2011-04-14(Thu)
両親の(暴力も含めた)支配から彼女を救うにはどうしたらいいのか。
とりあえずは自分の所にかくまうか。
しかし親が乗り込んできて
『娘は連れて帰る!』
と言われては打つ手もない。
立場的に帰らずに済むには…
そうして僕は言いました。
『結婚するか』
そうすれば
『ウチの娘だ!』
に対して
『俺の嫁だ!』
と言う事が出来ます。
僕はすぐに婚姻届をもらってきました。
すぐにでも提出したかったのですが彼女の知り合いの占い師(?)が
『入籍するなら●日が吉!』
とか言ったらしく、それまでの数日は親に捕まらないよう逃亡生活。
そして役所に提出し、晴れて僕らは夫婦となったのです。
これで彼女を助ける事も出来たし向こうの両親に一矢報いる事も出来たってワケです。
ちなみに僕は自分の親にも入籍した事を言いませんでした。
結婚は家同士の事ではなく個人同士の事であるべき
と思っているからです。
こうして誰からも祝福されない夫婦生活がスタートしました。
かといって何が変わったワケではありません。
僕はバイトしてショーをして、
彼女もバイトして、
単なる同棲みたいな生活でした。
しかし…
数ヶ月を過ぎた頃から、彼女が家族を恋しがるようになりました。
時々会いに帰るようになりました。
反発はあっても、やっぱり家族が好きだったんですね。
そしてある日、彼女が
『ウチの家族、北海道に移住するかもって』
と言ってきました。
『一緒に行きたいの?』
と聞くと
『う~ん…』
と唸るばかり。
これから簡単に会えなくなると思ったら付いて行きたくもなりますよね。
2001年、
彼女の心が揺れてる微妙な時期に僕が引き金を引いてしまいました。
その日はキャラクターショーチームの練習日でした。
この年、僕はショーが楽しくて楽しくて、練習も現場も目一杯参加していました。
練習終了の時間に彼女(嫁か)が車で向かえに来てくれたのですが、少し体調が悪そう。
すぐにでも一緒に帰りたかったのですが、練習の後ってなかなか帰れないんですよね。
メンバーとの交流も必要ですし、後輩から『教えて下さい』と言われる事もある。
とにかく色々あって、その日も時間がかかりそうだったんです。
仕方なく僕は彼女を先に帰らせました。
彼女からの『頭が痛い』『体調悪くてキツい』の連絡に急かれながらどうにか帰る準備を済ませた所へ、
『ちょっと相談に乗ってほしい事があるんやけど…』
とチーム内の親友が…
どうする?
どうする俺??
僕にとってショーは仕事です。
ショー仲間は仕事仲間です。
そして僕は
家庭<仕事
という人間なんです。
彼女には申し訳ないけど、親友の相談に乗って…
あくまでも手短に相談に乗って、急いで家に帰りました。
暗い部屋に入り蛍光灯を点けると、テーブルの上には
『家族より仕事を選ぶ人とは一緒にいたくありません。
出て行きます。
さようなら』
という書き置きがありました。
2011-04-13(Wed)
彼女の母親は言います。
『大事な娘なのよ?付き合わせてほしかったらキチンと挨拶にきて自己紹介して私達にお願いするべきじゃないの?』
口調は柔らかいのですが、『~させてほしかったら』みたいな物言いにイラッとしました。
『僕らはお互いの意思で対等の付き合いをしてるので、わざわざご両親の許可をもらいに行くつもりはありません。
それに僕は昔あなた方に自己紹介しましたよ。完全に無視されましたけどね。
その後そちらまで挨拶に行くって話をした時もお父さんがゴチャゴチャ文句つけたから話が流れたんですけど、それも全部僕の責任だと?』
『なんで無視されたらそこでやめちゃうの!?』
『…は?』
『あなたは私達より年下でしょ!?だったら下手下手に出なきゃ駄目じゃないの!私達がどれだけ無視しても、聞いてもらえるまで何度でも謝って何度でも挨拶するべきでしょ!?』
『むむっ??
謝るって何を謝るんですか?シカトされてごめんなさいって言うんですか?』
『スミマセン、話を聞いて下さいってお願いするのよ!年下なんだから当然でしょ!?』
『いやぁ、申し訳ないですが僕には全然分からんっス。
年下だからそうするのが当然とも思えないし、なにより人の挨拶を平気で無視するような奴は人間のクズだと思ってるんで、そんな連中に頭を下げるつもりもないっス』
『あなたは少し常識を身に付けた方がいいわね』
『お互い様でしょ。お宅のルールと社会のルールは別物だって早く気付く事をオススメしますよ』
…とまぁこんな感じで電話は終わりました。
彼女は一旦帰り、僕らはしばらく会うのを控えていました。
会わない間、電話で話す彼女はいつも
『二十歳にもなって何でも親の言いなりなんて嫌だ』
『言う通りにしなきゃ殴られるなんて、早くこの家から逃げ出したい』
と泣いていました。
僕はそれを聞く度に、
『どげんかせんといかん…』
と思っていたのでした。
2011-04-12(Tue)
さてさて、来たるべき彼女の父親に会う日の為に僕は特訓を始めました(笑)
現状のままでも問題なかったんですが、やはり『一撃で』『完膚無きまで』倒さねば、と思ったんですね。
特訓は、朝の5時から2時間、公園で毎日行ないました。
木を相手に実戦を想定して動きます。
攻撃を捌いて肘!
