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2011-06-30(Thu)

アクションへの道(219)

ジャスティン坂本との初対面。

前回説明したように、マスコットキャラクターのアクターである僕はスタッフとも出演者とも呼べないポジションにいたワケですが、そんな僕からすればジャスティン氏は明らかに『出演者』の1人。

それでも気さくに話してくれるジャスティンに僕もついつい饒舌になってしまい、

『いつか何か一緒にやれたらいいですね~』

なんて言ってしまったりしていました。

メールアドレスを交換させてもらった僕は時々メールを送り、その度に、

『何か一緒にやりたいですね~』

と、しつこくアピールしていました。

実はこの頃すでに『さやか見参!』の腹案があったから、というのもあるのですが…

それからしばらくして、僕はジャスティンが指導を務めていたアクションスクールを見学させてもらいました。

そこは彼の師匠であるハリウッドスターが運営するアクションスクールで、ジャスティンは福岡支部を任されていたのです。

恐る恐る入ってみるとたくさんの元気な子供達の姿がありました。

この子供達がジャスティン坂本の教え子達なのです。

パンチやキック、刀を使ったアクション、体操や中国武術、太鼓など、メニューは多岐に渡ります。

そして何とこのスクール、指導は『英語』で行なわれていました。

『将来のハリウッドスターを育成する』という看板を掲げているだけの事はあります。

それらを全てこなしている子供達ってどれだけすごいんでしょう。

実際2007年の『さやか見参!』でジャスティンの教え子に出演してもらった事があるのですが、すごいアクションを披露してくれました。

僕がジャスティンのスクールを見学に行ったのは1回きりでしたが、この時に見たジャスティンの姿、

優しくも厳しい指導者の姿は僕の脳裏に焼き付いていて、武装をスタートさせた後もお手本にさせてもらってたりするのです。
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2011-06-28(Tue)

アクションへの道(218)

僕は『さやか見参!』の元になる企画を個人的に進め始めました。

一番最初に行なったのは、主人公のくのいち『山吹さやか』の衣裳を作る事でした。

『さやか見参!』の企画が次に動きを見せるのは2005年になりますので、そちらはまた後ほど…


しばらくは2003年~2005年の間で印象に残っているエピソードを紹介していきたいと思います。

その時期には僕の中で大きな出来事がありました。

それは

『ジャスティン坂本との出会い』

です。

2007年に創設メンバーとしてアトラクションチーム武装に参加してくれたジャスティン坂本ですが、出会い自体はかなり早かったのです。

この出会いについては今まで何度も書いてますが、今回も改めて…

僕が参加していたテレビ番組の忘年会での事、

僕はいつものように、大勢のスタッフ&出演者の中で、特に誰と話す事もなく片隅で座っておりました。

出演者のタレントさん達はプロデューサーさんやディレクターさん達と話してるし、撮影スタッフさん達はスタッフさん同士で飲んでたりします。

さて、僕の立ち位置はどこなんでしょう。

スタッフさん達の輪に入る事は出来ません。

キャラクターのアクターはは、どちらかと言うと出演者に近いのです。

では出演者の皆さんに混じればいいのでしょうか。

残念ながらそれも無理です。

番組の顔であるタレントさんとキャラクターのアクターは全く違うのです。

出演者と名乗っていいのはキャラクターの外見であって中身ではないのです。

そんなワケで僕はスタッフさんの輪にも出演者さんの中にも入れず、1人で座っていたのです。

そんな僕の所に、僕が話せる数少ないスタッフさんが来て言いました。

『内野さん、新しく入ったリポーター候補がいるんですけど、アメリカでアクションの修行をしてきたらしいですよ』

『えっ、アメリカで?それはすごいですね!』

『シ●ー・コ●ギって知ってます?』

『知ってます知ってます!もちろん知ってますよ!
忍者ブームの立て役者じゃないですか!』

『その人の弟子だったらしいですよ』

『それはホントにすごい!』

『話してみます?』

『話します話します!
是非お願いします!!』

しばらくして僕の所にやって来たのは腰の低いマッチョネス。

笑顔の素敵な男、それがジャスティン坂本だったのです。
2011-06-28(Tue)

アクションへの道(217)

僕はオリジナルショーの案として『忍者ショー』を企画しました。

メジャーヒーローとは毛色の違うもので、衣裳の調達・製作も比較的容易、アクションの幅を広げる事も出来るというのが利点だと考えたからです。

この企画を動かしていたのは後輩のTですが、実質の中心人物はS君、

このブログにもよく登場する、僕の同期のS君でした。

中心人物と言ってもS君が何かをするワケではありません。

彼はアクションの能力は高いのですが、ナイーブ故に行動力に欠けるのです。

つまり、失敗が怖くて動けないタイプなんです。

そうなると必然的に、お膳立ては周りがする事になります。

しかしS君はかなりの気分屋。

機嫌を損ねるとヘソを曲げて何もしてくれなくなります。

なので企画もS君が乗り易いものになってきます。

それがS君が中心人物たる所以なんです。


まぁそんな感じで忍者ショーの企画が立ち上がりまして、当のS君は

『俺は自分からは動かないから、みんなが俺を神輿として担ぎ上げてくれ』

なんて言っておりました。
そんなS君の言葉通りに周りは活動開始に向けて動き出し、それぞれの担当なども振り分けが決まってきました。

S君はアクション担当、

Tは営業担当、

僕は造形やシナリオ製作などの担当。

中古の忍び装束を購入したりして、少しずつではありますが準備は進んでいました。

ここで―

今まで漠然としていたものが形になり始めた事で、S君の腰が引けてしまったようなのです。

新しい事にチャレンジするのは怖い、

それで失敗するのはもっと怖い。

根拠のない自信を糧に生きているS君にとって、チャレンジして失敗する事は自信を打ち砕かれる事なのです。

それなら最初から何もやらない方がいい、

きっとそう思ったのではないでしょうか。

それぞれの役職の名刺を作り、それをS君に渡した時、彼はこう言いました。

『名刺を作るなんて俺は聞いてない!

俺の知らない所で勝手に話を進めやがって!

俺は不愉快だ!この話からは降りさせてもらう!!』

明らかに言い掛かりです。

自分の弱さを認めたくなくて、周りの環境のせいにして逃げたのです。

僕の想像通り、

いえ、想像より遥かに早くプロジェクトは消滅しました。

強い意思と同じベクトルをメンバーが持たなければ、チームを維持するのは困難なのです。

僕は、

何を隠そう、こうなった後の事も考えていました。

残されたTに

『この企画は今後動く可能性があるのかな?』

と聞くと

『いや、もう動かんでしょう』

との答え。

僕は言いました。

『じゃあさ、この忍者ショーの企画、俺が1人でやってもいい?』

設定もデザインも、まだ全て僕の頭の中にしかありませんから、僕以外の人間には進めようがないのです。

Tの許可をもらい、僕は忍者ショーの企画を譲り受けました。

それが現在の

『忍者ライブショー さやか見参!』

なのです。
2011-06-27(Mon)

アクションへの道(216)

自分の所属するチームを潰す計画が持ち上がり、それに荷担する事にした僕。

それは、いきなりクビを切られたベテランアクター達が自分達でチームを興し、徐々に現場を乗っ取っていくというような計画でした。

なぜ僕がそれに協力する事にしたのか。

第1の理由は、彼らの憤りが分かるからです。

チームのシステムが変わった事も教えてもらえず、それによって知らない間にクビになった彼らには復讐を誓う権利ぐらいあると思うんです。

第2の理由は、その計画が上手くいかないと確信していたからです。

自分達でチームを作り、かつての現場を奪っていくには色々な物が必要になってきます。

キャラクターショーの現場というのは、金額が安くて技術が確かなら取れるというものではありません。

人と人の繋がり、すなわちクライアントさんとの信頼関係が必要なんです。

これまで付き合いのあったチームを切り捨て、面識のない新参チームに仕事を頼むクライアントさんはそうそういないでしょう。

どこの現場でだって、クライアントさんとショーチームは上手く付き合っていけるように人間関係を築いているのです。

そこに入り込むだけの強烈な営業力がOB連にあるか?

全くないでしょう。

彼らはベテランアクターであって、営業マンではないのですから。

そして、自分達でチームを作るという事は、オリジナルのキャラクターで勝負していく事になります。

テレビで人気を博しているメジャーヒーローに対し、素人が作り出したオリジナルヒーローで勝負を挑まなければならないのです。

ローカルヒーローやオリジナルヒーローがブームとなった昨今ならいざ知らず、この当時にメジャーヒーローを脅かすオリジナルヒーローを生み出す事は容易ではなかったでしょう。

さらに、『復讐』以外の部分の結束も気になっていました。

彼らを見ていると、

『仲の良い者達で集まって何かやろう』

ぐらいの意識しか感じられなかったのです。

仲良しチームは得てしてリーダー不在になりがちです。

ケンカにならないようお互いに気を遣う為、『みんなの意見を取り入れる』ような曖昧な活動方針になるからです。

しかしそれでチームが発展するハズがありません。

方針を定めるリーダーが必要だし、他のメンバーがリーダーの意見を尊重しなければ進んでいけないのです。

もちろんぶつかり合う事もあるでしょう。

その時にチームが『崩れる』か『固まる』か、それを決定づけるのはメンバー全員の

『チームで進んでいこうとする意思』

だと思うんです。

どうしても意見が合わなくてぶつかり合った時に、

『あーもうオマエらとは意見が合わん!こんなチームじゃやっていけんわ!』

と思うのか、

『あーもうオマエらとは意見が合わん!こんなチームで前に進んでいく為にはどうしたらいいんやろ?』

と考えるのか、

そこが大きな分かれ道なんです。

『チームで進んでいこうとする強固な意思』がなければこれは難しい。

自分達で作ったものは自分達で壊せるからです。

壊してもよいものを壊さずに維持するのは本当に大変なんですよね。

仲間内で作った団体が簡単に自然消滅してしまうのは『維持させようという信念』がないからなんです。

自然消滅を避ける為にも、強い意思を持つリーダーの存在は不可欠だと思います。

そして、

OB達の反乱計画には必要な全ての要素が欠けているように見えたのです。

計画を推し進めて、もし成功したならば

(現場乗っ取りは無理なので、活動が軌道に乗るという意味での成功)

OB達の成長になるし、失敗すれば厳しさを知る事でそれも成長に繋がるだろう、

なんて考えから僕は協力する事にしたのです。
2011-06-26(Sun)

アクションへの道(215)

