2011-01-31(Mon)

小説・さやか見参!2(73)

さやかと心太郎はお互いの目を見て黙っていた。

何か言いたいが言葉にならない心太郎。

それを見つめるさやかは穏やかな表情だ。

『心太郎、そろそろ準備するわよ』

そう言われて心太郎は我に返った。

『…あ、ハイっシュ…』

洞窟の外は夜の深さで満ちている。

二人が話し始めてからけっこうな時間が経っているらしい。

さやかはいつものように髪を左右で結び始めた。

『私だって本当は死にたくないわよ。生きていたいわよ。…でも、生きていこうと思ったら、死ぬ事を選ぶしかなくなっちゃうのよ。…って言ったって分かんないよね』

口調は軽い。
普段通りのさやかである。

『死ぬほど辛い事があったらさ、生きていけないじゃん?だから生きていく為にその辛い事をなくそうとするでしょ?…そしたらね、その死ぬほど辛い事っていうのが、自分が生きてる事だったりするのよ』

心太郎は頭巾を巻きながら黙って聞いている。

さやかも頭巾を巻く。

『そしたらさ、生きる為には死ぬしかない、みたいな変な事になっちゃう。…おかしいよね』

『なんだか…難しいっシュね…』

『でも安心して。私はまだまだ死なない。お兄ちゃんのかたきを討つまでは死にたくないから』

そう言って鉢金を付ける。

『それにね、お兄ちゃんと約束したんだ。最後まで戦って死ぬんだって。話した事あるよね?』

確かに心太郎は何度もその話をさやかから聞いている。

何かを変えようとする者が、最後の最後まで精一杯に戦い続けたなら、命を落とすまで戦ったなら、たとえわずかでも必ず何かが変わるはず、という話だ。

これは山吹たけるの信念であり、さやかはそれを受け継ぐ約束をしたのだという。

『だからね、私は戦って死にたいの。お兄ちゃんのかたきを倒したら、戦って死ぬって決めてるの』

明るい口調でそういいながら刀を背負うさやかに心太郎は言った。

『それは…さやか殿、間違ってるっシュ』

『え?』

『たける殿は、世界を変える為に戦って死ねって言ったはずっシュ。でもさやか殿は死ぬ為に戦おうとしてるっシュ。それじゃ目的と手段が入れ替わってしまってるじゃないっシュか』

心太郎は珍しく憮然とした表情で言った。

憤っているらしい。

『さやか殿にはたける殿の気持ちなんて伝わってないっシュね。そんなんで戦ったって世の中は何も変わらないし誰も喜ばないっシュ』

『心太郎…』

『たける殿を失って、死ぬほど辛い気持ちは分かるっシュ。それで死にたくなっても仕方ないっシュ。でも、そのせいでたける殿の気持ちを見失うなんて本末転倒っシュ』

心太郎は顔を背けたまま刀を背負った。そして

『なんだかたける殿が可哀想っシュ』

と吐き捨てると洞窟を出て行った。

『心太郎!待って!』

さやかは追いかけようとしたが足が動かなかった。

心太郎の言う事はもっともだ。

さやかだって理解している。

だがやはり、死にたい気持ちと死にたくない気持ちの狭間で自分を見失っているのだ。

十年。

たけるが死んで十年、その境界で耐え続けてきた。

さやかはすでに『生きていく』という事が分からなくなっている。

今、そしてこれからをどうしていいか分からないまま十年、自分を騙しながら必死に生きてきたのだ。

さやかは暗い洞窟でぺたんと崩れ落ち、

『…助けて…心太郎、助けて…』

と涙を流した。

底の見えない暗闇でもがいている十五才の少女、

これが本当のさやかの姿だった。
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2011-01-31(Mon)

ハイリスク・ハイリターン(5)

『第三者の勘違い』とはすなわち、

『立場の違いを把握しているか否か』

という事です。

例えば、ある組織の運営に関して、『運営の責任者』と『その下で働くスタッフ』とでは立場が全く違うという事です。

当たり前じゃないか!
そんな事は分かってるよ!

と思う方も多いでしょう。

では、『立場が違えば考え方の基盤が変わる』って事についてはどうでしょうか?

現場で動くスタッフは当然ながら現場を第一に考えます。

それは普通の事で、もちろん正しい事です。

現場を善くする為に色んなアイデアが浮かぶ事でしょう。

しかし運営責任者はなかなか動かない。

『こうしたらもっと善くなるのに、上はどうしてやらないんだ!?』

『上の奴は現場の状況が分かってないんだ!』

そういった不満が溜まると思います。

古代中国に伝わることわざでは、これを

『事件は会議室で起きるにあらず。現場で起きるものなり』

と言っています(嘘)。

スタッフは現場を善くする為に、自分達が考えた沢山のアイデアを責任者に伝えます。

しかし責任者はなかなか動こうとしません。

スタッフのイライラは爆発するでしょう。

『自分達がこんなに色んな案を出してるのに、なんでやろうとしないんだ!?』

…さて、

運営責任者はなぜスタッフのアイデアを実行しようとしないのでしょう?
2011-01-30(Sun)

ネコは丸くなる


我が家のネコは昼寝中。ヒーターを独占されてます〓
2011-01-30(Sun)

小説・さやか見参!2(72)

さやかの告白に心太郎は動揺した。

実の所、心太郎も薄々そんな気はしていたのである。

しかし実際にその言葉を聞くと心が揺れた。

『死にたいって…
死にたがる忍者なんて聞いた事ないっシュよ』

わざと明るく言ってみる。

冗談で済むならそれに越した事はない。

しかし、さやかは落ち着いた声でまっすぐに答えた。

『死にたいわよ。ずっと。お兄ちゃんが死んでから十年、死にたいと思わなかった日はないわ』

『さやか殿…』

『目を閉じるとね、お兄ちゃんの顔が浮かぶの。
真剣に修行してる時の顔、泣いてる私をなぐさめてくれてる顔、楽しそうに笑ってる顔…
色んな顔が浮かんでね、目をつむってるのが辛いの』

心太郎は何と言うべきか分からず、ただ悲愴な表情で黙っている。

『そしてね、お兄ちゃんの声が耳元で聞こえるの。…さやか、って。
さやかは偉いな、さやか頑張ってるな、って、優しい声が聞こえるのよ』

さやかは知らないが、かつて兄、たけるはこれと全く同じ事を親友の雷牙に語っていた。

もしもさやかが命を落としたならば、その顔や声、想い出に取り憑かれてまともに生きてはいけないだろう、と。


『ねぇ心太郎、私の頭の中はお兄ちゃんでいっぱいなのに、そのお兄ちゃんはもういないの。私は…どうしたらいいと思う?』

心太郎はさやかの脆い心中を目の当たりにして言葉に詰まった。

『あ…おいらは…何て言っていいか分からないけど…でも…
でも、死んじゃいけないと思うっシュ…』

『どうして?』

『どうしてって…』

『生きているのが辛くても死んじゃいけないの?どうして?』

『だって…
さやか殿が死んだら、頭領だって、十二組のみんなだって、…おいらだって悲しむっシュ』

『私は…みんなを悲しませない為に生きていくの…?

…私にとって、お兄ちゃんの存在が世界の全てだった。
でも…

お兄ちゃんが死んで、私の心は死んでしまった。生きる世界もなくなってしまった。
…心も世界も失って、それでもみんなの為に生きていかなくちゃならないの!?』

『みんなの為って言うか…
人が命を授かって生まれてきたのはそれだけで奇跡、って聞いた事があるっシュ。だから、生まれてきたなら頑張って生きるべきって』

何とかさやかを納得させようと心太郎は必死で言葉を探している。

だがその言葉も今のさやかには簡単にかき消されてしまう。

さやかは上半身を起こして、涙をいっぱいに溜めた瞳で心太郎を睨んだ。

『せっかく生まれたんだから苦しくても生きろって事?!生きる事は義務じゃない!私の権利よ!生きる権利があるんなら死ぬ権利だってあるはずだわ!』

心太郎も身体を起こし、さやかを睨み返す。

『分かんないっシュ!おいら何て言うべきか分かんないけど、ただ悲しいっシュ!悲しくて悔しいっシュ!』

二人はしばし厳しい視線を交わしていたが、不意にさやかの表情が穏やかになった。

『…ねぇ心太郎、あんたは今、何の為に生きてるの?』

意外な質問に心太郎の怒気が萎えた。

『えっ?…おいら…』

少しだけ考えてから

『おいら、さやか殿を守る為に生きてるっシュ』

と、きっぱり言った。

『そう。ありがと。…ねぇ、もし私を守りきれなかったらどうする?』

『え?…どういう事っシュか…?』

『あんたが熱出して寝てる間に私が敵に教われて殺されてたら、心太郎はどうした?』

心太郎はさやかの瞳を見た。

穏やかに見えるが、それは深い虚無に支配されている。

『私だって無敵じゃないからさ。私より強い敵が何人も現われたら絶対敵わない。あんたが寝てる間に私が教われて、傷つけられて嬲り尽くされて、それで殺されちゃったら、あんた平気?』

『…そんなの…平気なわけないっシュよ!例え話でもそんなの聞きたくないっシュ!』

心太郎の言葉を遮ってさやかが淡々と語る。

『私はその間、苦しくて悔しくて、ずっとあんたを呼んでるの。心太郎!心太郎助けて!って。…でもあんたはここで熱にうなされてんの。その間に私は、心太郎…、心太郎…って助けを求めながら死んじゃうの』

