2011-12-17(Sat)
小説・さやか見参!(122)
『とにかく』
自分の中のわだかまりを振り切るように断が声を荒げた。
『せっかく揃ったんだ。貰ってくぜ、荊木と山吹の奥義をな』
『ほう、山吹はともかく、荊木の奥義がここにあるとでも?』
イバラキはおどけたような仕草でとぼけてみせた。
それを見て、断はへへっと笑う。
『分かんねぇけどさ…』
勿体つけた口振りで一瞬だけ視線を逸らし、それを戻すと声を張った。
『ここにあるなら、ありがたいよねぇ!』
この言葉が合図だったかのように、断の背後からイバラキ目掛けて無数のクナイが飛んだ。
いつの間に現われたのか、一角衆の白装束が視界を埋め尽くしている。
数十人、いや、もしかすると百人は下らないかもしれない。
今では強敵となったイバラキを確実に討つ為に、断と封は数を頼った。
この人数を集め、率いるが為に刻を要し、結果血飛沫鬼血塗呂からひと月も出遅れてしまったのだ。
だがそれとて、ここでイバラキを倒せば問題ない。
断と封はクナイの後を走った。
いかなイバラキといえども、これだけのクナイを捌くのは容易ではあるまい。
クナイが当たれば儲け物、当たらずばその隙を断と封が突く。
それで駄目なら白装束が襲いかかる。
最悪殺せずとも、奴の腰にぶら下がっている袋を奪えれば良い。
断と封の前方に立つイバラキは口元をにやりと歪めたまま身じろぎもしなかった。
クナイの集中砲火が迫る―
(届いた!)
封がそう思った瞬間、
これまで前方に向かっていたクナイが一斉に反転して、後を追っていたはずの自分達に向かってきた。
百近い本数の全てが、である。
『ぉあっ』
断が奇妙な声を上げながらそれを躱した。
封もどうにか避けたが、完全に進行は止まってしまった。
不自然な体勢で立ち止まった断と封の後ろでは、低い唸りのような音が響いている。
振り返ると、反転したクナイが打った者へと舞い戻り、その身体に突き刺さっている所だった。
肉を裂く音、悲鳴、それらが集まり、唸りのように聞こえていたのである。
断にも封にも、何が起きているか分からなかった。
イバラキは動かなかった。
二人は、驚き、と言うよりも恐怖に近い表情でイバラキに向き直った。
だが、
二人とイバラキの間には、
いつの間にか1人の男が立っていた。
クナイを跳ねるに足る鋼の手甲、脚半を着けた男が。
その男を見た断と封は先ほどまでの余裕を失って、動く事を忘れたかのようだ。
イバラキが男に近付き、むき出しの肩の筋肉に手を乗せた。
『今度は我らの番だな。いくぞ、邪衆院』
そう言われて邪衆院 天空は
『はい』
と楽しげに答えた。
自分の中のわだかまりを振り切るように断が声を荒げた。
『せっかく揃ったんだ。貰ってくぜ、荊木と山吹の奥義をな』
『ほう、山吹はともかく、荊木の奥義がここにあるとでも?』
イバラキはおどけたような仕草でとぼけてみせた。
それを見て、断はへへっと笑う。
『分かんねぇけどさ…』
勿体つけた口振りで一瞬だけ視線を逸らし、それを戻すと声を張った。
『ここにあるなら、ありがたいよねぇ!』
この言葉が合図だったかのように、断の背後からイバラキ目掛けて無数のクナイが飛んだ。
いつの間に現われたのか、一角衆の白装束が視界を埋め尽くしている。
数十人、いや、もしかすると百人は下らないかもしれない。
今では強敵となったイバラキを確実に討つ為に、断と封は数を頼った。
この人数を集め、率いるが為に刻を要し、結果血飛沫鬼血塗呂からひと月も出遅れてしまったのだ。
だがそれとて、ここでイバラキを倒せば問題ない。
断と封はクナイの後を走った。
いかなイバラキといえども、これだけのクナイを捌くのは容易ではあるまい。
クナイが当たれば儲け物、当たらずばその隙を断と封が突く。
それで駄目なら白装束が襲いかかる。
最悪殺せずとも、奴の腰にぶら下がっている袋を奪えれば良い。
断と封の前方に立つイバラキは口元をにやりと歪めたまま身じろぎもしなかった。
クナイの集中砲火が迫る―
(届いた!)
封がそう思った瞬間、
これまで前方に向かっていたクナイが一斉に反転して、後を追っていたはずの自分達に向かってきた。
百近い本数の全てが、である。
『ぉあっ』
断が奇妙な声を上げながらそれを躱した。
封もどうにか避けたが、完全に進行は止まってしまった。
不自然な体勢で立ち止まった断と封の後ろでは、低い唸りのような音が響いている。
振り返ると、反転したクナイが打った者へと舞い戻り、その身体に突き刺さっている所だった。
肉を裂く音、悲鳴、それらが集まり、唸りのように聞こえていたのである。
断にも封にも、何が起きているか分からなかった。
イバラキは動かなかった。
二人は、驚き、と言うよりも恐怖に近い表情でイバラキに向き直った。
だが、
二人とイバラキの間には、
いつの間にか1人の男が立っていた。
クナイを跳ねるに足る鋼の手甲、脚半を着けた男が。
その男を見た断と封は先ほどまでの余裕を失って、動く事を忘れたかのようだ。
イバラキが男に近付き、むき出しの肩の筋肉に手を乗せた。
『今度は我らの番だな。いくぞ、邪衆院』
そう言われて邪衆院 天空は
『はい』
と楽しげに答えた。
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