さて、新しく社員になったKさん、

他社から移籍してきたぐらいだから、ウチのチームに何かしらの魅力を感じていたのは間違いありません。

しかしどうやらKさんが魅力を感じていたのは“僕らが若手の頃”の、

つまり、僕らより“前の世代”のチームだったんです。

以前は魅力的だったチームを僕達の世代が駄目にしたんだとKさんは考えていたようです。

なので、かつてのように輝くチームを作る為に、元凶たる(僕ら世代の)OBを排除したのでしょう。

これがKさんの本心なのかOBのクビを切る為の方便なのかは分かりません。

しかし、本心だとしたら気持ちは分かります。

そして半分は賛成、半分は反対です。

そりゃ僕らも無茶苦茶やりましたから後年に悪影響を与えてしまった部分もあるでしょう。

しかしレベルアップさせた部分も少なからずあるんです。

功罪の罪の部分だけしか見てもらえないのはやっぱりツラいものです。

OBが反発した理由の1つはそこにあります。

しかし反発の仕方が感情的過ぎました。

『最近移籍してきた社員より、長年このチームにいる自分達(アルバイト)の方が立場は上だ』

というような姿勢を崩さなかったのです。

頑なvs感情的では解決するハズもありません。

僕はどうにか双方の間に立てないかと思いました。

Kさんには

『もっとOBと話をして下さい』

ってお願いしましたし、OB連中には

『俺達はバイトという立場なんだから、社員の方針は会社の方針だと思って尊重するべきだ』

と話しました。

しかしやっぱり事態が改善される事はありませんでした。

こうしてハッキリと、
『新メンバー』
『旧メンバー』
の壁が出来てしまったのです。

僕も仲間達から

『一緒にやめようぜ』

と誘われました。

でも僕はやめませんでした。

理由としては、まずショーが好きだった事、

そして、先輩方からの流れを途絶えさせたくないという思いがありました。

先輩方…

僕らが旧メンバーなら先輩方は『旧々メンバー』になるワケですが…

実は僕らの先輩方、前任の社員さんの時にいなくなってるんです。

やはり長年チームを作り上げてきたメンバーの自負と、移籍してきた社員さんの確執が原因でした。

移籍してきた社員さんが他社のやり方を持ち込み、それまでのやり方を排除する…

それが二代続けば、我らがチームに受け継がれてきたものは、ほぼ消失してしまうでしょう。

言葉は悪くなりますが、ブラックバスなどの外来種が在来種を駆逐してしまった状況に似ています。

それはやっぱり避けたかった。

せめて僕1人でもショーを続けていれば、かすかな繋がりを残していけるんじゃないか、

そう思ったんです。


それからしばらくして…

辞めていった(クビになった)OB達が数人集まって言いました。

『あのチームをつぶそうぜ!』

話を聞くと、自分達でもショーやイベントの活動をし、かつてのチームを脅かす(そして潰す)存在になろうぜって事でした。

集まった面々のショーの技量は折り紙付きです。

彼らなら面白いショーが出来るかもしれません。

『一緒にやろうぜ!』

声をかけられた僕は悩みました。

何と言っても僕は『潰す!』と言われているチームに所属しているのですから。

しかし…

考えた末に僕は仲間達に協力する事にしました。

何故か?

それは次回説明しましょう。
2011-06-25(Sat)

アクションへの道(214)

かくして、長かったイベントも最終日を迎えました。

最後は公式に(?)キャラクターが全員並んでお見送りです。

思い返せば色んな事があったなぁ…

お金がなくてコインランドリーに行けないから、いつもお風呂で洗濯してたっけ…

途中で何回も宿泊場所が変わって、移動が大変だったっけ…

最後の最後で、僕らのブースでもダンスをする事になって急いで覚えたっけ…

急いで覚えたけど披露する機会がなかったっけ…

着替えを手伝ってくれるスタッフが時間になっても来てくれなくて、頑張って自分1人で着替えたっけ…

そうそう。
それを機に1人で着替えるコツを見つけて、後々役に立つ事になったんだ…

打ち上げでは男性スタッフとキスさせられたなぁ(笑)

何故か隣りのブースの打ち上げにも招待されたっけ…

そんな思い出を胸に僕は福岡に帰ったのでした。

3週間近いこの現場を経験する事で、プロのアクターとして少しだけ成長出来た気がします。

まぁその頃福岡では僕をクビにするなんて話が持ち上がってたワケですけど。


…で、アクションリーダーが移籍でいなくなり、社員さんが辞めていったのは以前書いた通り。

その辞めてった社員さん、実は他社から移籍して来た方だったんですが、後任の方も同じく他社から移籍して来られた方でした。

口数が少なくてクール、

落ち着きがあってアクションが上手い、

そんなイメージの方です。

Kさんと呼びましょう。

Kさんが社員になって変わった事といえば、やはり僕ら世代のメンバーがクビになった事、でしょうか。

僕らの事務所では代々『卒業式』というものが行なわれていました。

これを経て現役はOBになるのです。

OBというのは、僕らの事務所的には『中心から外れた人』、つまり、

『後輩達よ!これからはオマエ達が第一線で頑張るんだ!俺達はサポートに回るぜ!』

って立ち位置の先輩の事です。

忙しい時期、
人手が足りない時に真っ先に駆け付ける(呼び付けられる?)のがOBだったんです。

そのOB達がクビを切られていた。

しかも本人達が知らない間に。

OB達は

『あれ~?この時期は毎年呼ばれてたのに、今年は声がかからなかったなぁ~?』

なんて所から、実は自分達がクビになっていた事を知ったのです。

新しい社員さんの言い分としては

『卒業した人間が普通にショーに入るなんておかしくないですか?
卒業したんでしょ?
ショーに入りたい人は現役復帰宣言をしてくれたら良かったのに』

という感じでした。

当然OB達は反発しました。

僕も

『ウチでいう卒業ってのは、辞めるって意味じゃないんです!!』

『クビにする前に、現役復帰宣言をしないとクビになるぞって教えてあげるべきだったのでは!?』

と言ったのですが聞き入れてもらえませんでした。
(僕自身は現役を続けていたのでクビになっていなかった)

おそらくは、OB達をクビにする事はKさんの中で必要な事だったのでしょう。

他社から来て長くないKさんが上に立つにあたって、古くからのOBが障害になるであろう事は想像に難くありません。

『余所者』

『ウチにはウチのやり方がある』

『俺達が築き上げてきたものが』

なんて事を言い出すバイトがいたら、社員は立ち行かないのです。

そして悲しいかな、クビを切られたOBには、そんな事を言う者がたくさんいたのです。
2011-06-24(Fri)

特番

明日のお昼!

お時間がある方は是非観て下さい♪

『新番組はじめちゃいますSP ナンデモ特命係 発見らくちゃく!』

6/25(土)13:30~14:25

FBS福岡放送にて。

僕はこの特番には関わってないのですが、7月7日深夜の第1回放送にちょっとだけ出てるんです♪

土曜のお昼なんで忙しい方が多いと思いますが、観れない方も

『ナンデモ特命係 発見らくちゃく!』

よろしくお願いしますね♪
2011-06-24(Fri)

アクションへの道(213)

前回書いたように、各ブース、各メーカーは同業他社のライバルです。

別にピリピリした雰囲気もなく、仲良くやってましたが、やはり見えない壁のようなものがあります。

その1つが『キャラクター同士の接触』でした。

僕は隣りのブースのスタッフさん、コンパニオンさんには非常に仲良くしてもらったんですが、その中で、

『メーカー同士の壁はあるにしても、お客さん目線だと、せめてキャラクターぐらいは仲良くしてほしいよね~』

なんて話す事がありました。

会場に集まっているのは知名度抜群の超メジャーキャラばっかりなのですから、

『それらが勢揃いしてる所を見たい!』

『集合したキャラクター達と記念撮影したい!』

と思うのがお客さんの心理ではないでしょうか。

僕らは、

『こんなに近くにいるキャラクター同士が隣りに並べないなんて、企業間のライバル心を見せてるみたいで嫌ですよね』

『せめて1日の締め、お客さんをお見送りする時ぐらいは集まれないもんですかね』

なんて話し合いました。

ここから企業泣かせの反乱が始まったんですね。


1日のイベントが終了しお客さんが帰り始めます。

僕らキャラクターはそれぞれのブース前でお見送りします。

僕は隣りのブースのキャラクターをちらりと見ます。

向こうもこちらをちらりと見ます。

そして互いに(お見送りしなが)じわりじわりと近付いて…

ちょうど双方のブースの間ぐらいで合流するのです。

合流した位置はメインの出入口から続く通路なので、お見送りするにもベストな位置でした。

そこで並んでお客さんに手を振ります。

最初の内はブースに連れ戻される事もありましたが、良くも悪くも『継続は力』、いつしかキャラクター同士が手をつないでお見送りするまでになりました。

他のブースのキャラクターはそれをどう思っていたのでしょう?

アクター同士の交流はほとんどなかったので確信は持てませんが、多分みんな、僕らと同じ気持ちだったと思うんです。

それぞれのブースに点在してるより、キャラクターが集まってる方が楽しそうじゃないですか。

僕ともう1体のキャラクターが並んでお見送りしていると、別のブースのキャラクターと目が合いました。

不思議なもので、キャラクターって時々アクターの感情が透けて見えるんですよ。

着ぐるみ越しに表情や感情が伝わってくるんですよね。

その時、そのキャラクターは、

『えっ?自分も行くべき?ってか行っていいの?』

って顔をしていました。

僕らは当然、

『来いよ!』

とアイコンタクトを送ります。

こうして2体が3体、4体と増えていき、最終的には(多い時で)6体のキャラクターが並んでお見送りするのが毎日の恒例となったのです。
2011-06-24(Fri)

6月23日の殺陣教室

6月23日の殺陣教室!

今回の参加者は…

シライシさんと…

Mさん!!

Mさんは武装HPを見て連絡をくれた女の子です♪

物好きですね♪(コラッ!!)

珍しく一般の女性が来て下さったので、練習強度をどのぐらいに設定するかで非常に悩んでしまい、ちょっとグダグダな感じになってしまいました…

とりあえずは剣殺陣をメインに、摺り足をしたり構えたり刀を振ったり。

筋トレやストレッチも取り入れましたが、ソフトメニューとハードメニューの比率をどうするか、今後の課題ですね。

シライシさんにはお手本係になってもらったり経験談を話してもらったりで助けていただきました。

今回学んだ事を再来週の教室に活かしていきたいと思います。

シライシさん、Mさん、お疲れ様でした!!

※画像は練習終了後にモップをかけてくれてるシライシさんと帰り仕度のMさん。
6月23日
2011-06-23(Thu)

アクションへの道(212)

さてさて、

休憩の度に他のブースのキャラクターを見学し、ミーハー気分で写真撮影なんかしてた僕ですが、一番気になっていたのは隣のブースでした。

そこでは時間ごとにキャラクターとお客さんがダンス(体操)をするのがメインのイベントになっていました。

それがですね…

かなり難易度の高いダンスだったんですよ!!

