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2010-12-13(Mon)

小説・さやか見参!(37)

『さやか、走るぞ!里に戻る!』

尋常ならざる速さでたけるが疾駆する。

『待ってよお兄ちゃん!まだ街の中だよ!?人前で術を使っちゃダメなんでしょ!?』

戸惑いながらも容易に兄に並んで走っている。

これだけを見てもさやかが同年代の忍びの中で抜きんでているのが分かるというものだ。

たけるも妹の実力を知るからこそ何の遠慮もなく走っている。

『かまわん!急ぐぞ!』

二人の姿は一瞬で遠ざかった。

それを見送る五つの眼…

それは義眼の男と二人の子供の視線であった。

子供達はすでに獣の真似をやめて二本の脚で立っている。

白い羽織りの子供がにやりと笑いながら視線も動かさずに話しかける。

『やっぱり忍びだった。な?俺が言った通りだろ?ちみどろ』

呼び掛けられて赤い羽織りの子供―
ちみどろは無言でうなずいてにやりと笑った。

『二人とも、片付けて引き上げるぞ』

男が言うと二人は口の周りについた蛇の体液をぬぐいながら片付けを始めた。

『それにしてもあの娘、俺達の芝居で完全にびびってたな。ちみどろ、いつかあの女と戦う事があったら俺達二人でもっとびびらせてやろうぜ』

赤い羽織りのちみどろは片付けをしながらにやにやとうなずく。

片目の男は見世物の道具と旅の荷物を二つの背負子にまとめながら、白い羽織りの子供に声をかける。

『ちしぶき、おまえ達があの娘と手を合わせるのは、まだ先の話になるだろうな』

白い羽織りはちしぶきという名らしい。

『えーっ、待ち切れないなぁ…まぁ仕方ないか。ちみどろ、それまでにもっと腕を上げておこうぜ』

ちみどろはまたも無言でうなずくばかりだ。

『ちしぶき、ちみどろ、行くぞ』

『はい!父上!』

ちしぶきの返事をきっかけに、二人は同時に背負子を担いだ。


それからしばらくのち、三人は川沿いの小さな村を歩いていた。

村と言っても現在ここに住む者はほとんどいない。

梅雨の大雨で川が溢れ、年寄りばかりだった村はほぼ壊滅した。

そして生き残ったわずかな者達も洪水がもたらした疫病に倒れたのである。

その廃墟の中を老人と紅白の子供達が歩く。

やがて三人は朽ちかけの神社へ辿り着いた。

鳥居や社の痛み具合いからも大水の影響がうかがえる。

ご神木も枯れてきているようだ。

そこでちしぶきとちみどろは背負子を降ろし、しばし休憩となった。

子供達は疲れも感じさせず、はしゃいで走り回っている。

一見すると普通の子供のようであるが、時おり簡単に鳥居の上まで飛び上がったりする。

この子らにとって、それぐらいは遊びの範疇なのだ。

片目の男はちしぶきが降ろした背負子に腰掛けた。

その足元に大きな鴉がふわりと着地する。

するとその鴉は、低く、人間の言葉を発した。

『けっしゅう様』

鴉に声をかけられて男は動じる事なく、まるで漆黒の鳥など見えぬと言うかの如き態度でつぶやく。

『首尾は』

『上々』

そうとだけ言うと鴉はいずこともなく飛び去った。

けっしゅう様と呼ばれた男が無言で立ち上がると、すかさずちしぶきとちみどろが駆け寄って背負子を担いだ。

一角衆幹部、血讐(けっしゅう)、

その息子、血飛沫鬼(ちしぶき)と血塗呂(ちみどろ)、

三人はまた、いずこともなく歩いて行った。
2010-12-12(Sun)

夢を見ました

現場の朝。

僕は集合場所の公園に向かっている。

博多駅近くの公園でリハーサルをしてから現場に出発するのです。

西鉄平尾駅で電車を降りて、そこからバスで博多駅方面へ。

バスを降りてほてほてと歩いていると…

ふ、と気付く。

集合場所は…

博多駅近くの公園じゃない!

警固公園だ!!

間違えた!

警固公園は天神にあるので博多駅からはけっこう離れています。

やばい間に合わない!

バスも来ない!

走るんだ俺!!

走れ!走れ!急げ!


頭の中では、アニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の主題歌『勇者よ走れ』が流れていました。
※これは嘘です。
曲のタイトルも正しいか分かりません。


ようやく現場だか事務所だかに到着しました。

警固公園の設定はなくなったようです。

到着したら、新人の男の子が、

どうしても背落ちがやりたい

と言っています。


背落ちとは、ジャンプして前方にくるっと回って背中から落ちる、リアクションの技術です。

試しにやらせてみると危なっかしい。

今日はあきらめたら?と言ったけど、どうしてもやりたいらしいので、練習の補助をする事に。

そしたらあんまり言う事聞かないから怒鳴りつけてやりましたわ。

それから自分が入ってる戦隊ショーのメンバーの所に行ったら…

もう着替えてる!?

リハーサルをする予定だったのでは!?


『あ、あの~、僕この班の怪人だと思うんですけど…
リハーサルやってないんですよ…』

レッド役の先輩が冷たい顔で答えます。

『…そう…何分で着替えられる?』

『ご、5分もあれば!』

『じゃあ急いで着替えて、やれる所までやるしかないな』

『は、はい!急いで着替えます!!』

…とそこに後輩がやってきて、

『あれ~?
内野さん、今日は『遊ぼう』の現場でレッドの声をアテるんじゃなかったですか?』

…えっ…?
そう言われたらそんな気も…
でもでも、
俺が戦隊ショーの怪人役じゃなかったら、このチーム怪人がいないじゃん!?
どうやってショーする気なの?
やっぱり俺は怪人役なんじゃないの!?


すると他の後輩も

『確かに内野さん、久しぶりレッドの声やん~、って言ってたような…』


え~っ!?
え~っ!?
え~~~~っ!?

この状況はなに!?

俺はどうするのがベストなの!?

とにかく…


確認してきま~~す!!!

と、いずこともなく走り出す僕。

息が切れて苦しい…

でも時間がないから止まれない…

苦しい…
苦しい…
苦しい…



…で、目が覚めました。

そんな夢でした。
2010-12-12(Sun)

コンサート

今日はショー時代の仲間(先輩)『akane』とその息子『威吹鬼』と3人で、

『Sounds of DAZ』

というゴスペルグループのクリスマスコンサートに行ってきました。

とてもアットホームな雰囲気で楽しいコンサートでした♪
2010-12-12(Sun)

小説・さやか見参!(36)

たけるは動かなかった。
さやかも動かなかった。
そして、片目の男もまた動かなかった。

ただ羽織りの子供達だけが、地面に這いつくばるようにして蛇の肉を平らげていた。

たけるはじっと男を見ている。

男はたけるの視線を気にする様子もなく、義眼を顔の空洞に押し込んでいる。

さやかは、

怯えていた。

蛇を食らう子供達にではない。

片目のない老人にでもない。

化け猫の祟りを恐れていたのだ。

その祟りによって生まれ落ちた悲劇の子供達は蛇肉を食らい尽くし、満足げにゴロゴロと転がり、あくびなどし始めた。

『…ねぇ、おじいちゃん?』

さやかが上目遣いに男を見て尋ねる。

『どうしたね?』

『その化け猫は死んだの?』

『死んだよ』

『じゃあもう化け猫はいないんだよね?』

老人はふふふと笑った。

『化け猫が怖いかね?』

『うん…』

『なぜ?』

『だって…』

さやかはちらと視線を逸らす。

その視線の先では化け猫の眷属が居眠りしている。

『残念だが…』

老人の声にさやかはハッとなる。

『化け猫はまだまだたくさんおる。
そして今もどこかで人に化け、人を操り、人を祟っておるだろうな』

さやかの表情が絶望に包まれる。

『もし今度会うたならば、また別の話を聞かせてやろう。
化け猫退治に出た姫様が化け猫の花嫁にされてしまった話とかな』

『…どうしてお姫様は化け猫のお嫁さんになったの…?…化け猫って悪いやつでしょ?
…それでお姫様は幸せなの…?』

『さぁて、幸せかどうかまでは分からんな。
幸せというのは人それぞれで違うものじゃ。
では物語は次の機にな』

そう言って男はにこやかにさやかの頭を撫でようとしたが、たけるが柔らかく割って入った。

『ご老人、良ければ最後に一つだけご教示いただけませんか?』

『なにかな?』

さやかを撫でようとした手を自然に引きながら答える。

『蛇というのは捕らえるになかなか骨が折れると、知人より聞いた事がありまして。
しかるに先ほどの大きな蛇、さぞやご苦労なさったのではないかと。
何やらこつのようなものがあるのですか?』