『…もうやめてっシュ…』

『目が覚めて私を探しに出たあんたは無残に殺されてる私を見つけるの。頭領はきっと、

心太郎、おまえの責任ではない。あれの修行が足りなかったのだ

って言うと思う。誰もあんたを責めない。
ねぇ、そしたらあんたは平気な顔して生きていける?…自分の力じゃ助けられなかったかもしれない、でも、助けられたかもしれない。私がどうやって、どんな気持ちで死んだのか、もう知る事が出来ない。それでも平気で?』

『平気じゃないっシュってば!!』

心太郎が怒鳴った。

―残響―

二人を包む闇がかすかに震えた。
2011-01-29(Sat)

ハイリスク・ハイリターン(4)

リスクを背負う『当事者』と、
リスクを背負わない『第三者』。

『第三者』は『当事者』にとって必要不可欠な存在です。

しかし、

『当事者』のエリアに踏み込んでくる『第三者』には注意が必要なのです。

そんな時『第三者』は、自分が『第三者』である事を忘れている(または気付いていない)のです。

『自分は当事者と一緒に真剣に悩んでいるんだから、当事者と同じエリアにいるハズだ』

と思い込んでいるんです。
2011-01-28(Fri)

ハイリスク・ハイリターン(3)

物事の『当事者』にとって、『第三者』の存在って絶対に必要です。

励ましてくれたりアドバイスしてくれたり応援してくれたり、

それは第三者にしか出来ないからです。

第三者の存在は当事者にとって『心の栄養』になるのです。


しかし、敢えて意地悪な書き方をすると、

『励ましてくれたりアドバイスしてくれたり応援してくれたりする人は第三者』

だと言えるのです。
2011-01-28(Fri)

1月27日の練習

27日(木)は練習でした!

代表は19時に練習室入り。

着替えてから飲み物買ったりトイレ行ったりストレッチしてみたり。


最近の練習は

筋トレ+徒手(基本)+剣殺陣(基本)

の三部構成です。

ある程度動けるアクターにとって基本は退屈だったりもするんですが、今年は地力を付ける為に続けていきたいと思います。


仕事が終わってから参加予定の阿部さんは到着が20時過ぎると思うので、まずは独り筋トレ

武装の筋トレは初心者でも簡単に出来るように、

場所を取らず
道具を使わず
負荷を軽く

をモットーにしています。

でも、今回は試しにウエイトを使ってみました。。

ウエイト、と言っても水が入ったペットボトル。

1リットルを2本。

重さとしては大した事ないんですけどね。

使ってみたらけっこうキツかったです。

キツかったんですが、やっぱり代表としては他のメンバーの先を行かにゃいかんって意地が。


意地を張っても2リットル分なんですが(笑)

とりあえず40分ほどかけて筋トレを1セット終了させました。

休憩していると阿部さんが到着。

今度は2人で筋トレです。

先ほどと同じメニューで1セット。

バテながらも意外に楽しく出来てます。

少しずつ鍛えられてるんですかね。

次は手技の基本です。

正拳突き(中段+冗談)
手刀(横打ち+縦打ち)
裏拳(中段+上段)
攻撃を捌いてからの裏拳

殴り(A)
殴り(B)
移動しながらの殴り(A)

外受け
内受け
上段受け
下段受け

続いて足技。

膝上げ(3種)
蹴り上げ

前蹴り
回し蹴り
足刀


今年に入って、本当に
『基本の基本』
しかやってないから参加メンバーはフラストレーション溜まってるかも!…なんて不安を抱えて練習してます(笑)

休憩の後、木刀を持って剣殺陣の基本。

今回は摺り足を省きました。

その代わり、摺り足の動きを意識して素振りをやりました。

真っ向斬り
袈裟斬り
型(A)

受けの練習もやりました。

1人が本気で打ち込んで、もう1人が本気で受ける練習です。

柳受け
八双受け

蹲踞での剣合わせも。

以前はあんなにツラかったのに現在はけっこう平気。

やっぱり鍛えられてるのかな?

だとしたら嬉しいですね♪


最後は短い立ち回り。

僕も阿部さんもイメージ通りに動けなくて!

…ってか、イメージに身体がついてこない(笑)

これからも鍛え続けて必ずイメージに追いついてみせるぜ!

腹筋で締めて練習終了。

練習後の疲労感が心地良かったです。


阿部さんお疲れ様でした!
2011-01-28(Fri)

小説・さやか見参!2(71)

心太郎が目を覚ますと、隣にはさやかが眠っていた。

沼の向こうを調べて、心太郎が寝ている間に戻ってきたのだろう。

黙って出かけたのは心太郎が足手まといだからか、それともさやかの優しさか。

心太郎は洞窟の外を見た。

向かい合う岩壁しか見えないが、どうやら日が暮れたばかりのようだ。

祠に向かうまでまだ時間がある。

そう思いながら視線をさやかに移す。

さやかは相変わらず心太郎に忍び装束の背中を向けて寝息を立てていた。

暗闇では分かりにくいが、桜の隙間から青空が覗いているような、そんな色合いの忍び装束だ。

鍔に山吹紋が入った刀を手元に置いている。

『さやか殿…』

心太郎はさやかの長い髪を見ながら小さく声をかけた。

忍びとして動く際に着けている頭巾と鉢金をはずすとさやかの印象は変わる。

普段左右で結んでいる髪をほどくと更に印象が変わる。

凄腕のくのいちであるはずのさやかが、急に弱さや脆さを持つ女の子に見えるのだ。

『さやか殿…』

心太郎はもう一度声をかけた。

さやかは背中を向けたままで小さく答える。

『なに?何かあったの?』

『何もないっシュけど…』

『もう…何もないなら起こさないでくれる?』

『ごめんっシュ…でも…』

『でも、何よ』

『さやか殿はどうせ寝てないっシュから…』

少しだけ沈黙が流れた。

『…あぁ、さっきね、眠れなかったから少し祠の周りを調べてきたのよ』

『さっきだけの話じゃないっシュ…おいら…気付いてたっシュ…』

『…なによ?』

『おいらがさやか殿の弟子に付いて六年…おいら…さやか殿がまともに寝てる所なんて見た事ないっシュ…』

『…そんなの…あんたが寝てばっかりいるからでしょ?』

『そうかもしれないっシュけど…でも、六年も生活を共にしていて眠ってる姿を見た事ないなんて…眠った気配も感じないなんて、そんなのおかしいっシュよ…』

さやかの声が少しだけ大きくなる。

『あんたみたいな三流に私の気配が読めるわけないでしょ?』

『おいら…三流でも山吹の忍者っシュからね…。さやか殿はおいらを見くびってるから気配の消し方が甘くなってるっシュよ』

心太郎はいつもと変わらぬ口調だったが、正当な非難を受けた気がしてさやかは少し罪悪感を覚えた。

『…えぇ…そうよ。…あんたの言う通りよ。…私はあんたと出会ってからの六年…いいえ、この十年間、まともに眠った事なんてないわ』

先ほどの罪悪感ゆえか、珍しくさやかが本心を話した。

『うとうとしたりは時々あるけどね。それでも嫌な夢を見てすぐに目が覚めたりしちゃうし…』

『どれだけ眠らない修行を積んでても…それでも二週間ぐらいが限界だって言われてるのに…十年は無茶っシュよ…』

『仕方ないじゃない。…眠れないのよ…』

『ずっと?』

『ずっとよ。…もしかしたら、心が眠る事を拒否してるのかもしれないけど…』

『そんな…いくらさやか殿でもそれじゃ弱ってしまうっシュよ…』

『そうね。本当はもう弱り切ってるのかもしれない』

『無理してでも寝ないと死んじゃうっシュよ…』

『うん…』

短い返事の後、さやかはしばらく黙った。

そして、

『私は死にたいの。本当はね』

とつぶやいた。
2011-01-27(Thu)

西鉄電車に乗って

大橋まで行ってきまーす♪

練習してきまーす♪
2011-01-27(Thu)

ハイリスク・ハイリターン(2)

勢いで書き始めてみましたが、うかつな書き方をすると本意でない解釈をされそうで弱ってます。

もっと考えてから書き始めたら良かった。

何でこんな事を言い出したかというと、

『物事には当事者と第三者がいるなぁ』

と思ったから。

ここからが懸念している所なんですが、

『第三者』の立場を否定しているワケではありません!