まぁお客さんの振り付けは簡略化されてはいましたが…

僕はそのダンスに、そしてブースの雰囲気の良さに惹かれてしまっていました。

キャラクターだけじゃなく、MCさんも、コンパニオンさんも、男性スタッフさんも、そしておそらくメーカーの偉い方であろうスーツの人達まで、みんながイベントを盛り上げようとしてたんですね。

それは本当に素敵な光景で、

「あぁ、イベントとは本来かくあるべし」

なんて思ったものです。

それで僕は頻繁にそのブースのイベントを観に行くようになりました。

イベントの時間以外はモニターでダンスのDVDが流されていたので、アクター魂に火がついた僕は、そのDVDを観てフルコーラス振り付けを覚えました。

そしてイベントを観に行く度にお客さんと一緒に踊っていたのです。

その内、そのメーカーの偉い方が僕を気にするようになりました。

「おい、彼は一体何者だ?完璧に踊っているぞ!」

訊かれたスタッフさんは

「あの人は隣のブースのキャラクターの方です」

なんて説明しています。

それがきっかけで、そちらのメーカーさんにも覚えてもらえたのでしょう、

ある日の終了間際にこんな事がありました。

退出するお客さんを(キャラクターで)お見送りしていると、隣のブースのスタッフさんや偉い方が僕に手招きしました。

各ブース、すなわち各メーカー同士は同業他社、いわゆるライバルなワケで、手招きされたからといって、簡単に行く事は出来ません。

しかし完全シカトするワケにもいかないので、自分のブースの偉い方達の顔色をうかがいながら、おそるおそる行ってみました。

行った先ではいつものダンスでお客さんをお見送りしています。

あぁ、これは、

「一緒に踊ろうよ」

のお誘いなんだ。

踊りたいけど、踊っちゃえば後で自分のブースの方から怒られるだろうなぁ…

でもこちらのスタッフさんや偉い方、キャラクターは

「いつも踊ってる人でしょ?踊れるんでしょ?」

って期待した視線を送ってきてるし…

仕方ないので、少しだけ踊りました。

隣のブースは大いに盛り上がり、僕はそそくさと自分のブースに戻りました。

もちろん後で軽く注意を受けましたが。


これがきっかけでイベントの流れが変わろうとは、この時の僕はまだ知るよしもなかったのです。
2011-06-22(Wed)

アクションへの道(211)

他のキャラクターに入る方達がコンパニオンやスタッフ兼任だと知った僕。

しかしその仕事ぶりはまさしくプロそのものでした。

それは、僕がプロとしての仕事をするのとはワケが違います。

だって僕はアクターに専念すればいいんだけど、彼ら彼女らは他の仕事をしながらなんですから。

他の皆さんの方が僕なんかよりもっと頑張ってるワケです。

毎朝会場に集合して、スタッフとして、コンパニオンとして働きながら、時間になったらキャラクターに変身してるワケです。

僕は勉強の為に、休憩の度に各ブースのキャラクターを見に行きました。

そして、

『専門でないアクターさんがこんなに頑張っている。その中で自分はプロとしてどう頑張るべきだろう』

なんて考えていました。

出た答えはやはり

『プロのアクターである事』

キャラクター専属ならば、このイベント期間中、一心不乱にアクターという仕事に向き合おうと思ったのです。

それからは毎朝、会場に入ってトレーニングする事にしました。

走ったり筋トレしたり柔軟したり。

よりよいパフォーマンスをする為にスタッフさんと打ち合わせをしたり意見を出したり、

衣裳の不備をなくす為に色々と工夫したり。

後年、この時に知り合った別ブースの方に聞いた所、

「毎朝会場内を走ってるヘンな人がいるなぁ、と思ってた」

と言われました(笑)

確かに周囲の視線は気になっていたのですが、プロとしての仕事をする為だと自分に言い聞かせて走っていた記憶があります。

ホテルに帰ってからも部屋で筋トレしたり外を走ったり、他にやる事がない環境だったので、けっこうストイックな毎日を過ごしていました。
2011-06-20(Mon)

アクションへの道(210)

しばらくネガティブな内容だったので、ちょっと流れを変えましょう。

仕事を干された僕が3週間泊まり込みの現場に行った事は書きました。

その3週間の話でも。


まず何のイベントだったかと言いますと、数年に一度開催される、ある業界の大きな博覧会でした。

そこには各メーカーのブースが並び、それぞれの方法で自社のPRを行なっていました。

どこも全国的に有名な超一流企業ばかりです。

そして各ブースには、各メーカーが抱えるキャラクターが登場する事になっていました。

僕はこの中の1つ、

ある有名メーカーの有名キャラクターのアクターとして参加したのです。

僕が演じるキャラクターの主な仕事はグリーティングとクイズ大会。

お客さんと握手したり写真を撮ったり、MCのお姉さんのクイズを盛り上げたりという役目でした。

キャラクターの役目は各メーカーによって違います。

撮影会に力を入れている所、
お客さん参加のダンスをやっている所、
週末しかキャラクターが登場しない所、

色々ありましたが、会場内にたくさんのキャラクターが登場している光景は本当に豪華なものでした。

何日か過ぎると他のブースのスタッフさん達とも交流が生まれます。

話してみて分かったのは、他のメーカーのキャラクターに入っているのはスタッフ兼任の方だったりコンパニオン兼任の方だったりって事。

つまり『プロのアクター』としてキャラクターに入っているのは僕だけだったんです。
2011-06-19(Sun)

好きでやってる事

ま、どうでもいい事なんですけどね、

よく、

「人の趣味に文句つけんな」

「人が好きでやってる事にとやかく言うな」

みたいな発言を聞くんですよ。


これは自分の趣味に対して、

「その趣味ってどうなの?」

「そーゆーのは好きじゃないなぁ」

なんて批判的な事を言われた人の反論なんですが…

もちろん、敢えて批判を口にする必要もないんでしょうけどね、

でも僕は、

「人の趣味に文句つけんな」

「人が好きでやってる事にとやかく言うな」

って発言が好きではないんですね。

世の中って、何をやっても賛否分かれるじゃないですか。

何をやっても必ず誰かに批判される運命にあるんです。

そんな世の中で、自分の好きな事をやって、なおかつ文句も言われたくないなんて虫が良すぎる話だと思うんですよ。

「好きでやってる事にとやかく言うな」

って人は、会社の指示でやってる仕事なら周りにとやかく言われても平気なんでしょうかね。

「嫌々やってるんだから文句言われても仕方ない」

「仕事で仕方なくやってるんだからとやかく言われても仕方ない」

って思えるんですかね。

『仕事で仕方なくやってる事に文句つけんな!!』

って言いたくなりません?

好きでやってる事にも仕方なくやってる事にも文句つけられたくないなんて、世の中そんなに甘くありませんわな。

好きな事をキチンと貫いてる人って、周りの批判を受け止めつつやってますよね。

周りから

「もう…どうして!?」

と思われても

「全く理解出来んわぁ!」

と言われても、それでも貫く覚悟を持ってますよね。

好きな事をやるというのは、批判されても受け入れて進む覚悟を持つという事。

「自分の好きな事をやってんだから文句言うな!」

なんて考えは、ただの甘えに思えてしまいますな。


…ま、どうでもいい事なんですけどね。

2011-06-19(Sun)

アクションへの道(209)

もう書かないでおこうと思ったけど、せっかく思い出したのでもう1つだけ。

例の辞めてった社員が僕とアクションリーダーを比べてこう言った事がありました。

『内野、お前は何かやる時“完璧にやれるかどうかは分かりませんが頑張ります”と言って結果を出しているが、俺はお前よりアクションリーダーを信用している。
あいつは結果は出せないが“ばっちり出来ます。任せて下さい”と自信を持って答えるからだ』

そもそも性格が合ってなかったのかもしれませんね。

まぁそれはそれとして、もう1つ思い出したエピソードを。

それは2001年だったと思います。

僕と後輩のN君は2人で着ぐるみの現場に行きました。

祭りの現場に建設会社のブースがあり、そのブース前を賑やかすという仕事でした。

クライアントである建設会社の担当の男性が上から目線でスケジュールを説明します。

それによると…

1人が着ぐるみに入ってる時はもう1人がアテンドに付く。

40分~45分ぐらいで交代する。

着替える場所はちょっと離れた道路に停めてある担当さんの乗用車の中。

絶えずブース前に着ぐるみが出ている事。

だいたいこんな内容でした。

実際に着ぐるみで出てみると、田舎の子供達の祭りにおけるテンションはハンパなく、着ぐるみを取り囲んで殴る蹴るの大暴れ。

アテンドの不慣れなN君では止める事が出来ません。

時間になり、交代しようと担当さんの車に向かいます。

しかし、かなり離れた道路まで歩かねばならず、その間も悪い子供達に取り囲まれては殴られ、良いお友達には写真撮影をせがまれで、なかなか進む事が出来ません。

ようやく車にたどり着くも、悪ガキ達は

『ここで着替えるんじゃね?中身が誰か見てやろうぜ』

なんて言いながら車を取り囲んでいます。

僕とN君は衣裳の袋やら何やら、そこらにある物で窓を塞いで隠しました。

いざ着替えようとしても、狭い乗用車の中で、でっかい着ぐるみを脱ぐのは難儀です。

かなり苦労して脱ぐと、今度はチェンジしてそれを着なければいけません。

狭い車内で、無理な姿勢で、どうにか着替えを終え外に出ます。

また悪ガキに囲まれながら、お友達と写真を撮りながらブース前に戻ります。

ブース前を去ってから戻って来るまで30分ぐらいかかったんじゃないでしょうか。

すると担当の男性は

『何でこんなに時間がかかるんですか!』

とキレています。

『着替えにかかる時間は15分ぐらいと聞いています!』

僕は言いました。

『このブースの横に着替え用のテントがあるならもちろん15分で交代出来ます。でも、あの距離を移動して車の中で着替えて戻って来るのは15分では無理です』

しかし彼はまったく信用していない顔で

『15分って聞いてますから!』

と言うばかり。

着ぐるみの事なんて何も分かってないんだろうなぁ。

それから彼は僕らが着替えで移動する度に遠くから険しい顔で見張っていました。

多分サボってるから時間がかかってると思い込んでるのでしょう。

しかし百聞は一見にしかず、現状を見れば分かってくれるハズ…

と思ったのですが、子供に追われ絡まれ、必死に車に移動し、窓ガラスに目隠しを張り、狭い車内で着替える我々を見てもまだ

『サボっている』

と思っていたのです。

そしてお昼。

お弁当を渡された時に言われたのが、

『着ぐるみが出てる間にもう1人が食べて下さい』

その間はアテンド無しって事ですか?と訊くと

『そうです』

との事。

『いやいや、アテンド無しで着ぐるみを出すのは危険なので勘弁して下さい』

僕は頼みました。

子供がおとなしい現場ならともかく、ここは危険です。

犬の着ぐるみだったんですが、ついさっきも悪ガキどもに耳を引きちぎられたばかりなんです。

『ここはテンション高い子供が多くてさっきも衣裳を壊されました。そんな中に着ぐるみだけ出すワケにはいきません。15分でいいので食事時間を下さい』

しかし彼にはそれもサボる為の口上に聞こえたんでしょうね。

『いいえ駄目です。必ず着ぐるみは出ていて下さい』

僕はカッチーンと来て弁当を突っ返しました。

『じゃあ食事は摂らないからもう弁当はけっこうです!交代の時間もつべこべ言われるなら出来るだけ交代しないようにしますよ!』

僕はN君に言いました。

『N、悪い、1時間半ごとの交代にしていい?』

交代の回数を減らす事で着替え時間の辻褄を合わせようという作戦です。

そこまで頑張ったにも関わらず…

イベント終了間際、ウチの事務所の営業担当がやってきて僕らに言いました。

『お前ら、サボってばっかりやったらしいな!?』

あの建設会社の担当には何も伝わらなかったんでしょう。

僕のイライラは爆発寸前…

そしていよいよイベント終了…

建設会社のブースに社長とおぼしき男性がやってきて終礼を始めました。

僕らはまだ着ぐるみでブース前にいたんですが…

社長は言いました。

『大盛況で本当に良かった!あんな客寄せパンダのおかげじゃなく、君達の努力の賜物だ!』

…客寄せパンダ…だと…?(実際には犬でしたが)

ふっ…ふふふっ…

なるほど…

若手社員が無礼なのは社長の教育の賜物ですな…ふふっ…


ブチンッ!!

