fc2ブログ
2011-06-08(Wed)

小説・さやか見参!2(95)

ざざざざざざっ

早朝の山中に荒々しい音が響いた。

ここは一角衆の砦よりもさらに東、

つまり、さやかのいる山吹の里から遥かに離れた場所だ。

峰の連なった大きな山は現在でも麓の人々の信仰の対象となっている。

かつて異国より渡ってきた修験者が開山したという伝説が残っているらしい。

その霊場から随分と離れた斜面を、紅い塊が滑り落ちていた。

ざざざざざざっ

柔らかく湿った落葉の上を紅い塊が進む。

やがて斜面が途切れた。

塊は小さな崖で一度跳ねて、四尺から五尺ほどの距離を落ちていった。

回転しながら落下した塊は、灰色に濁った沼のほとりに静かに着地する。

そして、

ゆっくりと、

塊が顔を上げた。

それは紅い甲冑と紅い装束をつけた人間であった。

紅い覆面と紅い鉢金の間から覗く目は、どうやら男のそれである。

全身に紅をまとった男は片膝をついたまま、

『ふぅ』

とため息をついた。

艶をつけたその声色は明らかに嘘臭い。

周りには誰もいないというのに色男を演出しているのだ。

自意識過剰な男のようである。

不自然な声は続いた。

『どうやらここにはないようですね』

その声が終わるか終わらないかの瞬間、目の前の沼が激しい水飛沫をあげ、

『ぶはぁっ!!』

と大声を出しながら赤い塊が飛び出してきた。

片膝をついたまま自分に酔い痴れていた紅い男は驚いてのけぞった。

『どわあああっ!!』

紅い男の前には、沼から飛び出したばかりの赤い男がびしょ濡れで立っていた。

赤い装束、赤い覆面、赤い甲冑に鉢金、
全体的には紅い男に似ているが、要所要所が微妙に違う。

びしょ濡れの赤い男は、目の前で腰を抜かしている紅い男に気付いて声を発した。

『…兄者?』

紅い男はへたりこんだまま怒声をあげた。

『あ…あんたねぇ!兄者?じゃないわよ!いきなり飛び出してきたらびっくりするじゃないのっ!!』

『そいつぁ悪かったよ。でも兄者がここに来てるなんて意外過ぎるぜぇ』

『こっちだってあんたがいるなんて予想外だわよ!』

『ぷっ、相変わらず感情が高ぶると女みたいな口調になるんだなぁ。治した方がいいぜぇ、気持ち悪いから』

その言葉を聞いて紅い男ははっと我に返り、立ち上がって姿勢を正した。

『そんな事は言われなくても分かっています。それよりお前こそ気をつけなさい。あのように突然飛び出して、敵が待ち構えていたらどうするのです』

『そんなこたぁ心配いらないぜぇ。手練れの気配がありゃあ俺だって気付くからさ』

『むむ?わたくしはここにいましたが?』

『いたねぇ』

『わたくしから手練れの気配は感じられなかった、と言う事ですか?』

『あー…まー…そう…かな…』

それを聞いて紅い男は腰の刀に手をかけた。

『あんたっ!ずいぶん人を馬鹿にしてくれるじゃないのっ!実の弟とはいえ許さないわよ!』

素早く抜刀した紅い男は、突如背中に落下してきた朱い塊に押しつぶされた。

『ぐえっっ!!』

蛙がつぶされたような声をあげた紅い男の背中で、朱い塊が口を開いた。

『にいちゃん達!?』

声が幼い。

朱い装束に朱い覆面、朱い甲冑と鉢金を身に付けた少年のようである。

『にいちゃん達、どうしてここにいるの?』

びしょ濡れの赤い男が答える。

『お前こそなんでここにいるんだよ。確か別の方角に向かったはずだぜぇ』

『うん、北の鉱山に向かってたんだけど途中でこの山の噂を聞いてね、こっちの方が確率高いかなぁって行き先を変更したんだ』

『相変わらず自由な奴だぜぇ』

そう言って赤い男と朱い少年は無邪気に笑った。

その足の下では紅い男が苦しそうに

『と、灯火丸(ともしびまる)、いいかげんに背中から降りなさい…』

と呻き声をあげている。

灯火丸と呼ばれた少年は

『あっ、にいちゃんごめんなさい』

と兄の上から飛び下りた。
紅い男、赤い男、朱い少年、

まったく緊迫感のない三人組である。
2011-05-09(Mon)

