2010-12-31(Fri)
間もなく2010年が終わろうとしています。
思い返せば今年も色んな事があり、色んな方にお世話になりました。
たくさんの出会い、たくさんの仕事、少しの別れ…
上手くいった事は全て皆さんのお力添えによるものです。
上手くいかなかった事は皆さんの励ましで乗り切る事が出来ました。
何を思い出してもただただ感謝しか浮かびません。
嘘っぽいと思ってるでしょ?
95%は本当ですよ♪
来年もまたお世話になると思うし、たくさんの迷惑をかけるだろうけど、出来るだけ恩返し出来る一年にしたいな、と思ってます。
武装に関わってくれた皆さん、
代表に関わってくれた皆さん、
山吹さやかを応援してくれた皆さん、
そして、いつもこんな拙いブログを読んでくれている皆さん、
本当に、本当にありがとうございました。
また来年お会いしましょうね。
良いお年を♪
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2010-12-31(Fri)
関係者との長い長い撮影も終わり我々はひと休み…
もしかしたらカウントダウンの時に出るかも…と言われたので待機です。
でも結局出ない事になって…
『そうだ!カウントダウンの瞬間に、ゲネプロで腰骨をやっちまったアイツに電話しようぜ!』
なんて話になり…
年明けに電話。
『…もしもし』
『おぉっ!明けましておめでとう!』
『…おめでとうございます』
『そっちはどう?』
『…寝たきりですけど…』
『そう!こっちは楽しいぜぇ~!!』
…最低の先輩達です(僕を含む)。
こんな感じの、本当に想い出深いカウントダウンの現場でした。
…あ、この現場で一つ…
殺陣のリハーサルを見たディレクターさんから
『速すぎて何をやってるか分かりづらい』
と言われたんです。
でもまだまだ動きたい盛りの我々は
『何の技をやってるかをいちいち分からせる必要はないんだ』
『目が追いつかないぐらいのハイスピードアクションを見せたくてやってるんだ』
なんて言って指示を聞かなかったんです。
今思えば、観客の事を何も考えてないなぁ~、思い上がってたなぁ~、って反省です。
後々、ではあるんですが、『演者がやりたい事』と『観客が観たいもの』は違うんだよなぁ~、って事を考えさせられた現場でした。
2010-12-31(Fri)
キャラクターとダンサーさん達によるパフォーマンスは本当に『プロフェッショナル』って感じで感動しまくりでした。
以降、何度ビデオを見返したか分かりません。
そんな華やかなダンスの中で突然、
ドド~ンッ!!
と爆発音が響き会場は暗転。
『ハッハッハッハ…今からこの会場は…』
どこからともなく悪の首領の声が聞こえます。
非難するキャラクター達。
おびえて逃げ遅れるダンサーさん達。
『戦闘員!ゆけっ!』
おなじみ黒覆面の戦闘員が会場を遅い、一人のダンサーさんを捕まえます。
そこに怪人があらわれて、会場の支配を宣言します。
しかし!
目がくらむほどのライトに照らされて!
『力と技』を受け継いだ赤い仮面のあのヒーローが登場!
予期せぬヒーローの登場に会場は大きなどよめき。
さらに
『待てぇい!…変…身ッ!』
と癖のある台詞回しで、赤いマフラーのあのヒーロー(僕)が5mの足場に登場!
そこから落とされる戦闘員(K氏)に、そしてそれを追って宙返りで飛び降りるヒーローにものすごい歓声が!
それからアクションを繰り広げ、大盛り上がりの中でショーは終了…
ところが、この国民的ヒーローの人気を知ったのはここからで、ステージ裏で関係者の撮影責めにあったのです。
やっぱりみんなにとって憧れのヒーローなんですね~。
~つづく~
2010-12-31(Fri)
ゲネプロで腰骨ボキッ!っとなった後輩は、亀と同じぐらいのスピードで帰って行きました。
可哀想に。
不甲斐ない先輩達が調子に乗って色々と要求しなければ無事に終われたものを…
まぁみんながビビるのも分かるんですけどね。
5mぐらい、って書きましたが、実際何mだったのかは分かりません。
5mより低い事はなかったでしょう。
いま記憶を反芻してみても…
足場に立って覗いた景色は10mぐらいの感覚がありますもん。
マットちっちぇ~っ!みたいな。
とにかく怪我人の代役を見つけなければ…
と思っていたらすぐに見つかりました。
僕の3つ年下で、10ヶ月ぐらい後輩のK氏です。
K氏は器用な男で、落っこちも本番当日の練習で
ひょい
っとやってしまいました。
さてさて本番…
会場にはびっくりするぐらいお客さんがいて異常なハイテンション!
(市長挨拶の際にも若者達から『市長~ッ!市長~ッ!』と市長コールが起きていた)
いくつかのステージがあったのですが、僕らが待機しているステージではキャラクターのダンスがメインでした。
正直なところ、それまでの僕は
『キャラクターのダンスって何が楽しいの!?』
なんて思ってたんですが…
考え方が180°変わりましたね。
最高のエンターテイメントでした♪
~つづく~
2010-12-30(Thu)
腰骨ボキッ!…って、
何でそんな事になったのかというと…
このショーでは5mぐらいからの落っこち&飛び降りがあったんです。
高さ5mの足場にヒーロー(僕)が登場。
ポーズを決めます。
そこに戦闘員が襲いかかりますが、やられて落ちていきます。
それを追いかけてヒーローは宙返りで飛び降ります。
そんなシーンがあったのです。
僕はまぁいいとして、問題は戦闘員です。
『誰が戦闘員に入るか!?』
それがなかなか決まらなかったのです。
メンバーは選りすぐりだったのですが、いかんせん落っこち経験がない!