僕は可愛らしい犬の姿でテントに向かいました。

『N!ちょっと暴れてくるわ!!』

N君が僕を止めます。

『内野さん!マズいっス!』

『あの長机、真っ二つにへし折ってやる!!』

『我慢です!ここは我慢しましょう!!』

N君の必死の制止で踏み止どまりましたが、ホントに暴れてやれば良かった。

貴様ら、キャラクターをナメんなよ!!


…どこにでも理不尽な仕事はあるんですなぁ~。
2011-06-18(Sat)

アクションへの道(208)

『もう辞めるしかないのかもしれない』

そう思った僕は他社への移籍を考えました。

しかしそれは実現しませんでした。

僕が行こうと思っていた事務所に、なんとアクションリーダーが先に移籍してしまったのです。

彼はかつて、

『今のリーダーは頼りにならん!俺がリーダーをやる!』

と言ってアクションリーダーになった男です。

それが1年で勝手に辞めてしまうなんて…

『あまりに無責任なっ!』

そう思いましたが、もうどうでもいいや。

新天地で荒波に揉まれて頑張ってくれたまえ。


それからの僕は練習にも行かず、現場もあまり入らず、事務所とは一線引くようになりました。

しゃべりショーだったり、後輩が『是非一緒に!』と言ってくれたり、そんな現場には入りましたけど。

僕は何故かクビを言い渡される事もなく、逆に

『あいつはクビにする』

と言っていた社員が上司とケンカして辞めていく始末。

これは絶対言わないと誓ったものの、

『お前ら、よくも俺に偉そうな事言ってたな!』

と言いたくなりました。

この辞めていった社員さん、
良く言えば『メンバー(バイト)の気持ちに立ってくれる』、
悪く言えば『社員がそれでいいのか!?』、
って人でした。

会社の事情より、クライアントさんの事情より、自分のやりたい事を優先する。

と言うより、やりたくない仕事はやらない(これは言い過ぎか)ような人だったんです。

彼はメンバー達に言っていました。

『現場でクライアントに理不尽な要求をされたらショーなんてしなくていいからすぐ帰ってこい』

うむむ?

理不尽のレベルにもよるが、その考え方はどうなんだ?

その結果メンバー達は、

『今日の現場!テントを出てすぐの所に段差があったんですよ!!もう帰ろうかと思いましたよ!』

とか、

『今日の現場!ぶっとおしで1時間も出なくちゃいけなかったんですよ!』

なんて愚痴を言うようになっていました。

素人かオマエら!

現場がベストな状態なんて方が珍しいんじゃ!

そんな状態でもどうにか出来るようにプロが呼ばれとるんじゃろがい!

段差なんか乗り越えて行け!

乗り越えられん段差なら対処してもらえ!

1時間ぐらい我慢せぇ!

無理そうなら対処してもらえ!!


これはキャラクターショーの地位向上を目指した結果なんでしょうけど、現場対応が出来なかったらプロの意味あるの?

僕が行ってたテレビのロケの話ですが…

以前書いたように、とにかく撮影時間がタイトで、スタッフも出演者もみんな巻き巻きで進めていたんです。

そんな状況だったので、

『内野さん、スミマセンが今日の撮影、1時間半ぐらいかかりそうなんです。
もし体力的に無理そうだったら途中で合図下さい』

なんてディレクターさんに言われる事も多々ありました。

夏場で激しい動きがあればキツい所ですが、おそらく大丈夫です。

キャラクターの休憩でロケを中断させるのも嫌ですし、

『大丈夫ですよ~。どうしてもキツかったら動きをセーブして乗り切りますから』

なんて答えていました。

キャラクターあってのロケじゃないんです。

まずはロケありき、なんです。

出来る範囲であれば、キャラクターがロケの進行に合わせるのは当然なのです。

しかし当時、例の社員さんは

『衣裳を着るのは30分!それ以上になる時は必ず一度休憩をもらえ!』

と言っていました。

超メジャーなキャラクターや国営放送のキャラクターなどはそこまで管理してパフォーマンスや安全に配慮してたりするので、おそらくはその影響なのでしょう。

まぁ時々ワケ分かんないクライアントさんが

『キャラクターを炎天下に2時間放置』

なんて事もあるので、そういった事への対策でもあるんでしょうね。

しかし現場の状況によっては仕方ない事もあるじゃないですか。

少なくとも撮影のスタッフさん達は、

『申し訳ないけれども、もし可能ならばお願いします!』

ってスタンスでした。

僕も大丈夫だと判断したからOKしたのですが…

事務所に帰ると社員さんから

『お前、向こうのスタッフさんの言う事を何でもハイハイと聞きよるらしいな!』

と怒られました。

『何でもじゃないですよ』

と答えましたが、

『俺はそーゆー風に聞いている!』

と更に怒られました。

一緒にロケに行っていたメルヘンリーダーが社員にそう言ったのでしょう(メルヘンリーダーはこの社員の影響を色濃く受けていた)。

『そんな自分らの都合ばっかり言ってたら仕事来んくなるで…』

たかだかバイトの僕がそんな心配をするほど、その社員さんは『バイト寄り』『アクター寄り』の人だったんです。

結局は会社の新年会に

『俺は酒も飲まないし酔っ払いの相手もしたくない。だから新年会には行かない』

と駄々をこねて欠席し、それが引き金で辞めていった気がします(違うかもしれませんが真相には興味がありません)。
2011-06-18(Sat)

6月16日の殺陣教室

6月16日の殺陣教室の報告です!

参加者はシライシさん。

またしてもマンツーマンでした。
シライシさん

最初は身体を温める為に、『ステップ(腕有り)』⇒『ジャンプA』⇒『ジャンプB(腕有り)』。

元々は『A』だけだったジャンプにBが加わりステップが加わり、なおかつ腕有りになったという、参加者から忌み嫌われているメニューです(笑)

腕有りとは何かというと、足の動きに合わせて腕の動きが入ってるという事です。

有りと無しじゃキツさが全然違いますよ。

このステップ&ジャンプでは身体を温める以外に、リズムに合わせて動く練習、足腰の鍛練、上半身と下半身の協調、上半身の鍛練をまとめて行なっています。

そりゃ嫌がられるハズだ(笑)

続いては筋トレ。

こちらも放っておくと、どんどんメニューが増えていきます。

最近では腕立てが加わりました。

腹筋関係も増えてますね。

それからストレッチをして基本。

前回は立ち回りや応用に時間を割いたので、今回はみっちり基本をやるぞと決めていました。

剣殺陣の基本か手技の基本か足技の基本か…

考えた結果、『手技』をやる事に。

ヒーローアクションは剣殺陣の延長にあると僕は考えているのですが、武術において、武器は手の延長です。

身体の使い方をマスターするには徒手の稽古が一番良いと思います。

ほとんどの技は、足から力を発するものです。

足から生まれた力を徐々に伝達させられなければ説得力のある技を出す事は出来ないでしょう。

正拳突き(中段・上段)⇒手刀⇒裏拳(顎打ち・中段・上段)⇒受け(上段・外・内・下段)。

これらは空手の基本です。

僕自身は空手をやった事はないので(キャラクターショーの事務所での空手練習には参加していましたが)完全に『ナンチャッテ空手』です。

気にしない気にしない♪

攻めと受けに分かれて、4種類の受けをやってみました。

慣れた者同士ならそうでもありませんが、双方が(あるいは片方が)不慣れだと、腕と腕がゴツゴツぶつかり合って、チョ→痛いです(泣)

あまりに痛かったのでしょう、
シライシさんの腕が力を逃し始めました。

でも、痛いからこそ本当の受けを覚えていくんですよね。

痛さを知らなければ形ばかりの『なあなあ』な立ち回りになると思います。

技を食らった時の痛みを知って、痛みを伴わない受けを覚えてもらいたいですね(クッションとなる筋肉をつける事も必要ですが)。

次にやった『殴り(シン用・絡み用)』は立ち回りの動きです。

立ち回り用の技には『演技』が含まれてくるので、空手の技とは違った難しさがありますね。

ここまでのメニューを踏まえた上で『右殴り』という立ち回りをやってみました。

シライシさんがシン(主役)、僕が絡みです。

僕のパンチをシライシさんが止めて殴り返す、という簡単な立ち回りです。

僕らがキャラクターショー時代に一番最初に習った基本の基本なんですが、立ち回りに必要なものがたくさん含まれています。

基本を侮る人をたまに見かけますが、大切なものが含まれていなければ基本として残るハズがありませんよね。

それを理解してるかどうかで、以降の上達ぶりに差が出ると思いますよ。

右殴りの後は、攻撃を捌く練習をしました。

内受けに似た動きですが、巻き込むように受ける内受けと違い、若干落とすように捌く練習です。

先ほどの受けもそうですが、受けたり捌いたりする時は、『力vs力』にならないように気をつけなければなりません。

相手の攻撃の勢いを殺さないように軌道を変えたり、瞬間的な力で弾くようにするのです。

続いて、攻撃を捌いた後に上段の裏拳で反撃する練習をしました。

捌く際の体重移動に加えて裏拳の体重移動も加わりますから、かなり高度な動きだと言えます。

捌きからの裏拳の実践編もやってみました。

最初はシライシさんがシン、僕が絡みです。

僕の右パンチ(中段突き)をシライシさんが右手で捌いて右裏拳。

顔面に裏拳を食らった僕は吹っ飛んで離れます。

そこにシライシさんがとどめの右2段蹴り、

という立ち回りです。

同じ事を左でもやってみました。

僕が左の突き、シライシさんは左で捌いて左裏拳、左2段蹴り、という風に全く逆になります。

当然ですが、右利きの人は右の技が得意で左は苦手です。

でも武装では、出来るだけ両方を進めていきたいと思っています。

左が出来るだけで立ち回りの幅が広がりますし、上手く出来ないとしても身体の使い方の幅が広がります。

徒手練習最後のメニューはリアクション。

攻め手が顔とお腹を殴る、
受け手がリアクションする、
という練習です。

シライシさんがシンの殴りを練習し始めたので、攻めと受けを交代しながら出来るようになりました。

残りの時間はちょっとだけ剣殺陣メニュー。
代表\\

片足ジャンプ⇒站椿⇒前回やった立ち回りです。

立ち回りは先に進めず、おさらいにとどめました。

今の段階では、新しい動きを覚える事よりも1つ1つの動作を身体に染み込ませる事が大事です。

以上で16日の殺陣教室は終了です。

今回は(も?)理屈っぽい内容でしたね、ごめんなさい。

シライシさん、お疲れ様でした!

次回の殺陣教室は23日(木)です♪

参加希望の方は連絡下さいね♪
2011-06-17(Fri)

アクションへの道(207)

僕は決めました。

福岡に戻ったら、

責められた事は素直に反省しよう。

自分が悪い事は素直に謝ろう。

他人を責めるのはやめよう。

やるべき事を一生懸命やろう。

でも…

もうみんなとは付き合わないようにしよう。

余計な事を話せばまた軋轢が生まれるかもしれない。

だから仕事上、必要最小限の付き合い以外はしないようにしよう。

付き合わなければ、話さなければ、非難される事もないさ。

それはとても寂しい事だけど、

『きっと全員が僕を非難してるワケじゃない。

仲良くしていた友人や後輩はデマよりも僕の事を信じてくれてるハズ』

そう信じれば耐えられるさ。

いつかまた分かってもらえる日が来るさ。


3週間の現場が終わり、僕は福岡に帰りました。

ビジネスホテルで誓ったように、メンバーとは笑顔で挨拶を交わすだけ。

何か訊かれたら笑顔で真剣に答えるけど、相手が不快になりそうな事は言わない。

言われた事は全て受け入れる。

もちろんプライベートで誰かと関わるなんて事もない。

これなら非難されようがない。

倉庫に籠って仕事をしながら、僕は少し安心していました。


それから1ヶ月が過ぎ、僕は社員に呼ばれました。

『1人で頭を冷やして来い!』

と言った社員です。

『お前が無理矢理誘うから後輩がみんな迷惑している!』

と言った社員です。

その社員は言いました。

『あれから1ヶ月、お前の悪い話も聞かなくなって、俺はお前が心を入れ替えたんだと思っていた…

だが…

それは、周りのみんなが大人の対応をしているだけだった!!』

…???

