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2010-12-08(Wed)

アクションへの道(120)

僕の罪と後輩達の罪、って話でしたね。

で、自分の罪はいったん棚上げしますって話でしたね。

…なんて勝手な(笑)

まぁそんな非難はいつもの事なんで気にしませんよ~。

僕が後輩の(中堅クラスの)女の子達を見て思ったのは、

『あぁ、この子達は努力を知らないんだなぁ』

って事でした。

僕らの仕事はキャラクターの姿を借りて表現する事です。

演じるキャラクターによってはその為の体型調節が必要になります。

また、より良い動きをする為に筋力が必要だという側面もあります。

彼女達もそれは分かっていたのでしょう。

『痩せたい』『筋力をつけたい』

この願いはあったようです。

ある時彼女達は僕に訊きました。

『どうやったら痩せますかねぇ?』

僕は30kgダイエットを成功させた男なのでよく訊かれてたんです。

『毎日走れ』

「走ると筋肉がついて脚が太くなるんですよ」

『女の筋肉はそんな簡単に太くならん。長距離走の選手なんかみんな細いやないか』

「太くなる体質なんです」

『(嘘つけ!と思いながら)じゃあ毎日とことん歩け!歩き倒せ!』

「練習がある日は帰りに歩いてますよ!」

『ほう。どのぐらい?』

「薬院(駅)から天神(駅)までです」

『10分もかからん距離やないか!(しかも練習帰りに歩いてない事を俺は知っている)
もういい、メシを食うな』

「食事を抜いたら逆に太るそうです。お米を食べずにおかずだけ食べるのがいいらしいんですよ」

『だぁーっ!お菓子を一切やめぃ!』

「お菓子は太らないらしいです(←根拠ナシ)」



…この子達はどうやって痩せるつもりなんでしょう??

ちなみに彼女達は仲間でわいわいやるのが好きな人達だったので、
練習の日はすごーく早い時間に集まって、道場でお菓子を食べながらおしゃべり。

練習が終わったらファミレスで明け方までご飯を食べてデザートを食べておしゃべり…

そんな子達でした。

僕には彼女達の向上心を見抜く事が出来ませんでした。

だからこそ、必死に努力するという事を教えたかったのですが…


でもやっぱり、彼女達を上手く導けなかったのは先輩である僕の責任なんです。

この当時の苦い経験が、今の僕の糧になっている事は間違いありません。

いやぁ~、しかし、解雇通告を受けた時はかなり凹みましたわ~。

自業自得とはいえね。
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2010-12-03(Fri)

アクションへの道(119)

『立ち回り=演技』
という主張は今まで何度も語ってきましたので説明を省きますが…

実際それを理解していたメンバーはどのぐらいいたんでしょう。

みんながこれを理解すれば、『アクション』と『メルヘン』の垣根を取り払う事が出来る。

そうなれば、『アクションメンバー』と『メルヘンメンバー』の垣根を無くせるかもしれない、と思ったんですが…



やはりメルヘンを卑下するアクションメンバーは根強く残っていました。

『メルヘンをやってる奴は楽をしたい奴』

というだけでなく、

『メルヘン練習に行く男は女目当てだ』

というような事も言われていたのです。

これはメルヘンメンバーのほとんどが女の子だった為こう言われてたんですが…

こんな言い方されちゃ男性メンバーは行きづらいですよね。

まぁ悲しいかな、女の子目当てのメンバーもそれなりにいましたけど…(泣)

…という事で僕は
『アクションメンバーも来たくなるようなメルヘン練習』
を目指しました。

おまけに、来てもらう以上は
『おっ?メルヘンも頑張ってんだな』
って思わせなきゃ意味がありません。

アクションにハマってるメンバーのほとんどは身体を動かす事が好きな連中です(僕は違いましたが)。

なので身体作りを導入部に持ってきたのです。

まずは動ける身体を作る。

次に動かし方を覚える。

演技とは何かを考える。


その後にようやく演技の練習です。

『とりあえず動く』
『何となく動く』

これが癖になると抜けにくいからです。

ダンスは後回しです。

ショーにおいてはダンスだって演技の範疇。

フツーの演技が出来ない者に出来るハズがありません。


…とまぁ、こんな感じで練習を進めていたのですが…

まぁ実際アクションメンバーもたくさん来てくれるようになりましたよ。

でも、元々メルヘンをやってた女の子達は

『自分達がやりたい練習はこんなんじゃない』

ってジレンマがあったみたいで…

そして数ヶ月後、僕に指導を依頼してきた女の子達の口から『解雇』を言い渡されたワケです。

原因の6割は僕の未熟さ、4割は彼女達の甘え、そう思います。

僕の欠点についてはこれからもこのブログでボロクソ出てきますんで、次回は彼女達の『甘え』について語りましょう。
2010-12-02(Thu)

