2014-11-13(Thu)
太陽が中天を過ぎてしばらく経った。
日差しが眩しい。
ちょっと前まで朝晩は肌寒かったが最近は過ごし易くなってきた。
山の頂に築かれた山吹の里では日光を遮るものは何もない。
天気が良ければ光を浴び、雨が降れば水をまともに受ける。
『十二組を取り仕切る流派は、任務において功も責も全て負わねばならぬ』
という決まりを体言しているらしい。
自然の恩恵と脅威を忘れぬようにする為、という狙いもあるようだ。
里の畑では、そうした天の恵みを受けた牛蒡の葉が青々と輝いていた。
そろそろ収穫出来そうだ。
牛蒡は薬草として育てているが食用にもなる。
薬草は忍びの必需品だ。
だが、
薬草という言葉は、そして薬の香りはある善良な男の記憶を立ち上らせて山吹さやかの傷を深くえぐった。
何事もないような顔をして里の者達と畑仕事を済ませたさやかだったが、心は激しい疲労感に包まれていた。
さやかは畑の緑が出来るだけ目に入らぬよう顔をそむけて地面に座った。
太陽に照らされた土の心地いい温もりすら今のさやかには鬱陶しかった。
大好きな兄を失い、大好きだった音駒を失った。
そんな世界で生きていて何になるというのだろう。
必ず守ると誓った音駒を助ける事が出来なかった。
そんな自分が生きていてどうするというのだろう。
たけるも音駒も自分を残して死んでしまった。
これから何を信じて、何を愛せば良いのだろう。
『いけない…屋敷に戻らなくちゃ…』
さやかは呟いた。
こうして口に出して自分に言い聞かせなくてはもはや身体が言う事をきかないのだ。
畑仕事の後は幼きくのいち達に剣技を教えねばならない。
自分自身の修行もある。
それは義務であり勝手に休む事は出来ない。
どうにか屋敷に辿り着くと気の早い少女達が庭で待っていた。
さやかに気が付くと童達は稽古用の木刀を手に眩しく笑って頭を下げた。
さやかもにこりと笑顔を返す。
だがやはりその笑みに心はこもっていない。
それは自分が一番分かっている。
罪悪感はあるのだが、今の自分は感情を制御する力など持ち合わせていない。
今のさやかに出来る事は顔の筋肉を動かし、少女達を傷つけぬ表情を作る事だけだ。
さやかがどうにか笑顔らしきものを少女達に向けた時、不意に明るい声が響いた。
『さやか殿~!』
驚いて振り返る。
跳ねるように屋敷に走り込んできたのは黒の半着と袴姿で髪を慈姑頭に結った心太郎だった。
『心太郎!どうしてここに?』
くのいちの稽古の場に心太郎が来る事などこれまでなかったのだ。
だが心太郎は説明もせず、
『さやか殿、ここはおいらに任せて!』
とだけ言うと、目を丸くしているくのいち達に
『え~、今日はさやか殿に代わっておいらが稽古をつけるっシュ!』
と宣言した。
少女達から一斉に非難の声が上がる。
くのいちの技を男が教えるというだけでも違和感があるのに、指導するのが三流忍者の心太郎では非難が出るのもやむなしである。
なにより彼女達はさやかの事が大好きで、さやかの指導を楽しみにしていたのだ。
『ちょ、ちょっと心太郎!これどういう事!?』
怒声罵声をなだめる心太郎に問い質すと、新太郎は少しだけ振り返り、
『頭領が女神様の前でお待ちっシュ』
と囁いて、
『じゃあさっそく稽古を始めるっシュよ~』
と、くのいち達の中へ入っていった。
2014-11-10(Mon)
捕らえられていた炎丸が金丸の牢から助け出された、という報せが山吹に入ったのは翌日の昼前であった。