『お前は何も変わっていなかった!!』

…?????

もう何が何だか分かりません。

『あれから僕は、誰とも話してもないし、ほとんど会ってもないし、練習も現場も行ってないし、みんなに不愉快な思いをさせた記憶がありません。

でも気付かない内に迷惑をかけた可能性はあるので、それなら反省したいし謝りたいです。

僕が何をしたのか教えてもらえませんか?』

確か出発前もこんな話をしたなぁ。

『俺は言わん!自分の胸に聞け!』

帰って来た言葉も出発前と同じでした。

誰とも関わらなくてもみんなに迷惑をかけているのなら、僕の存在自体がいけないという事になります。

もうこのチームを去るしか道はないんでしょうか。

僕は10年以上の付き合いであるS君と話しました。

後輩の女の子を無理矢理集めていたというデマが流れてツラかった事、

ショーは本気でやらなくていい、8割ぐらいでやればいいなんてデマが流れてツラかった事、

それを聞いたS君は言いました。

『あんたならやりそうやし言いそうやと思ったけどね』



…そうか。

長年一緒にやってきたS君なら、
僕のショーに対する姿勢を見てきたS君なら、
少なくとも

『内野さんがショーで手抜きするハズがない』

と言ってくれると思っていました。

しかし彼からしてそう思っていたらしいのです。

それなら後輩達がデマを信じても仕方ない。

…というか、周りから見たら僕には一生懸命さが足りなかったのでしょう。

一生懸命やってきたつもりだったけど、つもりだけじゃ駄目なんだな。

続けてS君は言います。

『社員さんが、内野は(3週間の)現場から帰ってきたらクビにするって言いよったよ』


…そうか、
そんな話にまでなっていたのか。

という事は、さっきの社員の発言も、僕を辞めさせる為の布石なのかもしれないな。

本当にもう、辞めるしかないのかもしれない。
2011-06-16(Thu)

アクションへの道(206)

僕はアクションリーダーへの怒りについて色々と分析する事にしました。


原因1…女目当てと思われていたせいでメルヘンの現場を外された事。

原因2…人手不足を理由に僕を現場に入れておきながら、自分達はオフを取っていた事。

原因3…自分達優先のキャスティング。

原因4…自由参加練習を自分好みのスタイルに変えた事。


…本当はまだまだあります。

ショーで無茶をした結果ケガをして、何度も周りに迷惑をかけた(リーダーとしての)自覚のなさ。

彼が腕を折った際には『収入がないと困るだろう』と思い、僕が自分のしゃべりショーで(アクションの無い役を作って)使ってあげた事もあるのです。

その恩義も忘れたのか!?という憤りもありました。

彼の身内に不幸があった際も、急遽僕が代理を務めたのに…

以前の台本会議、
飲み食いしながらフランクに進めていたら突然

『話し合いの最中にものを食うな!俺の家なら絶対に許されんぞ!』

とキレたのも彼でした。

この時も、自分流が常識であるかのように振る舞う彼に違和感を覚えたものです。

あるテレビのロケに2人で行った時はこんな事がありました。

夏場の屋外ロケで、2人交代で着ぐるみに入る事になっていました。

僕らは着ぐるみに入る際、どんなに暑くても長袖のシャツやジャージを着用しています。

汗が直接着ぐるみに付着するのを防ぐ為です。

しかし…

アクター兼ドライバーの僕が迎えに行くと、彼は小さなバッグを片手に立っていました。

『お前…そのバッグに着替えやらジャージやら入っとるの…?』

僕がそう聞くと、彼はごく当たり前のように、

『いや、着ぐるみだったらそのまま入ればいいやと思って持って来ませんでした。ジーパンで入るから大丈夫ですよ』

着ぐるみの仕事を完全にナメてます。

着ぐるみやメルヘンをナメきっているアクションメンバーはけっこういたのですが、アクションリーダーからしてこんな考えだったのです。

『お前なぁっ!
そんなのプロが仕事に臨む姿勢じゃないやろ!』

僕は彼の仕事に対する意識の低さにキレました。

自分達だけの問題ではありません。

現場に着いたアクターが普段着のまま着ぐるみに入るのを見たら、テレビ局のスタッフさん達はどう思うでしょう。

立派なプロの仕事だと思ってくれるでしょうか。

現場に出るという事は、そういう対外的な責任を背負う事だと僕は思うし、社員が同行しないロケではそれを特に心掛けていたのです。

結局その日は全ての出番、僕が着ぐるみに入りました。

運転も全て僕です。

彼は何一つ仕事をしていません(でもギャラはきちんと出るんですよ)。

ロケが終わって事務所に戻ると彼は脱力して言いました。

『はぁ~、疲れた…』

僕がキレたのは言うまでもありません。


こんな色んな事が積もり積もって僕の中で彼に対する怒りや不満、不信感が生まれ、それが爆発した結果、今回の事件(?)に至ったのでしょう。

『お前に俺の事をつべこべ言う資格があるんかい!』

という気持ちが、

『俺にも悪い所は山ほどあるけどな!お前だって欠点だらけやないかい!』

という気持ちが怒りを生んでいた(ように思う)のです。

そうやって1つ1つ感情の根幹を見つめた時、僕の中に新たな思考が現われました。

『自分の欠点』と『相手の欠点』には何の因果関係もないんじゃね?

と思ったのです。

僕にも悪い所がある、彼にも悪い所がある、でもその2つは相殺し合う条件ではない、と気付いたのです。

相手に欠点があるからといって自分の欠点が消えるワケではない。

だとしたら、

『俺にも悪い所はあるけどお前にも悪い所はあるやないか!』

なんて言い訳は成立しないのです。

自分の欠点を責められたら素直に受け入れ、反省し、改善する。

相手の欠点を糾弾するのは全然別の話なのです。


…そんな当たり前な!

って思うでしょ?

そんな当たり前にも気付いてなかったのが当時の僕なんです。
2011-06-15(Wed)

アクションへの道(205)

『自分を正当化するのではなく、みんなの批判をとりあえず全部受け入れてみよう』

ホテルの1室で、僕は毎日考えました。

出発点はまず、

『デマにしろ真実にしろ、悪く言われるのは自分に責任があるのではないか』

という所でした。

僕がみんなに好かれる先輩なら、
みんなに尊敬される先輩なら
、悪い噂だって広まらなかったと思うのです。

では何故好かれてないか、尊敬されてないか。

技術面?

まぁそれもあるでしょう。

しかしもっと大きいのはやはり内面的な事でしょう。

好かれている先輩と僕は何が違うのでしょうか。

尊敬されている先輩と僕は何が違うのでしょうか。

自分の中で行き着いた答えは、

『俺は後輩達を認めてあげていなかった』

というものでした。

かつて後輩の女の子に『イチャモンマン』の呼び名をいただいた事はこのブログでも書きました。

尊敬されない僕が『イチャモンマン』だったのに対して、尊敬されている友人は

『文句大臣』

と呼ばれていました。

イチャモンマンは蔑称、文句大臣は尊称です。

昔は、何故友人が文句大臣で自分がイチャモンマンなのか分かりませんでした。

後輩達に上達してほしくてダメ出ししてるのは同じなのに…

その理由がこの時にようやく分かったのです。

友人はみんなの悪い所も、そして良い所も見てあげていた。

悪い部分にダメ出しする一方で、良い部分を褒めてあげていたんです。

対して僕は『悪い所』しか見ていなかった。


…いや、正確に言うと、僕も『良い所』は見ていたんです。

でも決して、

『いいね』
『上手くなったね』

なんて言葉を口に出さなかったのです。

プロのアクターとして『上手い』のは当たり前、

そんなのはいちいち褒めてやる事でもない、

悪い部分を指摘してあげれば、

その子はもっと上手くなる、

俺は後輩の為を思ってダメ出ししてるんだ。

…そんな風に考えていたんです。

そりゃ全く褒めてくれない、認めてくれない先輩が偉そうにダメ出しだけしてきたらイラっとしますよね。

その事に気付いて依頼、僕は

『褒めないなら責めるな』

という考えを持つ事になりました。


これからは悪い所よりも良い所を見るようにしよう。

そしてそれを言葉にして伝えていこう。

そう決めました。

きっと変なプライドが邪魔をして、

『他人を褒めたくない!』

という思考が働いていたんでしょうね。

むしろ、

『自分が褒められたい!』

と思ってた気がします。

情けない。

ってか器が小せぇ。


不思議なもので、自分の欠点に気付いてから急に、『怒り』がスゥーーッと引いて『反省』に変わりました。

そうか、
不要な怒りを生んでたのは自分のエゴだったのか。

ならばアクションリーダーへの怒りだって解体出来るハズ。

俺は彼の何に怒ってる?

本当に自分の怒りは正当か?


まだ考える時間はたっぷりあります。


自分を見つめ直すいい機会だ。
2011-06-14(Tue)

出演情報…?

先週ロケに参加させてもらった番組の告知です!

FBS福岡放送

『ナンデモ特命係 発見らくちゃく!』

7月7日スタート
毎週木曜日 深夜0:38~

『FBS本社のとある一室に人知れず存在するナンデモ特命係。
その任務は、FBSのレギュラー番組では決して扱うことの出来ない、
視聴者からの超個人的な調査依頼を独自に解決すること。
リポーター、スタッフが汗まみれになりながら、視聴者の相談に対する答えを発見し、見事、一件落着させる!』

特命係は、斉藤優さん(パラシュート部隊)、香月亜耶乃ちゃん、おほしんたろうさんの3人。

僕は7日の初回放送に少しだけ参加させてもらってます。

どんな感じになってるのか、福岡の方は是非オンエアでご確認下さい!
2011-06-13(Mon)

アクションへの道(204)

2002年、
この年の冬に、ある現場の話がありました。

隣県に3週間ほど泊まり込みの仕事です。

僕はこの現場に『行きたい!』とアピールしていたのですが、社員さんからは、

『お前が3週間も抜けたらキャスティングに支障が出る』

と言われて断られていました。

ところが、僕が現場を干されて悪い噂が流れると一転して、

『行ってこい』

と言われました。

『しばらく1人で頭を冷やしてこい』

との事でした。

『僕は何に対して頭を冷やしたらいいんですか?反省したいので教えて下さい』

と頼みましたが、

『それは俺からは言えん』
『自分の胸に聞いてみろ』

としか言われません。

『とにかくみんなが迷惑している』

としか言われないのです。

『自分の胸に聞いても分からないんです。みんなは僕の何が一番迷惑だったんでしょう?』

『それは自分で考えろ』


結局何も教えてもらえませんでした。

僕は

『あぁ、この人は詳しい事なんて何も知らないんだ。リーダー達が流す悪い噂に乗っかってるだけなんだな』

と思いました。

そういえば僕の評判が悪くなった後、彼は僕を呼び出してこんな事を言いました。

『お前、時々メンバーの女の子達を自分の家に集めてパーティーとかしてるらしいな』

以前このブログで書いたように、僕は後輩達を呼んでクリスマスパーティーや鍋パーティーなどを行なっていました。

『女の子だけじゃないですが時々やってますよ』

『お前、先輩面して無理矢理女の子達を呼びよるらしいやないか』

『えっ?無理矢理呼んだ事なんてありませんけど』

むしろ後輩達から呼び掛けられて開催していたのです。

『女の子達がみんな迷惑しとるぞ!!』

…?