僕らが普段やるようなショーでは落っこちや飛び降りなんて滅多にないのです。
とりあえず、当時トップを張っていたメンバー達が順番に足場に登ってみます。
そして恐る恐る下を覗き込んで…
黙って降りてきます…
結局キャリア半年の若手が落ちる事になりました。
この若手は落っこちの練習をした事があったのです。
『えーっ!?自分っスか!?』
『行ける!オマエなら行ける!!試しに落ちてみよう!』
自分達は行こうとしないくせに、先輩達は好き勝手に言っています。
後輩は試しに落ちてみました。
上手い事落ちました。
それを見た先輩達は
『おっ!上手い!』
『次はもっともがきながら落ちよう!』
『ギリギリまで頭を残して!』
と、どんどん要求をエスカレートさせていきます。
そうやってハードルを上げ続けた結果…
腰骨ボキッ!!
だったのです…
~つづく~
2010-12-30(Thu)
さて、カウントダウンのステージですが、主役はもちろんテーマパークのキャラクター達(とダンサーさん達)です。
僕らが演じるヒーローの出番は5分ぐらい。
突然悪役が乱入してステージ上は大混乱!
そこへ登場するヒーロー達。
颯爽と悪を倒し、風と共に去って行く…
そんな感じのゲスト出演でした。
…で、数日前に『ゲネプロ』があったんです。
『ゲネプロ』ってのは『本番通りのリハーサル』って感じでしょうか。
しかし僕らは『リハーサル』はやっても『ゲネプロ』なんかやった事なくて…
『ゲネプロ』の意味も分かってなくて…
本番通りの音響!
本番通りの照明!
本番通りのダンサーさんにキャラクター達!
…その中に、ジャージ姿の僕達…
恥ずかしいっ!
まるで素人みたいだっ!
でもとりあえずやるしかない。
『本番まで衣裳は着けない。それが俺達のやり方さ』
みたいな素振りでプロ感を演出。
ところが…
いきなりメンバーが腰骨をやっちまった!
ボキッ!
骨がボキッ!
プロ感もボキッと折れちゃった!
~つづく~
2010-12-29(Wed)
アクションへの道、1996年のエピソードを書いてましたが、ちょっと飛びます。
飛びます飛びます♪
…リアルタイムで知らない坂上二郎さんのネタを入れてしまいました。
1998年から1999年のカウントダウンの話です。
今、『1999』って携帯で打ってたら『アラララ』になってました。
『熱中時代』の北野先生(水谷豊)を思い出しますね。
アラララ、校長先生~
これはリアルタイムで知ってるネタです。
ってか脱線しすぎですか。
ダメですか。
年末にそれを許す度量はありませんか。
…そろそろ真面目に…
北九州的な所にですね、
テーマパーク的な施設がありまして、
そこでは大晦日に大掛かりなカウントダウン的なイベントがあるんですよ。
…『~的な』を付けたら話を曖昧に出来るかと思いましたが無理っぽいのでやめます…
そのテーマパークにはたくさんのキャラクターがいて、本来なら僕ら余所者が入る隙なんてないんですが…
その年はテーマパーク内のイベントに3ヶ月ほど関わっていた縁がありまして…
あの国民的ヒーロー、的な?
…バッタ…的な?
キックする…的な?
そんなキャラクターのイベントで3ヶ月ショーをやってたワケです。
この辺りの詳細はいずれ書きますが…
…で、
『せっかくだから、そのヒーローもカウントダウンに登場させよう!』
って事になったらしいのです。
~つづく~
2010-12-29(Wed)
2010年も残りわずかですね~!
そんな中でネタが見つからないこのブログ。
今年の練習も終わっちゃったし、来年の抱負は大晦日まで取っておきたいし…
しかし自分で言うのも何だけど、このブログって誰がどんなつもりで読んでるんだろ!?
気になりつつ解明はされない2010年でした。
あ、
後で1998年のカウントダウンの話でも書こうかな。
『アクションへの道』、お楽しみに!!
2010-12-28(Tue)
僕と吉田にいやんは、
『まぁ生放送だし仕方ないよねぇ』
なんて話しながら、しばらく待機する事になりました。
しかし、どのタイミングで出番が来るか分からないので、うつぶせの怪獣に足だけは突っ込んでおく事にしました。
急に出番が来て、それから足を入れてたら間に合わないかもしれなかったからです。
足だけ入れておけば何とかなると思ったからです。
うつぶせ怪獣に足を突っ込んでうつぶせで待機する僕…
しかし完全にうつぶせになると着ぐるみに埋もれて苦しいので、微妙に上半身を起こしたキツい体勢です。
この状況で…
10分…
30分…
1時間…
『おいおい!俺達忘れられてるんじゃないの!?』
と心配になる待機時間です。
やがて撮影スタジオの方から
『5…!4…!3…!2…!1…!ゼロ…!!新年明けましておめでとうございま~す!!』
と賑々しい声が。
年が明けました。
テレビ局の倉庫で怪獣に足を突っ込んでうつぶせになったまま新年を迎えました。
『本当に俺の出番は来るのか!?』
でも怖くて怪獣から足を抜けません。
それから更に1時間近く経ってから…
駆けてくる撮影スタッフさん!
『お待たせしました!間もなく出番です!準備お願いします!』
駆け去っていくスタッフさん!
『おい!あんたが起こしてくれんと怪獣が立てんのやけど!』
しかし戻ってくる気配はありません。
仕方ないので渾身の力で怪獣を持ち上げるにいやん。
僕もどうにか頑張って立ちます。
何とか、何とか怪獣は立ち上がりました。
そしてスタジオへ…
出番は3分もなかったでしょうか。
全てが終わって僕とにいやんはテレビ局を出ました。
元旦の朝日が僕達を包んでいました。
2010-12-28(Tue)
不毛なドッヂボール対決も終わりました。
次はテレビ局のスタジオで僕の出番です。
司会のタレントさんが映画の告知をする間、ひな段の後ろに立って動くという簡単な仕事です。
吉田にいやんはドッヂボールで大変だったのに俺はこんなんで悪いなぁ…なんて言いながら準備。
この時の怪獣の着ぐるみは映画の撮影で使われた物で、中に入る為にかなり苦労しました。
まず着ぐるみをうつぶせに寝かせて、アクターもうつぶせになり両足を突っ込む。
この足を入れる作業がかなり大変でジタバタジタバタ…
何とか足が入ったら上半身を入れる。
上半身は割と楽に入ります。
スッポリ入ったら2人がかりで両腕を掴んで起こします。
着ぐるみが重いので、一人では起こせないのです。
吉田にいやんだけでは厳しいので、撮影スタッフに手伝いをお願いしていました。
さぁ、そろそろ僕の出番だ!
