判断が一瞬遅れた。
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コメント

No title

さやか・・・どうなるんだ!ハラハラ・・・。

>遠州忍者 鼈甲さん

いつも読んで下さってありがとうございます!

頑張って続き書きます!
プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

現在は関西コレクションエンターテイメント福岡校さんでのアクションレッスン講師もやらせてもらってます。

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