アクションへの道(118)

さてさて、
僕が総スカンくらった練習内容について…


それまでのメルヘン練習で一番に教えられるのは

『大きな衣裳を着けた時の動き』

でした。

前回書いた

『日常生活の3倍の動き』

ってやつです。

うなずく時も首だけじゃなく全身を使ってうなずく、

歩く時は、普通に歩いても摺り足にしか見えないので、大きく膝を上げて歩く、

そーゆー練習をしていたんです。

で、中堅の女の子達が新人に教えてるんですけど…

先輩達の膝が上がってない!

それは何故かというと

筋力

がないから!


やはりアクションのキツさから逃げてメルヘンをやってる部分もあるのでしょう。

彼女達には身体的スキルを上げようという意識がなかったのです。

なので僕は彼女達に筋トレさせる事にしました。

まずは事務所の周りを走らせて、道場に戻ったら腕立て、腹筋、背筋。

倒立なんかもやらせて、それから練習に入ったのです。

大きく動く事がメルヘンの第一歩なら、そこに至る筋トレは『メルヘン以前』という事になります。

これが、僕の練習はメルヘン練習ではないと言われた1つ目の理由です。


あまりに基礎的な事ばかりやらせるので社員さんからは

『即戦力を作る練習をしてくれ』

と何度も言われました。

会社としては当然そうでしょう。

でも僕は

『即戦力を作る』

というのが嫌いです。

『即戦力』とは、すでにスキルを持っている者の事であって、

『未経験者を急ごしらえで育てる』

事ではないと思うからです。

地力のない者に上っ面の技術を教えて当面をしのいだ所で、それはハリボテみたいなものです。

『何か起きた時』にメッキが剥げてボロボロになるでしょう。

『何か起きた時』に対処出来るのがプロの技術だと思うんです。
※何も起こさない事前提ですよ。


身体の使い方という点で、当時の中堅の女の子達は素人同然でした。

そこで最初の数ヶ月は身体作りに専念させようと思ったのです。

『アクションはキツいからメルヘンをやる』

なんて甘えを許さない為に、アクション練習と同じ基本をやらせました。

メルヘンではほとんど使わない『受け身』もメニューに取り入れました。

『受け身』には、アクシデントで転倒してしまった時の対処法という意味合いがありますし、もちろんアクションの技術の1つでもあります。

何故メルヘン練習にアクションのメニューを加えるのか?

先述した

『アクションはキツいからメルヘンをやる』

という逃げを許さない為でもありますが、僕には1つの理想があったのです。

『アクションが人手不足の際に渋々メルヘンの女の子を使ってみたら意外に上手かった』

という状況を作りたかったんです。

そうする事で、メルヘンメンバーがアクションメンバーから受ける不当な扱いを無くしたかったのです。

むしろこれまでとは逆に

『メルヘンメンバーはアクションもメルヘンもやれるけど、アクションメンバーは立ち回りしか出来ないよね~』

ぐらいに持って行きたかったんです。

そうなればアクションメンバーも今まで以上に練習に励むかもしれません。

上手くいけばチーム全体の実力が底上げされる事になります。


アクションとメルヘンを同時進行で練習するのはハードルが高いのでは?

という疑問もあると思います。

これに関してはあくまでも私見ですが、僕は両方やった方がいいと思っています。

『アクション』『メルヘン』という分類は便宜上のものです。

『芝居』という大きな括りの中の小さなジャンルに過ぎません。

根底に流れる『芝居』という基本は、『演じる』という基本は同じなんです。

つまり、アクションとメルヘンを同時に進めるという事は

『芝居という基本』

を練習するという事なんです。

しかしまだ彼女達には

『アクションもメルヘンも同じものである』

という考え方は理解出来ていませんでした。

だからその考え方から教えようと思ったのです。

これが『即戦力』を作らない、
『メルヘンじゃない』練習になった経緯です。

試しに彼女達に訊いてみました。

『アクションとメルヘンの違いって何だろう?』

すると彼女達のほとんどが同じように答えました。

『メルヘンは笑ったり怒ったり喋ったりで…
アクションはパンチとかキックとかバク転とか…』


これを読んだあなたはどう思ったでしょうか?