吉田にいやんとスタッフさんに起こしてもらって背中のファスナーを閉めます。
スタッフさんが
『直前になったら呼びに来ます!』
と言って控え室を出て行きました。
テンションを上げて待機する僕…
するとスタッフさんが戻ってきて言いました。
『スミマセン、段取りが押してて、怪獣の出番はまだ先みたいです…』
『どのぐらい押してますか?』
少しぐらいなら着ぐるみを脱がずに怪獣のまま待機した方が楽です。
『けっこう押してるので一旦脱いでてもらっていいです。出番が近付いたらまた呼びに来ます』
スタッフは去っていきました。
~つづく~
2010-12-27(Mon)
『なるほどな…ここに出向いたは失敗だったか。隙を見てあやつの最愛の妹を殺してやろうと思うたが』
まるで悔し紛れのようにイバラキが毒づいた。
『…くちなわ…殿…まさか…お兄ちゃんを、殺したの…』
絞り出したさやかの声が震えている。
それを聞いてイバラキが微かに勝ち誇った顔をした。
『おぉ、この手で斬り捨ててやったわ。これはな、たけるの亡骸からはぎ取ってやったのよ』
イバラキは左手で陣羽織を示そうとしたがすでに左腕は地に落ちていた。
それに気付いてふっと自嘲し、右手に持った刀を見せた。
鍔に山吹の紋章が入ったそれは、間違いなくたけるの物だ。
怒りにさやかの髪が逆立った。
『どうして!お兄ちゃんはあなたの事をいつも気に掛けていたのに!!』
『俺はな、もう偽りの優しさには騙されんのだ。奴め、不意を突いて俺の顔をこのようにしおったが、まともに立ち合えば俺の敵ではなかったわ』
『お兄ちゃんは人を騙したりしないわ!』
『騙す嵌めるは忍びの常套であろうよ。俺は忍びの優しさなど信じん』
さやかが声を荒げる間際、武双が低く、重く口を開いた。
『哀れな。一角衆の罠に落ちたとはいえ、おぬしほどの男がそこまで己を見失うか。これではみずち殿も浮かばれまい』
みずちの名を聞いて一瞬びくっとする。
『だ、黙れ!』
『この様子では、たけるがわざと斬られた理由も分かるまい』
『わざと斬られた、だと?』
確かに最後の瞬間、たけるに戦意はなかった。
もちろんイバラキも気付いていたが、それを認めるのは自尊心が許さない。
『違う!たけるは俺が!この手で!』
武双は表情も変えずに鼻で笑った。
『ふ、たけるがその気ならば、おぬしには万に一つも勝ち目はなかったわ。たけるはな、その程度の腕ではない』
図星を突かれてイバラキの殺意が萎えた。
『ぬぅ…では…どうして奴は…』
イバラキが虚空を見ながらつぶやいた瞬間、
『くちなわぁっ!!』
幼いさやかが叫んだ。
その眼は妖獣のように殺意に燃えていた。
『くちなわっ!きさまぁっ!お兄ちゃんを!よくもお兄ちゃんをっ!!』
素早く抜刀してイバラキに襲いかかる。
速さ、力、とても少女のものとは思えない。
『返せっ!その刀はお兄ちゃんの物だ!その着物はお兄ちゃんの物だ!!』
しかしいくら腕が立とうとも少女の力ではイバラキは倒せない。
『ふん、さすがはたけるの自慢の妹だな。安心しろ。すぐにお前も兄貴の所に送ってやる』
『くちなわぁっ!きさまこそ殺してやるっ!!』
イバラキに向かって行こうとするさやかの刀を武双がはじいた。
さやかは後ろに吹っ飛ばされ転がった。
起きざまにイバラキに飛び掛かろうとするのを武双が遮る。
さやかは刀の柄をぎりりと握り締め、歯を食いしばる。
怒り狂った瞳からは涙が溢れ出した。
武双は低く
『くちなわ、早々に去れ』
とだけ言った。
イバラキは一瞬驚いたが、崩れた顔でにやりと笑うと、
『俺を生かしておく事、必ず後悔するぞ。山吹流は俺が潰す。まずはその娘の命をいただいてやる』
と、さやかを指差した。
『逃げるなくちなわっ!!』
さやかが叫んだ。
イバラキは後退りながらもう一度にやりと笑う。
『俺はもうくちなわではない。覚えておけ。俺は幻龍組頭領、幻龍イバラキだ!』
そう言うとゆっくりと離れ、そして姿を消した。
さやかは何度か荒い息を吐いて刀を背中の鞘に納めると、怒りに震える右手で、結んだ髪をぎゅっと握り締めた。
『イバラキ…幻龍イバラキ…!あいつだけは…お兄ちゃんに代わって私が倒す!』
左右で二つに結んだ髪の片方が風に揺れた。
もう片方はいまだ小さな手に強く握られ、わなわなと震えている。
『私が、お兄ちゃんの代わりに山吹を守る!』
怒りの表情のまま武双を通り越し、イバラキがいた辺りを睨んだ。
そして一際通る声で
『覚えておけイバラキ!私は、山吹流忍術正統後継者!山吹さやかだ!!』
そう言って泣き崩れた。
懐から落ちた二つの折り鶴がとめどない涙に打たれている。
すでに朝日が昇っていた。
しかし、
山吹さやかに昨日までと同じ朝が来る事は、
もう、ない。
~第一部・完~
2010-12-27(Mon)
『たける兄ちゃん!』
さやかが叫んだ。
顔面に大火傷を負ったたけるが下忍に支えられながらよろよろと歩いてくる。
『たける兄ちゃん!!』
駆け出して行こうとするさやかを武双が止めた。
