2010-01-29(Fri)
1992年も残りわずかとなっていました。
この冬の夜、僕はレンタルビデオ屋でアルバイトしていました。
さすがにショーのギャラだけで1人暮らしは出来ないのです。
当時僕の部屋には2人の居候が住んでいました。
仕事の都合で一週間…のハズが何故か居着いてしまった同い年のNと、職場の寮を出て来た先輩です。
(『アクションへの道(37)』参照)
部屋にあった電化製品のほとんどは先輩のものでした。
それでも先輩は時々金銭的援助をしてくれました(よく考えたら当然ですが)。
Nの方は家賃はおろか、光熱費も入れてはくれませんでした。
一度本当に困っていた時に
『スマンけど、今月の電気代だけ入れてくれんかな?』
と言ったところ、
『出すのはかまわんよ!?でもね、それを出したらアンタと俺はもう家主と居候の関係じゃないよ!対等やけんね!それでもいいなら出すよ!』
と逆ギレされました。
勝手に1年半も他人の部屋に居座った奴が、7千円の電気代をたった1回払っただけで家主と同格になれるのでしょうか。
めんどくさかったのでもう請求はやめました。
この2人は仕事もしていなかったので、一日中部屋でゲームをしていました。
ショー仲間も集まって、常に5~10人が部屋にいました。
僕がビデオ屋で働いている間も夜通しゲーム大会が行われていました。
明け方にバイトが終わって部屋に戻っても必ず人がいて騒いでいるので寝る事が出来ず、結局体力の限界を迎え3ヶ月でビデオ屋を辞めました。
この頃、僕には初めての彼女が出来ていました。
高校生だった彼女は登校前と放課後、僕の部屋に来てくれました。
居候やショー仲間は居心地が悪くなるので彼女が来るのを嫌いました。
彼女が来ると聞こえよがしに舌打ちし、
『あ~あ、何か居心地悪ぃけん帰るか!』
と言いながら去っていきました。
『何で俺らが出ていかにゃいかんのかねぇ!』
と言いながら。
『ここはアンタ1人の部屋じゃない!』
とも言われました。
いや…僕1人の部屋なんですが…
その内、僕はみんなから敵対視されるようになりました。
僕の部屋に住み着いている人間と、
僕の部屋にやってくる人間が揃って、
僕の部屋で僕をシカトするようになりました。
みんなは僕とは言葉を交わさずゲームで盛り上がっていました。
早朝彼女が来ても誰も出て行かなくなりました。
こな中で唯一心ある先輩が
『俺ら出た方が良くない?』
と言うと
『嫌ならこいつら(僕と彼女)が出て行くでしょ。ほっときましょう。』
なんて答える奴がいます。
結局僕と彼女は部屋を出て、早朝5時の真冬の公園で震えて過ごしていました。
この状況は当然ショーにも悪影響を与え、現場やリハでもろくに口をきいてもらえない事がありました。
この時、僕は彼女の為にもキレるべきだったと今は思います。
全員追い出して彼女を大切にするべきでした。
当時の僕は一体何を大事にしていたのでしょう…
でもこの時期から
『俺は誰の力も借りず、仕事に情を持ち込まず、自分流を貫く!』
って心に決めました。
1993年、新戦隊が始まろうとしていました。
※今回、アクション関係ないどころか、ただの恨み言だ!
とりあえず次回へ!!
2010-01-24(Sun)
「クリスマスに何が起こったか」(3)
前回ホテルでのクリスマスディナーショーを台無しにした話を書きました。
今回は、同じ年、違うホテルでのクリスマスディナーショーのお話し。
この頃、僕の地元の某ホテルでも例年キャラクターを呼んでクリスマスディナーショーを行なっていました。
前回のホテルでは昨年の戦隊が2人登場するミニショーでしたが、こちらは現在の戦隊に昨年のレッドが登場するスペシャルショーです。
そして僕はそのレッドを演じました。
「えっ!?オマエがレッドかよ!?」
と思った諸兄、驚くなかれ、
是非続きを読んでいただきたい。
ディナーショーは2部構成になっていました。
第一部~お姉さんとサンタクロースの歌のコーナー
第二部~キャラクターショー
このキャラクターショーの後半で、クリスマスを台無しにしようと目論む怪人達がサンタクロースを捕らえます。
まさに処刑されんとしたその時!