というのを念頭に置いていただけたら助かります。


ある物事における『当事者』と『第三者』。

それを僕は

当事者…リスクを背負う者

第三者…リスクを背負わない者

だと考えています。
2011-01-27(Thu)

小説・さやか見参!2(70)

空が晴れ渡っている。

むき出しになった高陵山の岩肌は日光を受けて眩しく見える。

夜の景色とは正反対に神々しさすら感じるほどだ。

暗い洞窟の中にもかすかに光が差し込んで柔らかな明るさを作り出している。

そこではさやかと心太郎が寝る準備をしていた。

昼の内に睡眠を取って、夜が更けたら祠に向かう予定なのだ。

今夜には全て終わらせる。

さやかはそう決めていた。

鬼の正体を突き止めたらそのまま里に帰ろう。

帰りは寝ずに歩く事になるから今の内に心太郎を休ませておこう。

どうせまた『眠い』だの『休みたい』だの言うに決まっているが、甘やかさずに歩かせよう。

少しは成長してもらわなければ。

そんなさやかの心中も知らず、心太郎は

『良かった~!これだけ明るかったら安心して眠れるっシュ!…おいら、夜だったら怖くて眠れなかったっシュよ…いつ鬼が出るかもしれないし…』

と虎の毛皮を敷いた。

すでに横になっているさやかは

『体力を温存しとかなきゃいけないんだから。黙って寝なさい。病み上がりなんだし』

と言って背中を向けた。

心太郎はさやかに渡された解熱や鎮痛に効く丸薬を口に放り込んでから横になると、

『さやか殿も、たまにはゆっくり休んだ方がいいっシュよ』

と言って目を閉じた。

さやかの寝息に誘われるように心太郎もすぐに眠りに落ちた。

先ほどの丸薬には睡眠を促す成分が含まれていたのかもしれない。

心太郎が完全に寝入った気配を感じてさやかが身体を起こした。

眠っていなかったのだ。

気配を消して心太郎が寝付くのを待っていたのである。

さやかは祠に向かった。

昨日、底なし沼の向こう側を調べなかったのは失敗だった。

あの鬼が実体を持つのなら、沼の向こうから現われたのは間違いない。

底なしの泥地ゆえ人は通れぬと高を括って途中で探査をやめてしまった事が悔やまれる。

あの沼とて全ての者が渡れぬわけではない。

少なくとも自分は、
いや、
それなりの力量を持った忍びなら沈む事なく簡単に歩く事が出来るのだ。

そういった『特殊な能力』を持たない者が鬼の正体だと、さやかは勝手に思い込んでいたのだ。

『私もまだまだ未熟…』

祠に向かって走りながらさやかはつぶやいた。

兄なら、
山吹たけるなら、
そのような失敗はしないのに。

そう考えると気持ちが沈む。

未熟な己に絶望する。


実際にはたけるとて失敗する事があるのかもしれない。

しかしさやかの中での『完璧な兄』という偶像は、たけるの死によって揺るぎないものとなっていたのだ。

いつまでも兄を超えられない焦燥がさやかの心に深く刺さっている。

死者を追っても追いつけぬのに―

さやかはそんな事も分からぬほどに疲弊していた。

十年前のあの日から。
2011-01-26(Wed)

練習でした!

1月25日は練習してきました!

こないだも参加してくれた先輩の『なかぢぃ』と二人でした!

もしかしたら人がいっぱい来るかも、と思って『中練習室』を確保してたんですが(普段は小練習室)、そんな心配は無用だったみたいです。

ちょっと寂しい…

でもね、
十数年ぶりに再会した仲間とまた一緒に練習出来るなんてね、ホント嬉しくてありがたい事ですよ♪

今回も最初は筋トレから。

15種類ぐらいのメニューをやったかな?

上半身から下半身までまんべんなく…

(と言いながら、上腕二頭筋と広背筋はまだメニューが定まっていない)

続いては徒手の基本です。

【手技】

正拳突き→手刀→裏拳(3種)。

外受け→内受け→上段受け→下段受け。

殴り(2種)→移動しての殴り。

【足技】

膝上げ(3種)。

前蹴り→回し蹴り→足刀。

徒手の後は剣殺陣の基本メニューです。

摺り足(前進後退)。

摺り足+真っ向斬り(前進後退)。

素振り(真っ向斬り→袈裟斬り→斬り返し)。

型(2種)。

受け(柳→八双)。

応用として、柳受けから斬り込みに行く練習もやりました。

蹲踞での剣合わせの後、筋トレで締めて練習終了でした。

木刀を振り続けるのってけっこう筋力を使うんですよね(腕だけじゃなくて全身使うんですよ)。

なので、筋トレをみっちりやった後に木刀を振るのもちょっとツラいし、木刀を振った後に筋トレするのはまたキツいワケです。

でも、そうする事で剣を振る筋肉が鍛えられるのかなぁ~とか思ったり。



あ、これはあくまで経験者メニューで、初心者メニューは楽に出来るようになってますので、興味がある方は安心してお越し下さいませ♪


…ってなワケで、今週も楽しくみっちり練習出来ました♪

なかぢぃありがとう♪

お疲れ様でした!
2011-01-26(Wed)

ハイリスク・ハイリターン(1)

ハイリスク・ハイリターンって、

『利益も大きいけれど、損失が出る可能性も高い』

みたいな意味なんだろうけど、

『リスクを背負う覚悟がない者にはリターンを望む資格はない』

なんて解釈じゃ駄目だろうか?

この場合のリターンは必ずしも『利益』ではないんだけど。
2011-01-25(Tue)

電車に乗って

今から練習に行ってきます♪

なかぢぃと2人かな?
2011-01-25(Tue)

小説・さやか見参!2(69)

暗い山中をさやかと心太郎は音もなく走っている。

二人は万が一に備えて忍び装束に着替え、刀を背負っていた。

走りながら心太郎が辺りの様子をうかがう。

『静かっシュね…山吹の里とは大違いっシュ…』

『獣の声がしないのよ。ここは山吹と違って獣が生きる為の草木がないから』

じっさい高陵山にはまばらに樹々があるばかりで、それもほとんどは枯れかけていた。

心太郎の黒い装束はもちろんだが、さやかの桜色の装束も、この朽ちた世界では闇に染まっている。

祠に着いた。

心太郎は荒れた祠を見るとさやかの腕を掴んだ。

『この祠、ぼろぼろで怖いっシュ…いかにも鬼を祠ってるって感じっシュ…』

『昼間に見たら普通だったわよ』

さやかはそう言って冷たく手を払った。

『底なし沼はこっちよ』

さやかは進もうとしたが、心太郎は動かなかった。

『どうしたの?』

『さやか殿…明かり…点けてもいいっシュか?』

『はぁ!?そんなものなくたって見えるでしょ!?まさか見えな…』

心太郎は慌てて遮った。

『違うっシュ違うっシュ!ちゃんと見えてるっシュよ!でも明るい方が安心出来るって言うか気持ちの問題って言うか…』

『弱虫!あんたそれでも男なの?それでも忍者なの?それでも山吹の血が流れてんの!?それでも私の弟子なの!?
…もう…
勝手にすれば!?』

心太郎は半べそで明かりを灯した。

持ち手の付いた小さな皿に、蝋だか油だか分からぬ物がどろりと塗りつけてある。

石を打つと芯に火が移り、辺りを照らし出した。

先ほどの会話から分かるように、明かりなどなくても忍びならば周囲を見る事が出来る。

実際明かりを灯したところで見える景色は変わらない。

だが心太郎は何故か暗闇が怖かったのだ。

鬼の伝説を聞き、その祠を前にしているせいかもしれない。

桜色の装束が浮かび上がると心太郎はほっとした声を出した。

『やっぱり、さやか殿が見えると安心するっシュ』

『あんた…私を守るんじゃないの…?全然役に立たないじゃない。…父上はどうしてあんたみたいな駄目駄目三流忍者をお供に付けたのかしら…』

さやかは道中、何度もこの『何故』を繰り返していた。

『おいら頭領に呼ばれて直々に命じられたっシュよ。』

心太郎は山吹武双の声色を真似た。

『すまぬがさやかの為に命を張ってくれまいか。あやつを守れるのはおまえしかおらん。心太郎、頼むぞ』

言い終わった瞬間、心太郎は頭をぽかりと叩かれた。

『痛っ』

『嘘ついてんじゃないわよ。なんで父上があんたなんかに頼るのよ』

『嘘じゃないっシュよ!本当にそう言われたっシュ!』

『しかも私を守れるのがあんたしかいないですって?はんっ!悪い冗談だわ!』

吐き捨てるようにそう言って沼に進もうとしたさやかは急に足を止めた。

『…さやか殿…?どうしたっシュ?』

『何かいる…!』

『えぇっ!?』

二人は闇を凝視する。

全ての音が闇に吸収されてしまったかのような静寂。

長く、重たい時間が流れた。

気配を感じる事が出来ない心太郎は、さやかと闇を交互に見ていたが、突然

『あっ!』

と声をあげた。

沼の上に突如炎が、

鬼火のような青白い炎が浮かんだのだ。

そしてその炎は揺らぎながら、

ぎらぎらとした何かを照らし出した。

さやかがつぶやく。

『あれが…』

心太郎が裏返った声を出す。

『お、鬼ぃっ!?』

炎を照り返すそれは、人々が噂していた通りのものだった。

真っ赤な眼を持った四本角の生首。

宙に浮かぶ左腕にはたくさんの蛇のようなものが絡み付き、やはり炎を反射させて光っていた。

『噂は本当だったっシュ…鬼の首と腕が…出たっシュ…』

震えて動けない心太郎には見向きもせず、さやかは鬼に向かって駆けた。

『さやか殿!?』

己の重量を消して泥の表面を走る。

その軽さは足跡すら残らないほどだ。

しかし―

さやかがそこに辿り着く前に、炎と共に鬼は姿を消した。

辺りを見渡したが何者かがいた様子はない。

宙に現われ宙に消えたとしか思えなかった。

さやかは沼の上に立ち尽くした。

その表情は険しい。

『…心太郎!』

『は、はいっシュ!』

『明日の夜、もう一度ここに来るわよ』
2011-01-24(Mon)