小説・さやか見参!2(94)

『奥義の在処を突き止める事は出来なんだが、みずちの息の根を止めただけでも上出来じゃ』

血讐はおだやかな口調でかすみを労った。

『前から気になってたんですけど…』

断が口を開いた。

『血讐様ってみずちと何かあったんですか』

『答えとうない』

穏やかに声で短く吐き捨てた血讐はどことなく不機嫌に思えた。

感情を見せるなど珍しい、と封は思った。

しかし断は血讐の感情の機微を読めなかったようだ。

『って事はやっぱり何かあったんですよね。気になるなぁ』

『断、血讐様にだって秘めた想い出ぐらいあるわよ』

封が冗談ぽい口調で諫める。

厳しく言えば角が立つかもしれない。

封はこんな時、ついつい丸く納めようとしてしまう。

殺戮を生業とする者とは思えぬ気の遣いようだ。

血讐は封の心理を看破して

『ふふ』

と笑った。

やはりおなごの方が読心の術に長けておるようだ。

それに比べて断などのほほんとしている。

自分の言葉にひやひやした封の気持ちを察する事など出来ぬのであろう。

これと組んでいては封も苦労が絶えまい。

いや、互いの性分が違うからこそ調和が取れているのかもしれぬ。

そんな事を考えながら断と封を交互に見る。

血讐の視線を感じた断は目をそらし、

『秘めた想い出ねぇ』

と蒸し返しながら立ち上がった。

『断、』

その先の言葉を制そうと封が立ち上がる。

その時だった。

『ん?』

と断が声をあげたのは。

『ど、どうしたの?』


横顔に向かって問い掛けると、珍しく真顔の断が身体ごと振り向いて

『あれ、違ったのかな』

と、やや興奮気味に言葉を発した。

『あれ?』

『おふう見てないか?イバラキが身に付けてた巾着』

『え?…あぁ、うぐいす色の?』

『それだよ!』

断の力強い言葉の後に間の抜けた沈黙が流れた。

そしてやはり封の返事も間の抜けたものだった。

『…なにが?』

『だーっ!だからよ!あれに入ってんじゃないかって言ってんだよ!』

断はもどかしそうに頭をくしゃくしゃと掻いて

『荊木の奥義が!』

はっきりとそう言った。

予想外の展開に一瞬刻が止まる。

『…あれ、に?』

封が記憶を辿る。

『まさかぁ!奥義を納めるには小さすぎるでしょ』

確かにイバラキは常に巾着を身に付けていた。

しかしそれは赤子の拳ぐらいの大きさで、一派の奥義を隠せるような物とは思えなかった。

だから封も対象から外して考えていたのだ。

『奥義が元々何に記されてたかは分からねぇけどよ、口伝の部分は棄てて、最も重要な記述だけ残していたら?それだけならあの袋に入らねぇかな?』

『そ…』

否定しようとして同時に可能性を探り言葉に詰まる。

『そんな事するかしら?奥義のほとんどを棄ててしまえば、術の伝承に支障が出るかもしれないのよ?』

『イバラキほどの奴なら全部覚えてるんじゃねぇか?』

『それはあんたの想像でしょ』

断と封のやり取りに血讐が割って入った。

『あの男が、幻龍組を誰かに継がせるだろうか…?』

断と封が同時に血讐を見る。

血讐もゆらりと立ち上がった。

『術を継がせるという事は、その相手を信頼し受け入れるという事だ。我らの策略により怨念の塊となった幻龍イバラキが誰かに跡目を託すとは思えん。ならば…』

血讐の後を受けて断が呟く。

『すでに会得した奥義は棄てても問題ない…』

『どちらにしても、我らが求める奥義の大半は失われたという事に…』

封の顔に動揺が浮かんだ。

『まぁ落ち着け』

そう言ったのは血讐だ。

『その巾着に入っているのが奥義の一部だったとして…イバラキがいまだ会得出来ぬほどの秘技か、あるいは会得しても棄てられぬほどの極意か、どちらかの可能性もある』

『分かりました』

封が背筋を伸ばした。

目付きが鋭くなっている。

『とりあえずあれを手に入れりゃあいいんだな』

断は不敵な笑みを浮かべ、無精髭をさすった。

そして軽く地面を蹴ると―

二人の姿は同時に消えた。

それを見て

『ふっ』

と笑い、血讐はまた縁側に腰掛けた。

血飛沫鬼、血塗呂の兄弟はいつの間にか姿を消していたが、それに気付いていたのは老忍者ただ一人だった。
2011-05-02(Mon)