入り込んで体当たり!
膝に向かって斧刃脚!
毎朝そんな事をやっていたら、その公園には誰も来なくなってしまいました。
後はXデーがいつになるかです。
僕は彼女に
『こっちがスケジュールを合わせるから、お父さんに都合のいい日を聞いといてくれない?』
と言っていたので、返事が来ればいつでも行く準備は出来ていました。
しかし、しばらくして彼女から聞いた返事は
『娘経由で予定を聞いてきた事が気に入らん!』
というものでした。
もう僕はめんどくさくなって、
『あ~、もういいや。俺達は別れた事にしとこう。そう言っといて~』
と彼女に言ったのでした。
そして2000年。
旅行好きの彼女の両親は夫婦でよく出かけていました。
ある雷雨の夜。
その日も両親は旅行中で、彼女は一人で家にいました。
そして僕の所に
『雷が怖いから一人でいたくない。泊まりに行っていい?』
と電話をしてきました。
彼女が来てしばらくすると電話が。
父『キサマ、ウチの娘を返せ!』
第一声がこれでした。
前回書きましたが、僕は威嚇してビビらせようとする奴が大嫌いなんです。
僕『あぁっ?オマエは誰や』
彼女の父親と知りながら僕は敢えて言いました。
父『キサマ、初対面の人間をオマエ呼ばわりか!礼儀を知らんのか!』
僕『人に電話しといて名乗りもせんとキサマ呼ばわりしとるオマエは何か。それが礼儀か?』
父『…生意気な奴だな…』
恫喝が効かないので調子が狂ったようです。
そして作戦を変えたようでした。
父『俺はキサマが誰か知っとるぞ。キサマは内野やろう』
僕『そらぁ電話してくるぐらいやから俺が誰かぐらい知っとるやろ。そんな事ぁいいけん、まず自分の名を名乗れ』
それでも何故か名乗ろうとはしません。
父『今からそっちに行く』
僕『おぅ、すぐ来い』
父『キサマの家は南区やな。●●の●丁目だろう』
さっきから脅し方がマンガに出て来るマフィアみたいで笑えます。
キサマの事は調べがついてるぞってな事でしょうか。
僕は自分の事を隠してるワケでもないし、僕だって彼女の家の住所・電話番号・家族構成ぐらい知ってます。
こんな対等な条件では脅しも効くハズないのに。
僕『住所が分かっとるなら話は早いわ。今からすぐ来い。それからそろそろ名乗れ。オマエは礼儀も知らんのか』
僕がそう言うと電話が切れました。
今から来るのかなぁとワクワクしていましたが、一向に来る気配がありません。
そしてまた電話が鳴りました。
今度は彼女の母親からでした。
2011-04-11(Mon)
しばらく離れていたキャラクターショーにまた入るようになったのが2000年でした。
この年のゴールデンウィークなんて面識のない若手ばかりで緊張したもんです。
さて…
ここに書くべきか書かざるべきか…
アクションとは全く関係ない話なんですが…
自分の中ではわりと面白い話なんで書きますね。
2000年の4月ぐらい(よく覚えてないけど)、当時付き合っていた彼女と籍を入れたのです!
おめでたい?
ふふ…それはどうかな…
4年ぐらい付き合った彼女でした。
入籍した時、僕は27歳、彼女は20歳になったばかり。
若気の至りというか勢いというか、
まぁ深い思慮の上でない事は確かです。
…あ、出来ちゃった婚ではないですよ!念の為!!
きっかけは彼女の両親でした。
実は付き合い始めの頃、デートしてたら彼女の両親にバッタリ会ってしまいまして。
『これは挨拶せねば!』
と向かったのですが…
何を話しても完全にシカトされまして…
僕は『シカト』が最ッ高に大嫌いでして。
だってシカトって相手の存在自体を否定してるじゃないですか。
だから僕は
『この2人とは生涯関わらない』
と決めたんです。
それからしばらくして彼女から
『親が挨拶に来いと言ってる』
と聞きました。
『ウチの娘と付き合うんなら“付き合わせて下さい”と頼むのが筋だろう』
と言っていると。
聞いてみると
『どんな奴が来ても付き合わせる気はない』
とか
『そもそも身分が違う』
とか言ってるらしい。
ほぉーっ、身分が違いますか。
確かにそちらは名字からして戦国武将から連なってるんでしょうな。
あちらのお父さん、身体も大きく顔もコワモテで暴れん坊。
彼女の周りの友達に恐れられてるそうな。
彼女も殴られたり蹴られたりするので逆らえないと言ってました。
僕は…
腕力に任せて思い上がってる奴が大ッ嫌いなんです!