小説・さやか見参!2(68)

『あ、さやか殿!』

祠から戻ると心太郎は目を覚ましていた。

『大丈夫だったっシュか?』

上半身を起こしていた心太郎が立ち上がろうとする。

『まだ休んでて。あんたこそ大丈夫なの?』

『今度こそ本当に大丈夫っシュ!…でも…お腹すいたっシュ…』

さやかは片膝を付いて心太郎に顔を寄せた。

『あんたねぇ。私は食事も摂らずに朝から走り回ってたんですけど!あんたはただ寝てただけでしょ!?』

『う…そう言われれば確かにそうっシュ…申し訳ないっシュ…』

うつむいた心太郎の額にさやかが掌を当てる。

『熱はだいぶん下がったみたいね。陽が完全に落ちたら一緒に行くわよ』

そう言って腰の袋から蛇肉の燻製を取り出し心太郎に渡した。

心太郎の顔がぱあっと明るくなる。

受け取った燻製を齧りながら

『それらしい所は見つかったっシュか?』

と訊くと、さやかは若干自信なさそうに

『うーん…怪しいのは多分この辺りかなぁって所はあったんだけど…』

と答えた。


先ほど鬼神の祠に手を合わせた後、さやかは更に奥に進んでみた。

何か手掛かりがあるとするならこの辺りしかないと思ったからだ。

少し進むと足下が岩から土に変わった。

足を踏み入れるとわずかに沈み込む。

かなり水分を含んでいるようだ。

構わずに歩を進めると、ますます深く沈んでいく。

さやかは用心して一旦岩場に戻った。

そして枯れた木の枝を拾うと、今度は身体の重量を消して湿った土の上にふわりと乗った。

不思議な事に、さやかは柔らかい土に沈む事なくみずすましの様にすいすいと進んだ。

そして半ば辺りで枝を泥中に刺してみる。

すると一尺はあろうかという枝は手元まで簡単に埋まり、底に当たる気配はなかった。

さやかは枝を抜いて数歩進み、また枝を刺した。

数ヶ所で試してみたがどこも同じ結果である。

忍びの術でも使えれば別だが、そうでない者がうかつに足を踏み入れればたちまち泥の底に飲み込まれてしまうだろう。

つまりこれは底なし沼なのだ。

大きく窪んだ場所に雨水や土砂が堆積して出来たのだろうか。

干上がっていないところを見ると、岩から水が染み出しているのかもしれない。

迂回して奥に進めないかと思ったが、左右を絶壁に切り立った岩山に挟まれていて足を着ける場所がない。
自分達のような忍びならともかく、これでは人は通れまい。

さやかは奥に進むのをやめた。

そうして他の場所を調べてから洞窟に戻ってきたのだ。

何かあるなら祠の辺りしかない。

いや、

祠の辺りしか思い当たらない、というのが正直な所であった。

そして、さやかと心太郎は日暮れを待って祠に向かう事になったのである。
2011-01-23(Sun)

小説・さやか見参!2(67)

高くなった太陽が少しずつ西に向かい始めた。

緑の少ない高陵山では陽の光を遮るものは少ない。

岩ばかりの殺風景に、日光を浴びた桜色の着物が映える。

山吹さやかは岩の上を跳ねるように山頂に向かっていた。

おそらく祠に続くと思われる道を、

道とも呼べないような、岩壁に挟まれた狭い隙間ではあるのだが、

それを発見したのだ。

どうやらこの山に人の気配はない。

ならば忍びの能力を駆使しても差し支えはあるまい。

さやかは風のように走り、獣のように跳ねた。

そしてようやく、鬼を祠ったと言われる祠に到着したのである。

場所さえ知れればさやかには何という事もなかったが、里の者達がここまで来るのは大変な重労働であったろう。

山を登り、岩を登り、道なき道を進まなければならないのだ。

神か鬼かは分からぬが、敬虔な信仰の対象だった、という事である。

それが今では、祠は荒れ、御神体も正体が分からぬほどに朽ちている。

麓の村に若者の姿はなく、さやかと心太郎は、やっとの思いで農作業に勤しむ年寄りばかりを見かけた。

あの老人達にここへ足を運べというのは酷だ。

鬼神が祠られなくなったのも時代の流れやもしれない。

さやかは祠にかかった砂や石をきれいに払い、そして手を合わせた。

ここに伝説通り鬼が祠られているとして―

さやかは鬼に同情していた。

ただの伝説だとは分かっている。

それでも、

鬼が一体何をしたと言うのか。

1人の娘を必死に愛しただけだ。

娘がそれを拒み、山の神にすがったのは仕方ない。

しかし、なぜ山の神が気を持たせるような条件を出したのか、それがさやかには分からない。

例え無理難題だったとしても、それを成せば娘をくれてやると言われれば鬼が必死になるのは分かりきった事ではないか。

事実、鬼はその条件を呑み、力の限り屋敷を築いたのだ。

神の予想を上回るほどの努力で。

おそらく鬼は、その屋敷で娘と睦まじく暮らす未来を夢見ていたに違いない。

どんなにつらくとも、それが心の支えになっていたはずだ。

しかし神はそれを裏切った。

自らが約束した条件にも関わらず、卑怯な手段で鬼を騙したのだ。

これが神の所業だろうか。

人さえ守れば鬼などどう扱ってもいいのか。

鬼に何の非がある?

鬼である事が非だと言うなら、生まれた事が大罪なのか。

鬼は、人を愛する事も許されぬのか。

鬼とはまるで―

感情を持つ事を許されぬ我々忍者のようではないか。

さやかは目を閉じ、手を合わせたままつぶやいた。

『山の神もその娘も、祟られて当然よ』

鬼などは存在せぬと分かっている。

だが、鬼と呼ばれ忌み嫌われる者はいるのだ。

さやかは、自分もその中にいるのだと認識していた。

鬼神を哀れむ気持ちは眷属に対する想いである。

その想いに鬼神が応えるように強い風が吹き、薄い雲が太陽を遮った。
2011-01-22(Sat)

アクションへの道(153)

これまでも何度か書いてきました、僕の弟の話です。

僕がショーを始めたのは一番下の弟が3歳の時。

なので弟は、戦隊物などに興味を持ち始める年齢にはすでに

『ヒーローの中身は人間』

という事を知っていた事になります。

…まぁ3歳なのでハッキリとした自覚はなかったでしょうけど。

それでも一般家庭の(?)子供達とは明らかにショーの見方が違いました。

(何度か書いたエピソードですが)

彼が6歳の時だったか、僕が出演しているショーのビデオを観ながら言いました。

『この戦闘員は本物?』

自分がショーに入っている事を弟に公言していた僕ですが、さすがに胸を張って

『にせものだよ!』

とは言えません。

戦闘員は本物だと答えました。

すると弟は

『でもイエローは兄ちゃんやろ?どうして兄ちゃんと本物の戦闘員が戦いよると?』

上手い説明が出来ずに僕が口ごもっていると。弟は『う~ん』と考えた末にこう言いました。

『そうか!チームが人手不足だから、本物の戦闘員に助っ人に来てもらったんだね!』

…この発言に、僕はかなりの衝撃を受けました。

彼の中で現実と虚構が入り交じって、(子供ながらに)自分が納得のいく答えを見出していたからです。


そして1997年。

僕は近所のホテルのクリスマスディナーショーに母と弟を連れて行きました。

後輩達の戦隊ショーがあったからです。

チケット代はけっこうかかりましたが、弟がショーを楽しんでくれている間に色々と観せてあげたかったのです。

この時、弟は10歳。

他の子供ならキャラクター物は卒業してる年齢かもしれませんが、彼はまだショーを楽しんでくれていました(兄がアクターを演っているというのが影響していたのかもしれませんが)。

ショーが終わって、僕は弟に『どうだった?』と訊きました。

弟は

『ピンクとイエローの声は逆が良かったね』

と答えました。

僕は『子供らしい答え』も聞きたかったのですが、彼ならではの『マニアックな答え』も期待していたので

『なるほどな~』

とうなずきました。


僕が弟に学んだ事の一つは、

『子供がショーを楽しんでいるからといって、純粋に全てを信じ切っているワケではない』

という事です。

もちろん少数派かもしれません。

でも、(子供にとって)例え本物でないとしても、キャラクターショーには子供達を喜ばせるパワーがあると思ったのです。


もちろん演る側は『本物と信じ込ませる』事を大前提として臨むべきです。

でも、観る側には観る側の心理がある。

ファスナーがあろうが顔が見えようが声が聞こえようが、それでも熱中して観てる子供がいるのです。

僕はそう考えて以来、

『テレビとショーは別物』

と、強く思うようになりました。


テレビと違ってショーは

『にせものだとバレる可能性』

がある。

そして

『にせものだとバレていても楽しませる力』

がある。


アクター側にも色んな意見があると思います。

でも僕は、『信じ切っている子供』だけを対象にしたショーよりも、『にせものだと知っている子供』も視野に入れたショーをした方が、幅が広がりそうな気がするんですよねぇ。
2011-01-22(Sat)

小説・さやか見参!2(66)

