2011-12-14(Wed)
小説・さやか見参!(121)
封の長い髪が揺れた。
断は無精髭をさすった。
2人の姿を見てもイバラキが動じる事はなかった。
『いつもの天狗はおらぬのか』
イバラキの問い掛けに不意を突かれたのは断と封である。
『天狗?』
思わず封が問い返す。
『知らぬのか』
イバラキがにやりと笑う。
『この辺りでは噂になっておるぞ。山から天狗が下りてくるとな』
『その噂ならここに来る途中で何度も聞いたよ』
そう言って断はもう一度髭をさすった。
『そうか。ならば天狗が二匹おった事も?』
『はぁ?』
断が間抜けな声を出した。
『二匹?』
封も尋ねる。
『さよう。赤き天狗と白き天狗。どちらもまるで猿のごとく身軽であったぞ』
『赤と白で身軽って…』
『おいおふう、そりゃまさか…』
狼狽する2人を見てイバラキは声を上げて笑った。
『はっはっはっは!どうやら知らなかったようだな!身内の動きも把握しておらぬとは、おぬしらの力量がうかがえるわ!』
『う、うるせぇ!』
赤き天狗と白き天狗、それが血飛沫鬼と血塗呂である事は断も封もすぐに分かった。
だがイバラキの言う通り、同じ一角衆である血飛沫鬼と血塗呂が動いている事を断と封は知らなかったのだ。
そう。
この近隣で噂される天狗の正体、
それは一角衆の兄弟忍者であったのだ。
さやかは『幻龍組こそ天狗』だと思ったようだが、とんだ勘違いである。
イバラキ達がこの林に来たのは今朝の事、
対して天狗の噂はひと月も前から囁かれていたのだ。
『と言う事は…』
封がつぶやいた。
『あの2人、あれからすぐここに来たって事ね』
あれ、とは、断と封が血讐の屋敷で話した日を指している。
荊木流の奥義を奪うと誓ったあの日の事だ。
確かにあの時、血飛沫鬼と血塗呂も話を聞いていた。
あれからすぐにここへ向かったのか。
しかしどうして…?
そう考えた封の目に、眼前のイバラキと、その後ろで下忍に捕らえられているさやかが映った。
『なるほど…全員をここに集める為にね』
その言葉を聞いて断も全てを察した。
『あいつら、ちょろちょろしやがって』
苛ついたように髭をさする。
おそらくこれは血讐の策であろう。
だが、なぜ断と封に内密だったのか、
なぜ自分達と幻龍組、山吹流をここに集めたのか、
断は考えてみたが、理解に至る事は出来なかった。
断は無精髭をさすった。
2人の姿を見てもイバラキが動じる事はなかった。
『いつもの天狗はおらぬのか』
イバラキの問い掛けに不意を突かれたのは断と封である。
『天狗?』
思わず封が問い返す。
『知らぬのか』
イバラキがにやりと笑う。
『この辺りでは噂になっておるぞ。山から天狗が下りてくるとな』
『その噂ならここに来る途中で何度も聞いたよ』
そう言って断はもう一度髭をさすった。
『そうか。ならば天狗が二匹おった事も?』
『はぁ?』
断が間抜けな声を出した。
『二匹?』
封も尋ねる。
『さよう。赤き天狗と白き天狗。どちらもまるで猿のごとく身軽であったぞ』
『赤と白で身軽って…』
『おいおふう、そりゃまさか…』
狼狽する2人を見てイバラキは声を上げて笑った。
『はっはっはっは!どうやら知らなかったようだな!身内の動きも把握しておらぬとは、おぬしらの力量がうかがえるわ!』
『う、うるせぇ!』
赤き天狗と白き天狗、それが血飛沫鬼と血塗呂である事は断も封もすぐに分かった。
だがイバラキの言う通り、同じ一角衆である血飛沫鬼と血塗呂が動いている事を断と封は知らなかったのだ。
そう。
この近隣で噂される天狗の正体、
それは一角衆の兄弟忍者であったのだ。
さやかは『幻龍組こそ天狗』だと思ったようだが、とんだ勘違いである。
イバラキ達がこの林に来たのは今朝の事、
対して天狗の噂はひと月も前から囁かれていたのだ。
『と言う事は…』
封がつぶやいた。
『あの2人、あれからすぐここに来たって事ね』
あれ、とは、断と封が血讐の屋敷で話した日を指している。
荊木流の奥義を奪うと誓ったあの日の事だ。
確かにあの時、血飛沫鬼と血塗呂も話を聞いていた。
あれからすぐにここへ向かったのか。
しかしどうして…?
そう考えた封の目に、眼前のイバラキと、その後ろで下忍に捕らえられているさやかが映った。
『なるほど…全員をここに集める為にね』
その言葉を聞いて断も全てを察した。
『あいつら、ちょろちょろしやがって』
苛ついたように髭をさする。
おそらくこれは血讐の策であろう。
だが、なぜ断と封に内密だったのか、
なぜ自分達と幻龍組、山吹流をここに集めたのか、
断は考えてみたが、理解に至る事は出来なかった。
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