彼女達にとってアクションとは『立ち回りの技術』でしかないのです。

蹴り、突き、タンブリングといった技術を集めたものがアクションだと考えていたのです。

ここで考えなければいけないのは、

アクションショーのキャラクターは、何故パンチやキックやバク転を駆使して戦うのか?

という事です。

子供達を守る為に敵と戦っているんです。

子供達を脅かす悪に対しての怒りがあるから戦うんです。

先ほど彼女達が言った

『笑ったり怒ったり喋ったり』

の中の

『怒ったり』

の延長線上にあるのが立ち回りで、それをメインで魅せるのがアクションショーなんです。


~つづく~
2010-11-30(Tue)

アクションへの道(117)

真面目に一生懸命メルヘンに取り組んでいるメンバーからすれば、アクションメンバーからの不当な扱いが納得いかなかったのでしょう。

ある年からメルヘンも週1回の練習を開始したのです。

それは『アクションにナメられない為』というのもあったのでしょうが、やはりショーで求められるものが年々高度になっていたから、というのが大きいでしょう。

それまでのメルヘンショーにおける立ち回りやダンスは簡単なものが多くて、リハーサルで振りだけ覚えたら何とかなる、って雰囲気がありました。

(※子供達が一緒に踊れるようなレベルに設定してあったのではないかと思われる)

ところが、地球の周りを公転する衛星に代わっておしおきする美少女戦士ショーぐらいから流れが

コロッ

っと変わってしまったのです。

ダンスも立ち回りも要求が高くなった!

その要求にプロとして応えるべく、練習日が設けられたのです。

それからはメルヘンメンバーも充実し、練習によるレベルアップが進められていました。

しかし1996年…

僕はメルヘン練習に参加していた中堅クラスの女の子達から相談を受けたのです。

彼女達曰く、

『メルヘンリーダーが独善的過ぎる』

『今のままの練習ではこれ以上レベルアップ出来そうにない』

という事でした。

(※若くてイケイケな時はこーゆー事を言い出すものです)

そんな理由で、メルヘンリーダーによる練習を辞めさせてほしい、
代わりに僕に練習をつけてほしい、
という風に言われたのでした。

内容の稚拙さはともかく、僕は自分達で動こうとする若者が大好きなので(おまけに上に盾突く奴が好きなので)それを引き受けました。

僕はメルヘン練習には行った事がなかったので、様子を見る為に何度か参加。

そしてある日の練習が終わった瞬間…

『はい、それじゃーリーダーによるメルヘン練習は今週でおしまい!来週から俺がやりまーす』

突然の乗っ取り宣言です。

道場は騒然となりました。

もちろんリーダーも黙ってはいません。

殴り合い寸前の怒鳴り合いです。

その結果、翌週から僕が練習を仕切る事になりました。


…で…

結論から言えば、僕の練習は数ヶ月で打ち切りとなりました。

相談してきた女の子達が謀反を起こしたのです。

理由は簡単。
メルヘンリーダーよりも僕の方が断然独善的だったからです。
あはははは♪


僕のメルヘン練習は、みんなから

『こんなのメルヘン練習じゃない!』

と批判され続けていました。

どんな練習をしていたのか。

メルヘンをやる為の『基本練習』をやっていたのです。

僕が当時のメルヘンを見て思った不満をまず解消しなければ、メルヘンの練習に入る事は出来ないと思ったからです。

1・アクターの身体的クォリティの向上

2・ショーについての考え方の改善

3・アクションとメルヘンの垣根をなくす

この3つが僕の課題だと思いました。

具体的な内容は次回。
2010-11-29(Mon)

アクションへの道(116)

そういえば1996年にはちょっとした事件があった…
(事件、と言っても僕にとって、だけど…)

