2011-03-21(Mon)
台詞の組み立て以外にも飽きさせない工夫は必要です。
まずは観客の心を掴む導入部。
ショー開始1分で、遅くとも3分以内に観客を引き込むべきだと僕は思います。
ついつい最初に説明を入れたくなって、ダラダラと長台詞を書いてしまったりするものですが、ここが一番重要なので、『どうなる!?』とか『おぉっ!!』と思わせるイントロを心がけましょう。
アクションショーなら何回か立ち回りのシーンが入ると思いますが、それぞれの立ち回りに変化を持たせた方がいいでしょう。
悪役が会場を襲おうとする→ヒーロー登場→立ち回り→ヒーロー勝利
こんなパターンばかりだとせっかくの立ち回りがルーティンに感じられ観てる側は盛り上がりません。
勝ち、負け、不意打ち、シリアス、コミカル、1対多数、複数対多数、などなど…
色んなパターンを作っておきたいものです。
「立ち回りの変化を作るのはアクターの仕事」
と思う方もいらっしゃるかもですが、ベースはシナリオの段階で決まってくるのです。
こうして色んなパターンの立ち回りを経験する事はアクターのレベルアップにも繋がります。
一番肝に銘じておかなければならないのは、
『子供の集中力は30分も保たない』
という事です。
それを30分観てもらう為には並々ならぬ工夫が必要なのです。
…あ、
シナリオについてウダウダと書いていますが、これはあくまで僕流です。
個人の意見であり勝手な法則なので「俺は違う!!」という方も怒らないで下さいね。
そんなワケで僕にはこの「自分ルール」があるのですが、これを全て意識して書けば、30分のシナリオに余分なものを入れるゆとりはありません。
やりたい事があった場合、いかに効率よく盛り込むかという勝負になります。
…ところが経験の少ない後輩がシナリオを書いた場合、『何となくありがちな』パターンのストーリーに『やりたい事』ばかりを押し込んでしまう事があります。
それではショーのシナリオとは言えません。
そこを指摘して訂正するのがこの時の僕の仕事だったのです。
2011-03-20(Sun)
クライマックスを盛り上げる為に『山場の前を落とす』という話を書きました。
僕は『ショーのメリハリ』は『引き算』で作ると思っています。
盛り上げて!
更に盛り上げて!
クライマックスで最高に盛り上げて!!
なんて事は不可能だと思うからです。
音楽のライブでもノリのいい曲ばかりではいずれ麻痺してしまうでしょう。
一旦しっとりしたバラードなんかを挟んで落ち着かせないと次の盛り上がりは作りにくいのです。
『土を盛って山を作る』のではなく、『周りの土を削って山を作る』のです。
そしてもう1つ、
山場とは『遡って』作るものです。
クライマックスの
『最後の戦いだ!』
を盛り上げる為に、直前にヒーロー達がピンチになるシーンを作る。
そのピンチを引き立てる為に、直前に軽快なシーンを入れたり、ピンチになる為の伏線を忍ばせたりする。
それを…
といった具合いに、山場から前へ、さらに前へと構成を作らねばなりません。
ぶっつけでストーリーのイントロダクションから作り始め、ただ盛り上がりそうなシチュエーションを詰め込めばいいというものではないのです。
ストーリー構成を作る時はキチンと計算する事。
それが出来たら今度は観客を飽きさせない工夫や構成を考えます。
まずはダラダラした長台詞を使わない事。
特に必ずしも必要でない設定や作戦を延々としゃべらないようにする事。
これは執筆する者にとっては重要な台詞かもしれませんが、観客が望んでいる台詞ではないのです。
省ける所はどんどん省く。
省けなければ簡潔にする。
出来ればテンポの良い会話形式が良いでしょうね。
例えば、『忍者ライブショーさやか見参!』にこんな台詞があったとしましょう。
イバラキ『拙者は悪の忍者、幻龍組頭領、幻龍イバラキだ。
