2010-02-03(Wed)
あれから歌舞伎と京劇について色々考えたものの、まだ研究不足で結論が出そうにありません。
武術要素と芝居要素の割合の問題なのか、
映像要素と舞台要素の割合の問題なのか・・・
まぁそもそも、ステージで行なうキャラクターショーの殺陣とカンフー映画の殺陣を比較してる時点でまとまるわきゃないのですが!!
なははははっ!!
今後の宿題としてじっくり考えてみます。
1993年の話に戻りましょう。
この年のカンフー戦隊のポーズやアクションはかなりの複雑さで難易度が高かったのですが、それを努力で乗り越えた時の感動はかなりのものでした。
チーム全体の、もしかしたらキャラクターショー業界全体のレベルがこの年に底上げされたかもしれません。
しかし良い事ばかりではありませんでした。
困難を努力で乗り越えた後の落とし穴。
そう、
ほとんどのメンバーが自分に酔ってしまったのです。
難しい事をやるのはカッコイイ。
だからもっと難しい事を練習する。
ここまではいい。しかしこの後、
難しい事ばかりを練習する。
難しい事だけを評価する。
僕の目から見るとそんな風潮が見受けられました。
特にポーズに関してはそれが顕著で・・・
もちろんポーズというのはキャラクターの看板だから力を入れるのも分かる。
しかし・・・
同じ年、とある女の子向けのアニメが大ヒットしました。
何かに代わってお仕置きする、制服っぽいのを着た美少女戦士集団のアニメです。
チームではこの作品のショーもやっていたのですが、奇しくもこちらでも同じ現象が起きていました。
このアニメもやはり各々のポーズ(見得・必殺技)があったのですが、このショーに入ってる女の子達の努力もそこに集中してしまったのです。
その結果、身長やポーズの上手さだけで主役のキャスティングが決まる事も多々あったのです。
2010-02-02(Tue)
何だか難しい事を書き始めてしまって、確実に迷走している代表です・・・
前回の書き方だとまるで
『カンフー殺陣が速くて日本殺陣は遅い』
みたいに感じた方もいらっしゃると思いますが、僕の真意はさにあらずです。
カンフー殺陣は『全ての攻防』が速いのですが、日本殺陣は
『ここぞという時』
に速いのです。
常にハイテンポ・ハイスピードな戦いを魅せるカンフー殺陣に対して、日本殺陣はじっくりと形や表情、感情を魅せる事に重きを置いている…
これはあくまでも僕の印象であり考えなのですが。
そのじっくりと魅せている時間がいわゆる『間(ま)』と呼ばれるもので、これが上手く入ると立ち回りに『メリハリ』が生まれます。
このメリハリが非常に日本的なテンポを作っているのです。
余談ですが、『ただ止まっている』のと『間を取っている』のとは意味合いが全く違います。
『間』というのは歌舞伎の『見得』から派生したものだと思いますが、見得はキャラクターの感情を表す為の演出。
つまり、そこから生まれた『間』も、感情を魅せるものでなければいけないという事ですね。
ただの休憩になってしまってはせっかくの殺陣が台無しになってしまいます。
話を戻しますね。
日本殺陣はカンフー殺陣に比べるとテンポが遅く感じるかもしれませんが、それは攻防に込めた感情の表現を盛り込んでいるから、なのです。
怒りを込めて蹴るのか、
悲しみを堪えて殴るのか、
追い詰められて必死で斬るのか、
『間』はそういったものを表現する為に必要な演出(であり技術)なんですね。
そういえば、京劇にも見得・・・と呼ぶのか分かりませんが、それらしきものがあって、型と様式美で構成された殺陣には歌舞伎との類似を感じます。
もしも日本殺陣の源流が歌舞伎で、カンフー殺陣の源流が京劇だとしたら、この違いを作ってしまったのは何だったんでしょう?
・・・考えた事がなかったので、今から布団に入って考えてみます。
2010-02-01(Mon)
日本人の殺陣とカンフー殺陣の『速さ』の違いとは何でしょう。
異論も多いとは思いますが、あくまで僕の意見としては、って前提です。
カンフー殺陣は接近戦のイメージがあります。
近い間合いで最短距離で攻撃を出し、しかも攻防一体、技の変化も巧みです。
攻め手は、技を受けられた(かわされた)状態から最短距離で次の技を出す事が出来ます。
そして受け手はかわした状態からすぐに反撃出来るのです。
近距離短打だからカンフー殺陣は速いのです。
比べて日本の殺陣はどうでしょう?