『妙な事を訊きなさる』

男はにやりと笑う。
義眼の深い闇が光る。

『蛇を捕らえるなど、実は簡単な事じゃ。
お若いの、おぬしは何ゆえ蛇が捕らえづらいと考える?』

『やはりあの動き、でしょうか。
あれほど勝手気ままに動かれては掴む事もままなりませぬゆえ』

『ふふん、そう思うであろう。だがな、勝手気ままに見える動きにも実は法則があるのよ。』

『ほう』

男が突然調子をつけた。

『頭押さえりゃ尻尾が逃げる、尻尾押さえりゃ頭が逃げる』

そしてまたにやりと笑って、

『尻尾を動かす為には頭を押さえれば良い。
頭を動かす為には頭を押さえようとすれば良い。
そうやって少しずつ追い込んでいけば良いのだ。
頭の方から、尻尾から、右から左から、
追い込み方で敵の逃げ方も決まってくる。
慣れてくれば好きな場所に追い込む事が出来るものよ。
餌や天敵も上手く利用してな。
さすれば蛇ごときを捕らえるなど容易い事…』

『なるほど…やはり熟練の技があるのですね…勉強になりました。ありがとうございます』

たけるは深々と頭を下げて、

『それではこれにて』

と木戸銭を払おうと懐に手を入れた。

『あぁ、そんなものは要らん要らん。ほんの暇つぶしの余興に過ぎんよ』

たけるは男の作り物めいた笑顔をしばらく見た。

『左様でございますか。では…』

と、もう一度頭を下げて踵を返した。

さやかもぺこっと頭を下げて兄に続こうとする。

『待たれい』

男が二人を呼び止めた。

『何でございましょう?』

『蛇を捕らえるは難しくないが、殺してしまうはもっと簡単ぞ』

『…と言いますと?』

『奴らは共食いするでな』

男はにこやかなままだ。

『…失礼します』

たけるは早足でその場を離れた。

さやかも焦って後を追う。

たけるは歩きながら思っていた。

『なるほど、あれが一角衆か』

その脳裏には、恐らく奴らに頭から尻尾から追い込まれているであろう男の顔が浮かんでいた。

『…くちなわ殿…!』

たけるは走り出していた。
2010-12-12(Sun)

アクションへの道(123)

合同練習でのオーディション的なものに参加せざるを得なくなった僕。

キャラクターはメタルヒーローの主人公。

ランス(槍)を使った立ち回りです。


僕の直感ですが、参加したアクターさん達はみんな、

華麗な槍さばき

で魅せてきそうな気がしました。

カンフーの槍とか棍みたいな感じの動きです。

あくまで憶測ですが。

でも僕は、

みんながそう来る

という可能性に賭けて、あえて逆を行く事にしました。

天の邪鬼の本領発揮です。


このキャラクター、設定はやんちゃな高校生です。

戦闘のプロではありません。

※3人組で、格闘に長けたキャラが別にいるのです。

だとしたら、若々しさ、やんちゃさを前面に押し出した動きをやろう。

そう思いました。

華麗な動きが上手い人は他にたくさんいるし、僕は僕のやり方で勝負したいし。

実際に衣裳を着けたらプロテクターが邪魔で華麗に槍をさばくなんて無理だしね。

そして順番に立ち回りをこなします。

みんな流石に上手いなぁ~。

自分の番になりました。

それまでの方々と違って、

ぅおおりゃあぁぁぁっ!!

って感じです。

これだよこれ。
これが俺だよ。

立ち回りの最中に、他の事務所の若い女の子達が僕の動きを見てくすくす笑っているのが見えました。

でも恥ずかしいどころか、

ふふん、
下手な奴が槍に振り回されてると思ってるな。
見る目のない若造どもめ。
見とけ!
これが内野武じゃ!!

ぐらいノリノリでした。

もちろんオーディションで選ばれる事はありませんでしたけど(笑)


ひねくれ者にはひねくれ者なりの信念があるのだ!!
2010-12-12(Sun)

小説・さやか見参!(35)

男はにょろにょろと不気味に動く大きな蛇を両手で巧みに捉え、あえて客の眼前まで進んで見せつけた。

軽い悲鳴と共に客の輪が崩れる。

男は人垣の内側をぐるりと移動し、最終的にたけるの前に来た。

たけるは目の前の蛇には動じていない。
それどころか見てもいない。

蛇の向こうにある男の顔を、
いや、
男の右眼をじっと見ていた。

不自然な光を放つ眼球は、見ようによっては深い空洞にも見える。

そうかこれは…

それに気付いて男は
にやり、
と笑ったかに見えた。

そしてたけるから視線を外さず、身体だけを他の観衆に向けて声を張る。

『みずち・くちなわ・かがち・うが、蛇の呼び名は数あれど、おろちというのもございます、
おろちというのは別名うわばみ、
うわばみほどの大きな蛇は、己の身体を越えるほど、大きな獲物を食らうとか、
うわばみほどではないとはしても、例えばこの蛇ご覧じろ、身体の長さは三尺あまり、なれども頭は…ほれ、この通り…』

わざと女衆の前に蛇の顔を近付ける。

首を抑えられて動く事の出来ない蛇は、せめて大きく口を開き、牙をむき出しにして威嚇した。

黄色い悲鳴が上がる。

『蛇の別名くちなわは、長い身体を縄と見て、縄の先に口ありと、見立てて付けたがその由来、
縄の先の頭なら、大きさなどは知れたもの、
頭に付いたその口も、さして大きくならぬのは、先ほどお見せした通り…』

少しためて観客を焦らす。

『ここで話を戻します、
うわばみほどではないとはしても、
ここにおりますこの蛇も、
己の口より大きな餌を、がぶりごくりと食らいます』

男がおもむろに左手を上げた。
どこから出したか片手に薄茶色の卵を持っている。
おぉっ、と観客がどよめく。

『ここにありますこの卵、今朝の明け方にわとりが、
こけこっこぅと落としたばかり、
大きさ比べてご覧じろ、卵の方が頭より、どう比べてもはるかに?』

男は突然さやかに問い掛けた。

さやかは思わず

『大きい』

と答える。

男は大きくうなずいて、

『可愛い童が答えてくれた、口より大きなこの卵、
しかし!これが蛇の恐ろしさ、
さぁご覧あれご覧あれ!』

客の輪が一斉に縮まる。

男が手のひらに卵を乗せて、蛇を掴んだ指を弛めると―

蛇は信じられぬほど大きく口を開けて、卵を丸呑みにした。

歓声とも悲鳴とも分からぬ声が上がる。

蛇は卵の形そのままに喉を膨らませ、少しずつ飲み込んでいく。

見物人達は息を飲んでその光景を見つめていた。

『…とまぁこのように!』

男の声ではっと我に返る。

『大きな丸い卵でも、蛇は楽々この通り、
実はこの蛇、私のかたき、かつて大きな丸い物…』

そう言って片手を右眼に当てると…

『私の目玉を飲み込んだ』

きらきら光る右眼を抜き取った。

後にはぽっかりと空洞が出来ている。

右眼が不自然に見えていたのはびぃどろのような義眼のせいだったのだ。

今までで一番大きな悲鳴が上がった。

『私の目玉を飲み込んだ、にっくきかたきのこの蛇を、二人の食事といたしましょう。それ!』

男は二人の子供の前に、まだ卵の形を残した蛇を放り投げた。

蛇が地面に落ちた瞬間、白い羽織りの子供が手のひらで蛇の頭を抑えつけ、首もと辺りに噛み付いた。

そのまま頭を上げると、蛇の肉が一直線に裂ける。

もう観衆は声を立てる事も出来ぬほど、恐怖に凍りついている。

背中側の肉を剥されて瀕死の蛇を、赤い羽織りの子供が捕らえる。

やはり首辺りに食らいついて、強引に頭を引きちぎった。

ちぎられた蛇の頭が見物人の輪に飛び込むと、悲鳴とともに一人また一人と逃げていき、たけるとさやかだけがその場に残った。
2010-12-11(Sat)