しつこいようですが僕は後輩の女の子に

『鍋やりましょう!』
『お好み焼きやりましょう!』

等と言われて開催していたのです。

そして女の子を誘うのはその子に任せ、僕は男性メンバーを誘っていました。

女の子が3人来るなら男性3人以上、
女の子が5人なら男性はそれ以上と、
出来るだけ『女の子目当て』に思われないように気を配っていたつもりでしたが…

おそらくこの社員さんは、僕がメンバーの女の子達と仲良くしているのが嫌だったのでしょう。

『とにかく2度とそんなマネをするな』

と不可解な厳重注意を受けた事があったのです。

そんな経緯もあって、

『1人で3週間頭を冷やしてこい』

になったんでしょう。

僕は3週間の間、本当に頭を冷やしましたよ。

朝から夕方まで着ぐるみで頑張って、ホテルに帰って考え込む毎日。

最初の2日ぐらいは腹が立って悔しくて情けなくて涙が出ました。

しかし、3日目にふと考えたのです。

『どんなに真剣に、どれだけ深く考えても、今までと同じ事を考えてたら何も変わらないぞ』

と。

事態を変えたいのなら自分の考え方を変えるしかない、と思い至ったのです。

当然すぎる事かもしれませんが、当時の僕には目から鱗の発想でした。

それまでの僕は、後輩や社員に対して

『いかに自分は悪くないか』

を訴える事ばかり考えていました。

それを、

『自分はどこが悪かったのか』

『何を責められているのか』

と考えるようにしたのです。
2011-06-13(Mon)

6月9日の殺陣教室(後編)

立ち回りに時間を使ったので、残り時間がわずかとなりました。

せっかくなので普段やってない足技を…

と思い、とりあえず膝上げ蹴り上げのストレッチと筋トレ。

今回は2段蹴りからスタートです。

本来2段蹴りは、キチンと前蹴りをマスターした上で練習しなくてはいけませんが、動きを知っておく事は役に立つだろうと思いメニューに取り入れました。

次は半旋風。

中国武術にある旋風脚という蹴り技はヒーローアクションでもよく使われています。

跳躍しながら回転して蹴る技なのですが、旋風脚より回転が少ないのが半旋風です。

僕は旋風脚を練習する前準備として半旋風を取り入れているのですが、今回は半旋風の前準備として僕オリジナルの

『1/4旋風』

というのをやってみました。

1月4日じゃないですよ、4分の1ですよ。

旋風脚は1回転して前方を蹴る。

半旋風は半回転して後方を蹴る。

1/4旋風は、側面を蹴るのです。

僕の性格なんでしょうけど、細かく段階を区切って進めるのが好きで(笑)


というワケで、後ろ回し蹴りも半回転から始めて1回転に繋げてみました。

後ろ回しから半旋風のコンビネーション、
2段蹴りから後ろ回しのコンビネーションもやってみました。

シライシさんには慣れない動きですから、今は形は気にしていません。

回転や体重移動に慣れてもらうのが目的です。

動きに慣れてから形を整える作戦なんです。

ショーチームで指導するのと違って『即戦力』を作らなくていいので、基本からじっくり指導出来ていいですね。

こっちの方が僕には向いてます。

最後にステップで殺陣教室終了。

シライシさんもかなり慣れてきたので、これからメニュー構成が難しくなります。

ない頭を使って色々考えなくちゃですね。

そんなこんなで、シライシさん、今週もお疲れ様でした!
2011-06-12(Sun)

アクションへの道(203)

仕事を干された僕は、正直何が何だか分かりません。

僕を責めるリーダーや社員は口を揃えて

『みんながお前を嫌っている』

と言いました。

しかし、『誰が』『どういった理由で』僕を嫌っているのか具体例は1つも教えてくれません。

直接揉めたリーダー達に嫌われるのは仕方ないんですが、その他の若手メンバーにまで避けられる理由が分からないのです。

若手の彼ら彼女らにとって、俺はそんなに悪い先輩だったのか??

『反省しろ』

と言われても、何を反省すればいいのか見当もつきませんでした。

後輩達に

『嫌な思いさせてたならゴメン。直していきたいから何かあったら言ってね』

と話しますが、みんな特に話してはくれません。

仲の良かった後輩の1人は

『もし何かあっても先輩には言いづらいですよね~』

と言いました。

悪い所は直したい。

直してみんなと仲良くしたい。

なのに、

何を直せばいいのかが分からないのです。

僕は『シカト』というヤツが一番嫌いです。

誰かに悪い所があるのなら、嫌な所があるのなら、それは指摘してあげるべきだ、と思っているからです。

学校にしろ会社にしろサークルにしろ、社会という枠においては、人と『付き合う』事を前提に考えるべきだと思っているからです。

嫌な所があるから付き合わない、悪い所があるからシカトする、それはあまりに卑怯な気がするのです。

だからと言って我慢して付き合う必要はありません。

相手に『そこが嫌だ』『直してくれ』と言えばいいんです。

言われた方は直せばいい、直さずとも話し合って理解し合えるのならそれでもいい。

人間関係ってそんなものだと思っているんです。

嫌な奴がいたら黙って排除する社会が健全とは思えないんです。

ましてや子供達の前でヒーローやヒロインを演じる者達が…


僕は戦隊のショーパッケージの台本に自分の思いを込めました。

敵が撒いた『心の不満を増大させるスプレー』を浴びたヒーロー2人は、熱血突っ走りタイプのレッドへの不満を爆発させます。

『お前は身勝手で考えが浅くて他人を信頼していなくて自分が正しいと思っていて…』

『お前みたいな奴とはもう一緒に戦えない!』

こうして決別を告げられ孤立したレッドは、

『俺はそんなに嫌われてたのか、そんなに嫌な奴だったのか…』

と愕然とします。

スプレーを浴びていない2人は

『レッドには悪い所もあるけど良い所もたくさんある!そのおかげで今まで上手くいってた部分もある!』

『レッドばかりを責めちゃダメだ!誰にだって悪い所はある!』

とレッドをかばいます。

悩みに悩んだレッドが出した結論は…


『(自分を責めた2人に)悪い所を指摘してくれてありがとうな!自分じゃなかなか気付けなくて…でも欠点が分かったんだから、これからはどんどん直していくぜ!!』

『(かばった2人に)かばってくれてサンキューな。その気持ちに応える為にもこれから頑張るぜ!』

というものでした。

かくしてスプレーの効果が切れたヒーロー達の絆はますます強くなり、敵を撃退せしめるのでした。


これは完全に僕個人の心情をショーにしたものです。

『身近な人に悪い部分があったら言ってあげるべきだ』

『責める為じゃなく、改善させる為に指摘してやるべきだ』

『良い部分も探してあげるべきだ』

そして、

『批判や指摘を受けた者はそれを受け入れて素直に反省し改善するべきだ』

という僕の本心を詰め込んだショーなんです。

みんながお互いにこうやって付き合えたらいいな、という理想を形にしたものなんです。

早い話が、

『俺に悪い所があるならどんどん言ってくれ!!俺は反省したいし直していきたいんだ!!』

という僕個人のメッセージですよね。

しかし実際にはそのメッセージは届かず、僕はただ干されたまま、僕を干した現役メンバー達がこのショーを演じていくのでした。
2011-06-11(Sat)

アクションへの道(202)

屈辱・恥辱にまみれたショーを終えて事務所に戻った僕。

衣裳を洗濯したり干したりしながら気が気ではありませんでした。

僕が入れなかったメルヘンショーのメンバーが帰ってくる前に道場から逃げ出したかったのです。

アクションリーダーは僕の事を

『女目当てでメルヘンに入りたがっている』

と思っていた。

だったらメルヘンメンバーの女の子達だって、メルヘン練習に参加している男性メンバーだって、僕の事をそう思っているかもしれないのです。

もうどんな顔をして会えばいいのか分からない。

「いやいや、考えすぎでしょ」

って思う人もいるかもしれませんが、この時はそうとしか考えきれないぐらい精神的に追い詰められていたんです。

メルヘンチームが帰ってきたのと同時に自分達の仕事が終わり、僕は急いで倉庫に逃げ込みました。

事務所の手伝いをやっていた関係で、倉庫内の仕事もあったのです。

外では楽しげな声が響いています。

一番聞きたくなかった

『やっぱりSさんすごかったよね~』

という声を聞いてしまった僕は、倉庫で独り絶叫していました。

今まで掲げていた目標とか、
それに向かう努力とか、
ひいてはアクターとしての自分とか、

全てが否定されたような気になったのです。

自分が崩壊した瞬間でした。


この日を境に、僕はアクションリーダー、メルヘンリーダーが憎くて憎くて憎くて憎くて仕方なくなりました。

メルヘン練習に行くのはやめました。

どうせ女目当てとしか思われないんだし。

アクション練習にはどうにか行ってたんですが、前述したアクションリーダーの方針

(遅刻を糾弾する、
先輩と若手を張り合わせて前に出ない者にはチャンスを与えない、
いい現場は自分とお気に入り優先)

が完全に許せなくなっていて爆発寸前でした。

ギリギリで我慢していた僕ですが、我慢が限界を迎えるまでそう時間はかかりませんでした。

ある日の練習でいつものように

「立ち回りやりたい奴」

と聞かれ、僕は若手の様子を見ました。

若手がモジモジしているようなら手を挙げようと思ったからでした。

その瞬間、リーダーのお気に入り達が手を挙げました。

リーダーは

『じゃあ手を挙げた奴は畳にあがって。挙げんかった奴はもうやらなくていいから座って見てて下さい』

と言いました。

僕はイラッときたので、黙って道場を去り、倉庫で仕事を始めました。

もうこの練習に参加する意味もないな、と思ったからです。

練習後、アクションリーダーが

『途中で勝手にいなくなった理由を説明して下さい』

と言いに来ました。

『まだ仕事が残ってたけんね。見学するぐらいなら仕事しようと思って抜けたよ』

『勝手な事をされると他のメンバーに悪影響があるから、今後は練習に参加しないで下さい』

『そうやね。来るなと言うなら別に行かんよ』

こうして僕は感情的にアクションともメルヘンとも決別したのです。

そうなると当然キャスティングに僕は使われなくなります。

いわゆる『仕事を干される』というヤツです。

干された僕の評判は日増しに悪くなるばかり。

『何故こんなに?』

と原因を調べると、なんと大々的なネガティブキャンペーンが行なわれていたのです。



当時僕は自分達のチームの仕事ぶりを見ていて気になる事がありました。

ショーが終わって、サイン会を始めるまで、かなり時間がかかっていたのです。

もちろん激しいショーをやった直後ですから呼吸を整えたり水分を補給したりの時間は必要でしょう。

しかし、他の事務所に比べたら格段に休憩の時間が長かったのです。

『MCがつないでいるとしても、ステージにキャラクターがいない時間というのはクライアントさんにとってもお客さんにとっても無為な時間ではないのか』

そう思っていた僕は常々後輩達に

『ショーで100%の力を使い切ったが為にサイン会に出るまでの休憩時間が長くなるというのはどうなんだろう。

サイン会や撮影会までを含めてひとつのイベントなんだから、全体のペースを考えた方がいいんじゃないか。

それで例えばショーに使う力が80%になっても、イベント全体が上手くいくならいいじゃないか』

といった事を言ってたんですが、

その言葉が、

仲違いしたリーダー達によって、

何も知らない若手の後輩達に、

『内野さんはな、全然やる気がないんだ。

あの人はな、ショーに全力出すなんておかしい、

ショーなんて8割の力でやればいいと言ってるんだ。

その姿勢をお前達はどう思う?』

なんて風に伝えられていたんです。

もちろん若手達は

「うわぁ、そりゃダメっスね!」

みたいに思いますよね。

こうして僕はどんどん孤立していったのです。
2011-06-11(Sat)

