2008-11-25(Tue)
マニアックなので注意・第二稿
前回、長崎を中心に活躍されているローカルヒーローチーム
『J project Enz』(http://k2.fc2.com/cgi-bin/hp.cgi/justers/)
のショーに出演させていただいたので、アトラクションチーム武装とJ project Enzのショーの違いなんかを簡単に考察してみようと思う。
あくまで僕の主観で書いているので、間違っていたらどんどん訂正していくつもりである。
まず前置きとして、武装のショーの根幹はTVキャラクターショーの手法である。
EnzのショーはEnz代表の独学とセンス、ポリシーが生んだオリジナルの手法である。
Enz代表の言葉を引用するなら
『歌のないミュージカル。 はたまた、ストーリーのあるダンス。平面的リアリティーを求めた動く紙芝居 』
的な手法と言える。
TVキャラクターショーとは別のルートを辿ったひとつの完成形だろう。
●音に関して
双方とも『完パケ』と呼ばれる物(セリフやBGMなど、物語丸々1本分の音声が入った音源)を使用しているが武装の完パケには効果音が入っておらず、サンプラーと呼ばれる機材で現地対応している。
Enzでは完パケの中に効果音が入っている。
武装・・・サンプラーとは各々に別の音が録音されたパッドを叩く事で音を出す機材である。これで音をあてる場合、殺陣の変更等の融通が利くといった利点があるが、音がズレる、音が出ない等といったアクシデントの可能性が考えられる。また使える音の種類も限られてくる。
Enz・・・効果音が完パケに入っている場合、タイミングを合わせるのが難しい、融通が利かないという点もあるが、無音でアクションをする危険性はなくなる(無音でアクションというのは観客も醒めるものなのだ)。また、音に合わせるので、新人でも分かり易く、個人練習もし易い。TVキャラクターショーでも『プリキュア』等のメルヘン物はこの方式であるし、武装のショーでもいくつかの場面ではこの方式を採用している。
●立ち位置(ステージの使い方)について
武装・・・ステージセンター(中央)を基準にバランス良くというのが原則である。他キャラクターが動いた場合、別キャラクターも動く事でバランスを取る。
決め所での立ち位置は確定しているが、そこに至る経緯はアドリブという場合も多い。
Enz・・・シーン毎の核となるキャラクターをステージセンターに据えて、他キャラクターが周りを動く。
立ち位置移動は少なめ。アドリブによる移動を抑える事で、演技の不安定さ、段取りのミスを少なくする。
●殺陣に関して
※殺陣には基本的な役どころとして、『シン』(主役)、『からみ』(悪役)がいるが、攻守が定まっているワケではないので、この考察では
攻撃する役・・・『攻め手』、受ける役・・・『受け手』
としておきます
●かかりのタイミングに関して
かかりとは「攻め手が受け手にかかっていく事」
ここでは殺陣開始のかかりについて。
武装・・・攻め手と受け手が離れた状態から殺陣を開始し、攻め手が1テンポ早く動き出す事で攻撃のタイミングを取る。戦闘開始直前の緊張状態を距離で表現している為である。
Enz・・・攻め手と受け手は、即攻防出来る近距離の位置で殺陣を開始する。理由の1つは完パケの効果音のタイミングに合わせる為、もう1つは『かぶせ』の項で後述する。
●かぶせ
殺陣においてのかぶせとは、実際には当たっていない攻撃を当たっているように見せる技術である。
「かぶせる」「かぶる」「かぶってない」等と使う。
武装・・・受け手は攻撃の前面でかぶる事が多い。パンチやキックが客席から見えないように前に立ち、攻撃を受けた演技をする。当たっていない事がバレないように隠してしまうのである。
リアル感を出す為にあえて手の平で攻撃を受けたり、寸当て(寸止めの反対)したり、実際に当てる事もある。「当たっている」事を客に実感させる事を優先しているからだ。
大きな攻撃の場合、受け手は少々離れた位置から攻め手に向かって行きかぶりの位置に入る。
これは「攻め手が反撃しようとしたが技をくらった」という演技を入れる為である。
Enz・・・受け手は攻撃の背面でかぶる事が多い。客席に正面を向けた受け手の前を攻め手の攻撃が通過する形となる。攻撃によってはリアルなリアクションが出来なくなるが、攻め手の攻撃が客席にキチンと見えるという利点がある。
大きな攻撃の場合、受けては攻め手の攻撃の距離を見切り、前もってかぶりの位置で待つ。これは、攻め手の大技の直前に受け手を動かさない事で、技の印象をぼかさない効果を狙ってだと思われる。
『かかり』の項で述べた、Enzのかかりが近距離から始まる理由の1つもこれと同じで、戦闘開始を分かり易く見せる為であろう。Enzのショーではキャラクターの技をとても大切に扱っているようだ。
●リアクション
リアクションとは、攻撃を受けた時の演技の事である。
ここが一番悩んでいるところで、納得のいく結論が出ていないので改めて研究の後、再度考察したい。
武装・・・攻め手が実際に出した攻撃に即した対応をする?当たった感を優先する?