小説・さやか見参!(34)

見世物に真実がない事など、ある程度の年齢になれば大体分かる。

分かっていながら怖い物見たさで見てしまうのである。

しかし子供は違う。

現実世界の引き出しが少ない故に、世の中には数奇・怪奇があるのだと信じてしまう。

大人にとっての娯楽は子供にとっての現実であったりするのだ。

それは忍者といえど変わらぬようで、山吹さやかも兄の袴をぎゅっと握り締め、強張った顔で目の前の光景を見ている。

そこでは
白い羽織りの子供と赤い羽織りの子供が猫の動きで戯れあっていた。

赤い羽織りがあくびをして丸くなって寝ようとする。
そこに白い羽織りがちょっかいを出して追いかけっこが始まる。

軽々と塀に飛び乗ってみたり、鳥居の脚に飛び付いてひらりと宙返りしてみたり、本物の猫よりも芝居がかっているが獣らしさは上手く表現されている。

この辺りの『らしさ』と『虚構』の兼ね合いが見世物を見世物たらしめているのであろうとたけるは考える。

そこに見事なまでに男の講釈が乗る。

『首を斬られた化け猫の、怨み祟りが気となって、その気を吸った若殿は三日ののちに亡くなった、
その気を吸った奥方は、やがて双子を産み落とし、その三日後に亡くなった』

ここでまた口調が変わる。
ちょっと声を落として男が語る。

『死んだ若殿夫婦の亡骸をご典医があらためると、肺の腑にはびぃーーーっしりと!
…猫の毛のような物が詰まっていたそうな…』

ちょっと怖い顔で首をゆっくり左右に振り、観衆一人一人の顔を見る。

『たった二人で残された、あにおとうとの哀れな双子、
育てる親もなきはずが、乳を飲ませて育てたは、次々集まる猫!猫!猫!
まるで我が子を育てる如く、猫が赤子を育てます、
やがて双子の兄弟は、育ての親とおんなじに、両手両脚地に着いて、獣のように歩きだす、
屋根の上から塀の上、ひらりと飛んでは軒の下、
生きた魚を頭から、がぶりがぶりと囓りつく、
それがこの、』

さやかがごくりと生唾を飲んだ。

『皆様がご覧になっている二人なのでございます』

二人の子供は同時に『しゃあっ!』と吠えた。

客の何人かがびくっとする。

『…私が引き取ってすでに二年。
人間らしさを取り戻すどころか、ますます獣に近付いている様子。
食事も人様と同じ物などは口にしません。
血のしたたる肉しか食わぬのです。
…さぁーーーて、そろそろ食事の時間だぁ』

男が傍らのびくから紐のような物を引っ張り出した。

周りで見ていた女子供からきゃあと声が上がる。

それはかなり大きな蛇であった。
2010-12-11(Sat)

アクションへの道(122)

キャラクターショーの事務所というのは意外にたくさんありまして…

県内で複数の事務所(チーム)がしのぎを削る、なんて事も多かったりするんです。

で、その地域で大きなイベントがある時、複数のチームが合同でショーをしたりもするんです。

あ、単にイベントの大きさだけじゃなくて色んな要因が絡んでくるんですけどね。

それは面倒くさいので省略。

…で、各事務所の選抜メンバーで合同チームが作られるワケですが…

1996年、この年に、選抜オーディションを兼ねた合同練習が行われたんです。

僕を含めた『オーディションに興味ないメンバー』も参加していました。

大ベテランの方が立ち回りを付けて、

『各事務所で、普段●●●の役に入ってる奴、これやってみて』

と言い出した時、我々はオーディションの開始を察しました。

複数のアクターが同じ立ち回りをやれば、当然個性が見えてきます。

そして上手いか下手かも。

僕はさほど興味なくその光景を見ていましたが、なんとその後の立ち回りをやらされる事になってしまいました。

『普段●▲■の役に入ってる奴…』

と言われたのですが、ウチの事務所で●▲■に入ってる奴はことごとく欠席していたんです。

なので仕方なく前に出て立ち回りを披露する事になりました…


~つづく~
2010-12-11(Sat)

小説・さやか見参!(33)

好好爺の声が響く。

『此所より西の何処の国にて、城に起きたる化け猫騒ぎ。
夜毎現わるその猫は、身の丈2尺で鬼火を吹いて、人の姿に成り済ます。
この怪猫が若殿の、奥方様が身籠もった、赤子の肝に目を付けた』

声は明るいが語りに臨場感があるので見物人達は思わず引き込まれてしまう。

その間も二人の男の子は、講釈に調子を合わせて飛んだり跳ねたり転がったり、こちらも飽きさせる事がない。

時々手の甲を舐めてこめかみに擦り付けたりしている所を見ると、どうやら猫になりきっているらしい。

『見世物の類か』

たけるは思った。

両腕の無い『蛇女』や全身毛むくじゃらの『狒々男』、安っぽいからくりの『ろくろ首』などと同じ趣向か。

しかし見世物とは木戸銭を取って成り立つものではないのか。

このような往来では本当にただの見世物だ。

なればこの男の真意はどこにあるのか?

たけるは何事もそういう風に考えてしまう性格なのだ。

朗々と語る男の右眼は相変わらず不自然に光っている。

妹に目をやると、さやかは真剣に二匹の猫(?)を見ていた。

白猫と赤猫は、ふー!とか、しゃー!!とか言いながらお互いに威嚇しあっている所だ。

『赤子を狙う化け猫は、大殿様を食い殺し、大殿様に成り済まし、若殿夫婦にこう言った。

余の患った病を癒す、たった一つの妙薬は、
いまだ産まれぬ赤子の肝を、赤い血したたるそのままに、切って炙って食す事。
親子の孝のあるならば、親を憐れと思うなら、
是非とも妻の腹を裂き、小さき赤子を取り出して、小さき赤子の腹も裂き、その肝我に差し出さん』

生々しい講釈に観衆が静まり返る。

想像して気分を悪くした者もいるようだ。

『親を助くは当然なれど、妻と子供もまた大事、秤にかける事など出来ぬ、父上それは出来ませぬ、
なればおまえはこの父に、死ねと申すか恩知らず、
いえいえそれでも出来ませぬ、どちらも引かぬ諍いに、割って入った身重の妻が、
おやめ下さい心得ました、孝を尽くすが己の務め、それで病が癒えるのならば、裂いて下さい我が腹を、大殿様のお役に立てば、きっと我が子も喜びましょう』

男はここで言葉を切った。

しんと静まり返る。

男は真顔で言葉をなくした見物人を見渡す。

そして先ほどまでとは口調を変えて低い声でまくしたてる。

『いよいよ腹を裂く時がやってきた。
口ではすまぬと言いながら、大殿の顔には期待に満ちた笑みが浮かんでいる。
そして小刀を手にした瞬間、喜びのあまり油断したか、大殿を照らした行灯の明かりが化け猫の影を映し出した!
若殿はそれに気付くと、おのれ化け猫正体見たりと腰の物を抜き放ち』

男も抜刀すると

『えいっ!』

と横ざまに払った。

『化け猫の首が宙を飛ぶ、胴から離れたその首は元の姿に立ち戻り、怨みがましくめおとを睨み、
赤子の肝よ口惜しや、かくなる上は我が怨み、これより産まれる子供らに、報いを受けてもらおうぞ…』

どすを効かせた言葉の余韻に合わせて子供達がくるんと宙返りをした。
2010-12-10(Fri)

アクションへの道(121)

1996年…
1996年…

すでに記憶が薄いな…

何がある?