サンタクロースは戦闘員達をなぎ倒し、変身ポーズを決めた!
暗転した舞台が光を取り戻すと、そこにはレッドの姿が!!
「サンタに変装してオマエ達の動向を探っていたのさ!」
そうです!
僕が演じたのはレッド…
…の変身前の
サンタクロースだったのです!!
この時のショーにはいい想い出がありません。
まず、
「なぜ現役バリバリでアクションに入っている自分がキャラクターではなくサンタクロースなのか!?」
同期達はみんなヒーロー役で活躍するというのに…
おそらくキャスティングする側としては、歌のコーナーで司会のお姉さんとの掛け合いもあるし子供との絡みもあるから、しゃべり経験のある僕を選んだのでしょう。
しかし僕としては、アクターとして1ランク下に見られたような気がして、かなりプライドが傷ついたのでした。
それからリハーサル。
スペシャルショーは普段より人数も多いし内容も違います。
なので、この時はリハーサルを3日行ないました(普段は1日)。
しかしリハーサルと言ってもキャラクターショーの部分だけしかやりません。
僕の出番はほとんど歌のコーナーですし、ショーに絡む部分も
●戦闘員に捕まえられてステージに出る
●戦闘員をふりほどき怪人に一撃
●変身ポーズをしてハケる
って、これだけの流れです。
正直、打ち合わせだけしてればリハなんか要らないレベルの動きです。
僕は同い年のチームリーダーに言いました。
『あのさ、サンタってほとんど出番ないやん?
出てる部分も短くて簡単な所やん?
俺3日間もリハに来る必要なくない?
最終日だけでいいんじゃないかな?』
すると、それを聞いたリーダーは烈火の如く怒りました。
「おまえ何言いよるとやぁっ!?
全員で作り上げるショーやろうがぁっ!!」
そう言われては僕も3日間参加するしかありません。
さて、リハはどんな感じで進められたのでしょうか?
~1日目~
ヒーローと悪役の殺陣をつける。
サンタ、出番無し。
~2日目~
殺陣を進めながら、その前後の構成を決める。
サンタ、出番無し。
~3日目~
全体の構成を決めて通し稽古。
サンタが絡む部分の演出は3分もかかりませんでした。
そして、サンタの出番は一番最後の通し稽古、1回だけでした。
…なっ!?
やっぱり最終日だけで良かったよな!?
俺は3日間ほとんど、ジャージで座ってるだけだったよな!?
そうなる事ぐらい想像つくんじゃねぇの!?えぇっ!?
なぁにが
『全員で作り上げるショー』
だよっ!ぷんぷんっ!!
※ちなみにこのリーダー、1年後のディナーショーで同じく3日間リハをした時、彼女とデートをするという理由で1日休んだ。
メイン戦隊のレッド役だったくせに!!
…とまぁ、こんな感じだったので全然楽しくなかったのですよ。
せめて本番では楽しもうと、当日の歌のコーナーで歌ったりしゃべったりしてたらスタッフから
「歌ったりしゃべったりはMCがするからオマエは黙ってていい!」
って言われるし。
じゃあ何で俺をキャスティングするのよ。
勘弁してちょうだいよ。
こーゆー
『誰でも良さそうな役』
にキャスティングされるのは本当にプライドが傷つくんです。
まぁ、もしかしたら認められるだけの実力がなかっただけかもしれないけど…
当たり前ですけど、大好きなショーの世界でも楽しい事ばかりじゃないんですよね~。
2010-01-23(Sat)
「クリスマスに何が起こったか」(2)
若気の至り…
そう、
言い訳するとしたら
若気の至りと言うしかない…
当時、
とあるホテルで例年、ある団体さんのクリスマスパーティーが行われていました。
そのパーティーのメインイベントは我々のキャラクターショー。
ディナーをいただきながら観るミニショーでした。
ミニショーというのは、予算や状況に合わせて人数を少なくしたり時間を短かくしたりといったショーの事です。
このイベントの場合は、昨年の戦隊からレッドとピンクが登場。
悪役はボスと戦闘員2人。
いつもの戦隊ショーより少ない計5人です(+スタッフ&MC)。
僕の役どころはしゃべりの悪ボス。
昨年からしゃべりの現場をこなしてきた事を買われてのキャスティングです。
リハもバッチリ、台本も頭に入っています。
オールOK!
時間になり、いよいよショーが始まってステージに出ると…
ぅわっ!