Enz・・・イメージに即した対応をしている?こう感じたのはかぶせの方法論(攻撃によってはリアルなリアクションが出来なくなる)の関係かもしれない。
●殺陣のテンポに関して
武装・・・動く部分と止まる部分を使い分けて、テンポにメリハリをつけるのを基本にしている。
素手の殺陣はカンフー映画の、剣殺陣では時代劇の間を意識している。
Enz・・・代表も言っていたが、Enzの殺陣は一発一発をしっかりと出せるテンポ(『タン、タン、タン、タン』というような)になっている。
これは殺陣が複雑になりすぎないように、つまりはアクションシーンを分かり易く見せる為だ。
「掴んだ」「殴った」「かわした」という1つ1つの動きを理解させながら戦えるテンポなのである。
●待ちの状態に関して
武装では、キャラクターが何もしていない状態というのを出来るだけ排する演出にしている。何もする事がないキャラクターがいれば、何もしていない理由をつけて、それに即した芝居をつける。これはステージ上の臨場感を統一する為である。
Enzではポイントとなる部分以外での待ちのようなものが時々あるようだ。
これは全体が動く事でポイントがぼけないようにしている「分かりやすさへの配慮」だと考えられる。
●現時点での総括
乱暴な括り方をするならば、
『リアル』重視の武装と、『分かり易さ』重視のEnz
という事になるだろうか。
武装のショーはリアルにはなり得るが、その分泥臭く血なまぐさくなる傾向がある。
小さいお子さんに観せるのをためらう親もいるのではなかろうか?
アドリブ多し。
Enzのショーは爽快感の感じられるファンタジーになっていると思う。
だからこそ安心して観る事が出来、ショーにこめられたメッセージが子供達に届くのである。
アドリブは基本的に少なそうである。また、アクターの安全面についてはどこのチームも気をつけていると思うが、Enzは特に気を配っている印象を受けた。
『J project Enz』(http://k2.fc2.com/cgi-bin/hp.cgi/justers/)
のショーに出演させていただいたので、アトラクションチーム武装とJ project Enzのショーの違いなんかを簡単に考察してみようと思う。
あくまで僕の主観で書いているので、間違っていたらどんどん訂正していくつもりである。
まず前置きとして、武装のショーの根幹はTVキャラクターショーの手法である。
EnzのショーはEnz代表の独学とセンス、ポリシーが生んだオリジナルの手法である。
Enz代表の言葉を引用するなら
『歌のないミュージカル。 はたまた、ストーリーのあるダンス。平面的リアリティーを求めた動く紙芝居 』
的な手法と言える。
TVキャラクターショーとは別のルートを辿ったひとつの完成形だろう。
●音に関して
双方とも『完パケ』と呼ばれる物(セリフやBGMなど、物語丸々1本分の音声が入った音源)を使用しているが武装の完パケには効果音が入っておらず、サンプラーと呼ばれる機材で現地対応している。
Enzでは完パケの中に効果音が入っている。
武装・・・サンプラーとは各々に別の音が録音されたパッドを叩く事で音を出す機材である。これで音をあてる場合、殺陣の変更等の融通が利くといった利点があるが、音がズレる、音が出ない等といったアクシデントの可能性が考えられる。また使える音の種類も限られてくる。
Enz・・・効果音が完パケに入っている場合、タイミングを合わせるのが難しい、融通が利かないという点もあるが、無音でアクションをする危険性はなくなる(無音でアクションというのは観客も醒めるものなのだ)。また、音に合わせるので、新人でも分かり易く、個人練習もし易い。TVキャラクターショーでも『プリキュア』等のメルヘン物はこの方式であるし、武装のショーでもいくつかの場面ではこの方式を採用している。
●立ち位置(ステージの使い方)について
武装・・・ステージセンター(中央)を基準にバランス良くというのが原則である。他キャラクターが動いた場合、別キャラクターも動く事でバランスを取る。
決め所での立ち位置は確定しているが、そこに至る経緯はアドリブという場合も多い。
Enz・・・シーン毎の核となるキャラクターをステージセンターに据えて、他キャラクターが周りを動く。
立ち位置移動は少なめ。アドリブによる移動を抑える事で、演技の不安定さ、段取りのミスを少なくする。
●殺陣に関して