ヤワテクター作った話とか…

ヤワテクターって他に言ってるチームあるのかな?

普通、ヒーローが着けているプロテクターはFRPという強化プラスチックで造られています。

でも、硬いとやりづらいアクションもあるワケで、そんな時は柔らかい素材でプロテクターを自作しちゃいます。

柔らかいプロテクターだから『ヤワテクター』。

自作に限らず、最近は正式な衣裳がヤワテクターって事もありますな。

造形技術の進歩に乾杯!です。

他には…

夏場のアクションショーで動き過ぎて、ショーの後にぶっ倒れて、チームの仲間に

『日頃の行ないが悪いけんやろうがぁっ!』

って怒られた事とか。

まぁ確かにこの時期は新しい彼女が出来て受かれてましたが、それが原因で倒れたワケではないような…


そんな細々した事は色々あるんですよね。

リハーサルで足の親指の骨を折ったとか。

そんな中で何を書こうか…


あ、



オーディションを兼ねた合同練習の話とか書こうかなぁ♪

でもせっかくだから次回に引っ張ります!
2010-12-10(Fri)

小説・さやか見参!(32)

さやかは人の波をすいすいかわしながら、出店や披露されている芸事を見て回った。

そしてたけるに一つ一つ質問する。

『お兄ちゃん!あの石、きらきらして綺麗!』

『あれはね、飴っていう食べ物だよ。とっても甘いお菓子なんだ』

『甘い?甘いってどんな味?』

この時代、しかも忍びの里で甘い物を口にする機会など滅多にない。

さやかが『甘い』と言われて分からぬのも無理はなかった。

たけるはその出店で飴を買った。

砂糖を溶かして固めただけの簡単なものだったが、砂糖が希少なのでそれなりに値が張る。

さやかはたけるに勧められて一つをつまんだ。

好奇心で輝いていた顔が少し曇って、

『な、なんだかベトベトするんだね』

と不安げに笑った。

しかし味わってみると気に入ったようで、

『あごがじーんとする』

と、よく分からない感想を言ってから、

『すごいね!すごいね!甘いって美味しいね!』

とはしゃいだ。

薬売りの口上について訊かれた時は、説明するのに骨が折れた。

薬とは怪我人や病人が必要に迫られて求める物ではないのか。

それを売る側が、何故ああして長々と講釈しなければいけないのか。

そんな根本的な所にさやかが疑問を持つからである。

それをひとしきり説明したら今度は口上が芸として成り立っているという事を納得させなければならない。

観衆の気を引く話題を交えながら弁舌さわやかにすらすらと語って聴かせ、最終的に購買意欲を刺激するというのがいかに難儀か、幼子に理解させるのは難しい。

しかも、言の葉を術として扱う忍びの世界では、すらすらと相手を話に引き込むなど出来て当たり前なれば、それが常人の世界で芸として認められている事に合点はいくまい。

さやかにはまだ、忍びの世界と一般の世界の境界が曖昧なのだ。

『これではまだ任務には出せないな…』

たけるは内心そう思って笑った。

だが、出来ればその方が良い。

妹を危険な任務に出さずとも済む平和な世の中になってくれぬものか…

そんな事を考えていると、さやかが前の店に向かって走った。

色とりどりの華やかな出店だ。

見とれているさやかの後ろからたけるも覗き込む。

『ねぇお兄ちゃん!これ欲しい!』

色とりどりの正体は赤や青や黄の綺麗な紙だった。

『帰ったらお兄ちゃんと色々作って遊びたい!』

雨で外に出れない日、たけるは紙を折ってさやかと遊ぶ事があった。

鶴や蛙などの動物や鞠、手裏剣を作ってみせてはさやかにも折り方を教えた。

たけるの指がなめらかに動き、平面だった紙が素早く変形して色んな形を作る。
さやかはその不思議な光景が好きだったのだ。

たけるは数十枚の束を買い、丸めてさやかに持たせた。

これだけあればしばらくは遊ぶに困らぬ。

たけるもさやかもにこにこと楽しそうに歩いている。

出店の列が途切れた。

目前に鳥居が迫っている。

『お店は終わり?』

『あぁ。全部見終わったみたいだな。お参りして帰るか』

鳥居に近付くとまばらに人だかりが出来ていた。

店ではないようだ。
大道芸の類かもしれぬ。
なにやら軽やかな口上も聞こえる。

近付いて人の隙間から見ると、二人の子供が軽業を披露していた。

男の子のようだ。
白い羽織りと赤い羽織りの二人組。
年齢はさやかとさほど変わるまい。

上半身裸に羽織りという変わった風体で華麗に宙を回っている。

自分も身軽さが身上の忍びという事も忘れてさやかが

『すごぉいっ!』

と感嘆の声を洩らした。

たけるは口上の主を見る。

傍らに立って、良く通る声で子供達の出自を語る男。

表情は穏やか。

父、武双よりも年上かもしれぬ。

好好爺、といった印象だ。

だが、男の右眼が放つ異様な光がたけるは気になっていた。
2010-12-10(Fri)

transfer

気分が晴れないからドライブでも行こうかしら。

車を持ってないからレンタカーで。

高くついちゃうんだけどね。


でも、けっこうドライブ好きなんだよなぁ。


車買わなくちゃなぁ。
2010-12-10(Fri)

読書

和田竜さんの『忍びの国』を読みました。


おーもしれぇーっ!!
2010-12-10(Fri)

小説・さやか見参!(31)

『忍び』とは、『忍び』というだけで食っていけるものではない。

大名のお抱えにでもなれば話は別だが、そうではないほとんどの忍びはそれぞれ手に職を持っているものだ。

身の軽さを活かして大工や鳶になる者、
脚の速さを活かして飛脚や籠かきになる者、
軽業師になる者も多かった。

職とは言えぬが、盗賊になる者も多かったのだが、各々、知識や体力、技術を活かそうとしていたのであろう。

忍びとはいえ銭を稼がねばならぬのである。

例えば山吹や荊木を含む十二組は、各組が力を合わせればほぼ自給自足の生活が出来た。

しかし任務として人里に降りて町人として潜伏しなければならない時もある。

そういう時にはやはりある程度の銭が要るのだ。

時に各地の豪族や大名からの依頼もあったので各組とも金銭的な困窮はなかったが、本来この十二組、時の権力に左右されぬ事を目的に作られた組織なので、どれほど大きな依頼といえど引き受けぬ場合があったのだ。

承諾の基準はただ1つ。

『その任務が本当の平和に繋がるか否か』

である。

大名お抱えの忍び集団は平和を望まない。

戦がなければ自分達は用済みになるのを知っているからだ。

十二組の忍び達はただ

『非常事態にも動じぬ』

その為に自分達を律し修行に努めているのだ。

祖先から受け継いだ生き方に疑問を持つ事はない。

世が平和になって忍びの技が必要とされなくなっても、十二組が手を合わせ、己を磨きながら生きていけば良いだけの話だ。

このように十二組の忍び達は他の忍びと比べてかなり独特な思想を持っている。

権力への欲求、金銭への欲求が薄いのだ。

そのようなものにすがらずとも生きていける術を持っているという誇りがあるのだ。

大きく話がずれてしまったが、山吹たけるが妹を祭りで遊ばせるだけの金銭を持ち合わせているのはそういう理由だ。

たけるとて修行の合間に町民達に紛れて仕事をしている。

かなり腕の立つ大工なのだ。

一見華奢にも見えるが力仕事も難なくこなす。

宮大工ばりの細かい作業も出来る。

鳶としても申し分ない。

土地の善し悪しを見分ける能力は棟梁よりも秀でていた。

地中に掘り進められないほどの固い岩盤があるとか、なまなかな支柱では安定しないほど水気を含んでいるとか、深い所に水脈があるから危ないとか、そのような事をぴたりと言い当てるので、かなり重宝されていたのだ。
2010-12-10(Fri)

練習日

12/9は大橋で練習でした♪

とは言っても告知もしてなかったので独り…

とりあえず筋トレ…腹筋とか腕立てとかやって…

木刀で素振り…

真っ向と袈裟を200回ずつぐらいやって…

ストレッチとかやって…

21:30ぐらいに上がろうと思ってたらそのぐらいの時間に時枝が来てくれて…

でも練習やめて…

近くで1杯やって帰りました。

1杯やった店は、先日の披露宴に武装を呼んでくれた新郎のタツノブが働いているお店です。

…で、時枝と別れて西鉄電車の駅に行ったら…

事故で電車止まってた…

JRの駅まで移動して…

ようやく久留米に帰り着きそうです。

そんな練習日でした。
2010-12-09(Thu)

12/04 披露宴に 『さやか見参!』

…かなり遅くなってしまいましたが…

12/4は披露宴で

『忍者ライブショー さやか見参!』

を公演させてもらいました!