6月9日の殺陣教室(前編)

9日、
警備の後はテレビ番組のロケ、
ロケの後は殺陣教室でした。

参加予定のシライシさんが少し遅れるとの事だったので、独りでジャンプしたり壁倒立したりして待ちました。

壁倒立、前回は50秒ぐらい保ったのに、今回は多分30秒ぐらい。

腕がプルプルして、

『もうダメだっ!』

となってしまいました。

後で原因を考えた所、肩が前に出てバランスが崩れていた可能性がある。

次はフォームを気にしながらやってみよう。

そんな事をやっているとシライシさんが到着。

ストレッチをしてもらって、ジャンプと筋トレで身体を温めました。

前回は体調が悪そうだったシライシさん、本日は好調そうです♪

まずは剣殺陣からスタートしました。

最近定番化した片足ジャンプと站椿をやってから摺り足の前進後退。

摺り足は、剣殺陣の完成度に直結する練習だと思うので欠かせませんね。

続いて木刀での素振りは、真っ向と袈裟の2種類。

刀を振る身体を作る為には何回も刀を振るのが一番、と考えています。

久しぶりに合わせもやりました。

2人で向かい合って顔の前で刀を合わせる練習です。

以前、ショーの先輩である北斗氏に

『みんな剣先の位置が高いよ』

と指摘を受けた事があります。

本来は顔の高さにあるべき剣先が頭より上に出ている、そんなメンバーがけっこういたのです。

これは『自分の刀を打ち込む事』よりも、『相手の刀を受ける事』に意識が向かってしまった結果だと思います。

常に斬りにいく気持ちを持っていないと、段取りだけのつまらない立ち回りになってしまいますから注意が必要ですね。


続けて、合わせた後に相手の刀をはじく練習。

合わせた瞬間に刀を返してはじくのですが、慣れるまではフォームをキメるのが難しいようです。

形としてカッコ良く、なおかつ次の動作にスムーズに移行出来るようにしなければなりません。

初心者の方には、ゆっくりゆっくりやりながら自分の動きの癖を見極め、自分に合った形を見つけてほしいですね。

余談ですが、僕が新人の頃、ある先輩が

『お前は形を気にしすぎて動きが遅い!

形はめちゃくちゃでいいから、とにかく速く動いて練習しろ!』

と指導してくれました。

『ヒーローアクションは形を気にするべきだ』

との理念を持っていた僕は例によってそのアドバイスを実行しませんでしたが。


今になって考えたら、形を気にせずスピードを上げる練習も必要だと思います。

ただしそれは、

『スピードは遅くてもいいから形を気にする練習』

と交互にやるべきかと。

色んな指導法はあるでしょうが、僕は

『交互にやらせて後々融合させる』

方法で指導したいと思います。

合わせからのはじきが終わったら刀を使った立ち回りです。

今回はシライシさんにシン(主役)の動きを覚えてもらいました。

覚えてもらったのは、僕が新人の頃に見て感動したTさん(他社の大先輩)の立ち回りです。

この立ち回りはビデオで何回も何回も見て勝手にパクらせていただきました。

Tさんゴメンナサイ。

けっこう長い立ち回りなので、覚えてもらったのは前半を少しだけ。

実際の立ち回りでは、基本とは違う動きや特殊な動きが出てきます(逆の足を踏み込んで斬ったり)。

それはすなわち応用という事なんですが、きちんとした基本が身についてからでないと応用をやらせる事は出来ません。

最初に応用(実践)で技術を身に付けた人は

『自分が動きやすいクセ』

で動く傾向があります。

一度そうなった人にきちんと基本を覚えてもらおうとしても、なかなか熱心に取り組んではもらえません。

自分のクセを封じられ、形を厳しく決められた基本は非常に窮屈に感じるようなのです。

『こんな窮屈で地味な練習をしたくない!』

という思いから、

『基本は実践では役に立たない!』

という言い訳が生まれ、

『自分は今まで通りの動きの方がやりやすいんだ!』

という結論に至るみたいです。

そんな人を今まで何人も見てきました。

では、実践で使いづらい基本技を何故練習しなければいけないのかを説明しましょう。

基本とは何なのか、
それは『応用の基盤』となるものです。

立ち回りとは何なのか、
それは『演技』です。

演技とは、ある人物(キャラクター)の感情を表現する事です。

つまり役柄によって表現(立ち回りの動き)は変わってくるのです。

同じ技でも、力が強い者と弱い者では動きが違ってくる。

男と女でも違う。

戦いに慣れた者と慣れてない者でも違う。

優しい者と非情な者でも違う。

その違いを出すのが『応用』です。

きちんとした基本が身に付いていなければ、役柄に応じた応用は出来ないでしょう。

基本が出来ていない人は、どんな役を演っても結局同じ動きなんです。

それでは重要な役は出来ませんし、人に指導する事も出来ません。

なので、せめて武装のメンバー、武装殺陣教室の生徒さんにはしっかりした基本を覚えてもらいたいと思っています。


話が完全に飛びました。

要するに、シライシさんに立ち回りをやらせたのは、それに応じた段階に至ったからだと言いたかったんです。
2011-06-09(Thu)

ご無沙汰の

本日は警備を終えた後、久しぶりにテレビのロケのお仕事でした。

出番はほんの少しなんですけどね。

一体どんな出来だったんだろ。

オンエアが楽しみなような怖いような。

放送日が近付いたら告知するので、福岡の方は観て下さいね♪


…で、終了したので大橋で待機してます。

夜は殺陣の練習です。
2011-06-09(Thu)

アクションへの道(201)

僕は両リーダーに必死で話しました。

まず個人的に、ずっとやってきた役を完成させたい事。

アクションメインで入ってる自分がいい演技を見せる事で、アクションとメルヘンの掛け橋になりたい事。

メルヘンの地位を向上させたいと思っている事。

その為に、メルヘン練習に参加した事のないS君に入って欲しくない事。

そういう気持ちの全てを言葉を尽くして説明しました。

しかし結局、僕の願いは受け入れられませんでした。

『そうは言っても人手不足で、内野さんにはアクションに入ってもらわなきゃ困るんですよ』


この時、僕は事務所で、後輩達の前で涙を抑える事が出来ませんでした。

これだけ頑張って、
これだけ考えて、
これだけ頼んでも分かってもらえないのか。

これまでアクション練習もメルヘン練習も頑張ってきた結果がこれなのか。

俺が一生懸命にメルヘンの事を考えていても、
それでもメルヘンリーダーは喜んでS君を入れようとするのか。

アクション練習もメルヘン練習も頑張れば役の幅を広げられると思っていたのに、俺はリーダーに都合良く使われるアクターに成り下がっていたのか。

僕は、今までのアクター人生を全否定されたと思いました。

自分の努力は認めてもらえなかった。

実力は認めてもらえなかった。

同期のS君に負けたくなくて色んな事を頑張ったけど、頑張った俺より何もしてこなかったS君の方が歓迎されるんだ。

僕は急に周りの人達が恐くなりました。

そうか、
頑張って認められてると思っていたのは全部勘違いで、本当はみんな俺を馬鹿にしていたんだ。

そんな激しい被害妄想に襲われたのです。

僕は後輩達が怖くなり、
涙と震えが止まらなくなり、
事務所の机の下に潜り込みました。

『もー、内野さん!仕方ないんだから駄々こねないで下さいよ!』

リーダー達が言います。

駄々をこねたいワケじゃない。

怖いんだ。

君達が怖いんだよ。


日曜日、僕はアクションの現場にいました。

本当はやる気なんて起きない。

でもそれじゃお客さんにもメンバーにも申し訳ないじゃないか。

一旦全部忘れよう。

現場ではショーを楽しめばいい。

そう自分に言い聞かせていた僕の視界に信じられないものが映りました。

それは、客席で僕達のショーを観ているアクションリーダーの姿でした。

アクションリーダーは現場に入らず、仲のいいベテランメンバーと2人でショーを観に来ていたのです。

僕はショーの後で彼に言いました。

『お前!どうしても人が足りんって言って俺をこの班に入れたんやなかったんか!
お前ら2人が休まんとけば俺はメルヘンに入れたやないか!』

食ってかかる僕にリーダーは飄々と言いました。

『そんなにメルヘンに入りたかったんですか。それならそうと言ってくれれば自分がこの班に入ったのに』

僕はカッとしました。

『頼むから入れてくれってあんなに頼んだやないか!!
演技を完成させたいからって!
真面目に練習すれば上手くなるって所を後輩達に見せたいからって!
メルヘンの地位と意識を向上させたいからって!
何度も何度も頭下げて泣いて頼んだやないか!!』

僕は怒り心頭で詰め寄りました。

これに対し、アクションリーダーは何て答えたと思います?


『メルヘンには女の子がいっぱいいるから入りたいだけだと思ってましたよ』




…そうなんです。

彼が僕を無理矢理アクションに入れたのは、こーゆー風に考えていたからだったんです。

所詮は女目当てでメルヘン練習に参加してると思われていたんです。


メルヘン練習に来もしないお前に何が分かるんだ!!


