2013-09-29(Sun)
小説・さやか見参!(196)
『音駒さん!!』
心太郎が倒れている音駒に駆け寄った。
出血が酷い。
しかしまだ、わずかながらに息があった。
すぐに処置しなければ間違いなく死ぬ。
だがここでは何も出来ない。
心太郎は意識を失っている音駒の傷口に薬草をすりつけた。
やはり刀傷だ。
しかも、生かさず殺さずを目的とした事が見て取れる絶妙な、いや、最悪な傷だ。
これは狙わずして出来る芸当ではない。
そして、狙って出来るとしたらやはり、
『そうとうな手練れ、って事っシュか…』
そう呟いて、音駒の口に丸薬を押し込み水で流し込む。
まずい。
心太郎はじわりと脂汗がにじむのを感じた。
音駒に傷を負わせたその手練れが、
近くにいるのを察したのだ。
つまりこれは
『罠、だったっシュね。山吹を、いや、さやか殿をおびき出す為の』
心太郎がそう言って立ち上がると、数間先の空間が蜃気楼のようにゆらりと揺れて、二つの影が現れた。
『ご明察』
白い羽織の男が短く答えると、その後ろで赤い羽織の男がにやりと笑った。
『何者っシュ』
『知ってんだろ』
『どうっシュかね』
心太郎と紅白の二人組は一瞬だけ無言で睨み合った。
空が白んできている。
さやかの気配はまだない。
『この人は無関係っシュ。山吹に用があるならこの人の手当てを済ませてからにしてもらえないっシュか』
『駄目駄目、関係なくはないじゃん。現にあんたらと知り合ってるわけだし。忍者なんかと知り合うとろくな事ないよねぇ』
『話しても無駄っシュか』
心太郎は音駒を担ごうとした。
『どうせ小娘もここに来んだろ。それまで俺らの相手してくれよ』
白い羽織りの男、一角衆の血飛沫鬼が刀を抜く。
赤い羽織の血塗呂は声を出さずくくくと笑って、左手に着けた鈎爪をかざした。
『仕方ないっシュね』
心太郎は抱えかけていた音駒を地面に下ろし短刀の柄に手をかけ
『断っておくが、おいら』
抜刀し
『弱いっシュよ』
そう言ってにやりと笑うと、
一角衆の兄弟に向かって跳びかかった。
心太郎が倒れている音駒に駆け寄った。
出血が酷い。
しかしまだ、わずかながらに息があった。
すぐに処置しなければ間違いなく死ぬ。
だがここでは何も出来ない。
心太郎は意識を失っている音駒の傷口に薬草をすりつけた。
やはり刀傷だ。
しかも、生かさず殺さずを目的とした事が見て取れる絶妙な、いや、最悪な傷だ。
これは狙わずして出来る芸当ではない。
そして、狙って出来るとしたらやはり、
『そうとうな手練れ、って事っシュか…』
そう呟いて、音駒の口に丸薬を押し込み水で流し込む。
まずい。
心太郎はじわりと脂汗がにじむのを感じた。
音駒に傷を負わせたその手練れが、
近くにいるのを察したのだ。
つまりこれは
『罠、だったっシュね。山吹を、いや、さやか殿をおびき出す為の』
心太郎がそう言って立ち上がると、数間先の空間が蜃気楼のようにゆらりと揺れて、二つの影が現れた。
『ご明察』
白い羽織の男が短く答えると、その後ろで赤い羽織の男がにやりと笑った。
『何者っシュ』
『知ってんだろ』
『どうっシュかね』
心太郎と紅白の二人組は一瞬だけ無言で睨み合った。
空が白んできている。
さやかの気配はまだない。
『この人は無関係っシュ。山吹に用があるならこの人の手当てを済ませてからにしてもらえないっシュか』
『駄目駄目、関係なくはないじゃん。現にあんたらと知り合ってるわけだし。忍者なんかと知り合うとろくな事ないよねぇ』
『話しても無駄っシュか』
心太郎は音駒を担ごうとした。
『どうせ小娘もここに来んだろ。それまで俺らの相手してくれよ』
白い羽織りの男、一角衆の血飛沫鬼が刀を抜く。
赤い羽織の血塗呂は声を出さずくくくと笑って、左手に着けた鈎爪をかざした。
『仕方ないっシュね』
心太郎は抱えかけていた音駒を地面に下ろし短刀の柄に手をかけ
『断っておくが、おいら』
抜刀し
『弱いっシュよ』
そう言ってにやりと笑うと、
一角衆の兄弟に向かって跳びかかった。
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