『父上!?』
武双はただ黙っている。
『若、とにかく屋敷で手当てを!』
下忍達が屋敷に運ぼうとするのをたけるは拒む。
『俺なら大丈夫だ。それよりも先にかしらに伝える事が…』
炎を吸って喉が焼けたのか声がかすれている。
すぐにでもたけるの元に駆け付けたいさやかは武双を見た。
やはり父は黙って立っている。
行くに行けないさやかはもどかしい思いで必死に踏み止どまった。
ふらふらと歩きながらたけるがかすれた声を上げる。
『かしら、件の連続殺害、くちなわ殿が全て認めました。
その上で私にも手をかけんとした為、やむなく討ち取りましてございます』
両脇を支える下忍を振りほどいてたけるは武双の前に片膝を着いた。
畏まったのか崩れ落ちたのかは分からない。
『しかしながら、あの卑劣なくちなわの奴、火遁で砦ごと私を…』
呻くようにそう言って、顔を押さえたたけるは苦しそうにうずくまった。
しかし、先ほどまで、今にも駆け出さんとしていたさやかは動こうとしなかった。
『…違う…』
そうつぶやいたさやかは、むしろ警戒するように半身になり表情を曇らせている。
『お兄ちゃんがくちなわ殿を卑劣な奴だなんて言うはずないもん!あなた、誰!?』
さやかが後退ったのと、うずくまった状態のたけるが鯉口を切ったのはほぼ同時であった。
そして、
たけるが身体を起こしながらさやかに向かって刀を抜いたのと、武双がたけるの左腕を付け根から斬り飛ばしたのもまた同時であった。
たけるが抜刀したと思った瞬間には、その左腕は宙に飛んでいたのである。
たけるがかすれた悲鳴を上げた。
軌道を乱した切っ先がさやかの顔を紙一重で横切る。
片腕を失くして体勢を崩し、たけるは大きくよろめいた。
肩口から斬られた腕が、陣羽織の袖もろとも、どすん、と落ちる。
『き、気付いていたのか…!?』
たけるは、
否、
たけるに成り済ましたイバラキは、かすれた声でどうにかそう言った。
武双は刀を抜いた素振りも見せぬ間に、すでに納刀している。
『おぬしの口振り、まるで任を果たしたような口振りだったからな。』
『む…?』
『私はたけるに何も命じてはおらん。荊木砦に向かったはたけるの独断だ』
『なにっ…!?』
十二組でそれなりの地位にある忍びが、頭領の意向も窺わずに敵地に赴くなど普通は有り得ない。
イバラキは、山吹たけるがそのような大胆な事をしでかす男だとは思っていなかった。
『しかしながらたけるはその陣羽織を身に着けておぬしの所に向かった。
それはな、あやつが次期頭領としての責を負って行動を起こした証しなのだ。
己を次期頭領と認めるのならば、ここは誰とて邪魔だてしてはならぬという表明なのだ。
ならばいちいち私に報告などせぬ。
そうではないか?くちなわ』
イバラキは言葉をなくした。
自分はたけるという男を読み違えていた。
奴は繊細なだけではない、豪胆さを持ち合わせた男だったのだ。
柔和に見えながら、忍びとしての熱い芯を持っている男だったのだ。
それが分からなかった自分は、ここに来た時点ですでに馬脚を現していたのだ。
イバラキは口惜しさにぶるぶると震えた。
そして、イバラキと向かい合う武双の後ろで幼い少女もわなわなと震えていた。
激しい怒りと、
鋭い殺意に。
2010-12-27(Mon)
まずは吉田にいやんの出番です。
テレビ局の近くのホールで行われる
『お年玉を賭けたドッヂボール対決』
に、にぎやかしで怪獣が参加するのです。
いやいや、
怪獣の着ぐるみでドッヂボールってキツいですよ!?
フル出場は無理ですよ!?
僕らがそう言うと撮影スタッフさんは
『怪獣は素早く動けないし身体も大きいからすぐにボールをぶつけられて終わりますよ!』
と軽~く言います。
そしてドッヂボール対決が始まりました。
この対決で人数を減らして次の勝負へ、
また人数を減らして…と対決を続けて、最後の一人がお年玉を貰える、という企画なので参加者はみんな真剣です。
本気で投げる!
本気で受ける!
本気でよける!
そんな中で怪獣は…
完全に無視されています。
そりゃそうですよね。
怪獣はお年玉争奪戦には何も関係ないんですから。
怪獣にボールぶつけても何もメリットはないんですから。
怪獣はしばらく頑張って…
『もう無理』
の合図をして戻ってきました。
体力が限界を迎えた時の為に合図を決めていたのです。
僕は、戻ってきた怪獣の背中を開けて吉田にいやんに訊きました。
『大丈夫!?』
体力が限界を迎えていないか心配だったのです。
にいやんは
『体力は全然大丈夫やけどさぁ、あんなに無視されてたらやる事ないんだもん。
だから戻ってきたよ』
と言いました。
確かにその通り。
あの画面に怪獣がチョロチョロ映って盛り上がるとも思えんしね。
~つづく~
2010-12-27(Mon)
12/26(日)
2010年最後の練習日。
ジョーと二人きりの練習でした。
ジョーが車で迎えに来てくれて、それから練習に向かったのですが…
あいにくの雪!雪!雪!