さやかが洞窟に戻ると、心太郎は虎の毛皮にくるまってすやすやと眠っていた。

寝返りを打ったせいか濡らした手拭いは地面に落ちている。

額に手を当てると、熱は若干下がっているようだ。

さやかは安堵のため息をついた。

手拭いを拾い、近くの水で洗ってから固く絞る。

どこかでわずかに湧いた水が流れて岩の窪みに流れこんでいるのだ。

さやかはそれを手ですくって飲んだ。

喉に染みる。

しかし山吹の水とは味が違うようだ。

こちらの方が若干飲みにくい。

緑の豊富な山吹の水と岩ばかりの高陵山では水の味まで違うのか。

鉱物の影響があるのかもしれない。

海の側でもあるし、鉱床がある可能性も考えられる。

そういえば…

さやかは思い出す。

ここへ来る途中、山の麓の目立たぬ集落で、製鉄所らしき建物を何軒か見た。

この付近で採れた鉱石を加工していたのだろうか。

しかし、さやかの見た所そこは使われぬようになって四年から五年は経っていた。

ならばもう採石は行なわれていないのかもしれない。

そんな事を考えながら洞窟に戻り、先ほど湿した手拭いを心太郎の額に乗せる。

心太郎は少しだけ反応したが目を覚ます事はなかった。

楽しい夢でも見ているのか、その寝顔は無防備に微笑んでいる。

『少しは緊張感を持ちなさいよ。駄目忍者』

さやかは小さな声で悪態を突いた。

しかしその声に邪気は感じられない。

身体からずれ落ちた毛皮をかけ直し、傍らに小さな花を置く。

途中で摘んだ白い花だ。

その茎に葉は一枚も付いていなかった。

薬学の知識を持つ謎の人物の仕業だろう。

本当に小さな花だが、薄暗い洞窟では白い花弁が輝いて見える。

もし自分がいない間に心太郎が目を覚ましても、これがあれば一度戻ってきた事が分かるだろう。

三流忍者は世話が焼ける…

さやかは何だか少しおかしくなって、微笑みながら洞窟を出た。

さっきはこの洞窟の西を調べた。

次は東だ。

さやかは人の通った痕跡を求めて再び走り出した。
2011-01-21(Fri)

1月20日、武装練習!

代表『よぉーし!それでは本日の練習を開始する!参加者、整列!番号!』

内野『イチ!』

代表『よぉーし!それでは出席を取るぞ!内野!』

内野『ハイ!』

代表『今回の参加はオマエ1人か…。しかし奇遇だな。実は俺の名字も内野なんだ』

内野『え!?代表も!?』

代表『そうだ。俺は内野武というんだ』


内野『僕の名前も武です!』

代表『そうか!本当に奇遇だな!じゃあ今日の練習はW内野武で頑張ろう!』

内野『分かりました!…でも本当に偶然って怖いな…これで代表が久留米出身だったらもっとすごいのに…』

代表『…え…?俺は久留米出身だぞ…』

内野『まさかそんな!…じゃあ学校は…』

代表『金丸小、江南中、久工大附属だ…おまえ、兄弟は…』

内野『5人兄弟の次男です…まさか…』

代表・内野『俺達、同一人物!?』



…はぁ…

どうでもいい文章だ…

何が言いたいかというと、

『20日の練習は代表1人でした』

って事と、

『今回は特に書く内容がないので余計な文章で水増しさせてね♪』

って事なのでした。



参加予定だったメンバーが急用で来れなくなったので、1人でがっつり筋トレメニューに取り組みました!

最近は筋トレが楽しくて!

とは言っても軽~い負荷でタラタラやってるんですけどね。


ストレッチの後、1時間半ぐらいかけて全身の筋トレ×2セット。

いくつか新しいメニューを加えたりしてみました。

新しいメニューは思った部位に効かなかったり、テンポや時間の調整が必要だったりするので、単独練習の時に試してみるのです。

いくつか課題が見つかったのでこれから研究です。


ここで少し休憩。


休憩で冷えた身体を上半身の筋トレで温めてから剣殺陣の基本です。

木刀を持って、摺り足や素振り、型をやりました。


最後は徒手の基本です。

突きや手刀、裏拳に受け等の手技に、各種の蹴り。

ここで練習場の閉館時間が迫ってきました。

最後に上半身の筋トレと、僕が『ボックス』と呼んでいるメニューで締め括りました。

ラストのボックスはキツかった~!



そんなこんなで特に書く事のない練習でした。


でも個人的には楽しかったです♪
2011-01-20(Thu)

小説・さやか見参!(65)

心太郎に丸薬を飲ませるとさやかはすぐに山中の捜索を始めた。

昼の間に鬼が現れそうな場所を絞ろう。

そして今晩には噂の正体を解き明かして早く里に帰ろう。

心太郎の体調を慮ってそう考えていたのだ。

そうだ。
まずは祠を探してみよう。
そこは鬼が祠られたと言われている場所である。
何か手掛かりがあるかもしれない。

さやかは登る事も下る事もせず山を取り巻くように走った。

神であれ鬼であれ祠られていたという事は祠る者がいたという事である。

ならば人が通っていた痕跡があるはずだ。

それが祠へ通じる道となるだろう。

もし祠に行き着かなかったとしても、人が動いた痕跡は重要な手掛かりになる。

さやかは岩が途切れている場所や、少しでも平らに拓かれたような場所を見つけては重点的に調べた。

前日は到着した時間が遅かった為に大まかにしか見ていなかったが、じっくり調べてみると新しい発見がある。

一番に気になったのは、意外に植物が自生していた事であった。

樹木は少ないが小さな草花はあちこちに姿を見せており、それが人の手で採取された形跡があった。

薬草の類だろうか。

それなりの知識があるさやかにも分からない植物だ。

おそらくこの岩盤と潮風が生み出したこの地域固有の薬草なのだろう。

だとしたら薬草を摘んだのはこの土地の者か。

薬草には葉を使う物、茎を使う物、根を使う物、花弁を使う物があるのだが、足下の植物からは必要な部分だけが採取されているようだ。

先端の花だけが切られている物、
葉が全て摘まれている物、
茎が必要な物は根だけを残して、
根が必要な物は文字通り『根こそぎ』採取されたのだろう。

人の入らぬ荒れ山かと思っていたが、かなり知識がある者が薬草を採りに来ているのだ。

地元の医者だろうか。

ならばその者が鬼の正体?

いや、鬼が現われるのは夜更けである。

薬草を摘みに来た医者が深夜に山歩きをする必要はない。

しかしこの山に人が分け入っている事は分かった。

とりあえず一旦心太郎の所に戻ろう。

『あの子を一人で残しておくのはやっぱり不安だわ』

そう思い、走り出そうとして足を止めた。

『薬草なら摘んでいこうかしら』

心太郎の回復に役立つかもしれない。

しかしすぐに思い直して来た道を走り始めた。

薬草の必要な部分は全て摘まれていたし、もし残っていたとしても何に効果があるのかさやかには分からないからだ。

鎮痛、解熱の丸薬はまだわずかに残っているからどうにか保つだろう。
2011-01-19(Wed)

1月18日の練習

18日は練習でした!

今回は『なかぢぃ』から参加の連絡がありました。

なかぢぃはキャラクターショー時代の仲間です。

年は同じですが先輩で、現役の頃はオールマイティーに役をこなすマルチアクターでした。

今は家庭を持ち、ショーから離れて久しいのですが…

そんな仲間が練習に来てくれるというのが嬉しいですよね♪


僕は19時に練習場に入りました。

なかぢぃは仕事が終わってからの参加なので到着までしばらくかかりそう。

軽くストレッチして、待っている間、筋トレする事に。

今年の武装練習は筋トレ重視!

腹、背中、肩、胸…

上半身メニューをとことん繰り返します。

途中、新しい筋トレメニューをいくつか思い付いて試してみるけど効果が低そうなので却下。

そうこうしているとなかぢぃ到着!

21時ぐらいだったかな?

ローカルヒーローフェスタを観に来てくれた時に立ち話はしたけど、しっかり会うのは何年ぶり?
12~3年ぶりかなぁ?

よーし、まずはとことん筋トレやるぞ~!

腹、胸、脛、背中、肩、ふくらはぎ、腕…

そして『腕立てキープ』。

最近は筋トレが楽しくなってきました♪

筋トレの後は、いつもの膝上げ。

『反動ナシVer.』
『反動アリVer.』

反動ナシはストレッチの為、
反動アリは蹴り技に移行する為のワンステップです。

身体が温まってから、木刀を腰にあてての摺り足。

慣れない動きなのでこれにはなかぢぃも苦戦してましたね。

僕も習ってすぐの頃はかなり苦戦しました。

次は摺り足しながら木刀の素振りです。

続いて摺り足ナシで素振り。

それから剣殺陣の型を2種類。

久しぶりに蹲踞での剣合わせもやりました。

そこからもう一度ストレッチの為に膝上げをしてから手技足技の基本へ。

足技は前蹴りと回し蹴り。

手技は正拳突き、手刀、外受け、内受け、上段受け、下段受けを連続で。

この後に少し時間があったので基本の続きをやるか立ち回りをやるか悩みましたが、せっかくなので(?)筋トレをやる事に。

腹、胸、背中、肩。

そして締めに極秘メニューその1『サイドステップ』。

色々やった後にサイドステップは効きますなぁ!