明らかに悪ガキだらけです!
普段のショーの観客というのはたまたま集まった見ず知らずの人達です。
面識がない者同士なのでお互いに抑制しあって大人しくしています。
しかし、今回のように1つの団体さんが集まっている状況だと全く違います。
周りが顔見知りばかりだから悪ノリするのです。
普段なら、
「ちょっと戦闘員にパンチ入れに行こうかなぁ~。…でも周りはみんな大人しく座ってるからやめとこ…」
ってなる子供も、周りにいる友達が
「殴りに行こうぜ!」
と言えば、
「おぅっ!行こうぜ!」
ってなっちゃうんですね。
親の方も、暴れているのが知らない子供なら
「ウチの子が楽しんでるのにあの子のせいで台無しだわ!親はどこなの!?早く止めなさいよ!」
と思うのに、知り合いの子供だと
「まぁ、おたくの●●ちゃんはいつも元気でいいですわね~、おほほほ」
みたいになってしまうのです。
つまり1つの団体さんの中でのショーというのは、ブレーキのない子供達が集団心理に操られ暴徒と化す可能性があるのです。
まさに、この日はそうでした。
会場内を自由に走り回り、奇声をあげ、ヤジをとばし、ステージに勝手に上がってくる子供達…
食事をしながらニコニコとそれを眺める大人達…
ここで言っておきたいのは、この状況がダメだという事ではない、と言う事です。
アクター自身の経験値とテクニック、そしてスタッフ・MCの協力があれば何とかなる事も多いのです。
ましてやしゃべりショーなら、そこはしゃべりの腕で何とか出来るのです。
…
…僕なら…
…今の僕なら…
残念な事に、この時の僕には経験値もテクニックもしゃべりの腕もありませんでした。
この時のショーのメインは、子供をステージに上げてのお遊びです。
15分ほど子供達と遊んだ後にヒーローが登場してアクション、という流れでした。
僕は段取り通り、これから戦闘訓練を行なう事を告げ、戦闘員はステージにあがってもらう子供を探す為に客席に入っていったのですが…
この瞬間、子供達の目に凶悪な炎が灯りました。
そして…
客席にいたほぼ全員の子供達が、奇声をあげながら戦闘員に向かって行ったのです。
殴り、蹴り、のしかかり、衣裳を脱がそうとする数十人の子供達…
『えぇ~い!オマエら!落ち着け!一旦席に戻れ!話を聞け!!』
僕の怒鳴り声も聞こえていないようです。
反撃するワケにもいかない戦闘員達は、取り囲まれ、馬乗りされている状態で殴られ蹴られ、ただジッと耐えていました。
ふと大人達を見ると、みんな楽しそうにその状況を眺めています。
それを見た時に僕の中で何かが
ぷっちぃ~ん
と音をたてました。
『おい!戦闘員!戻って来い!子供選びはもういいから、とりあえず急いで戻って来い!早くしろ!!』
戦闘員は慌てて子供達の攻撃をかいくぐりステージに上がってきました。
テンションが上がっている子供達は戦闘員を追いかけてステージにはい上がろうと手をかけました。
『勝手に上がって来んなぁッ!』
完全に素に戻った悪ボスの怒鳴り声です。
『楽しいクリスマスにするつもりでやって来たが、こんなクソガキどもと遊ぶのはやめた!!』
客席の大人達の笑顔が消えました。
『ホントはな、色んな作戦を用意していたが、頭の悪いガキどもに付き合うのは時間のムダだ!今からここに●●●●マンを呼んでさっさと片付けてやる!さぁ!出て来い●●●●マン!』
慌ててレッドとピンクが登場しました。
レッドはせめてカッコ良くポーズを決めて会場の雰囲気を変えようとしています。
シュバッ!シュバッ!
キレのいいポーズに合わせてスタッフがレッドの声をアテます。
『●●●●レッドォッ!』
バシーンッ!!