降り積もる~雪雪雪また雪よ~♪
思わず『津軽恋女』を歌ってしまうぐらいの雪で車が進まず、19時到着の予定が20時半に。
1時間半遅れで練習場に行くと…
『あれ!?今日は中練習室だ!』
中練習室はすっごい広いんです。
間違っても二人で使うような場所ではありません。
僕も予約した事を忘れてましたが、おそらく
『最後の練習だし日曜だし何人か集まるかも』
と思って予約したのでしょう。
完全に読みが外れました。
何にしても練習を開始しなくては話しになりません。
まずはストレッチ。
それから筋トレ(腹筋&背筋)。
蹴り上げ(ストレッチ)。
膝上げ(体重移動)。
前蹴り(膝上げの応用)。
ジョーが風邪気味なので休憩を挟みながら続けます。
摺り足(体重をかける部位を意識する)。
摺り足+真っ向斬り(足から発した力がなめらかに刀まで届くように意識する)。
それから
右前蹴り。
右回し蹴り。
右足刀。
左右のターン(何の練習かはナイショです)。
そして木刀での素振り。
真っ向斬り×50。
袈裟斬り×50
以上で〆でした。
これをもって2010年の練習を終わります。
ジョー!具合い悪いのに来てくれてありがとうな!
また来年もよろしく!!
最後に一句、
『雪の中
ジョーと歌った
スガシカオ』
2010-12-26(Sun)
積雪の為、ようやく練習場に到着!
今から練習開始!
2010-12-26(Sun)
今日は2010年最後の練習です。
雪の中、久しぶりのジョーの運転で大橋に向かっています。
2010-12-26(Sun)
今年のイヴからクリスマスにかけては怪獣のお仕事だった…って事は書きましたね。
かつて、大晦日から元旦にかけて怪獣だった事があります。
1995年最後の日、
僕は吉田にいやんと共に地元のテレビ局に来ていました。
カウントダウン特番の撮影に怪獣で参加する為です。
番組の内容としては、視聴者(だったかな?)達が色んなバトルを繰り広げ、勝ち残った人がお年玉を貰える…みたいな感じでした。
そこにちょいちょい怪獣が絡んで映画の告知をするのです。
怪獣の出番は大きく分けて2回だったので、前半は吉田にいやんが、後半は僕が入る事になりました。
~つづく~
2010-12-26(Sun)
空が明るく見える。
まだまだ夜が明ける気配もない時刻である。
いつもなら漆黒の空に星が見えるばかりだろう。
だが今日の空はほのかに赤みがかった不吉な光に照らされている。
龍組頭領、山吹武双は山吹砦の屋敷でその空を眺めていた。
―荊木砦が燃えている―
それを偵察の犬組が発見したのは、幻龍城で山吹たけるとくちなわが顔を合わせた頃である。
その情報はすぐに各組の頭領に伝えられた。
頭領達は蛇組への対処を協議する為に山吹砦に集まっていたので伝達は図らずも迅速に済んだ。
協議では、若頭を殺された鳥組頭領が推す強攻案に、虎組頭領が異を唱えていた。
虎組若頭の雷牙は、くちなわ、いや、イバラキ率いる幻龍組の恐ろしさを身をもって思い知らされたばかりだ。
そのような相手と迂闊に戦えばこちらの被害も些少では済むまい。
数で勝るからと力で押すのはいかがなものか。
虎組頭領がそう言うと、
『ではこのまま放っておけといいなさるか!?何か手を打たねばなりますまい!!』
と鳥組頭領が声を荒げた。
犬組の使者が駆け込んできたのはちょうどそんな時だったらしい。
全員わけが分からぬまま協議を中断して、それぞれの配下を荊木砦に走らせた。
その中で山吹武双だけは、たけるが動いたのだと確信していた。
その確信を秘めて、龍組頭領は一人座っているのである。
午後から姿を見せぬ息子を気に掛けながら、それによって感情を動かされぬよう、煙る夜空をじっと見ていたのだ。
そこへ、戸を開けてさやかが入ってきた。
『父上…』
武双の隣りに歩いてくる。
『お兄ちゃんは帰ってきた?』
『まだだ。心配で眠れなかったのか?』
『ううん、寝てた…けど…何でか目が覚めちゃったの…』
『そうか』
父と娘はしばらく黙って座っていた。
と、突然
『父上っ』
さやかがはじけた声をあげた。
そして二つの折り鶴を取り出し武双の前に並べた。
『お兄ちゃんが作ったのと私が作ったの、どっちがどっちか分かる?』
見比べるまでもなく武双には分かった。
しかしいたずらっぽく笑顔を向ける娘を慮って少し考えたふりをして
『こっちだ』
と指差した。
『すごい!父上!どうして分かったの!?やっぱり私のはまだまだ下手なのかなぁ…』
といじけた。
『上手い下手ではない。たけるはこれを手早く折っていたであろう?』
『うん』
『身についた技術とそれを模倣した技術は少し違うものなのだ。さやかはたけるが作ったものをお手本にしたのではないか?』
『そう…だけど、そんな事まで分かるの?』
『分かる。この鶴には、さやかが一生懸命たけるを追いかけている跡が見える』
『うん。私ね、お兄ちゃんみたいな忍者になりたいの!』
『たけるの域に達するには並大抵の努力では足りぬぞ。それに、たけるの跡を追っているだけでは追いつけぬ。いずれはたけるから離れ、自分の道を進まねばな』
『えぇっ…お兄ちゃんから離れるなんて嫌だ…』
山吹砦の入口が騒がしくなったのは、さやかが寂しげにつぶやいたその直後だった。
下忍達が叫ぶ声が聞こえる。
『若が!たける殿が戻られたぞ!』
『大怪我をなさっている!』
『早く屋敷へ!』
さやかは、たけるが戻ったという言葉に一瞬嬉しそうな顔をしたが、
『お兄ちゃんが大怪我…!?』
と不安を露にした。
そこへ、
下忍達に付き添われてたけるが戻って来た。
山吹頭領の正装である黒い肩当ての付いた陣羽織を身にまとって。
その顔は、
原形をとどめぬぐらいに焼け崩れていた。
2010-12-25(Sat)
足の親指を骨折してギプス&松葉杖になった僕…
実は数週間後のクリスマスショーへの出演が決まってたんです。
とある企業が主催のイベントで、人気キャラクターに絡むマスコットの着ぐるみだったのですが…
当然外されますよね…
ギプス&松葉杖だし…
でも僕はどうしてもやりたくて
『大丈夫ですから!』
って、自分でギプスを切断して外したんです。
でもやっぱり無理で…
そりゃ当然ですよね。
こないだ骨折したばっかりの奴をショーに入れたりしたら大問題ですよ(※注)。
でも僕はかなりショックでしてねぇ…
何がショックって、仕事が1つなくなかった事が、ではなくて、
そのショーにどうしても入りたかった、ワケでもなくて、
指の骨折ぐらいで現場を外された=自分は必要とされていない
と思ってショックを受けたワケですよ。
『必要とされていない』
というのはちょっと違うか…
自分は
『骨折してても大丈夫なら入ってくれ!』
って言ってもらえるぐらい事務所に必要とされているハズ!