でも極秘メニューその2『ボックス』の方が効きますけどね。

今回もずいぶん身体をいじめる事が出来ました。

とは言え武装の筋トレはどれも負荷が軽いので、体力に合わせて出来るメニューばかりだと思いますが。


以上で練習終了。

なかぢぃが車で久留米まで送ってくれました。

遅い時間に遠くまで申し訳ない!
ホントありがとう!

久しぶりに色々話せて楽しかったよ♪

また一緒にショーをしようぜ!

なかぢぃお疲れ様でした!!
2011-01-19(Wed)

小説・さやか見参!2(64)

夜が明けると心太郎の体調はいくぶんか良くなっていた。

とは言え、まだ明らかに熱がある。

それでも心太郎は元気なふりをした。

『さやか殿のおかげで完全に復活したっシュよ!さぁ!鬼退治再開っシュ!!』

火照った顔の心太郎はどう見ても空元気だ。

『無理しないでいいわ。今日は一日休みましょ』

さやかがため息まじりにそう言うと心太郎はむきになった。

『無理なんてしてないっシュ!熱も下がったし、おいら全然元気っシュ!』

さやかはいきなり自分の額を心太郎の額にくっつけた。

心太郎は一瞬うろたえた。
さやかの額がひやりと心地いい。

その感覚が自分の発する熱の高さを再確認させる。

額をつけたまま、焦点も合わないぐらいの至近距離でさやかが詰問した。

『熱が下がったですって?どこが?』

『いや、あの…それは…』

心太郎はしどろもどろに言葉に詰まる。

さやかは心太郎から離れると、くるっと回って反対を向き、

『無理してまた倒れられたら困るのよ。もうあんた担いで歩くのは御免なの』

心太郎はうなだれた。

落ち込んでいる心太郎を、さやかは見飽きるほど見ている。

この6年間、さやかは事ある毎に心太郎をけなし、その度にうなだれた姿を見てきた。

これまで、それが心太郎の性分なのだと思っていた。

しかし今日は何故か、それは違うという気がする。

彼が忍びではなかったら。
修行も戦いもない環境で、他の子供達と野山で遊び回っていたら、もっと元気にのびのびしていたのではないか。

いや、例え忍びだったとしても、教育するのが自分でなかったなら。

兄のような素晴らしい忍びの下でなら、彼はまた違う一面を見せていたのではないか。

さやかは急に申し訳ないような気持ちになった。

しかし、口から出て来るのは相変わらず

『いじけないで。めんどくさいから』

という冷たい言葉だった。

『だから今日は一日おとなしくしてなさい。別に急ぎの調査じゃないんだから一日ぐらい延びたって構わないでしょ』

『でも…これ以上さやか殿に迷惑かけたくないっシュ…』

『あぁもう!…じゃあこうしましょ!あんたは日が暮れるまで身体を休める。夜になったら一緒に鬼を探す。どう?』

『う~ん…それなら…』

心太郎は渋々という顔をした。

まるで選択権を握っているようなその態度にさやかは少しいらっとしたが、受け流して続ける。

『その代わり、夜までは私が独りで動くわよ。いいわね?』

『えぇっ!?そんなの危ないっシュ!さやか殿に何かあったら…』

『う~る~さ~い~』

さやかはぐいっと顔を寄せて心太郎の言葉を遮った。

『何でもあんたの言う通りにはならないの。こうなったのは熱を出したあんたのせいなんだからね!』

『う…それを言われると反論出来ないっシュ…』

『心配なんかしてくれなくても大丈夫。…多分、鬼は夜まで出ないと思うわ。それに、そんなに遠くまでは行かないから。時々あんたの様子を見に戻らなくちゃいけないしね』

さやかはそう言って背中を向けた。

『さやか殿…』

『なに?』

不安げな問い掛けにも答えはそっけない。

『さやか殿…おいらの事…怒ってるっシュか…?』

心太郎がもじもじと訊くと、間髪を入れずさやかが大声を出した。

『怒ってるわよ!めちゃめちゃ怒ってるに決まってるでしょ!あんたが足を引っ張ってくれたお陰で私の予定は狂いっぱなしよ!本当ならとっくに鬼の正体を暴いて里に帰ってるはずだったのよ!もう!馬鹿忍者!駄目忍者!三流忍者!!』

罵声を一気にまくし立てると、深く呼吸した。

そして涙目の心太郎の顔を見て、落ち着いた声で、ゆっくりと言った。

『だから、これ以上迷惑をかけたくなかったら、日が暮れるまではおとなしく休んでて。…お願いだから…』

心太郎は、さやかが本気で心配している事を知って、こくんとうなずいた。
2011-01-18(Tue)

定番

このブログではいくつかの定番ネタがあります。

『アクションへの道』
『小説・さやか見参!』
『練習報告』
『現場報告』
『アクション(ショー)に関するあーだこーだ』
『日常の独り言』

こんな感じですかね。


このブログを読んで下さってる方は何が一番の目当てなんでしょうね?

ちょっと気になっただけですが。
2011-01-18(Tue)

アクションへの道(152)

1997年はエキストラのエピソードを書いちゃうと後は特にないんだよなぁ(笑)

忙しい時はショーに入ったりしたけど、

『OBの気持ち』

で、気楽~にやってたなぁ。

いま考えたら『現役』と『OB』でショーに対する取り組み方が変わるのもどうかと思うけど(お客さんには関係ない事ですもんね)、でも実際、

『一線引いた』

感覚はありました。

当然いいショーになるように頑張るんだけど、

『楽しくやりま~す』

みたいな。

まぁ第一線を後輩に譲ってOBになったワケだから、あまり前へ前へって感じになってもね…


前へ前へで後輩にプレッシャーかけるのもアリだったなって今は思いますけど(嫌われるだろうけど)。


忙しい時期だと『OB班』なんてのもありまして…

これはOBばかり集めて作ったチームの事なんですが…

メンバーが足りないと、ショーを退いて久しい大先輩方が駆り出される事があるんです。

ほとんどの大先輩は若手と面識がありません。

ショーのスタイルも世代で変化があります。

そんな大先輩方を現役チームにまんべんなく振り分けると、現役と先輩の双方が居心地悪~い現場になったりするんです。

…仲が悪いとかではないですよ。

見知らぬ大先輩に演出をつける後輩も気を使うし、先輩も現場を離れている自分がアドバイスするのは気が引けるし…

みたいな感じです。

若手社員の飲み会に部長が混じってしまった感じ、でしょうか(知らんけど)。

それならOBはOBで、現役は現役で固めた方がお互い上手くいくだろう、って判断ですね。

まぁOB班とは言うものの、実際は

『OB+新人』班

が多いんですけど。

まだ自己主張のない新人メンバーならOBと組ませても被害が少ない(?)、という事だと思いますが。

そんな

『OB+新人』班

があると、僕はよくその中に入れられてました。

まぁこれは僕に限った話ではないんですが、

OBとも浅~い繋がりがある。

新人とも浅~い繋がりがある。

そんなメンバー(何故か怪人役が多い)はOBと新人の橋渡し役をやらされる事が多かったんです。

数年ぶりにショーに入ってテンションの高い先輩もいれば、逆にテンションの上げ方を忘れてる先輩もいます。
そしてほとんどの先輩は体力が

ガクーーーーン

と落ちています。

立ち回りの時は、体力の落ちている先輩(主役)を出来るだけ動かさないように怪人が動く事になります。

新人に負担をかけすぎてもいけないので、本来なら戦闘員がやるような事も怪人がやったりします。

『次は●●です!』
『大丈夫ですか!?』

先輩をフォローしつつ、

『オマエが先に出てオマエが2番目な!』
『急いでハケろ!』
『かかっていけ!右殴り!』

と、新人もフォローしなくてはいけません。

ショーの後のサイン会や撮影会も大変です。

主役に入っている先輩方の体力を消耗させないように、迅速、かつ丁寧に進行させなければなりません。

サイン会撮影会の時は悪役に入っていたアクターがジャージに着替えてスタッフに変身します。

列を作る係、
子供をステージに上げる係、
子供をステージから降ろす係…

それを悪役アクターで分担してこなすのです。

しかし『OB+新人』班の時、怪人役の周りには新人しかいないのです。

『ここに立って手を上げて、大きな声で「サイン会の列はこちらでーす!一列にお並び下さーい!」って言い続けるんだ!』

『前の子供が写真を撮り終わった瞬間に次の子をステージに上げて主役の前に連れて行くんだ!』

どれだけ具体的な指示を出していても新人さんは上手くやれません。

大きな声も出せないし、ましてや変化に対応するなんて出来るハズがないのです。

そこでまた怪人アクターはあっちこっち走り回りながら新人に指示をしながら大声を出してお客さんを誘導しながら先輩に気を使いながらいつも以上に頑張る事になります。

『OB+新人』班の時はいつもこんな感じなので、苦労した想い出はあってもショーの出来不出来はさっぱり覚えてません。

…こんな事は尾籠ですが、怪人役ってホントにキツいんですよ!