…ポーズは決まったのに変な空気が流れました。
スタッフが名前を間違えたのです。
…重い空気の中、再びレッドの声が聞こえます。
『スマン!間違えたようだ!もう1回やり直すぞ!●●●●レッドォ!』
2回目のポーズはもはや苦笑いの対象でしかありません。
僕はレッド・ピンクと戦いながら、
『やっちまった…。もう来年はこの仕事ないな…』
なんて考えていました。
…というワケで…
20分の尺をもらっていたメインイベントは、全員の心にしこりを残したまま5分で終了…
スタッフとMCは時間を埋める為、そしてお客さんに機嫌を直してもらう為に急遽
『戦隊グッズが当たる抽選会』
を開催。
その後の裏事情までは分かりませんが、きっと大問題になったのではないかと。
営業担当が謝罪に出向いて頭を下げたのではないかと。
そうだったら本当に申し訳ない…
当時の僕は、
『キャラクターショーは暖かく迎え入れてもらえるのが当たり前』
だと思っていました。
おまけに、リハーサル通り、台本通りに進行させる能力しかありませんでした。
要するに『アドリブ能力』がなかったのです。
アドリブ能力とは『経験の引き出し』の事だと思います。
ステージに立ってみた。
予想より子供が大人しい。
今までの経験から言えば、こーゆー時はこうしたら盛り上がるんじゃないか?
小さい子が怖がって泣いてしまった。
今までの経験から言えば、こーゆー発言をしたら周りのお客さんにウケるんじゃないか?
この、
『今までの経験から言えば~』
というのが引き出しでありアドリブ能力なのだと思います。
冒頭で『若気の至り』と言い訳したのはその事で、ショーを始めて2年、しゃべりを始めて1年半の僕では経験値が足りなかった、という事なのです。
では、もし今の僕が当時のこのステージに立ったなら…?
悪ガキどもをコントロールする事が出来るか否か?
想像すると…
やっぱり緊張しますね(笑)
2010-01-22(Fri)
~前回のお話し~
戦隊のショーで佐世保(長崎県)を訪れた若き日の代表。
午前中はメイン会場にてショー。
午後は商店街に移動してショー。
1992年、夏。
人々は溶けかかったアスファルトに己が足跡を刻印しつつ歩いていた。
…ひどく、暑い!!
さて、本題に入る前に、前回紹介した
『ジャ●ボ船長』
という着ぐるみについて改めて説明しよう。
ジャン●船長(通称ジャン船)は全長3メートルほどの巨大な着ぐるみで、動きづらいのはもちろんの事、アクターはかなりの荷重を肩と頭で支えなくちゃいけないという過酷なキャラクターだ。
当時はメンバーきってのタフガイ『Kぴょん』が入る事が多かった。
時間になり、僕ら戦隊チームのショーが始まった。
屋外に設営されたステージはかなりの暑さで、その上でのアクションは肉体と精神にかなりの負担を強いていました。
しかし今より17も若かった僕は、それすらもやる気に変えて暴れ回っていたのでした。
…と、ショーが始まってすぐ、我々戦隊メンバーは、客席の向こうに巨大な影を発見しました。
なんだ?あれは…
あれは…
●ャンボ船長(Kぴょん)だっ!
炎天下の中、あれを担いで広い会場を歩き回るなんて…
その大変さたるや、一般人には想像もつきますまい…
戦隊でバテそうになってた俺を許して!Kぴょん!
巨大な船長は客席の後ろからショーを観て、拍手をしたり驚いたりといった演技で会場を盛り上げてくれていました。
「Kぴょんの苦労に報いなくては…!」
僕らはエネルギー再チャージで午前のショーをやり遂げたのでした。
それからサイン会や撮影会を終え、着替えてから車に乗り込み、次のステージがある商店街へ。
会場を出る時、我々を乗せた車は、同じ方向に歩いている巨大な影を追い越しました。
なんだ?あれは…
あれは…
ジャンボ●長(Kぴょん)だっ!
えっ!?
えぇ~っ!?
船長は我々のショーと同じ時間に登場してたハズ…
それから1時間が経っている…
それなのにまだ出てるの!?
おまけにどこかに歩いていくの!!?
もしもそんな事態が我が身に降りかかったとしたら…
ぶるぶるぶる…
そんな恐ろしい想像したくありましぇ~ん!