って思い込んでたんですよね。
『アクションへの道(127)』の冒頭の
熱い時期=天狗になってる
というのはこの事です。
以前書いた
『メルヘン練習の指導を解雇された事件』
に加えてこの
『骨折で役を降ろされた事件』
で僕は自分が思い上がっていた事を自覚しました。
そんな事があって僕はこの年、一度引退したのです。
…クリスマスショーって単語が一回出ただけで、クリスマスらしさのない話でしたね(笑)
まぁ僕のブログなんてそんなもんでしょ♪
皆さんメリークリスマスでした♪♪
(※注)人手が足りない時はその限りではありません。
2010-12-25(Sat)
2ステージ目はクイズ大会を中止してグリーティング&撮影会になりました。
肩と首と腰がしこたま痛いけど久しぶりの怪獣は楽しかったです!
2010-12-25(Sat)
のぞき穴から顔が見えちゃうのでストッキングをかぶって待機中。
2010-12-25(Sat)
1ステージ終了~♪
次は13時からです。
着ぐるみが小さいっっ!
2010-12-25(Sat)
皆さん!
メリークリスマス!!
さて、武装代表の今年のクリスマスは…
宮崎で着ぐるみのお仕事です!
イブの夕方に現地入りして準備万端♪
やっぱりね…
独りのクリスマスは耐えられないからね…
仕事してないとね…
孤独に負けそうでね…
………
……
…
しゅん…
昨夜は食事の後、クライアントさんが飲みに誘って下さいました!
『せっかくのクリスマスイヴだから』
って。
ありがたいですね♪
でも、現場の前日は飲まない事に決めてるので泣く泣くお断りさせていただきました…
ゴメンなさい…
間もなくホテルをチェックアウトして現場に向かいます。
頑張ってきます!!
2010-12-25(Sat)
先日ワケの分からん夢を見ました。
最初は友人のakaneと一緒にいるんですけど、僕は用があって席をはずすんですよ。
そしたら何か事件があって、
僕は『仮面ライダーX』への変身を余儀なくされるワケです。
僕が仮面ライダーXだという事は秘密です。
でもakaneは何故か知ってるみたいでした。
そこにはシャドームーン(仮面ライダーの敵です)が現われていました。
僕は仮面ライダーとして戦わなくてはなりません。
仮面ライダーBLACK RXとして!
…ん?
いつの間にか『X』から『RX』に変わってる?
敵が仮面ライダーBLACKだからそうなったのかな…
…ん?
いつの間にか敵が『シャドームーン』から『仮面ライダーBLACK』に変わってる!?
かくして『仮面ライダーBLACK』と『仮面ライダーBLACK RX』の戦いが始まりました。
言っておきますが、本来『BLACK』と『RX』は同一人物です。
BLACKの中身は後輩の『みっちー』。
『みっちー』はショーの後輩で、テレビのスーツアクターさんの動きをとても大切にする男です。
BLACKに入れば当然『岡元次郎さん』の動きを再現しようとします。
それに対して僕は、あくまで僕自身の動きを貫くタイプ。
彼はそれが気に入りません。
(RXを演る以上、岡元次郎さんの動きを尊重するべきだろ!)
しかし僕は自分の動きを崩しません。
そんな僕にみっちーは叫びます。
『このチンピラがぁ~!』
しかし戦いは僕の勝ちでした。
倒したBLACKにとどめを刺そうとするRX…
しかし僕は
(仮面ライダー同士で殺し合うワケにはいかんな…しかもBLACKとRXで…)
と思ってとどめを刺すのをやめてしまいます。
BLACKはみっちーの声で
『なんでとどめを刺さん!』
と言ってますが…
気が済んだ僕はくるっと後ろを向いて
『ぱぱぱぱ~、ぱぱぱぱ~』
と歌いながら去って行きます。
この『ぱぱぱぱ~』は、仮面ライダーBLACKが敵を倒した後に流れるBGMです。
流れないので自分で口ずさんでみたのですが…
残されたBLACK(みっちー)の
『ぱぱぱぱ~、じゃねぇよっ!!』
というツッコミが響き渡った所で目が覚めました。
なんだこの夢。
2010-12-24(Fri)
たけるは虚空を睨むような、
それでいて無表情とも取れる顔でイバラキを見ていた。
『確かに。人は裏切る事も裏切られる事もある…
ではあなたは、天下を治めて何とします』
『ふ、この世に愛など存在せぬ事を民どもに知らしめてやるのよ。
他人の愛など信用するから裏切られるのだ。
信じなければ裏切られる事もない。
つまり俺の目指す天下は、裏切りのない天下という事だ』
たけるは黙って聞いているが、イバラキの口調はだんだん熱を帯びてくる。
『山吹だろうが一角衆だろうが、人を騙そうとする奴はな、巧みに愛を利用するのよ。
愛とは人を騙す為の方便に過ぎんのだ』
一気にまくしたてて息を継ぐ。
しばし沈黙があって―
たけるが笑った。
『あはははは』
『きさま…何を笑う!?』
たけるの態度が変わった。
これまでの緊張感が完全に解けている。
『くちなわ殿、俺はね、俺個人としても責任を感じてるし、山吹の次期頭領としての責もある。
だからあなたを討つつもりで来たんだけど…
やっぱり無理だ』
『どういう事だ…?』
『あなたを殺すわけにはいかないよ。
愛、愛、愛、
俺はあなたみたいに愛にこだわる忍びを他に知らない。
一角衆だの山吹だのって言って自分をごまかすのはやめたら?
