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2011-01-12(Wed)

アクションへの道(150)

意を決して殺陣師の先生に話しかけた僕。

この時のやり取りに関しては、今までこのブログで幾度となく書いていますが、また今回も書きます。

そのぐらい僕にとって大切な事なんです。


『先生!』

僕は先生の所に駆け寄り、先に失礼を詫びました。

『僕は福岡でキャラクターショーをやってるのですが、殺陣をやるには実際の武術もやっていた方がいいんでしょうか?』

『何ていう所でやってるの?』

『●●●●(当時の事務所名)って所です』

『そう…申し訳ないが知らないなぁ…』

そして先生はこう続けます。

『君は殺陣師になりたいの?』

『あ、え…と、今はまだショーをこなすのに精一杯で、まだそこまで考えた事はないです』

『君が将来、もし殺陣師になりたいのなら今の事務所はすぐにやめた方がいいね』

僕は先生の言葉の真意が読めずに言葉に詰まってしまいました。

『殺陣師っていうのはね、キチンとした系統があるんだよ。
例えば私の先生は●●●●という人で、さらにその先生は●●●●という人で…
突き詰めると●●●●という人に行き着くんだ』

出てくる名前は僕でも聞いた事があるような高名な方ばかりです。

『殺陣師というのは武芸を嗜んでるものでね、いま名前を上げた先人達もそうだし、私だって人を殺す技は徒手武術から刀、槍、ピストルまでやった』

後になって知りましたが、先生は殺陣師として、ハリウッドでガンアクションも担当されるのだとか。

『殺陣の大本はね、やはりそういった本物の武術なんだ。
でも本物の武術では舞台やスクリーンで見栄えがしない。
分かるかな。
本当に人を殺す技を、どうやって嘘にアレンジするか。
それが殺陣師の仕事なんだよ。
さっき言った殺陣師の系譜の中でね、先生は弟子に、まず本物を教えるんだ。
そして各時代の中でそれぞれの殺陣師が本物の技をアレンジするんだ。


先生は、たかだかエキストラにすぎない僕に真剣に話して下さいます。

『そうやって先生から弟子に、本物の(武術の)技と、それをアレンジした(立ち回りの)手が伝えられる。
それを受け継いだ者が、次の弟子に本物の技と立ち回りの手を伝えていく。
それぞれの先生が、自分が編み出した手を加えていった結果、今の殺陣があるんだよ』

ここから話は佳境に入ります。

『でね、ここからが問題だ。
そういった系譜に連なる殺陣師は、立ち回りの手の中に、本来の人殺しの技を秘めてるんだ。
本物の殺陣師がつける手は何て事ないように見えても、間違いなく武術の本質を秘めてるんだよ。
キチンと武術を学んだ弟子達は、それを理解した上で殺陣をつけるんだ』

僕は理解しようと必死に聴き入ります。

『でもね、こう言ってはなんだけど、君が所属している事務所も含めて、系譜に連なっていない所の殺陣は、ただの見よう見まねなんだよ。
本来あったハズの武術の本質がないんだ。
今のアクションはほとんどそう。
どうしてそうなるかと言うとね、今の殺陣師はテレビや映画を観て勉強するからなんだ。
キチンとした殺陣師が武術(実)をアレンジして作り出した手(虚)を見て、武術の武の字も知らない奴がそれを真似る。
そこで虚の虚が生まれる。
テレビで見た虚の虚を見た殺陣師がそれを真似て虚の虚の虚を作り出す。
そうなったらそれはもう殺陣じゃなくて、中身のない形ばかりの振り付けだろ』

段々先生のおっしゃりたい事が分かってきました。

『いいかい?
実から虚を作るのが殺陣なんだ。
人を殺せる実の技を、いかに作品に合った虚に作り替えるかが殺陣師の仕事なんだ。
虚から虚を作るようなものは殺陣とは呼べないよ。
だから、君がこの先、本当の殺陣を追求するのなら実際の武術も知っておいた方がいいだろうね。

こんなもんでいいかな?』

僕は本当に感極まってしまって、そして目からウロコが剥れ落ちて、ただただ

『ありがとうございました!今後精進します!』

と頭を下げたのでした。


ちなみに後日談。

福岡に帰った僕は事務所の大先輩(実戦空手の猛者)にこの話をしました。

すると先輩は…

『あ~、無理無理!実から虚を作るなんて無理!』

といきなり否定しました。

『えっ!?どうしてですか!?』

驚く僕に大先輩は

『だって本気で殴ったら相手が死んでしまうもん』

と強く握った拳を見せて言いました。

『実』で殴ると死んでしまうから『虚』を作るんだと思いますが…

どうやら理解が及ばなかったようです。

僕がその大先輩を見限ったのは言うまでもありません。
2011-01-12(Wed)

アクションへの道(149)

僕がエキストラで参加した映画の話が長々と続いております。

僕の人生のターニングポイントだとも言えるので長いですよ~(笑)


この作品の見せ場の1つに、クライマックスの1対1があります。

主役と悪ボス、ベテラン俳優同士の対決です。

殺陣は事前に決まっているようで、お二人とも空き時間、マネージャーさん(?)を相手にずっと練習なさっていました。

僕はその本番を見るのをすごく楽しみにしていて…

そしてようやく本番の撮影が!!

いやぁ~!

興奮しました!