『どうやらくちなわ、いやイバラキが手を貸したようだぞ』
頭領、山吹武双はそう言った。
『炎一族に手を貸したところで何の得もあるまいに。相変わらず酔狂な』
心太郎が大きくうなずく。
『イバラキの奴は周りが見えずに突っ走ってる馬鹿が大好きっシュからねぇ』
『まぁ良い。そちらは藩の方で追っ手を出しておる。何かあればすぐに連絡が入るだろう。それよりも』
武双は言葉を切って心太郎を見た。
心太郎は察して
『さやか殿、っシュか』
と呟いた。
山吹流忍術の後継者であり時期頭領である山吹さやかは、音駒の自死に直面して後、完全に心を閉ざしていた。
任務もこなす、笑顔も見せる、会話もする。
だがそれらは全て対外的で表層的なものに過ぎない。
心太郎が見れば、その笑顔に、その言葉に心が無い事など一目瞭然なのだ。
そしてさやかは、人に会わずに済む時は誰にも会おうとしなかった。
外に出なくて済む時には薄暗い部屋でただうずくまり続けた。
『これが、一角衆の手よ』
武双が言葉を吐き出す。
『ヤツらは敵の心を狙う。希望を失った人間がどれだけ脆いかを熟知しておるのだ。だから我ら忍びは心を捨てなければならん。心を、感情を捨て切れぬイバラキやさやかのような者は一角衆にとって弄し易い相手なのだ。ましてやさやかは以前の心の傷を克服したばかり。そこを狙って二度目の傷をつけるとは、一角衆め、狡猾な事よ』
さやかは最愛の兄をイバラキに殺され、それからの十年間を深い闇の中で生きた。
生に希望を失い、常に死を願うような生き方を年端もいかぬ少女は強いられたのだ。
そしてそれは一角衆が裏で糸を引く姦計だったのだ。
そのさやかに、兄の面影を持つ音駒を引き合わせる。
音駒の前向きな生き様にさやかが生きる希望を取り戻す。
そこで音駒を追い込み自死に至らしめる。
自分に希望を与えてくれた前向きな音駒ですら絶望し命を絶つという現実を目の当たりにし、
再びさやかは希望を失う。
二度目の傷は深い。
一度の苦しみなら、まだ次に希望を見出せる。
だが二度も同じ苦しみを味わった人間は
「もしや希望など持っても無駄なのではないか」
「今後も同じ苦しみが待っているのではないか」
という絶望を強く感じてしまうのだ。
だから一角衆は何度も何度も同じような罠を仕掛けてくるのだ。
『一角衆幹部、血讐のやりそうな事だ』
『血讐…』
心太郎は以前戦った一角衆の兄弟を思い出す。
白い羽織の血飛沫鬼、
赤い羽織の血塗呂、
血讐はあの二人の父親であるらしい。
『一角衆の作戦は、その血讐が参謀となって進めてるっシュね。でも不思議っシュ。一角衆の行動からは頭領の顔が見えてこないっシュ。見えてくるのは血讐ばかりじゃないっシュか』
武双はしばし黙るとゆっくり目を閉じて
『一角衆の頭領、か』
と深く溜息をついた。
『?』
武双の反応が意外だったので心太郎は少し戸惑った。
一角衆の頭領は赤岩(せきがん)という男だと聞いている。
かつては山伏であったとも正体は化け猫であるとも噂されている謎の男だ。
心太郎が記憶を辿っていると不意に武双が口を開いた。
『心太郎、一角衆の頭領について、おぬしに話しておかねばならぬ事がある』
2014-11-04(Tue)
幻龍イバラキの足元で、襤褸雑巾の様に紅蓮丸が転がっていた。
改めて書くが、紅蓮丸はかなりの使い手である。
さやかをピンチに陥らせた弟・炎丸よりもずっと手練れなのである。
だが、どうにも運が悪いとしか言いようがない。