あなたはかすみさんやかがち様への愛を忘れられないだけじゃないか。
忘れたいのに忘れられないから必死に否定してるだけじゃないか』
『なんだと…』
『人を愛する事が怖いから愛を拒絶してるだけじゃないか。…でもね』
たけるはイバラキに一歩近付いた。
『俺はそんなあなたの弱さが好きだ。その弱さがあるからこそ人間なんだと思う。あなたは…俺なんかよりよっぽど人間らしい』
『たける、きさま…馬鹿にしているのか』
『とんでもない。俺はあなたを殺したくないんだ。
あなたに殺された仲間達には悪いけど…
これからの時代、あなたみたいに心が生きてる人にこそ生きていてほしい。』
炎が二人を包んだ。
『くちなわ…いや、イバラキ殿…いずれあなたは、また人を愛するようになる』
たけるは
何故か刀を捨てた。
その隙にイバラキは手下の死体が握っていた刀を取り、たけるを突き刺した。
『馬鹿め!俺は愛など捨てたのだ!油断したな、たける!』
『ふっ…愛を捨てた奴が…あんな物を大事に飾りゃしないよ…』
この小屋の神棚には、ある物が大切に置かれていた。
たけるはそれを見てイバラキ討伐をやめる気になったのだ。
それが何か分かるのはまだまだ先の事だ。
イバラキはぐっと唸った。
核心を突かれたのだろう。
それをごまかすかのように、さらに深く刀を刺して
『たける、まずは山吹を根絶やしにしてやる。
お前の大切な妹もな』
と言ってからにやりと笑った。
たけるはそれを聞いて何故か優しく微笑んだ。
『残念だったな。
さやかは俺より手強いぜ』
イバラキが刀を引き抜いた。
たけるが倒れる。
イバラキは炎を突っ切って去って行った。
仰向けに倒れたたけるを炎が包む。
穏やかな顔だ。
『…やっぱり…頭領の器じゃないよ、俺は…』
笑顔でそうつぶやきながら懐に手を入れて何かを取り出す。
それは
さやかが作ったよれよれの折り鶴だった。
たけるは羽を広げて、ふっと息を吹き込む。
いびつな鶴だが愛おしい。
妹は、自分の真似をしながら一生懸命に折っていた。
そして
嬉しそうに笑った。
たけるは妹の無邪気な笑顔を思い出す。
『…いつまでもおまえが笑顔でいられるように…』
たけるは優しく笑うと、折り鶴をもう一度眺めて懐に入れた。
この期に及んで、炎の中からイバラキの手下どもが姿を現す。
3人、4人とたけるを取り囲み刀を構える。
たけるは全員に目をやると、ふっと笑って、そしてゆっくりと目を閉じた。
炎と瓦礫に包まれて、たけるの姿は見えなくなった。
2010-12-24(Fri)
キリモミ初挑戦の翌週だか翌々週だか、あるアニメキャラクターのショーに入りました。
みんなに元気を分けてもらったり、『超』になると金髪になったり系のあのアニメです。
僕は敵の手下役でした。
戦闘員みたいな役って、たまに演るとすんごいテンション上がるんですよね!
リハーサルで、
『よーし、覚えたてのキリモミを…』
と思ったんですが…
主役に入ってたのが立ち回りに慣れてない後輩だった事もあって…
テンションとタイミングが合わず…
中途半端に跳んでしまった為に着地に失敗してしまったのです。
足の親指に激痛が走り、みるみるどす黒く腫れ上がっていきます。
『…あ、こりゃやったな』
骨折経験のない僕が骨折だと分かるほどの見事な痛めっぷり。
しかし隠し通さなければなりません。
骨折してる事が分かれば現場を外されるでしょう。
それは僕が嫌だし、今さら代役を探すのも大変です。
なにより後輩達に
『出来ない技をやろうとして失敗したカッコ悪い先輩』
と思われたくありません。
病院に行くヒマもお金もありませんし(保険にも入ってなかったし)、翌日の現場ではガムテープぐるぐる巻きで固定してショーを終えました。
怪我してるからといって手抜きはしません。
1996年の僕は全力投球なのです。
ショーは問題なかったのですが、後日…
当時のバイト先の社長が僕の足を見て
『金を貸すから病院に行け!』
と言って下さって…
病院に行ったら1本の骨が2ヶ所折れてまして…
ギプス&松葉杖と相成ったのでした…
~つづく~
2010-12-24(Fri)
宮崎に到着~♪
今から明日の現場の下見で~す。
2010-12-24(Fri)
明日は宮崎で着ぐるみの仕事です。
今から出発です♪
2010-12-24(Fri)
たけるが刀を振り上げた瞬間、開け放ったままの戸口から青装束の忍びが飛び込んできた。
それを合図に、小屋の隠し戸が一斉に開き、そこからも刺客が飛び出す。
天井から二人、
壁から三人、
床から二人。
上下の敵は刀を手にしているが、残りは少しでも距離を取ろうと槍を構えていた。
しかしたけるの必殺の間合いは刀を槍に変えた程度でどうにかなるものではない。
姿を現したと思った刹那に全て首を落とされていた。
たけるとイバラキを囲むように八つの頭部が転がる。
残された身体はばたばたと倒れ、足下の二体はまた隠し戸の中に落ちていった。
くちなわは顔面を炎に包まれながらも初めて見たたけるの技に驚愕していた。
いや、むしろ恐怖さえ覚えていた。
『た、たける!おまえはっ!』
身を焼かれながらでは言葉にならない。
炎を吸えば肺が焼けるのだ。
『感情を捨てる事は出来ませんでしたが、殺人兵器として育てられましたゆえ…悲しき事です』
『くぅっ!』