新郎新婦ともキャラクターショー時代の後輩で、こんな頼りない僕を先輩扱いしてくれる貴重な存在なのです。

そんな2人の披露宴、目一杯祝福してあげたい…

でも素直に祝福してあげる事が出来ない…

何故なら俺は悪役だから!!
1204披露宴イバラキ

披露宴ショーの悪役は、2人の幸せを邪魔しに来るものと相場が決まっているのさ。

今回は(今回も?)変則メンバーでして、

山吹さやか:みんみん
紅蓮丸 :みちャき
下忍 :時枝
下忍 :リーダー
ヤイバ :亮
イバラキ :代表

サンプラー:T・Tさん

という豪華メンバー!

みちャきと時枝はショーの後輩の中でもトップクラスの2人です。

リーダーというのは、僕が現役時代にチームのリーダーを務めてた男でして、家族を持ち会社を起こした今も現役バリバリ。

彼と最後にショーをしたのは13年も前でしょうか。

今回快く引き受けてくれましたが、僕はいまだに緊張してしまいます。

ショーの内容はね、
別に細かい説明はいいでしょう。

大爆笑取ったワケでもなし。

むしろ微妙な空気にしてしまったような…

ミスもあったし…

…でもまぁちょっとだけ…

例によってイバラキやら紅蓮丸やらが幸せを妬んでやって来るワケですよ。
1204披露宴紅蓮丸

『オマエ達の先輩の内野さんって人はまだ独り身で寂しい思いをしているのに、後輩の君達が先に幸せになっていいのかね!?』
1204披露宴新郎新婦とイバラキ
『早く僕らに追いついて欲しいですね』
『なんだと!?こんな披露宴ぶち壊してくれる!!』

で、さやかが登場して悪を蹴散らすワケですよ。
1204披露宴殺陣

で、そんなさやかは最近幸せなのかインタビューが始まるワケですよ。
1204披露宴インタビュー

そしたら何故かヤイバが登場してラブラブな雰囲気に!?
1204披露宴さやか&ヤイバ

とどめは必殺『共同作業斬り!!』
1204披露宴共同作業

…そんな感じで…

新郎新婦が喜んでくれてたらいいけど…
1204披露宴集合写真

ショーの後はイバラキのまま『〇×クイズ』の司会進行を行ないました。

新郎新婦に関するクイズを出して、勝ち残った方に賞品(挙式を行なったバリ島のお土産)をプレゼントするというもので、僕の進行ぶりはともかく、皆さん盛り上がっていました。

プレゼントをGETした3名の美人さん方、おめでとうございました♪

紅蓮丸のみちャきとヤイバの亮は披露宴の出席者だったので(途中で無理矢理出てもらった)、その2人を残して撤収。

みんみんはマイカーで帰宅。

代表はハイエース(レンタカー)で、リーダー、T・Tさん、時枝の3人を送ります。

大橋駅でT・Tさん、時枝とはお別れ。

ここから代表とリーダーの長旅が…

なんとリーダーは熊本の温泉で仕事関係の忘年会が入っていたのです。

そんな中、無理してショーを引き受けてくれたリーダー…

絶対間に合わせるぜ!

しかし…


山道!!

山奥!!

狭い!!

暗い!!

怖い!!

時間には間に合いましたが、独りで帰るの怖ぇよぉ~!って感じでした…

でもリーダーと色々話せて嬉しかったな。


今回の現場では嬉しい事、楽しい事がいっぱいでした。

でもやっぱり、みんなに祝福されて幸せそうな後輩夫婦を見れた事が一番嬉しかった♪


タツノブくん、
マユさん、
末永くお幸せに!!
2010-12-09(Thu)

実は今日は練習日…

本日9日は個人練習の為に場所を借りております。

でも…

誰にも告知をしていません!

独りっきりで練習したかったからさ♪

…なんてワケじゃなくて、単に告知する余裕がなかったから。

自分自身も練習に行けるか分からなかったし。

そんなワケでここで当日告知しちゃいますが、来られる方は連絡下さいませ。
2010-12-09(Thu)

小説・さやか見参!(30)