※殺陣には基本的な役どころとして、『シン』(主役)、『からみ』(悪役)がいるが、攻守が定まっているワケではないので、この考察では
攻撃する役・・・『攻め手』、受ける役・・・『受け手』
としておきます
●かかりのタイミングに関して
かかりとは「攻め手が受け手にかかっていく事」
ここでは殺陣開始のかかりについて。
武装・・・攻め手と受け手が離れた状態から殺陣を開始し、攻め手が1テンポ早く動き出す事で攻撃のタイミングを取る。戦闘開始直前の緊張状態を距離で表現している為である。
Enz・・・攻め手と受け手は、即攻防出来る近距離の位置で殺陣を開始する。理由の1つは完パケの効果音のタイミングに合わせる為、もう1つは『かぶせ』の項で後述する。
●かぶせ
殺陣においてのかぶせとは、実際には当たっていない攻撃を当たっているように見せる技術である。
「かぶせる」「かぶる」「かぶってない」等と使う。
武装・・・受け手は攻撃の前面でかぶる事が多い。パンチやキックが客席から見えないように前に立ち、攻撃を受けた演技をする。当たっていない事がバレないように隠してしまうのである。
リアル感を出す為にあえて手の平で攻撃を受けたり、寸当て(寸止めの反対)したり、実際に当てる事もある。「当たっている」事を客に実感させる事を優先しているからだ。
大きな攻撃の場合、受け手は少々離れた位置から攻め手に向かって行きかぶりの位置に入る。
これは「攻め手が反撃しようとしたが技をくらった」という演技を入れる為である。
Enz・・・受け手は攻撃の背面でかぶる事が多い。客席に正面を向けた受け手の前を攻め手の攻撃が通過する形となる。攻撃によってはリアルなリアクションが出来なくなるが、攻め手の攻撃が客席にキチンと見えるという利点がある。
大きな攻撃の場合、受けては攻め手の攻撃の距離を見切り、前もってかぶりの位置で待つ。これは、攻め手の大技の直前に受け手を動かさない事で、技の印象をぼかさない効果を狙ってだと思われる。
『かかり』の項で述べた、Enzのかかりが近距離から始まる理由の1つもこれと同じで、戦闘開始を分かり易く見せる為であろう。Enzのショーではキャラクターの技をとても大切に扱っているようだ。
●リアクション
リアクションとは、攻撃を受けた時の演技の事である。
ここが一番悩んでいるところで、納得のいく結論が出ていないので改めて研究の後、再度考察したい。
武装・・・攻め手が実際に出した攻撃に即した対応をする?当たった感を優先する?
Enz・・・イメージに即した対応をしている?こう感じたのはかぶせの方法論(攻撃によってはリアルなリアクションが出来なくなる)の関係かもしれない。
●殺陣のテンポに関して
武装・・・動く部分と止まる部分を使い分けて、テンポにメリハリをつけるのを基本にしている。
素手の殺陣はカンフー映画の、剣殺陣では時代劇の間を意識している。
Enz・・・代表も言っていたが、Enzの殺陣は一発一発をしっかりと出せるテンポ(『タン、タン、タン、タン』というような)になっている。
これは殺陣が複雑になりすぎないように、つまりはアクションシーンを分かり易く見せる為だ。
「掴んだ」「殴った」「かわした」という1つ1つの動きを理解させながら戦えるテンポなのである。
●待ちの状態に関して
武装では、キャラクターが何もしていない状態というのを出来るだけ排する演出にしている。何もする事がないキャラクターがいれば、何もしていない理由をつけて、それに即した芝居をつける。これはステージ上の臨場感を統一する為である。
Enzではポイントとなる部分以外での待ちのようなものが時々あるようだ。
これは全体が動く事でポイントがぼけないようにしている「分かりやすさへの配慮」だと考えられる。
●現時点での総括
乱暴な括り方をするならば、
『リアル』重視の武装と、『分かり易さ』重視のEnz
という事になるだろうか。
武装のショーはリアルにはなり得るが、その分泥臭く血なまぐさくなる傾向がある。
小さいお子さんに観せるのをためらう親もいるのではなかろうか?
アドリブ多し。
Enzのショーは爽快感の感じられるファンタジーになっていると思う。
だからこそ安心して観る事が出来、ショーにこめられたメッセージが子供達に届くのである。
アドリブは基本的に少なそうである。また、アクターの安全面についてはどこのチームも気をつけていると思うが、Enzは特に気を配っている印象を受けた。
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