長回しで撮影されたその対決は、武器を使っての戦いからお互い武器を失って素手の打撃、そして関節技や目潰し、
格闘術がフルに詰め込まれた迫力の殺陣だったのです。


僕は

『あぁ、殺陣ってこんなに幅広いものなんだ!』

と感動しました。

あれは映像ではなく肉眼で見れて本当に良かったと思います。

そして僕は殺陣師の先生に色々と訊いてみたくなりました。

しかし、たかだかエキストラが殺陣師の先生に話しかけるなんて失礼極まりないのでは?

でも…
こんなチャンスはめったにない…

むしろ、こーゆーチャンスを求めてここに来たんじゃないのか!?

えぇ~い!

旅の恥はかき捨て!!(?)

僕は休憩中の先生の所に向かいました。
2011-01-12(Wed)

アクションへの道(148)

主人公達を取り囲んでのアクションシーン。

もちろん僕達エキストラは殺陣には絡みません。

周りでワーワー言っていつの間にか死んでいます。

殺陣に絡むのはアクションチームの方々です。

僕が見たかった光景が目の前に!

福岡ではなかなか見る事の出来ないプロの仕事を間近で見学出来るなんて!!

この作品では殺陣師(アクションの段取りを決める人)がお2人いらっしゃいました。

アクションチームの殺陣師さんが宇宙人(?)の殺陣を、
そしてその他を、ある高名な殺陣師の先生がつけていました。

その先生は世界的に活躍なさっている殺陣師にして、本物の武術家でもあります。

先生に師事して武術を学んでいる俳優さん達の話もよく耳にします。

僕はその先生が殺陣をつける姿をずーーーーっと見ていました。

すごい!

すご過ぎる!!

何がすごいって全てがすご過ぎて語れませんが、最初に思ったのは

『スムーズ過ぎる!!』

って事。

殺陣をつけるのがスムーズで早いんです。

『こーしてこーして合わせて弾いてよけてこーしてズバーッ!
…どうでしょう監督?』

みたいな感じで殺陣が決まっていくんです。

キャラクターショーではアクターが殺陣をつけたりしますが、

『えーっと…最初はどうしようかな…
じゃあ最初はスカシで抜けて…
次は殴りで向こうに行って…
あ、
向こうに行ったら立ち位置が反対になっちゃうな…
どうしようかな…』

みたいにモタモタして時間がかかる事が多いんです。

先生と我々の何が違うのかと言うと(比較するのも失礼な話ですが)、

『技の引き出しの数』

だと思うんです。

技のパターンが多ければ多いほど殺陣をつける際に悩む事は少なくなります。

僕らがいかに乏しいスキルでやってきたかを垣間見た瞬間でした。

では知識を増やせばいいのか?

先生はただ技をたくさん知ってるだけなのか?

当然ですが違います。

全ッ然違います。

この違いが何によるものなのか、

それは後述しましょう。
2011-01-11(Tue)

アクションへの道(147)

バスはロケ地の栃木県へ到着。

採石場(跡?)には山賊達のアジトが築かれていました。

おぉっ!
映画の撮影だよ!

そこで渡された衣裳に着替えて、すっかり山賊気分の僕。

坊っちゃんカットは手拭いで覆われています。

それから撮影シーンの説明があって、何度もテスト。

説明もテストも、素人の軍団相手なので大変そうでした。

僕も草鞋で何度も走って足が痛かった想い出が甦ります。

そして、主演の俳優さん達発見!

テレビや映画で観るあの人が!
あの人が!
そしてあの人が!!

そしてアクションチームの方々を発見!

憧れのあの人が!
あの人が!
そしてあの人が!!


ミーハーぽいけど、もう感動MAXですよ。

俳優さん達を取り囲んで威嚇するシーンなんかも撮ったりして♪

ただ…

エキストラ全員に武器が行き渡らなくて…

僕は最初『素手』でした。

武術の達人である主人公達を握り拳で威嚇する山賊の手下…

絶対かかっていく気がないですよね(笑)

スタッフさんがそれに気付き、

『素手じゃあんまりだ』

と探してきたのが

『大きめの石』。


石を握り締めて主人公達を威嚇する僕…

かかっていっても多分一刀で斬り捨てられるでしょう(笑)

『石はないだろっ!』

と、今度はようやくそれらしい棒を渡されました。

何とか戦ってる感じになりました。
2011-01-11(Tue)

アクションへの道(146)

図々しくも、中学時代からの親友の実家に一週間も泊めてもらう事になった僕。

…簡単に『図々しい』なんて書いてるけど…

ホントにハンパなく図々しいんだからね!!


まず、親友は職場の温泉旅行の為ほとんど不在。

つまり家にいるのは、ご両親と僕の3人。

朝の5時にお父さんが近くの駅まで車で送ってくれます。

終わったら駅まで迎えに来てくれます。

3人でご飯を食べます。

のんびりお風呂に入って寝ます。

そんな一週間。


…甘えすぎやろっ!!


本当にどれだけ感謝しても足りませんよ。

お父さんお母さん、その節はありがとうございました。

いつかご挨拶にうかがいますので。


~参加初日~

新宿に集合してロケバスに乗り込む僕。

車内には監督のファンであろうエキストラの皆さんがぎっしりです。

色んな方がいらっしゃいました。

人見知りな僕はほとんど口もきかずにジッと周囲の様子を観察していました。

そんな中でも何人かの方には仲良くしていただいて、今でもお付き合いさせてもらってます。

この出会いだけでも参加した意義があったな~。
プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

現在は関西コレクションエンターテイメント福岡校さんでのアクションレッスン講師もやらせてもらってます。

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