やがて我々は商店街に到着。
午後のステージはアーケード内にあるので陽が当たりません。
先ほどのステージと比べたら天国と地獄…
ショーまで少し時間があったので控え室で休憩する事が出来ました。
控え室はステージ裏の店舗の2階。
事務所というか倉庫というか、クーラーが効いている中、イスに座ってのんびり出来る場所でした。
汗も引き体力も回復し、心の余裕も出来てムダ話なんかしていると、突然室内に巨大な影が…
なんだ!?これは…
これは…
ジャンボ船…(以下略)
巨大なセーラーマンをすっぽり脱ぐと、尋常でないほど汗をかいたKぴょんの姿が。
僕『お、お疲れ~』
K「お疲れ~」
僕『ま、まさかあれから…』
K「まいったよ!あんたらのショーと同じ時間に出て、ここまでグリーティングしながら来たよ!」
僕『えぇっ!?やっぱり!?あれから2時間ぐらい入りっぱなしやったと!?』
K「そうよ!!これ、普通の奴なら途中で倒れとるよ!」
僕『ま、マジお疲れ様やったね…ま、とりあえずゆっくり休んで…』
K「それがそうもいかんとよ。今から同じルートをグリーティングして戻らないかんけん…」
僕『………』
そんな話をしていると、船長に付いているスタッフがやって来て、
『船長そろそろ戻るぞ』
と言いました。
僕らはKぴょんにかける言葉が見つかりません。
こんなに過酷な状況は滅多にないからです。
K「じゃ行ってくる。みんなもショー頑張って。」
そう言ったKぴょんは3メートルのでセーラーマンと化し、我々の元を去っていったのでした…
スーツアクターとは超ハードな肉体労働・・・
好きなだけ
巧いだけで
やれるものではないのだなぁ・・・
2010-01-19(Tue)
ジャンボマッ●ス
この名前を聞いてピンと来る方はいらっしゃるだろうか?
ジャンボマック●とは、昔テレビに出てた3メートルぐらいある着ぐるみキャラクターです(僕も世代じゃないので詳しくは知りませんが)。
僕がいたチームには、そのジャ●ボマックスと同じ構造の着ぐるみがありました。
その名も
『ジャ●ボ船長』!!
彼は身長3メートルの巨大なセーラーマンなのです(イベントの内容で衣裳が変わり、サンタやザビエルになる事も。ザビエルって…)。
これ、中のアクターはほとんど下半身に埋もれてしまって、上半身の重みを肩と頭で支えなくちゃいけないという過酷な着ぐるみでした。
当時チームに『Kぴょん』という男がおりました。
Kぴょんは細かなテクニックを要する演技は苦手な男でした。
しかし毛むくじゃらのガッシリした身体が物語るように、Kぴょんはスーパータフガイだったのです。
その体力を活かして、怪獣着ぐるみや、このジャンボシリーズは彼の独壇場だったように思います。
1992年、夏…
8月、夏休みの太陽は、全てをイカロスの翼と化すかのようにギラギラと照り付けていました。
僕らは戦隊のショーで長崎県の佐世保に来ていました。
毎年行われている大きなイベントでのショーです。
今回は午前中にメイン会場でショーを行い、午後は商店街に移動してショーです。
メイン会場はかなり広く、会場内にメインステージとサブステージが設けられてるぐらいでした。
ちなみに僕らはサブステージ。
メインステージは誰が出るんだよ~、と思いプログラムを見ると…
当時、テレビの『ダンス甲子園』で人気を博していた
『LLブラザーズ』
の文字が。
LLブラザーズは兄弟ダンスユニットとしつブレイクし、その後は一流ミュージシャンへの楽曲提供などでも活躍しているアーティストです。
実は僕とLLの弟の方は同じ中学の同じ学年だったのです(ほとんど接点はありませんでしたが)。
彼は中学時代からダンスやアクロバットを披露しアイドル的人気でした。
控え室で他のメンバーに
『俺、LLの弟と同じ中学やったんよね』
と言うと、
『おぉっ、そうなん!?じゃあ挨拶でもしてきた方がいいんやない!?』
今さら特に面識がないとも言えず、
『あ、あぁ…そうやね…行って来る…』
と控え室を出る僕。
すると、ちょうどLLが舞台裏の通路をメインステージに向かって歩いて来るところでした。
さぁ、若き武装代表は何と挨拶したのか!?
~ANSWER~
結局挨拶しなかった
だって!
歩いて来たのは2人だけじゃなかったんだよ!?
業界人みたいな取り巻きがワンサカワンサと2人を囲んでいたんだよ!?
さすがはダンスブームの火付け役、貫禄が違ったね。
武装代表は通路の隅でストレッチするフリをしてLL軍団をやり過ごしたのさ・・・
あ、余計な事書いてたら長くなっちゃった。
Kぴょんの話は
『アクションへの道(42)』
に続きます。