もちろん主役もキツいんですが…

ショーが終わったらすぐに衣裳を脱いでぐったりしたいぐらいキツいんです。

でも…

先輩と新人ばかりだと

『自分が頑張らなければ!』

って未知の力が発動するのか、何故か元気に頑張れるんですよね。

不思議なものです。
2011-01-18(Tue)

小説・さやか見参!2(63)

さやかと心太郎は山中を歩いてみたが、特に怪しいものを見つける事が出来ないまま日暮れを迎えた。

鬼が噂通り夜更けにしか出ないのならば、日が暮れたこれからの時間が佳境とも言える。

しかしこの日の二人は休息を余儀なくされた。

長旅の疲れからか心太郎が熱を出して寝込んでしまったのだ。

『もうっ!心太郎の馬鹿!役立たず!これぐらいで熱出すなんて修行が足りない証拠よ!』

『さやか殿…ごめんっシュ…本当にごめんっシュ…』
心太郎は苦しそうにぐったりしている。

『ごめんじゃないわよ!…同じ山吹流の忍者として情けないわ…』

とにかくどこかで休ませなければ。

さやかは山を登る途中に、岩肌がえぐれて小さな洞窟のようになっている所を見つけていた。

『ここならもし雨が降ってもしのげそうね』

そう考えて、その洞窟を捜索の拠点にしようと考えていたのだ。

さやかは心太郎を背負って歩いた。

『なんで私があんたを背負わなきゃいけないのよ…』

『さやか殿…ごめんっシュ…こんなんじゃ、またさやか殿に嫌われてしまうっシュね…』

さやかの背中で熱に浮かされた心太郎がつぶやく。

『心配しないで。これ以上嫌いになりようがないわ。今でも大っ嫌いなんだから』

悪態を突いてみるが返事はなく、ただ荒い呼吸が聞こえてくる。

よほどの熱が出ているのだろう。

さやかは背中に伝わる体温でそれを感じていた。

必要ないと思ったが丸薬を持ってきていて良かった。

普通の山なら薬草もあるだろうが、岩ばかりの高陵山ではそれは望めない。

『…寒いっシュ…』

心太郎が震えた。


洞窟に着くとさやかはまず心太郎に丸薬を飲ませ、虎の毛皮を敷いてその上に寝かせた。

『雷牙のおかげで助かったわ…』

雷牙とは虎組の若き頭領で、たける亡き後さやかの兄のような存在である。

海に面した高陵山で潮風が障るといけないからと虎の毛皮を二枚持たせてくれたのである。

汗だくで震えている心太郎に、さやかはもう一枚の毛皮をかけた。

『里に帰ったら雷牙に御礼すんのよ!』

やはり反応はない。

それから心太郎は眠ったりうなされて目を覚ましたりを何度か繰り返した。

その度にさやかが水を飲ませてくれたり濡れた手拭いを額にあてたりしてくれていた。

何度目かに目を覚ました時、心太郎は山中が闇の静寂に包まれているのを感じた。

かなり夜も更けたらしい。

さやかは心太郎が目を開いた事に気付くと、顔を近付けていくぶん柔らかい口調でささやいた。

『心太郎、私ちょっとこの辺り調べてくる。この時間なら鬼が出てくるかもしれないしね』

立ち上がろうとするさやかの手を心太郎が掴んだ。

『な、なによ』

『…駄目っシュ…鬼が出てさやか殿に万一の事があったら…おいら頭領に顔向け出来ないっシュ…』

苦しそうにそう言うと心太郎は目を閉じた。

『はぁ!?今のこの状況の方がよっぽど顔向け出来ないんじゃないの!?』

『…おいら…命に換えてもさやか殿を守るって…頭領に約束したっシュ…』

目を閉じたまま独り言のようにつぶやく心太郎にさやかは本気で呆れた。

『あんたねぇ…私より弱っちいあんたが、どうやって私を守るって言うのよ』

さやかは自分を掴む手をほどこうとしたが、心太郎はそれを拒み離さなかった。

『心太郎…!』

心太郎は閉じていた目をわずかに開いて、紅潮したうつろな表情でさやかを見た。

『…さやか殿がいないと寂しいっシュ…』

さやかは心太郎のすがるような瞳をしばらく見返して、

『役立たずの三流忍者!』

と毒づいて腰をおろした。

それを見ると安心したように心太郎は眠りについた。

『私を守りたいのか守られたいのか分かんないじゃない…』

さやかはため息をついて、地面に横になった。

二人の手はしっかりと握られている。


さやかは岩肌の冷たさを感じながら、兄・たけるが添い寝してくれた時の事を思い出していた。

あの時、やはり自分も熱を出していなかったか。

繋がれた兄の手にどれだけ安心したか。


さやかの母は、さやかが生まれて間もなく失踪している。

当然記憶はない。

それを寂しいと思った事もあるが、自分には母代わりの兄が、そして厳しくも優しい父がいた。

しかし心太郎はわずか三歳で叔父の元から預けられてきたのだ。

父も母も遠くにあり、その中で6年も修行を続けているのだ。

心太郎にとって、かろうじて肉親と呼べるさやかは母代わりなのかもしれない。

少しだけ強く心太郎の手を握り返したさやかは、時折うなされる少年忍者に幼き自分を照らし合わせて、

『私は…たける兄ちゃんみたいになれるのかな…』

と、少し曇った表情をした。
2011-01-17(Mon)

小説・さやか見参!2(62)

『ねぇさやか殿』

出来の悪い弟子が早足で師匠を追いながら問いかける。

『なによ。喋んなくていいから早く進みなさいよ。日が暮れる前に山に入りたいんだから』

『本当に鬼なんかいるっシュかねぇ?』

『いるわけないでしょ。馬鹿ね』

『でも実際に見たって人があっちこっちにいたっシュよ?』

確かに二人は旅の途中で何度も鬼の目撃情報を聞いた。

細部は違えど大まかには

『暗闇から現われる』
『紅い眼に4本の角がある』
『生首と片腕だけが宙に浮いている』

といったものがほとんどであった。

『鬼がいないんならあの噂は何なんシュか?』

『知らないわよ!…何かを鬼と見間違えたんじゃないの?さ、早く行くわよ!』

『だって鬼は暗くならなきゃ出て来ないって…』

『だから鬼はいないんだってば!正体は分からないけど、そいつには必ず実体がある。昼間はどこかに隠れてるんだと思うわ』

『何の為に?』

『私が知るわけないでしょ!もう!鬱陶しいわね!行くわよ!』

さやかは周りに人がいない事を確認して走り出した。

風を切る音もさせず、一瞬でさやかの後ろ姿が小さくなる。

必死で追いかける心太郎だったが、当然ながら追いつく事は出来なかった。


高陵山を闇が包む。

先ほどまで西の空に残っていたわずかな青みは消え、今は無限を感じさせる漆黒に星が輝くばかりになっている。

元々高陵山は滅多に人の訪れぬ場所だ。

岩場ばかりで伐採する樹木も少なく、所々に生えた樹も潮風の影響で木材には向かない。

餌となる物もろくにないので狩りの獲物もいない。

山を越えても海に面した崖があるばかりなので登る者もいない。

高陵山は、入る事に何の利点もない山なのだ。

ただ、かつて『鬼』が棲んでいたという伝説だけが残されている。

高陵山の鬼は里の娘に惚れて、嫁にしようとした。

娘に助けを求められた山の神は鬼に条件を出した。

娘が欲しくば、三日間の内に『この山の樹』を使って娘の為に屋敷を建ててみよ。
三日後の夜明けまでに、御殿のような屋敷を完成させる事が出来れば娘を嫁に取らせる。
しかし出来なければ今後一切、里に下りる事まかりならん。

と。

先ほど説明したように、この山にはまともな樹木は少ない。

御殿を建てる程の材木を探し出すだけでもどれほど時間がかかるやもしれぬ。

ましてや三日で屋敷を完成させるなど到底無理な話であった。

山の神はわざと実現不可能な条件を叩き付けたのである。

しかし、鬼はそれを了承した。

山を駆け回り、使えそうな樹を見つけると怪力で引っこ抜いた。

走っては樹を抜き、また走っては次々と抜いた。

何と丸一日で必要な樹木を集めきったのである。

すぐさま鬼は枝を落とし皮を剥ぎ鉋をかけ始めた。

さすがの山の神も鬼の手際に驚いたらしい。

なんと雨を降らせて邪魔をしたのだそうだ。

ぬかるんで足場の悪い中で、ふやけて加工しにくい樹木を鬼は必死に削る。

なんと二日目にして木材の加工が終わったらしい。

鬼は屋敷を組み立て始めた。

みるみる形が出来ていく。

山の神は、人ならざる鬼の力を甘く見ていたのだ。

夜はまだ明けない。

しかし屋敷は完成寸前だ。

神は身体から光を発し、自らの使いの鶏にそれを当てた。

鶏は夜明けと間違えて、大きく鳴いた。

すかさず山の神は言った。

『夜は明けり。
しかれども約束の屋敷は未だ形を成さず。
娘は諦めて山へ帰るが良い』

鬼は己の力不足を嘆き、すごすごと山へ帰って二度と里に現われる事はなかった。

山の神に救われた娘とその家族は、完成間近になっていた屋敷を造り上げ、そこでしばらく幸せに暮らしたのだという。

鬼は失意の内に山中で命を落とした。

死の直前に神の謀略を知り、娘を呪って死んだそうだ。

娘の一家は次々と病に倒れ、家系は絶え、屋敷は崩れた。

そして高陵山に緑はなくなってしまったのである。

祟りを恐れた山の神は、これ以上被害を出さぬ為に、鬼を手厚く祠ったのだ。
2011-01-16(Sun)