我々がこの地に来た理由はただ一つ。
それは、我が宿敵、山吹流の後継者、山吹さやかを倒す事。
今日こそあの娘を倒し、山吹流に伝わる巻き物を奪い取るのだ!』
ダラダラしてます。
こんな台詞が必要な場合どうするか。
幸いショーには色んなキャラクターがいるのです。
下忍A『あの娘、どこにいるんだ』
下忍B『今日こそあの娘を倒さねば』
イバラキ 『おまえ達、見つかったか?』
下忍AB『幻龍組頭領、幻龍イバラキ様!…実はまだ…』
イバラキ 『早く探し出せ!そして奴を倒し、あの巻き物を奪い取るのだ!』
さやか『私ならここにいるわ!山吹流忍術正統後継者、山吹さやか!ただいま見参!!』
…いかがでしょうか。
尺は長くなってますが、こちらの方が自然に頭に入らないでしょうか。
同じ内容でも台詞の組立て方でずいぶん変わるのです。
2011-03-19(Sat)
ショーの台本を書く上で大切な事がいくつかあります。
分かりやすい事。
山場がある事。
飽きさせない事。
特にこの3つは外せません。
『分かりやすい事』
これは全てを理解出来るように作る、というワケではありません。
細かい部分は分からなくても、大まかに理解出来ればいいんです。
皆さんには経験がないでしょうか?
子供の頃に観た映画などで、当時はすごく悲しくて(もしくは感動して)泣いたのにストーリーはよく覚えていない、なんて事が。
…えっ?ない?
テキトー人間の僕はけっこうあるんですけど…
まぁストーリーが理解出来なくても子供の感情を揺さぶる事が出来たらOKだと思います。
…あ、
だからといって、ストーリーがテキトーでいいってワケじゃないですよ!
大人がしっかり観ても楽しめる、
子供の心もしっかり掴む、
そんな作品を目指さなきゃいけません。
山場は大切ですね。
一番盛り上がる部分です。
さて、山場を作るにはどうしたらいいんでしょうか。
答えは、『山場以外を作る』です。
キャラクターショーの山場はラストのアクションシーン。
厳密に言えばその直前。
『これから最後の戦いだ!』
ってシーンが山場なんです。
これは動かせません。
だとしたら山場でやる事は決まっています。
ヒーロー(達)が
『これから最後の戦いだ!行くぞ!』
と言って戦うのです。
これ以上に盛り上げ要素はありません(パワーアップ形態が登場、なんかはありますけどね)。
山場が決まっているならばどうするか、
山場の前を落とすのです。
落とす、とは?
例えばピンチになるとか悲しいシーンを入れるとか。
そうする事で相対的に山場が高くなるのです。
それまで楽勝で戦っていたヒーローが
『これから最後の戦いだ!』
と言ってもハラハラしませんよね。
勝つのが分かってるから。
でも、敵に手も足も出せずにボロボロに負けて、立つ力も残ってないヒーローが
『地球を守る為に』
立ち上がって
『最後の戦いだ!』
と叫んだなら?
敵に大切なものを破壊されて、その怒りと悲しみを抱いての
『最後の戦いだ!』
だったら?
そっちの方が盛り上がるってなもんです。
こうやって山場の直前を落とす事で山場を作るのです。
2011-03-17(Thu)
1999年。
僕はこの年もあまりショーに関わっていません。
ショーの台本も後輩達が書くようになっていたし、世代交代の年だったのかもしれません。
そんな中で僕が関わった事と言えば、後輩が書いた台本の手直しや、パッケージ録音の際の声優、しゃべりショーの悪役などでしょうか。
他の事はともかく、台本の手直しに関しては後輩は嫌だったと思いますよ~。
僕はこの時点でショー台本執筆7年のキャリアがあります。
何をどう書いたらどんな結果になるか大体見えているワケです。
対して後輩達にはやりたい事、試してみたい事がある。
これまでの古いパターンを脱却して、自分達の新しいショーを作りたい!