ここでアクションリーダーに対する信頼は全て砕け散りました。


そして、あれだけ一緒に頑張ってきたのに僕の気持ちを分かってくれなかったメルヘンリーダーに対する信頼もなくなりました。


弱っちい僕の心は完全に折れてしまったのです。
2011-06-08(Wed)

小説・さやか見参!2(95)

ざざざざざざっ

早朝の山中に荒々しい音が響いた。

ここは一角衆の砦よりもさらに東、

つまり、さやかのいる山吹の里から遥かに離れた場所だ。

峰の連なった大きな山は現在でも麓の人々の信仰の対象となっている。

かつて異国より渡ってきた修験者が開山したという伝説が残っているらしい。

その霊場から随分と離れた斜面を、紅い塊が滑り落ちていた。

ざざざざざざっ

柔らかく湿った落葉の上を紅い塊が進む。

やがて斜面が途切れた。

塊は小さな崖で一度跳ねて、四尺から五尺ほどの距離を落ちていった。

回転しながら落下した塊は、灰色に濁った沼のほとりに静かに着地する。

そして、

ゆっくりと、

塊が顔を上げた。

それは紅い甲冑と紅い装束をつけた人間であった。

紅い覆面と紅い鉢金の間から覗く目は、どうやら男のそれである。

全身に紅をまとった男は片膝をついたまま、

『ふぅ』

とため息をついた。

艶をつけたその声色は明らかに嘘臭い。

周りには誰もいないというのに色男を演出しているのだ。

自意識過剰な男のようである。

不自然な声は続いた。

『どうやらここにはないようですね』

その声が終わるか終わらないかの瞬間、目の前の沼が激しい水飛沫をあげ、

『ぶはぁっ!!』

と大声を出しながら赤い塊が飛び出してきた。

片膝をついたまま自分に酔い痴れていた紅い男は驚いてのけぞった。

『どわあああっ!!』

紅い男の前には、沼から飛び出したばかりの赤い男がびしょ濡れで立っていた。

赤い装束、赤い覆面、赤い甲冑に鉢金、
全体的には紅い男に似ているが、要所要所が微妙に違う。

びしょ濡れの赤い男は、目の前で腰を抜かしている紅い男に気付いて声を発した。

『…兄者?』

紅い男はへたりこんだまま怒声をあげた。

『あ…あんたねぇ!兄者?じゃないわよ!いきなり飛び出してきたらびっくりするじゃないのっ!!』

『そいつぁ悪かったよ。でも兄者がここに来てるなんて意外過ぎるぜぇ』

『こっちだってあんたがいるなんて予想外だわよ!』

『ぷっ、相変わらず感情が高ぶると女みたいな口調になるんだなぁ。治した方がいいぜぇ、気持ち悪いから』

その言葉を聞いて紅い男ははっと我に返り、立ち上がって姿勢を正した。

『そんな事は言われなくても分かっています。それよりお前こそ気をつけなさい。あのように突然飛び出して、敵が待ち構えていたらどうするのです』

『そんなこたぁ心配いらないぜぇ。手練れの気配がありゃあ俺だって気付くからさ』

『むむ?わたくしはここにいましたが?』

『いたねぇ』

『わたくしから手練れの気配は感じられなかった、と言う事ですか?』

『あー…まー…そう…かな…』

それを聞いて紅い男は腰の刀に手をかけた。

『あんたっ!ずいぶん人を馬鹿にしてくれるじゃないのっ!実の弟とはいえ許さないわよ!』

素早く抜刀した紅い男は、突如背中に落下してきた朱い塊に押しつぶされた。

『ぐえっっ!!』

蛙がつぶされたような声をあげた紅い男の背中で、朱い塊が口を開いた。

『にいちゃん達!?』

声が幼い。

朱い装束に朱い覆面、朱い甲冑と鉢金を身に付けた少年のようである。

『にいちゃん達、どうしてここにいるの?』

びしょ濡れの赤い男が答える。

『お前こそなんでここにいるんだよ。確か別の方角に向かったはずだぜぇ』

『うん、北の鉱山に向かってたんだけど途中でこの山の噂を聞いてね、こっちの方が確率高いかなぁって行き先を変更したんだ』

『相変わらず自由な奴だぜぇ』

そう言って赤い男と朱い少年は無邪気に笑った。

その足の下では紅い男が苦しそうに

『と、灯火丸(ともしびまる)、いいかげんに背中から降りなさい…』

と呻き声をあげている。

灯火丸と呼ばれた少年は

『あっ、にいちゃんごめんなさい』

と兄の上から飛び下りた。
紅い男、赤い男、朱い少年、

まったく緊迫感のない三人組である。
2011-06-08(Wed)

アクションへの道(200)

おぉっ、アクションへの道も200回!

こんなネガティブなエピソードで200回を迎えて良かったのかしら。

まぁ仕方ないですね。


引き続き2002年の話。

あるメルヘンの現場の話がありました。

通常なら1つの現場で1つのショーが行なわれるのですが、そのイベントでは同日に

『女の子向けメルヘンショー』
『男の子向けメルヘンショー』

の2つが行なわれるという事でした。

その話を聞いた僕は喜びました。


僕は昨年からこの

『男の子向けメルヘンショー』

で悪役をずっと演じさせてもらっていて、

『もう一度チャンスがあれば自分の演技を完成させられる!』

と考えていたのです。

しかし、キャラクターショーというのは、テレビ放映が終わればショーも終わってしまいます。

時期的に

『あぁ…もう完成させる機会はないかもな…』

と諦めかけていた時にこの現場の話が出たんです。

だから僕は喜んだんです。

僕はメルヘンリーダーにお願いしました。

『今回も是非俺を使ってくれ!』

メルヘンリーダーは当然とばかりにOKをくれました。

しかしそこでアクションリーダーが待ったをかけたのです。

『その日はアクションも忙しいんだから内野さんはアクションに入ってもらわなきゃ困る』


はぁーっ?

いつも俺抜きでやってんじゃん!

お気に入りを集めてやってんじゃん!

何でこんな時だけそんな事言うんだぁ?

『いや、俺はメルヘンに入るよ。自分の演技を完成させたいし。こーゆー時の為に毎週メルヘン練習に参加してるんだし』

アクションリーダーは食い下がります。

曰く、

・本当に人が足りない

・チームリーダーが自分の言う事を聞かずに天狗になってるから同じ班に入って指導してやってほしい

って事でした。

だからぁ、それはリーダーが直々に説教しろって!

ここからアクションリーダーとメルヘンリーダーの話し合いが始まりました。

ここで2人は

『Sさんは入れないか!?』

と言い出しました。

『Sさん』とは、僕の同期の『S君』の事です。

先日僕が顔面にキックを入れてしまったS君です。

『そうだ!Sさんがいる!』

リーダー2人のテンションが上がります。

さっそく2人はS君の所へ交渉に向かいました。

その結果…

S君がメルヘンに、
僕がアクションに入る事になりました。


なんでぇっ!??

『いや、Sさんはスケジュール的にメルヘンの方しかリハーサルに出れないみたいで』


…Sめ、嘘つきやがったな。

Sはこの時期、その天狗になってるチームリーダーが嫌いだったのです(彼は人の好き嫌いが激しいのです)。

なのでスケジュールを理由にアクションを断ったのでしょう。

無職のS君がヒマな事は僕が知っている。

メルヘンリーダーは

『Sさんがメルヘンに入ってくれる!』

とテンションが上がっていましたが、僕は納得がいきませんでした。

S君がすごい事は分かる。

おそらくメルヘンに入ってもすごい演技でメンバーを魅了するでしょう。

しかし、S君はキャラクターショーの世界に入ってから、メルヘン練習には一切参加しなかったのです。

これまでに何度か説明してきた

『メルヘンでの演技が恥ずかしい』

『だからメルヘンを避ける』

『メルヘンを避けている自分を正当化する為にメルヘンを貶める』

S君はその代表のような人だったのです。

『メルヘン練習に参加する男は女目当て』

そう言ってる1人だったのです。

そんな彼がメルヘンに入って

『Sさんすごい!』

ってなったなら、メルヘンの立場はどうなってしまうんでしょう?

『練習なんてやらなくても、すごい人はすごい、上手い人は上手い』

って事になったなら。

『メルヘン練習なんて役に立たない』

そう言ってる奴をメルヘンメンバーが尊敬してしまったなら。

それは僕が願う

『メルヘンの向上』

からは逆行する事になる、と思ったのです。
2011-06-07(Tue)

アクションへの道(199)

アクションリーダーのやり方で僕と合わないと思った事の2つ目、

練習で、例えば立ち回りをやるとします。

時間的に全員はやれないので3人ぐらいを選んでやらせたりするんですが、僕ら先輩の立場からすると、それは若手にやってほしいワケです。

もちろん自分だってやりたいのですが、成長の機会は出来るだけ若手に譲りたいという気持ちがあるのです。

『じゃあ3人に立ち回りをやってもらうけど、やりたい人!』

と言われても、後輩の様子を見たりなんかして、ベテランとしては(自分で言うな)なかなか手を挙げられなかったんです。

『内野さん、先輩とか後輩とか関係なくどんどん前に出て下さい。若手にも競争心を持ってほしいんです』

リーダーはそう言いました。

その考えは非常によく分かりました。

『やりたい奴!』

と言われた際、ホントはやりたいけど挙手出来ないのか、ホントにやりたくないから挙手しないのか分かりませんが、若手が引っ込み思案になってしまう事が多かったからです。

リーダーは若手メンバーに

『上手くなりたかったらどんどん前に出ろ!』

と伝えたかったんですね。

それは分かったんですが、やはり引っ掛かる部分がありました。

『先輩と若手を張り合わせるのがベストなのか?』

と思ったんです。

『若手同士を張り合わせる方法を考えた方がいいんじゃないの?』

と思ったんです。

もし自分が若手だったら、と考えた際、

びびり体質な僕は、先輩が前に出たら譲っちゃうだろうな、

と思ったんです。

だとしたら、引っ込み思案な若手達は、ますます前に出れなくなるだろうなと思ったんです。


3つ目はキャスティングに関してです。

キャラクターショーの現場は色々です。

屋外、屋内、ステージの有る無し、近くか遠くか、
通常ショー、ミニショー、スペシャルショー、

時期によっては昨年のキャラクターショーを演じる事もあります。

もちろん優劣はないですし、どの現場にも全力で取り組む事に変わりはありません。

しかし、若い時はやはりテンションが左右される事もあるんですね。

狭いステージよりは広いステージ、

昨年のキャラクターよりは今年のキャラクター、

通常ショーよりはスペシャルショーの方がテンションが上がったりもするのです。

僕が気になったのは、テンションが上がる現場に必ずリーダーが入っていた事、
そしてリーダーの周りはリーダーのお気に入りで固められていた事です。

お気に入りじゃないメンバーはまとめてテンションが上がらない現場に入れられていました。

※現場によってテンションが変わるのはおかしい、と思います。
それは批判的に見ていただいてかまいませんので、
『若い頃はそんな風に思う事もある』
とだけご理解下さい。


それは僕から見れば明らかに不公平なキャスティングで、キャスティング権を持つ者の傲慢を感じたのです。

技術が足りないお気に入りを使う時は

『こいつは下手だけど真面目に練習に来て頑張ってるから』

と言う。

練習に来てないお気に入りを使う時は

『練習には来れてないけど技術があるから周りの刺激になる』

と言う。


なんだって言い様によっては正当化出来るんです。

『じゃあ何で毎週練習に来て頑張ってて技術がある俺は入ってないの?』

と訊くと

『若手にチャンスをやりたいんですよ』

とか、

『そっちの班のチームリーダーが頼りないんで内野さんに喝を入れてほしいんですよ』

とか言う。

『頼りないメンバーに喝を入れるんならリーダーが直々にやればいいんじゃない?』

と言うと

『いや~、あいつは僕の言う事聞かないんですよ~。内野さんなら先輩だから…』

なんて言ってくる。

本当に、自分がやりたい事をやる為に無理矢理理由をつけてるようにしか感じなかったんですよ、当時の僕は。

こうしてどんどん不満がたまっていって、爆発寸前だった頃、とある出来事がありました。

それは僕にとっては、大きな大きな、かなり大きな出来事でした。
プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

現在は関西コレクションエンターテイメント福岡校さんでのアクションレッスン講師もやらせてもらってます。

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