小説・さやか見参!2(61)

山吹流頭領、武双の命により西国の高陵山へ『鬼退治』に向かった山吹さやかであったが、

※さやかは『鬼』の存在を信じてはいないが、『鬼退治』という言葉の響きは気に入ったようである。

1つ納得のいかない事があった。

心太郎の存在である。

なぜ武双がこの三流忍者をお供に選んだのか、さやかには理由が分からない。

助けにならないどころか足手まといである。

山吹砦を出て高陵山に辿り着くまで一週間を要したのも心太郎の足が遅いからだ。

おまけにすぐ
『お腹すいたっシュ』
だの
『眠くなってきたっシュ』
だの言い出す始末で、事あるごとにさやかは苛々していた。

自分が10歳の頃とは…
いや、
5歳6歳の頃とも比べ物にならない。

『あんたには忍びの才能ないんじゃないの~』

さやかは心太郎によくこんな事を言った。

しかし、実は心太郎を忍者として育てたのは他ならぬさやか本人なのである。


心太郎は、山吹流頭領・武双の弟である山吹錬武の血を引いているそうだ(どのような関係かは分からぬ)。

かつて武双が錬武を訪ねて砦を留守にしていた際に山吹の配下を一角衆に操られた事があったが、どうやらその時に武双は心太郎の誕生に立ち会ったらしい。

そして心太郎は3歳の時、武双の元に預けられたのだ。

錬武の血縁はたくさんいたが、これまでそのような事はなかった。

さやかは当初

『わざわざ父上に預けられるぐらいだから、よほどの潜在能力を持った子供なんだわ!』

と思っていた。

なので心太郎の教育係を任された時はわくわくしていたのだ。

一見どんくさい普通の子供だけど、何かのはずみに潜在能力を開花させるのよ!

そんな妄想にも囚われていた。

やはり潜在能力が目覚めるのは危機に陥った時だろうという事で、橋から川に突き落としてみたり、野生の猪をけしかけたりしてみた。

しかし心太郎は溺れて死にかけたり、吹っ飛ばされて死にかけたり、いつまでも覚醒する様子はない。

しばらく試してみてようやく、

『あぁ、この子は才能ないんだ』

と落胆したのだ。


さやかはくのいちとしては天才である。

兄・たけるの技を見よう見まねで学び、それを会得した才能はまさに非凡と言わざるを得ない。

そこにさやかの『指導者』としての欠点がある。

天才的な感覚で身に付けた技術ゆえ、言語化・体系化して他人に伝える事が出来ないのだ。

と言うよりも、技術を伝える為に『言語化』や『体系化』が必要という認識すらない。

つまりは『人を育てる能力』が欠けているのだ。

これは父・武双にとっても悩みの種であった。

さやかがいずれ山吹の頭領になるのならば育成能力は欠かせない。

そしてそれはさやか自身の心の鍛練にも繋がる問題である。

他人に何かを伝える為に必要な事はたった1つしかない。

それは、

『相手を自分に置き換える』

という事。

簡単に言えば

『相手の気持ちになって指導する』

という事になる。

言葉にすれば容易いが、実践はなかなか難しい。

人には自我がある。

自我が強ければ強いほど、自分を相手に投影してしまうのだ。

結果、自分の思想、思考を相手に押し付けてしまう。

『自分が伝える努力』を破棄して、相手に『理解する努力』を求めてしまうのだ。

今のさやかはまさにこの状態であった。

『相手の気持ちになる』というのは『敵の心を読む』為の第一歩である。

己に教えを請う弟子の心も読めぬ者に、敵対する相手の心理など読めようはずもない。

これが分からぬ内はさやかも、心太郎と同じ『三流』なのだ。

内面においていまだ未熟なさやかは、兄・たけるが自分を上手く導いてくれていた事に気付いていない。

たけるは、さやかが自主的に学び、自主的に成長出来るように『指導して』いた。

修行の際、さやかが興味を持ちそうな技を『さりげなく』見せる。

最初は真似しやすいように、分かり易く大きく動いて見せ、さやかが慣れるにつれて動きを小さくしていく。

さやかが戸惑っている時には『さりげなく』助け船をだす。

たけるは常に、『さやかに伝える事』を前提に修行していたのである。

そのやり方がうま過ぎたのかもしれぬ。

『伝える技術』を伝えぬままこの世を去った事はたけるの無念であったかもしれない。

とにかくさやかにとって心太郎は、出来の悪い弟子でしかなかったのだ。
2011-01-15(Sat)

小説・さやか見参!2(60)

『高陵山には鬼が出るそうな』

西国の北部でこのような噂が流れるようになったのは、ここ一年ほどの話であるという。

かつて鬼神を祠っていたと言われる高陵山だが、今ではその面影はほとんどない。

分け入った場所に朽ちた祠(ほこら)はあるが、それが鬼神を祠っていたものかは定かではない。

ゆえに現在の高陵山は

『鬼神を祠らなくなった山』

と呼べるかもしれない。

『祠られなくなった鬼が出て人を屠るらしい』

そのような噂が流れる下地はあったのだ。

しかし、晴天の下で眺める高陵山の風景にそんな禍々しさはない。

さしたる高さもなく、『山』というよりは『大きな丘』といった印象だ。

ただ緑が少なく岩盤が露出している為、『巨大な岩』にも思える。

それでも麓の田舎道から眺める高陵山は至って普通の山に見えた。

『やっぱり少し塩の香りがするわね』

前方の山から吹いてくる風を受けて、山吹さやかがつぶやいた。

左右で二つに結んだ髪がなびく。

『そうっシュか?おいら全然分からないっシュけど…』

さやかの少し後ろで答えるのは黒い野良着の小柄な少年だ。

『心太郎、あんた鼻も利かないの?ホント駄目な忍者ね』

さやかは振り向きもせず呆れたように吐き捨てた。

『駄目な忍者なんて言われたら、おいらも傷つくっシュよ』

『駄目な忍者が嫌なら三流忍者よ』

『うぅ…さやか殿、相変わらず酷いっシュ…』

心太郎はがっくりとうなだれた。

長い髪を後ろで結んだ心太郎は、小柄で細く顔立ちも整っていて一見女の子にも見える。

まだまだ10歳にもならない下忍だ。

そして、悠々と前方を歩く山吹さやかは15歳になっていた。

左右で結んだ髪型も昔のまま、
動き易い桜色の着物も昔のまま(さすがに大きさは変わっているが)、
そしてまだ可愛らしさの残る顔も昔と同じであった。

ただその瞳の輝きは、『山吹流忍術正統後継者』としての凛々しさと誇りを醸し出していた。

そう。

本来の後継者である兄が死んでから十年、さやかは山吹を継ぐ為の修行に明け暮れていたのである。

そんなさやかに、山吹流頭領の武双から密命が下ったのは一週間ほど前の事であった。

『鬼退治?』

父・武双より命を受けたさやかは思わず聞き返した。

『鬼がいるんですか?…その高陵山って所に?…まっさかぁ!』

『西国では皆信じておるぞ』

『えぇっ?だって…鬼、ですよ?…それはさすがにいないでしょ~』

さやかは頭領に対しても畏まる事がなかった。

しかしそれは二人きりの時に限られていて、しかも武双が『父』の顔をしている時だけであった。

他の配下がいる時、あるいは武双が『頭領』の顔をしている時、さやかは武双配下の一人に徹していた。

空気を察する事が出来るのは道理を解しているからである。

さやかは15にして組織の在り方を、そしてその中での自分の在り方をわきまえていた。

普通の女の子に見えるが、さすがは山吹の次期後継者だ。

『ほぅ、鬼はいないと言うか?
さやか、おまえは普段神仏の力を借りておるのだぞ?
臨兵闘者皆陣列在前。
これを唱えるはそれらのご加護にあやかる為。
神を信じて鬼を信じぬでは道理が立つまい』

『でも…』

『もし鬼は存在せぬと言うなら、高陵山の鬼とは一体何なのか確かめてまいれ。
鬼神であれ何であれ、それが人の世に仇なす者かどうかをおまえの目で見極めてくるのだ』


こうしてさやかは西国の高陵山へと向かったのである。
2011-01-14(Fri)

良かった

先日の練習で大胸筋の筋トレをやりました。

僕がやってる筋トレは、ダンベルなんかを使ってやるメニューをアレンジしたもの。

器具を使わず、場所を取らず、普段筋トレなんかやってない人でもやれるように考えた『僕流』メニューなんです。

なので効果のほどは自分で試して確認してみるしかない。

先日のブログに書いたように、ひねったり回数を増やしたり、効果が出るように色んな工夫をするワケです。

…で、大胸筋の筋トレですが、

『ちょっと楽すぎるかなぁ??』

なんて思って不安だったんです。

全然効果がないなら別の方法を考えなきゃいけないし。

…でも、無事に筋肉痛が来ました♪

どうやら効果があったようです♪

これでひと安心♪
プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

2017年11月26日は10周年記念『ギルティー!!』を公演します!
福岡市南区大橋にて19:30開演!

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