僕は彼女の父親の話を聞いて
『あぁ、ビビらせばみんなが言う事聞くと思ってんだな』
と思いました。
ならばその鼻っパシラを叩き折ってやりましょう。
僕だって伊達に虐待を受けながら生きてきたワケじゃありません。
殴られる蹴られるなんて慣れてしまって怖くも何ともありません。
僕は彼女の親と会うシミュレーションをしてみました。
おそらく向こうは最初から高圧的に来るでしょう。
向こうが喧嘩腰で来るなら僕は真っ向から受けて立ちます。
いつもと勝手が違う事に焦ってイライラした父親は実力行使に来るかもしれません。
いや、手を出して来るように仕向けよう。
そしたら一撃でぶっ飛ばしてやる!!
世の中、自分の思い通りにならない事があるって教えてあげなきゃね。
その光景を想像すると顔がニヤけてしまう僕でした。
2011-04-07(Thu)
書く事がないので1999年はもう終わり!
いよいよ2000年です!
この年は…色々あったなぁ…
とあるイベントの時の話。
この年に始まった新ヒーローのスペシャルショーが決まり、僕が台本を書く事になりました。
このヒーロー、番組がリアル志向だったので、キャラクター名は出てこないわ必殺技の名前も言わないわ、とにかくショーにしづらい設定でした。
僕自身は普段
『テレビはテレビ!ショーはショー!』
というスタンスなので
『気にしなくていいじゃん!』
なんて思っちゃうのですが、この時にヒーロー役に入っていた後輩はテレビの設定を重視するタイプ。
彼のポリシーも大切にしたい。
なにより僕もそのヒーローの世界観が大好きだったので出来るだけ崩したくなかったのです。
かなり悩みながら台本を書いた記憶があります。
僕は後輩と色々話しました。
出来るだけテレビに近付けたショーにしたい。
でもショーという形式でのエンターテイメントは必要だ。
ヒーローの名乗り(ポーズ)や技名を叫びながらの必殺技、これは観客に
『ここは見せ場だよ!』
と伝える役割があると思います。
アクターからすれば『前蹴り』はノーマルな技だけど、『跳び蹴り』は決め技かもしれません。
でも観客からすれば2つは等価なのです。
蹴った→殴った→殴った→蹴った→蹴った→爆発
この流れでは、いつの間にか決着がついたようにしか見えないのです。
『あ、今ので終わり?』
って感じで終わっちゃうのです。
そうならない為にも
蹴った→殴った→殴った→蹴った→タメ→掛け声→蹴った→爆発
であるべきなんです。
タメがあって、
『とどめだ!●●キーック!』
と叫ぶ事で観客は
『これで終わりだ』
と心の準備をするのです。
『あれ?終わり?』
じゃ拍手は出来ませんが、
『決まるぞ決まるぞ…決まった~!』
なら拍手もしやすいのです。
変身やフォームチェンジ等の掛け声もそう。
テレビみたいな派手な変身は出来ない。
ショーだから一度引っ込んで入れ替わるしかない。
それを掛け声ナシでやってしまうと、作品を知らない人が
『別のキャラクターが出て来た』
と思うかもしれません。
『子供達はテレビを観てるから間違えないよ~』
と思うかもしれませんが、観客が知っている事を前提に、知っている人だけに向けて作品を作るのは非常にマニアックな事なのです。
常に『知らない人、分からない人を意識して作品を作る』のがエンターテイメントではないでしょうか。
…とまぁ、こんな事を話しまして、結局
『名乗りと必殺技とフォームチェンジの掛け声を入れる』
事だけ了解してもらいました。
この話し合いによって僕はその後輩との『仲間意識』のようなものを持つようになったのです。
僕は彼のこだわりを、後輩は僕のこだわりを知り、ぶつかった末に分かり合えた…みたいな…
大袈裟に言うとそんな気持ちでした。
それから7~8年後。
後輩とその時の話をしました。
『あの時に分かり合えたって気がしてるんだよねぇ』
と僕が言うと後輩は驚いた顔をしました。
『えっ?あの時そんな事を考えてたんですか?』
…!?
『内野さん、あの台本書く前に他のチームのショーを観に行ったでしょ?』
…うん。
『名乗りを入れたいとか技の名前を入れたいとか、てっきりそのショーのマネをしたいだけかと思ってました』
えぇぇ~~~っ!?
なんでだよぉ~っ!!
あんなに喧喧諤諤と意見をぶつけ合ったじゃないかぁ~!
『そうでしたっけ!?』
…こうして7年目にして、僕の彼に対する仲間意識や連帯感は一方的な片思い…
っつーか勘違いだった事が判明したのです!
気持ちって…
なかなか伝わらないものですね…
しゅん…