山吹たけると妹、さやかは久方ぶりに山を降りた。

『これから所用で街に行くけどさやかも来るか?』

たけるがそう訊いてきたのは、朝の修行を終えたさやかが屋敷に戻ってすぐであった。

大好きな兄の誘いだ。
さやかに断る理由はない。

『行く行く~っ!わ~い♪お兄ちゃんとお出かけだぁっ♪』

こうして二人は街に向かった。

忍びとして走ればあっという間の距離だが、人目のある場所ではそうもいかぬし今回は特に急ぎでもなかったのでたけるはのんびりと歩いている。

隣りを歩くさやかは終始にこやかだ。

たけると歩くのがよっぽど嬉しいのだろう。

左右で結んだ髪を揺らして、楽しげにおしゃべりしながら歩いている。

こうして見ていると、この子が忍びである事を忘れそうだ、とたけるは思う。

普段の忍び装束ではないのも理由の一つかもしれない。

さやかは浴衣とも甚平とも言えぬような着物である。

動きにくいのが嫌いなさやかはしっかりした着物を好まない。

生地は薄く、袖と裾は短く、それがさやかのこだわりであった。

色はやはり桜色で、所々に澄んだ空の色が入って、その色合いがどうにか女の子らしさを保っている。

大小に彩られた山吹の文様も華やかさに一役買っていた。

その着物の下には、身体にぴたりと張り付く黒い襦袢(?)が見える。

いかに幼いとはいえ女の子が腕や脚を晒すのはどうかと考えたたけるが作ったものだ。

若干窮屈かもしれないが、伸縮性に優れているので動きの邪魔にはならない。

さやかも本来なら拒みそうなものだが、

『たけるが自分の為に作ってくれた』

という事が嬉しくて、嫌がらずに着用している。

昼を過ぎて街に着いた。

思わずさやかが

『わぁっ』

と声をあげた。

街は祭りの最中だったのだ。

行き交う人、人、人、

歓声、怒号、楽しげな騒々しさ、

路端に並ぶ出店、

祭りを目にした事のないさやかにとっては初めて目にするものばかりであった。

『お兄ちゃんお兄ちゃん!なに!?これ!!なにがあってるの!?』

『これはな、お祭りといって、おめでたい事をみんなでお祝いしてるんだよ』

『へぇ~っ!おまつりかぁ!なんだか楽しい!』

内容は分からずとも楽しげな雰囲気は伝わるらしい。

『あ…でも、お兄ちゃんのご用で来たんだよね。おまつりにご用があったの?』

それを聞いて、たけるは酷く真剣な顔をした。

普段見ぬ兄の顔に、さやかが少々怖じ気づく。

たけるは真顔のまま片膝をつき、さやかの目線に並んだ。

『実はな、俺はさやかに言わなきゃならない事がある』

『え…』

深刻な語り口にさやかの表情も曇る。

『実はな…俺がここに来た用事というのは…』

たけるがさやかの目をまっすぐに見る。

さやかは不安で目を逸らしたい衝動に駆られるが、それでもしっかりと兄を見返す。

『本当は…』

と、突然たけるの顔がくしゃくしゃの笑顔になった。

『本当は用事なんてな~~んにもないのさ!』

あまりの豹変ぶりに流石のさやかも呆気に取られた。

一拍置いてから驚く。

『え~~~っ!?』

『あはははは!その顔が見たかったんだ。
本当は用事なんて何もなくて、さやかとお祭りで遊ぼうと思って来ただけなんだ!』

さやかはしばらくぽか~んとしていたが、段々と怒りや悔しさが込み上げてきたらしく、眉間にしわを寄せ涙を浮かべた。

『お兄ちゃんひどい!わたしの事だました!』

『ごめんごめん!さやかをびっくりさせたかったんだよ!』

『やだ!ぜ~ったい許さない!』

さやかに追われてたけるが笑顔で逃げる。


たけるはさやかに、世の中の楽しい事をたくさん知ってほしかった。

くちなわとかすみの事件で里にはどんよりとした空気が流れている。

山吹の頭領、武双が言うように一角衆が関わってきているなら、今後は何が起こるか分からない。

これからはさやかにもツラい現実が押し寄せるだろう。

さやかの豊かな感情が現実のツラさに押し潰されないように、今の内に現実の楽しさを教えておきたかったのだ。
2010-12-08(Wed)

小説・さやか見参!(29)

くちなわが勢い良く戸を開けると、かがちがビクッとして手に持っていた巻き物を何本か落とした。

『く…ちなわ…』

『驚かせて申し訳ありませんな母上。しかしもうお身体の具合いも良い様子。安心いたしましたぞ。
何やら調べ物でございますか?』

二人がいるのは屋敷の奥にある書庫である。
ここにあるのはほとんどが荊木の薬学医術に関する巻き物だ。

『どれ、私も手伝いましょう』

『い、いや』

『その辺りの巻き物は毒物に関する物ですな』

『…』

『母上も水臭い。調べずとも私に訊いて下されば、全て頭に入っておりますのに…毒薬も…解毒薬も』

かがちは手にしていた巻き物をいそいそと棚に戻すと、落とした巻き物も拾った。

『別に何を調べてたワケでもないさ。ちょっと整理してただけだよ』

『うか殿は死にましたぞ』

唐突なくちなわの言葉に、かがちは一瞬不思議そうな顔をした。

『いや、正確には、うか殿に成り済ました一角衆の間者は成敗いたしました、と言うべきか』

不思議そうな顔のまま、かがちの唇がわなわなと震える。

『くちなわっ!おまえっ!』

言うが早いか瞬時に抜いた懐刀をくちなわの胸に突き出している。

老女とは思えぬ敏捷さ。
やはりかつては名うてのくのいちだったのだろう。

しかし―

かがちの右手が勢い良く撥ね上げられ、かがちは後ろの壁に背中から叩きつけられた。

吹っ飛んだ懐刀が天井に刺さる。

かがちは右手を上げたまま壁に張り付いていた。

くちなわの放ったくないが、かがちの掌を貫き、壁に串刺しにしていたのだ。

張り付けになったままかがちが絶叫する。

『くちなわぁっ!おまえはぁっ!』

くちなわはその雄叫びが聞こえぬかのように平然と語る。

『いけませぬなぁ母上。いかにかつて手練れだったとはいえ寄る年波には勝てますまい。ご自愛を』

『おまえは息子をっ!うかをっ!!』

『あのうか殿は偽者。一角衆の間者であったと申し上げたはず』

『そんなはずあるもんか!あれはうかに違いないよ!自分の息子を分からない母親なんていないよ!!』

『弱りましたな…』

この狂乱ぶりは毒のせいか、それとも母心とはこういうものなのか…

『おまえは!頭領の座を奪われたくないばかりにうかを殺したんだね!』

『それは違いますぞ。あれが本物なら…ミズチ様の血を継いだうか殿ならば、頭領を任せる事もやぶさかではなかった…』

それはくちなわの本心であった。

だがその心は今のかがちには通じない。

『嘘をつくんじゃないよ!…荊木の頭領に相応しいのはうかの方だったのに!それをっ!!』

かがちは右手を貫いているくないを左で抜こうとした。

途端、左手も撥ね上がり、右と同じく壁に串刺しとなった。

くちなわは怒っているのか悲しんでいるのか、はたまた呆れているのか分からぬような低い声でつぶやく。

『先ほどから、頭領の座にこだわりますなぁ…』

そのまま刀をすらりと抜く。

『以前、母上に言われた言葉が身に沁みますぞ』

刀をぶらりと下げ、うつむいたまま独り言のように語り続ける。

『肩書きや地位にしがみついてはいけない。そう言われましたな』

ついとかがちに近付く。

かがちの顔が恐怖に歪んだ。

『…執着は心を汚して身を滅ぼす、そうも申されましたな』

上目遣いにかがちを睨んだくちなわの目はまるで、亡者を責め立てる地獄の鬼のような凶暴さをはらんでいた。

それを見て、

『この男を敵に回すべきではなかった』

と考える暇もなく、かがちの胴体は両手同様に串刺しにされていた。

かがちはもう動かない。

くちなわは、
顔を上げず、振り向かず、
黙って書庫を出た。

振り向けるはずがない。

己が壁に貼り付けたのは、自分を数十年育ててくれた母親なのだから。
2010-12-08(Wed)

アクションへの道(120)

僕の罪と後輩達の罪、って話でしたね。

で、自分の罪はいったん棚上げしますって話でしたね。

…なんて勝手な(笑)

まぁそんな非難はいつもの事なんで気にしませんよ~。

僕が後輩の(中堅クラスの)女の子達を見て思ったのは、

『あぁ、この子達は努力を知らないんだなぁ』

って事でした。

僕らの仕事はキャラクターの姿を借りて表現する事です。

演じるキャラクターによってはその為の体型調節が必要になります。

また、より良い動きをする為に筋力が必要だという側面もあります。

彼女達もそれは分かっていたのでしょう。

『痩せたい』『筋力をつけたい』

この願いはあったようです。

ある時彼女達は僕に訊きました。

『どうやったら痩せますかねぇ?』

僕は30kgダイエットを成功させた男なのでよく訊かれてたんです。

『毎日走れ』

「走ると筋肉がついて脚が太くなるんですよ」

『女の筋肉はそんな簡単に太くならん。長距離走の選手なんかみんな細いやないか』

「太くなる体質なんです」

『(嘘つけ!と思いながら)じゃあ毎日とことん歩け!歩き倒せ!』

「練習がある日は帰りに歩いてますよ!」

『ほう。どのぐらい?』

「薬院(駅)から天神(駅)までです」

『10分もかからん距離やないか!(しかも練習帰りに歩いてない事を俺は知っている)
もういい、メシを食うな』

「食事を抜いたら逆に太るそうです。お米を食べずにおかずだけ食べるのがいいらしいんですよ」

『だぁーっ!お菓子を一切やめぃ!』

「お菓子は太らないらしいです(←根拠ナシ)」



…この子達はどうやって痩せるつもりなんでしょう??