紅蓮丸は、自分が活躍出来ない場に足を運び、自分が敵わない相手に戦いを挑んでしまう、そんな星の下に生まれてしまったようだ。
『…うぅ…』
襤褸雑巾がぴくりとも動かず
『ワタクシの負けですね…分かりました、力による支配とはこういう事…おとなしく幻龍組の軍門に下りましょう…』
と、呻くように負けを認めた。
『拙者の手下になるというのか』
イバラキも動かず、ただ見下ろして訊く。
『なりたかないわよ…でも、技も通じず、術も通じずこんな目に遭わされて、他にどんな選択肢があるというのよ』
その言葉を聞いて、イバラキは小さくふふふと笑う。
『なによ』
紅蓮丸が感情の無い声で訊き返す。
するとイバラキは、片膝をつき、紅蓮丸の胸倉を掴んで引き起こした。
『紅蓮丸、今のおぬしを従えたところで、拙者は嬉しくも何ともないわ』
『え?』
イバラキの意外な言葉に紅蓮丸は戸惑う。
『拙者はな、誇りある者、生きる為の望み、野望を持った者しか認めんのだ。なぜなら、それこそが人間だと思うからだ』
『誇り…?野望…?』
『目的を持ち、その為に生きようとする、それが人間というものだ。いいか。誇りを奪われ、生きる意味を見失った者などはもはや生きる価値もない。価値のない負け犬を従えて何の得がある?だから拙者はおぬしを従えようとは思わぬ』
イバラキが手を離す。
紅蓮丸の身体がどさりと落ちる。
『紅蓮丸、おぬしがやろうとしているのはそういう事だ。力によって屈辱を与え、誇りを奪い、生きる価値のない負け犬を作り出して支配する。おぬしが率いるのは生ける屍の群れ。それが。おぬしの望みなのか??』
『あ…』
紅蓮丸は絶句した。
『力による支配とはそういう事だ。拙者はどうせ率いるのならば生命の炎を燃やした群れが良い。だから力による支配はやめたのだ。おぬしも、没落した炎一族を再興し名声を取り戻したいのであれば方法を考えねばな』
『…イバラキ、あんた…』
紅蓮丸がゆっくりと身体を起こす。
『どうだ紅蓮丸。おぬしの中に少しでも命の残り火があるなら従えてやらんでもないぞ』
イバラキが不敵に笑った。
紅蓮丸が立ち上がりながら噛み付く。
『残り火?ナメんじゃないわよ。私は炎一族の紅蓮丸よ。命の炎もめらめらよ!』
『ほう?』
『お家の再興もしなくちゃならないし、炎丸救出も弟に任せっぱなしには出来ないし、山吹の小娘にも、それからイバラキ、あんたにも復讐しなくちゃならないんだから、誇りも野望もたっぷりなんだからね!だから!』
そうタンカを切ると紅蓮丸はイバラキの足元に片膝をついた。
『だから、ワタクシは野望と野心を燃やしながら貴方様に従属いたします。幻龍組頭領、幻龍イバラキ様』
2014-10-23(Thu)
さて、
邪衆院天空が西国の港町で封を助けていた頃、幻龍組頭領の幻龍イバラキは何をしていたのであろうか。
実は、炎一族長兄・紅蓮丸を叩きのめしていたのである。
一体何があったというのだろうか。
数週間前、魔剣に操られさやかに戦いを挑んだ紅蓮丸は、木に縛り付けられ魔剣を奪われなおかつ忘れ去られるという完全な敗北を喫した。
そこを聡明なる弟・灯火丸に救出されたのである。
二人は一路金丸藩に向かっていた。
かつてさやかに破れ捕らわれた次兄・炎丸を助け出さんが為であった。
紅蓮丸が騒ぎを起こしている隙に灯火丸が城に忍び込む、という手はずである。
(幼い弟とたった二人ではこれぐらいの策が限界でしょうね)
紅蓮丸はそんな事を考えながら、灯火丸を見て、ふふと笑った。