どこから話していいか分からないけど長くなると思うのでよろしくです。

ではまず、ショーの分類から説明しましょう。

キャラクターショーには
『アクション』
『メルヘン』
の2種類があります。

簡単に言えば、
『アクション』=特撮ヒーロー
『メルヘン』=アニメキャラクター
って事になるでしょうか。

現在はずいぶん変わってきましたが、僕が新人の頃は

『アクションはメルヘンより上』

みたいな風潮だったのです。

上とか下とかどーゆー事?
って感じですよね。

あくまでも
『当時アクションメインで入ってた人達』
の意見ですが…

アクションショーは『立ち回り』がメイン。

立ち回りには技術が必要。

だから練習が必要。

だから自分達は練習している。

それに引き換えメルヘンは着ぐるみで喋ってるだけ。

台詞に合わせて動くだけなら練習無しでも出来る。

『アクション』の人間は『メルヘン』も出来るけど、
『メルヘン』の人間は『メルヘン』しか出来ない。


…とまぁこんな感じだったんです。

この論理にはちょっと納得いきません。

当時の先輩方にこう言っては申し訳ないですが…

『台詞に合わせて動くだけなら練習無しでも出来る』
というのは完全に間違ってますね。

アクションでもメルヘンでも演技って難しいもんです。

アクションの演技とメルヘンの演技って全然種類が違うんですよ。

特撮ヒーローの衣裳は人間の形だから、『うなずく』とか『肩をいからせる』とかだけで何となく演技してるように見えるんです。

だから(当時の)アクションしかやってないメンバーにとって演技とは
『何とな~く動けば出来るもの』
だったんですよ。

つまり立ち回りは頑張ってるけど演技は頑張ってなかったんです。

メルヘンの衣裳は人間より大きいものがほとんどです。

大きい衣裳を動かす時、アクターは日常生活の何倍も大きな動きで演じているんです。

たまに新人さんが入っているとおぼしき『ほぼ棒立ち』のキャラクターに遭遇します。

あれ、動いてないワケじゃなくて、中身は一生懸命動いてるんです。

身体と衣裳の隔たりが大きいので、中の動きが外まで伝わってないんです。

それを伝える為には普段の何倍も大きく動かなくちゃいけません。

日常通り→棒立ちに見える
日常の2倍→普通に見える
日常の3倍→元気に見える

こう言っても言い過ぎではないと思います。

それを『練習無しでも出来る』なんて考えてる方が分かってないのです。

実際そーゆー事を言ってるアクションメンバーが、キチンと演技出来てたためしはありません。

アクションだろうがメルヘンだろうが演技は難しいんです。

(僕は立ち回り=演技だと考えてるので、演技が下手な奴は立ち回りも下手だと思ってます)

そんな考え方が蔓延していたせいか、僕がいたチームではアクションの練習は行われていたのにメルヘン練習はありませんでした。

火曜日=空手
水曜日=アクション
木曜日=アクション

だったのです。

たま~に『メルヘン練習もやってみる?』なんて話が出た事もあったのですが…

『メルヘン練習!?メルヘンで何を練習するってんだよ!』

と馬鹿にした反応で終わり。

新人時代は僕もそう思ってたので同罪ですが。


しかし、実際その扱いに甘えてるメルヘンメンバーがいたのも事実でした。

なんたって
『練習しなくてもショーに入れてもらえる』
のです。

ギャラが出ない練習に来るのは時間がもったいない、

キツい練習はしたくない、

そんなプロ意識のないメンバーがメルヘンオンリーでショーに入る事も多かったんです。

当時メルヘンショーのリハーサルでよく見た光景…

学校帰りの女の子達が、ジャージに着替える事もなく『学校の制服のまま』キャーキャー騒ぎながら、1時間ぐらいでリハを済ませてキャーキャー去って行く…

こんなメンバーが多かったのでますますアクションメンバーからは蔑まれたのでしょう。


蔑まれたからこうなったのか、こうだから蔑まれたのか分かりませんが、これは会社がキチンとシステムを作るべきだったと思います。

一生懸命頑張ってたメルヘンメンバーだってたくさんいたのに、そんな扱いのままでは報われません。


~つづく~


※メルヘンでも『大きくない衣裳』というのはあります。
某女の子向けアニメのあの娘達とか。

でも、3次元を再現する特撮ヒーローと違って、2次元を現実化するメルヘンキャラは、『アニメの動き』を再現しなくちゃいけないんです。

これはホントに匠の技だと思います。
プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

現在は関西コレクションエンターテイメント福岡校さんでのアクションレッスン講師もやらせてもらってます。

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