ちなみに彼女達は仲間でわいわいやるのが好きな人達だったので、
練習の日はすごーく早い時間に集まって、道場でお菓子を食べながらおしゃべり。

練習が終わったらファミレスで明け方までご飯を食べてデザートを食べておしゃべり…

そんな子達でした。

僕には彼女達の向上心を見抜く事が出来ませんでした。

だからこそ、必死に努力するという事を教えたかったのですが…


でもやっぱり、彼女達を上手く導けなかったのは先輩である僕の責任なんです。

この当時の苦い経験が、今の僕の糧になっている事は間違いありません。

いやぁ~、しかし、解雇通告を受けた時はかなり凹みましたわ~。

自業自得とはいえね。
2010-12-08(Wed)

小説・さやか見参!(28)

くちなわの振り下ろす刀を受けた偽者のうかはすかさず口から毒針を吹いた。

わずかな距離から放たれた攻撃をくちなわが身体を左にねじってよける。

その隙にうかは己の刀を滑らせくちなわの喉を薙いだ。

と同時に左脚でくちなわの大腿部の裏側辺りを蹴った。

至近から繰り出される前後の攻撃など普通なら躱せまい。

だがくちなわは上半身を大きく反らし、そして両脚を前方に振り上げ宙に跳ぶ事でそれをよけた。

その反動を利用して右脚でうかの頭部めがけて蹴る。
うかはとっさに右腕でそれを受ける。

くちなわは止められた瞬間に空宙で身体を左にひねった。

同時に右脚でうかの右腕を固定し、左脚のかかとをうかの頭めがけて、ぶんっと振った。

うかは身を低くしてそれを躱す。

くちなわは回転してから屋根に着地した。

瓦に足が触れた瞬間うかの刀が身体を払った。

だがくちなわは着地の反動を使って、更に回転しながら屋根から跳ぶ。

地上に着くまでのわずかな間に屋根からおびただしい手裏剣が飛んだ。

くちなわは回転しながら全てを刀ではじき返し着地する。

頭上には刀を大きく振りかぶったうかが迫っていた。

それに向かってくちなわが刀を斬り上げようとした時、うかの右足の爪先から6~7寸ほどの刃が飛び出した。

振り上げた刀は陽動で、この足技を狙っていたのだ。

目の前のくちなわに向かって、落下の勢いを加えた必殺の蹴りを繰り出すうか。

くちなわは大きく右に向かって飛び退き、そのまま地面を転がった。
そして立ち上がり様にそのまま右へ走る。うかも追う。

二人は同時に林の中に入った。

木々が立ち並び薄暗く、足元には倒木だの切り株だの蔦が絡まったような植物だの色々な物があったが、彼らほどの忍びにはその程度何の障害にもならない。

ものすごい速さで木々の間を走り抜ける。


木々の隙間を走っていると、刹那とはいえ敵が視界から木々の向こうに消える事がある。

だが、消えた、と思った瞬間には全く別の場所から斬りかかってきたりするのが忍者だ。

くちなわもうかも、まさに神出鬼没であった。

この戦い、並の忍びが見たならば、あたかもお互いが瞬間移動しながら戦っているように思えるだろう。

ましてや忍びでない者が見たならば二人の姿は見えないのではないだろうか。

『くちなわ、この林の事も俺は知ってる。
おまえに地の利はないぞ』

『それはどうかな』

くちなわの声が聞こえた瞬間、うかの動きがほんのわずか止まった。

それは高速移動の中の、ほんの痙攣的なよどみであったが、うかが

『しまった』

と思う間もなく、うかの胸にはくちなわの刃が深々と突き刺さっていた。

うかは言葉を発する事も出来ずに、目の前で自分に刀を突き刺したままニッと笑うくちなわを見た。

『ちょうどこの辺りの地中には水気を通しにくい岩盤があってな。
それに遮られた水がここにたまってよどむのだ。
つまりここは、荊木の砦の中で最も土が柔らかい場所。
気をつけねば上忍といえど足を取られますぞ』

うかは恨めしげに口を動かしたが、もう言葉が出ない。

『忍びたる者、情報に頼っておるだけではいけませぬなぁ。
拙者も心に刻まねば…
はっはっはっは!!』

くちなわは笑いながら、うかの胸に突き刺さった刃をぐるんと回転させた。

うかを名乗った敵はもう動かなかった。
2010-12-07(Tue)

小説・さやか見参!(27)

くちなわの笑い声が収まると、かがちは体調の悪さを理由にふらふらと奥へ入っていった。

若干嘲りの笑みをうかべてくちなわはそれを見送る。

そして立ち上がりながら

『うか殿、今日は珍しく天気も良い。外に出てみますか』

と爽やかに言う。

うかも

『良いですな』

と立ち上がった。


荊木の砦のはずれに、今ではもう使っていない屋敷がある。

ここには昔、鉄を扱う職人がいて、手裏剣などを作っていた。

うろこと呼ばれる下忍達はここに集まって手裏剣の投げ方を教わったりしたのである。

陽射しを浴びながらくちなわとうかが歩いてくる。

うかがつぶやく。

『懐かしい…もう職人は誰も残ってはおらんのだな』

『私が幼少の頃に別の場所に移りました。荊木の職人ではなく、十二組全体の職人になりましてな。まぁちょっとした出世と言えましょう』

『おや、その辺りに大きな楓の木があったと思いましたが』

『とうに枯れてしまいましたわ。なにぶん我々もあの木を的に手裏剣の練習をして、かなり痛め付けてしまいましたからな』

二人は笑う。

その雰囲気のまま―

くちなわはうかに軽く語りかける。

『楓の事まで知っているとは…一角衆の情報網は一体どうなっておるものか』

うかもすまして答える。

『造作もない。
我ら一角衆、間者の育成においては他流派の追随を許さぬ。
かつて本物のうか殿と敵地に潜入した牛組の忍び、一角の者にはすぐに正体を見抜かれておった』

『やはり本物のうか殿は…』

『手を下したのは俺ではないぞ。俺もまだ幼かったからな』

『母上に毒を盛らせたのは貴様か?』

偽者のうかは笑った。

『それは違う。あれはあのばばぁが勝手にやった事よ』

『おぬし達の人心を惑わす技はなまなかではないな。
拙者が死なずに計画が狂ったか?』

『別に。あんたが死ねば俺が荊木をいただく。
死ななければばばぁの裏切りで荊木は崩壊。
どっちにしても俺には利がある。』

『拙者がこの事を母上に話したら?』

『信じないだろうな。あのばばぁ、俺を本当の息子だと思ってやがる。
まぁこの砦に毒を撒いたのは正常な判断を鈍らす為ってのもあったんだがな。
かすみは良くやってくれたよ。』

くちなわはかすみという名前に少し反応した。

『すまんすまん、嫌な名前を出しちまったな』

うかを名乗る一角衆の忍びがくちなわに顔を寄せ、にやりと笑った。

瞬間、
くちなわが目に見えぬほどの速さで刀を抜き、そのまま胴を払った。

確実に両断出来る距離であったはずなのに刀が空を斬る。

跳躍したうかはすでに屋敷の屋根に上っていた。
何という常人離れした身体能力であろうか。

だが瓦に着地したと思った時にはくちなわもすでに追い付き刀を振り下ろしている。

いつの間に刀を抜いたのか、うかはそれを受けた。

白刃が火花を散らした。
2010-12-04(Sat)

まったり中…

会場でリハやってご飯食べてくつろぎ中~

このままじゃみんな寝ちゃうよ~
2010-12-04(Sat)

朝だ!