イバラキはもがきながらも腰に巻いた鎖分銅を放とうとした。
だが腰に手をかけた瞬間に鎖は切断されていた。
続いてくちなわの刀が突然弾き飛ばされて壁に突き刺さる。
たけるが動いた気配は感じられなかった。
刀の刺さった板壁がぱちぱちと音を立てる。
この小屋にも火が回り始めている。
まだ顔を覆う炎を消そうとしているイバラキの腹部にたけるの鋭い蹴りがねじ込まれる。
イバラキはぐぇっとつぶされたような声を上げて吹っ飛んだ。
倒れた拍子に、顔面の炎は壁際に積まれた藁に引火して勢いを増す。
苦しむイバラキを、たけるは無表情に見つめていた。
イバラキは暴れながら井戸水を汲み置いた桶にぶつかり、それに頭を突っ込んだ。
じゅっという音がして炎が消える。
隙だらけで呼吸を荒げているイバラキにたけるが語りかける。
『くちなわ殿…私は責任を感じている…私の油断が一角衆に付け入る隙を与えてしまった…そしてそれがあなたを追い込む事になってしまった…』
『まだそのような…!俺は…』
桶の水を飛沫かせながら振り向いたイバラキの顔は、原形をとどめぬ程に焼け崩れていた。
しかしたけるはそれを見ても平然としている。
『あなたが私を信用していない事は分かっています。
私はあなたに信じてもらう事が出来なかった。
だから責任を感じているのです』
イバラキは焼けただれた顔を押さえてうずくまりながら毒づいた。
『ふん、今さら…こうなった以上責任の所在などどうでもいいわ。この世には騙す奴と騙される奴がいて俺は後者だった。それだけの話だ』
小屋が燃える。
炎が二人を包む。
『ではこれからどうします』
壁が爆ぜる。
『俺を騙した者、俺を裏切った者を倒す。そしていずれは天下を治める』
炎がイバラキの崩れた顔を紅く染めた。
不規則な明滅がそう見せるのか、イバラキの表情はどこか悲愴に感じられた。
2010-12-23(Thu)
青き屍の山を築きながら山吹たけるが進む。
ただ歩いているようにしか見えぬが、そこに近付いて生きている者はいなかった。
前後左右、空中といえども一定の範囲に入った敵は一瞬で首を刎ねられていた。
これこそが天才と言われた殺人兵器の本領なのだ。
もちろんたけるの望む所ではない。
しかし一旦動き出せば個人の感情など関係ない。
ただやり遂げるのみ。
たけるとて鬼神の一人には違いなかったのだ。
突然、夜空が白く染まった。
まるで上空に白壁が出来たようだ。
そしてその壁は幻龍城を覆った瞬間に瓦解した。
何が起きたのか?
無数の鳥が飛来したのだ。
全ての鳥が紙を咥えていた。
白い紙を咥えた鳥が空を覆ったが故に白壁と錯覚せしめたのである。
そして鳥達は幻龍城の上空で一斉に咥えていた紙を舞い散らせたのだ。
この紙にはたっぷりと油が染み込ませてある。
ひらりひらりと舞い落ちたそれは幻龍城のあちこちに張り付いた。
壁に、屋根に、屍どもにもぴたりと張り付いたのだ。
そしてそれは各所の松明の炎を広がらせた。
幻龍城はあっと言う間に火の海となった。
無数の鳥を操ったのは言わずもがな山吹たけるである。
獣を使えるのは一角衆だけではないのだ。
炎に照らされて屋敷に向かうたけるの表情にはすでに笑みはない。
屋敷の前で足を止めた瞬間、物陰に潜んでいた忍びが飛び出した。
右から二人、左から二人、屋根の上から二人、
六人が同時にたけるに躍りかかる。
しかし全員、地面を蹴った瞬間に首から上を失くして不様に崩れ落ちた。
たけるは関心もなさげに屋敷を眺めていたが、急に方向を変えて歩き始めた。
池の脇を通り、社を突っ切り、小さな小屋に辿り着くと、いきなり戸を開ける。
小さな小屋の中にはくちなわが腰掛けていた。
『よく分かったな。屋敷へは行かなんだか?』
『くちなわ殿ならこちらにいらっしゃると思いました』
『なぜ』
『かすみ殿との想い出を簡単に吹っ切れるくちなわ殿ではありますまい』
そう。
この小屋はくちなわとかすみが長年暮らした場所なのだ。
『聞いた風な事を。ふん、屋敷に仕掛けておいた罠も無駄になったか。』
くちなわは立ち上がった。
『たける、覚えておけ。荊木流のくちなわはもうおらん。俺は幻龍組頭領、幻龍イバラキだ』
くちなわ、いや、イバラキが素早く抜刀したけるに斬りかかった。
たけるも刀を抜き、その刃を顔前で受け止める。
刃と刃がぶつかり火花が散る。
その瞬間、
たけるが胃の腑に溜めていた液体を口から吹き出した。
微かな火花が業火となりイバラキの顔を包んだ。
『ぐああぁぁっ!!』
イバラキは顔を焼かれながら悲鳴を上げてもがく。
たけるが吹き出したのは可燃性の強い液体である。
これは揮発性の為、密封しておかないと効力が薄くなる。
たけるは半日以上かけて特殊な薬品を飲み続けて食道や内臓の内側に薄い膜を作り、この液体の揮発を防いだのだ。
しかし呼吸をしたり喋ったりしても揮発してしまう為、たけるは山吹の里からここまでずっと呼吸を止めていた。
先ほどイバラキと二、三言話すまでは呼吸をしていなかったのである。
無数の下忍達を斬り殺す間も。
調息を極めたたけるならではの芸当であった。
全てはイバラキの不意を突く為。
たけるほどの腕がありながら卑怯とも思える策を弄する。
これこそが忍びなのだ。
目の前で炎に包まれて苦しむイバラキに向かって、たけるは刀を振り上げた。