一方の灯火丸は
(あまり繊細な作戦を兄ちゃんに求めるのは酷だから…これが限界かな)
と考えて、諦観の笑みを浮かべた。
そんな二人が金丸の藩内に入ってすぐ、イバラキが姿を現したのだ。
『げ、幻龍イバラキ!!』
鉄の仮面、鋼鉄の義手が月明かりで鈍く光った。
紅蓮丸はとっさに灯火丸の前に出た。
兄の様子を見てかイバラキの放つ気を察知してか、灯火丸も咄嗟に身構える。
『炎一族、紅蓮丸。後ろの童は弟か。確か灯火丸』
イバラキの低い声が響いた。
『えっ、僕の事を知ってるの?』
灯火丸が驚いて声を上げる。
『油断ならない敵なのですよ』
紅蓮丸が刀を抜く。
だがイバラキは構えもせずにくくくと笑い、
『灯火丸、名を呼ばれて反応していてはこれからの戦いで苦労するぞ』
と忠告した。
『え?どういう事?』
『貴族の出であるおぬし達にとって名を名乗るは重要であろうがな、戦においては命取りになる事がある。ましてやたった二人で城に夜襲をかけるような戦をするのならばな』
紅蓮丸が刀を構える。
『お黙りなさいイバラキ!』
刀身から炎が上がり、紅蓮丸の鉢金をてらてらと反射させた。
だがそれは背後の灯火丸によって止められた。
『ちょっと待って兄ちゃん!』
炎がふっと消える。
『ど、どうしたのです』
『あの人、なんで僕達が城を襲う事を知ってるの。それに今の話、ちょっと興味がある』
紅蓮丸は自分と弟の温度差に驚愕し落胆した。
『おまえは、こんな時に何をのんきな』
そのやり取りにイバラキが笑い声を上げる。
『はっはっは!流石は聡明と名高い炎一族の末弟よ。よいか、これは忍びの定石だが覚えておけ。戦いにおいて最も恐ろしいのは敵の手の内が分からぬ事。刀を得意とするのか、それとも槍か、暗器を使うのか柔術か、流派は何か、人数は、得意技は、それらが分からぬ相手と手を交えては窮地に陥るは必定』
それを聞いて灯火丸がうなずく。
『なるほど。それじゃ有利に戦う為には、自分の情報は知られずに敵の情報を集めなくちゃいけないんだね』
今度はイバラキがうなずく。
『いかにも。そして己の情報の根本こそ名だ。名が知れればそこから先の事はいくらでも調べようがある。だからまずは名を秘するがよい。先ほどのように迂闊に反応しては足元を掬われるぞ』
その言葉に、灯火丸はにこりと笑い
『心得ました』
と頭を下げた。
『ちょ、ちょっと灯火丸!あんたなんで敵に頭下げてんのよ』
動揺した紅蓮丸がオカマ口調で弟を咎めた瞬間、
イバラキの背後に幻龍組の下忍達が居並んだ。
十名ほどの青装束である。
『や、やる気ね!灯火丸、行くわよ!!』
紅蓮丸が再び刀を構えた。
だが灯火丸も、イバラキも、そして下忍達も戦う素振りを見せなかった。
『あ、あれ??』
紅蓮丸は浮いている自分に気が付いたのか、ちょっともじもじしている。
イバラキは、にやりと笑うと
『灯火丸、我が手下を使うがいい。これだけいれば数は足りよう。城内の情報は道行き手下が話す』
と意外な申し出をした。
灯火丸は目を丸くする。
『もしかして、その為にここで僕達を?何の為に?』
だがイバラキはにやにやするばかりで答えない。
『そっか。腹の内を見せちゃいけないんだ』
灯火丸は納得した表情で
『お心遣い、感謝!』
とだけ言うと城に向かって走り出した。
その後に青い忍者集団が続く。
後には、イバラキと紅蓮丸だけが残された。
『ちょっと!灯火丸!なんで素直に言う事聞いてんのよ!罠かもしれないじゃないの!きっと罠よ~!!』