間もなく出発~!
2010-12-04(Sat)

明日は早いのに…

ちょっとイライラする事があって眠れない…

ちきしょーっ!
2010-12-03(Fri)

小説・さやか見参!(26)

くちなわは飯を口に運んだ。

咀嚼の間、沈黙が流れる。

ようやく嚥下すると、

『うむ、うまい』

と唸った。

『母上もうか殿も食あたりには気をつけなさりませ。あれはなかなかにやっかいなものでございますぞ。』

かがちは青ざめて、うかは穏やかな顔で聞いている。

『魚貝など、あたれば死に至るものもあるようですからな。…はて…しかし先日は何にあたったものか…』

かがちは目を合わさぬまま固まっている。

うかは微笑んでくちなわを見ている。

くちなわは膳の上辺りをぼんやりと見ている。

突然うかが口を開く。

『心当たりはあるのですか?』

『ふむ…最後に口に入れたのは握り飯と香の物だったか…いや、しかし母上の作った飯が…』

うかが受ける。

『まぁいかに吟味したとて、腹に入るまで分からぬ物もありますからな。
それにしても、ここが医学薬学に優れた蛇組で良かった。
ここなら食あたり程度の薬なら溢れるほどございましょう』

『それがな、うか殿』

くちなわは空になった茶碗を膳に戻すと、おどけたような驚いた顔をした。

『何と、いかな薬を使っても効き目がなかったのだ。たかが食あたりと甘く見て、危うく命を落とすところであったわ。はははははっ!』

くちなわは豪快に笑った。
その振動がかがちの小さな身体を震わせているように見えた。

『荊木の秘術に…』

くちなわが突然声を落とす。

『甕の中に様々な毒蛇を入れて殺し合いをさせ、生き残った一匹をさらに3日その甕に漬け、4日目に生き血を搾り最強の毒となす、というものがありますな』

『幼き頃に聞いた気が…
伝説伝承の類かと』

『しかり。私もそう思っておりました。まぁそれはさておき、その毒を用いれば、飲んだ者の血を侵し五臓六腑を腐らせて死に至らしめるとの事。こたびはまさにその毒を飲んだような苦しみでしたぞ』

うかは片方の眉をしかめた。

『それは難儀でござったな…しかし無事で何より。先ほど、いかな薬も効かなんだ、と申されましたが』

『おぉ、それだ。何と荊木に伝わる薬草薬丸が一切通用せぬのよ。しかしな、1つだけ…』

くちなわはうかに向かってニッと笑う。

その笑みは顔を合わせていないかがちを意識しているようだ。

『実は私、かねてより独自に研究しておる物がありましてな。
先ほどの毒蛇の生き血、それに対する解毒薬を密かに完成させておったのです』

かがちが脂汗を浮かべる。

『伝説伝承の類と一笑せず研究しておいて助かりました。
もしあれが食あたりでなく敵が盛った毒であったなら…まさか解毒薬が完成しているとも知らず、悔しがっておりましょうなぁ!はっはっはっは!』

屋敷に響くその笑い声は、くちなわの敵意を辺りに充満させていった。
2010-12-03(Fri)

さてさて

もう少ししたらレンタカー借りに行かなくっちゃ。

明日はいつもより人数多いからちょっと大きめの車で。

それから荷物積み込んで・・・
立ち回り考えて・・・
(当日の午前中にリハーサルなんです)
台詞の復習して・・・

出来るだけ早く寝たいな。

ショーの後はメンバーを熊本の平山温泉まで送って・・・

帰りは・・・
きっと独りドライブ・・・

参加メンバーに

「もし良かったら誰か一緒にドライブしな~い?」

とメールしたけど誰からも反応はナシ・・・

人徳人徳ゥ♪

好きなCD持ってって、独りカラオケドライブするか!!
2010-12-03(Fri)

12/4の事

明日、12/4は後輩夫婦の披露宴で

『忍者ライブショー さやか見参!』

公演してきます!

披露宴用スペシャルパッケージ!

…ですが…

一般の方は観る事が出来ませんのであしからず!!
2010-12-03(Fri)

アクションへの道(119)

『立ち回り=演技』
という主張は今まで何度も語ってきましたので説明を省きますが…

実際それを理解していたメンバーはどのぐらいいたんでしょう。

みんながこれを理解すれば、『アクション』と『メルヘン』の垣根を取り払う事が出来る。

そうなれば、『アクションメンバー』と『メルヘンメンバー』の垣根を無くせるかもしれない、と思ったんですが…



やはりメルヘンを卑下するアクションメンバーは根強く残っていました。

『メルヘンをやってる奴は楽をしたい奴』

というだけでなく、

『メルヘン練習に行く男は女目当てだ』

というような事も言われていたのです。

これはメルヘンメンバーのほとんどが女の子だった為こう言われてたんですが…

こんな言い方されちゃ男性メンバーは行きづらいですよね。

まぁ悲しいかな、女の子目当てのメンバーもそれなりにいましたけど…(泣)

…という事で僕は
『アクションメンバーも来たくなるようなメルヘン練習』
を目指しました。

おまけに、来てもらう以上は
『おっ?メルヘンも頑張ってんだな』
って思わせなきゃ意味がありません。

アクションにハマってるメンバーのほとんどは身体を動かす事が好きな連中です(僕は違いましたが)。

なので身体作りを導入部に持ってきたのです。

まずは動ける身体を作る。

次に動かし方を覚える。

演技とは何かを考える。


その後にようやく演技の練習です。

『とりあえず動く』
『何となく動く』

これが癖になると抜けにくいからです。

ダンスは後回しです。

ショーにおいてはダンスだって演技の範疇。

フツーの演技が出来ない者に出来るハズがありません。


…とまぁ、こんな感じで練習を進めていたのですが…

まぁ実際アクションメンバーもたくさん来てくれるようになりましたよ。

でも、元々メルヘンをやってた女の子達は

『自分達がやりたい練習はこんなんじゃない』

ってジレンマがあったみたいで…

そして数ヶ月後、僕に指導を依頼してきた女の子達の口から『解雇』を言い渡されたワケです。

原因の6割は僕の未熟さ、4割は彼女達の甘え、そう思います。

僕の欠点についてはこれからもこのブログでボロクソ出てきますんで、次回は彼女達の『甘え』について語りましょう。
2010-12-03(Fri)

小説・さやか見参!(25)

乾いた風がミズチの屋敷を通り抜けた。

湿地を選んで築かれた荊木の砦にしては珍しい風である。

屋敷では、かがちとうかが母子水入らずの朝食の最中だ。

かがちは穏やかな顔をしている。

先日までの『頭領の妻』の顔ではない。
家庭的な幸せを味わっている『母親』の表情である。

かがちは箸を置くと、母の顔のままでつぶやいた。

『うか、そろそろ一角衆に対して動かなければいけないね』

『しかし母上、ここ数日、頭領の姿を見ておりませぬ。くちなわ殿の命なくして我らが動くわけには参りませんぞ』

『まったくあの子ったら…この大事な時期に何をしてるんだか…』

かがちはさして気にも止めていないようにつぶやく。

『くちなわ殿の住まい、もぬけの殻でござったが…夜具も床板も血糊がべったりと染み付いておりましたぞ。もしや…』

『あの子も荊木を束ねようかってほどの忍びだ。きっと心配には及ばないよ』

『しかし…』

『もしかすると、うか、おまえに頭領の座を譲るつもりかもしれないねぇ。だから姿をくらましたのかもしれないよ』

かがちの言葉はどこか芝居めいている。

『まさかそのような』

『いや、確かあの子は言ってたよ。荊木の跡を託すなら、ミズチ様の血筋が相応しい、とか何とかね』

素っ気なく言葉を紡ぐ。

しかしその言葉の余韻が消える前に野太い声が響いた。

『ほう、初耳でございますな』

これにはさすがのかがちも一瞬硬直した。

かがちとうかが同時に声の方に顔を向けると…

勢いよく戸が開いた。

『くちなわ…』

かがちが声を震わせる。

そこに立っていたのは、
数日前とは変わり果てたくちなわの姿であった。

痩せこけてくぼんだ頬、
落ち込んでぎょろりと見える眼、
無精髭、
口の周りには吐血の跡も生々しい。
顔色は青白く、
乱れた髪が風貌を更に悲愴なものにしていた。

『く、くちなわ、おまえ』

『どうしました母上、狐狸妖怪を見るような眼で』

穏やかに話しながらいつもの位置に―

かがちの隣りに腰をおろす。

顔色の悪いくちなわよりも、かがちの方が青ざめて見える。

くちなわはかがちの前の、空になった膳を見て

『私もいただきますかな』

と言うと屋敷の奥に声をかけた。

しばらくして一人前の膳がくちなわの前に運ばれてきた。

『あぁ、久しぶりの飯だ』

茶碗と箸を手に取る。
しかし口に入れる気配はない。

『恥ずかしながら、しばらく食あたりで苦しんでおりましてな。』

くちなわはにこやかにかがちを見た。

かがちは―

決して目を合わせようとしなかった。
プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

現在は関西コレクションエンターテイメント福岡校さんでのアクションレッスン講師もやらせてもらってます。

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