根底に剣殺陣があるので、間合いはやはり剣のそれに近くなります。
攻め手は離れた間合いから踏み込んで技を出すので自然にモーションも大きくなります。
そして技を出し終わった時には、キチンと形が決まっていなくてはいけません。
受け手の受けやよけにもキチンとした形があります。
この辺りにはもしかしたら歌舞伎などの型の影響があるのかもしれません。
キチンと技を出す、キチンと受けてキチンと反撃、それをまたキチンとかわし・・・
この「キチンキチン」が日本殺陣のテンポを作っていると言えます。
では日本殺陣が遅くてカンフー殺陣が速いのか?
カンフー殺陣は良くて日本殺陣は悪いのか?
そうではありません。
だからこそ前回「速さの種類が違う」と書いたのです。
2010-01-31(Sun)
今までと違う流れに翻弄されながらも練習を重ねる我々も、その状況に少しずつ適応しつつあった…
新しい戦隊の使う中国武術。
それを今までの殺陣に組み込むのは難しくはないがコツが必要です。
ヒーロー殺陣というのは、旋風脚や掃腿といったカンフー技が単品で入っているものの、ベースになっているのは剣殺陣と空手。
当然日本的な動きになっています。
おまけにステージ上での殺陣の見せ方も歌舞伎や能の流れから来ており非常に日本的なので、我々がカンフー殺陣をやろうとした場合、
『日本的カンフー』
を作らなければならないのです。
『そんな事考えずにさ、まんま中国風カンフーをやっちゃえばいいじゃん?』
って思う方もいらっしゃるでしょうが、おそらくそれをやると『京劇』に近くなると思います。
京劇は素晴らしいものですが、キャラクターショーとは趣が違いますよね。
先ほど、殺陣をカンフー寄りにするにはコツが必要だと書きました。
技術的な事を言ってみると、パンチを出す時に、正拳ではなく縦拳にしたり掌にしたり背手にしてみたり。
脚を弓歩にしたり座盤ぽくしたり、腕をグルグル回してみたり馬歩でズッシリかまえてみたり。
武術の種類にもよりますが、こういった変化が有効です。
しかし、カンフー殺陣で最も大事なのはテンポと形でしょう。
カンフー映画のアクションシーンのテンポって、何をやってるか分からないぐらい速かったりしますよね。
簡単に言うと、あの速さがカンフー殺陣のテンポって事になるのですが、じゃあ速く動けばカンフーになるかと言えばそうではありません。
試しに、普段やってる立ち回りをカンフー映画のスピードでやってみて下さい。
果たしてカンフーっぽくなるでしょうか?
おそらくただの『早送り再生』になったのではないでしょうか?
もしくはチャップリン映画のような喜劇風になったかもしれません。
それは何故でしょう??
日本の殺陣とカンフー殺陣は、『速さの種類』が違うからです。
2010-01-30(Sat)
1993年!
この年は我々にとって激動の年だったと言って過言ではないだろう!!
新戦隊が始まった。
この年は中国武術を使う戦隊だった。
それまでの戦隊の立ち回りやポーズというのは、言ってしまえば『王道』だった。
だから僕らは普段の練習通りの動きをやっていれば大きくハズす事はなかった。
例え「テレビで本物を観ないメンバー」が「本物と違うポーズ」をキメていたとしても。
しかし、この年は完全に動きが違う。
そして、その動きを表現しない事にはこの戦隊らしさは出ない!
今までマイペースにやってきた我々は戦慄を覚えた。
ある練習の日、リーダーがビデオを持って来て言った。
『こないだの放送を録画してきたから、みんなでポーズを覚えて練習しよう。』
そこにいたメンバーのほとんどが驚いた。
そのリーダーはこれまでテレビの真似をしない事で知られていたからだ。
そのリーダーを慕っていたメンバーがうなだれた。
『まさかリーダーが俺達にテレビを観せるなんて…俺は自由なところが好きだったのに…』
ヒーロー番組に全く関心がないこのメンバーは別として、そのぐらい僕達は衝撃を覚えたのだ。
ポーズはこれまでにない難易度の高さ。
キメるのが非常に難しく、だからこそ決まった時には震えがくるほどカッコいい。
殺陣も5人がそれぞれ特色の違う武術を使わなくてはいけない。
今更ながら、
『練習で新しいスキルを身に付ける』
『頭を使って考える』
という基本的な部分にぶつかったのである。