そんな熱い思いがある。
しかしそれは、僕の古臭い考えで潰されてしまう。
『アイデアは面白いけど、このやり方じゃお客さんが盛り上がらないと思うよ。こんな風にしてみたら?』
『この台詞は流れに全く必要ないし、これがある事でテンポが悪くなるからバッサリ切ろう』
…後輩達はきっと内心
(だからその考え方は古いんだって!今までのパターンを踏襲するしか能がない年寄りめ!もう時代は変わってるんだ!これから俺達が新しいショーを作るんだよ!)
なんて思ってた事でしょう。
これは僕が新人時代に先輩方に対して思った事なんです。
だから後輩の気持ちは痛いほど分かりますし、彼らには僕に噛み付く権利があります。
もちろん先輩としてキチンとした理屈の上で手直しを命じるワケですが、先輩の理屈が若者に通じない事も身をもって知っています。
それでも…
自分が7年間培ってきたものを伝えていけたら…
そう思っていました。
2011-03-05(Sat)
テーマパークでのショーの話が続きました。
さて、昨年末にこのブログで
『カウントダウンのショーで後輩が腰骨をやっちまった』
って話を書いたのを覚えてるでしょうか。
実はこの話は繋がってるのです。
1998年、数ヶ月のショーをさせていただいた事が縁で、その年のカウントダウンに出演させてもらえる事になったのでした。
カウントダウンでは、立ち回りはアクターにお任せでしたが、全体的な演出は別の方が担当されていました。
そしてラスト、ステージから去って行くヒーロー…
このシーンの演出、その方と僕では全く逆だったのです。
僕は最初に歩いて後ろ姿を見せ、それから走り去っていたのですが、カウントダウンでは
『途中まで走って、最後はゆっくりと歩いて去って!』
と指示されました。
それは僕の解釈に反する!
そんな演出は受け入れられない!
演出の方はこう言います。
『リアルタイムで観てた俺の中では、彼(ヒーロー)のイメージは歩いて去って行く時の【背中の哀愁】なんだよ!それを表現してほしいんだ!』
僕は受け入れきれなくてしばらく戦いましたが、やはり演出家の指示なので従いました。
いま思えば全然受け入れられる演出なんですけどね。
僕は走り去る事で彼の孤独を表現しようとした。
演出家さんは歩かせる事で表現した。
どちらも同じ。
どちらかと言うと歩いた方が分かり易い。
意地を張らずに最初から言う事を聞けば良かったんですが…
実は僕が反対したのにはもう1つ理由があって…
本番、熱狂の内にショーはクライマックス。
最後に1人ステージに残った僕はポーズを決めて、階段を駆け上がります。
階段の上で立ち止まり、肩越しに客席を振り返って、余韻たっぷりに歩いて去って行きます。
上段からステージ後方に伸びた階段を降りて、ヒーローの姿はゆっくりと沈んで消えていきます。
よろよろ、よろよろと。
ん?
よろよろ?
実はこの階段、テーマパークのマスコットキャラクターに合わせて作られています。
マスコットキャラクターは足(靴)が大きいものがほとんどで、人間サイズの階段だと足が乗らないんですね。
おそらくこの時は一段の奥行きが通常の2倍近くあったのではないでしょうか。
人間サイズのヒーローが普通に1歩踏み出したらかかとが残ってしまいます。
ちょこちょこと歩くか、かなり大股で踏み出すか、どちらかにしなければ階段を降りる事が出来ません。
しかし、ちょこちょこ歩く背中に、やけに大股で歩く背中に哀愁を感じるでしょうか?
多分感じないと思います。
そう思って、出来るだけ気をつけながら普通を装って歩いたのですが…
よろよろ、よろよろ…
結局哀愁はありませんでした…
走ればごまかせたのになぁ…
演出は現場状況で変える事も必要!
とも思うし、
演出に応えてこそプロのアクター!
とも思うし、
1998年の締めに色々考えさせられたカウントダウンでした!!