紅蓮丸の叫びが夜空に響き、そして夜風にかき消された。
紅蓮丸は仕方なくイバラキに刀を向ける。
『幻龍イバラキ、一体何を企んでいるのです』
だがイバラキはそれには答えず
『魔剣とやらは山吹の小娘に奪われたそうだな』
と質問を返した。
『ちょ…ワタクシが訊いているのです!!』
声を荒げる。
だがやはりイバラキは応えず
『どうだ、あの魔剣が無くとも人心を操りたいと思うか。圧倒的な力で人を従わせたいと思うか』
と尋ねながら紅蓮丸に近付いてくる。
紅蓮丸は言葉に詰まったが、どうにか声を吐き出した。
『も、もちろんですとも!強き者が弱き者を力で支配する!ワタクシはそう育てられてきたのです!それが!炎一族長兄として』
『分かった』
イバラキが紅蓮丸の言葉を遮った。
『なればそれがいかに愚かな事か教えてやろう』
イバラキが迫る。
『あ…』
威圧されて紅蓮丸が言葉を失う。
こうして
炎一族長兄紅蓮丸は、幻龍イバラキによって叩きのめされたのである。
2014-10-19(Sun)
ちりりん
どこかで風鈴が鳴ったような気がする
だとしたら今は夏なのだろうか
思い返せばこの音は一年中聞こえている気もする
だとしたら今は夏ではないのかもしれない
視界に映る景色はただただ白くぼんやりとしていて
季節を識別するどころか
現実と幻想の境界を見極める事も出来ない
ちりりん
もしかしたら
この音すら
現実の音ではないのかもしれない
ふたつの影がわたしを覗き込む
『かあさま!』
甘えたような声がわたしを呼ぶ
明るくて
無邪気で
高圧的な声だ
『かあさまってば!』
別の声もわたしを呼ぶ
少し冷たさを感じる声
だがこちらの声にはわたしを支配するような高圧さは無い
『かあさま!もっと色々教えてよ!』
冷たい声がせがむ
『かあさま!もっとおねえちゃんに教えてあげてよ!』
甘えた声がせがむ
何故かその声は
わたしにとっては脅迫にも思えた
この甘えた声に命じられると
わたしは逆らう事が出来ないのだ
立ってはいけない
意思とはうらはらにわたしの身体が立ち上がる
動いてはいけない
意思とはうらはらにわたしの身体が動き出す
影が刀を差し出す
もはやわたしとは別の生き物になった左手がその鞘を掴む
そして
わたしの支配から逃れた右手がその柄に手をかける
その瞬間
ぼんやりとした視界に四筋の光が走った
いや
それを走らせたのはおそらくわたし自身なのだろう
気が付くとわたしは
抜いた刀身を鞘に納めているところだった
『やったぁ!』
影が喜んでいる
『すごぉい!』
影がはしゃいでいる
わたしは
とりかえしのつかない事をしてしまった
と思った
『やっと教えてもらえた!』
冷たい声から興奮が伝わる
『かあさま』
甘えた声が迫ってくる
『今のが』
言わないで
『今のが山吹流くのいち斬りだよね!』
あぁ
そうなのだ
とうとうそれを教えてしまった
山吹流くのいち斬り
山吹流忍術の正統にだけ伝えられる必殺技のひとつ
この子たちはそれを使って
山吹を斬ろうとしているのに
『かあさま、ありがとう』
甘えた声がわたしにぴたりと寄り添った
小さな掌がわたしの両目を覆う
『疲れたでしょ。ゆっくり休んで』
その声から労いは感じられない
用が済んだから解放されるだけだ
解放?
わたしはちょっとだけ可笑しくなる
解放なんてされはしない
わたしはこれからもずっと
これまで通りずっと
この子に囚われて生きていくのだ
ちりりん
幻聴を聞きながら
またわたしは意識を失っていく