小説・さやか見参!2(93)

『あれからずっと』

口を開いたのは封だった。

『くちなわを…いえ、幻龍イバラキを見て参りましたが、一向にそれらしき物は』

『ふむ…おぬし達とて見つけられぬとは…拙者の推測が外れておったか?』

血讐は首をひねってしばらく考えた。

『いや、イバラキ以外にはおらんはずじゃ。荊木流の奥義を継いだ者は』

そう。

血讐達は―

一角衆は荊木流に伝わる奥義を求めていたのだ。

断と封が十数年に渡りイバラキを監視していたのはその為だったのである。


『本来ならば』

血讐が独り言のように呟いた。

『荊木の奥義はみずちとかがちの子、うかが継ぐはずであった』

しかし四十数年前、近隣の騒乱を治める為の任務に出たうかは消息を絶った。

奥義を狙う一角衆に命を奪われたのである。

そもそも騒乱自体がうかをおびき出す謀略であった。

血讐の知る情報では、奥義を記した何かが存在するはずだ。

それがうかに伝えられているのかどうか…

殺害後、うかの持ち物が調べられた。

しかしそれらしき物は何もなかった。

立ち寄った場所も全てくまなく調べられた。

しかし何一つ見つける事は出来なかった。

そして、まだ幼く可愛らしささえ残っていたうかの屍は切り裂かれた。

歯の1本1本、眼球の奥、胃の腑の中まで調べられたのである。

だが、どこにも奥義への手掛かりはなかった。

未だ奥義を授かっていなかったのかもしれぬ。

口伝のみを受けていたのかもしれぬ。

いずれにせよ、うかの手元に何もないのならば、それは荊木の砦にあるという事だ。

ならば次は砦を探せば良い。

一角の頭領、赤岩は総じて力に任せる性格であった為、このような回りくどい作戦を遂行する事は珍しいと言えた。

そう、これは全て、当時参謀の役割を果たしていた若き血讐の進言だった。

『いかな赤岩様といえ、現在の手勢で十二組に挑むのは得策ではありませぬ。
隠密裏に事を運び、まずは確実な情報を手に入れましょうぞ。
その間に勢力を拡大し、いざという時に備えてはいかがか』

血讐の知略を認めていた赤岩は渋々応じたそうである。

それからしばらくして、みずちが幼子を引き取ったとの噂が血讐の耳に入った。

身寄りのない子供を下忍として引き取るのはよくある話だが、頭領自らが、というのはそうある話ではない。

愛息うかが消息を絶った後である。

もしかするとその幼子に荊木を継がせる腹積もりかもしれぬ。

ならば奥義はいずれその子に引き継がれる。

だとしたら一石二鳥、拾われた子供に間者をつければ良い。

こうしてくちなわの元へ、かすみが送り込まれたのだ。

かすみは血讐が取り巻きの女に産ませた下忍の一人だった。

血讐には、まるで洗脳されたかのように心酔する女衆が群がっていた。

そして血讐はその女達に自らの種を仕込み、とにかく次々と子を産ませた。

間断なく子を作り、物心つかぬ内から修行を積ませれば、あらゆる世代の配下を持つ事になる。

その中でも特にくのいちは重宝する。

本来のくのいちとはただの女忍者ではない。

女の色香や甘えを用いて男をたぶらかす術を持つ者の事である。

年配には年配の、
若輩には若輩の使い道があるのだ。

事実かすみは、まだ幼い少女ゆえに疑われる事もなく荊木に入り込めたのである。

それからのかすみの活躍は見事なものだった。

十数年をかけてみずちやかがちの信頼を掴み、くちなわの妻となった。

そして奥義の在処を調べつつ、みずち暗殺の謀略を進めていたのだ。

かすみも大したものだが、幼い娘をここまで使役する血讐の手腕恐るべしとも言える。

しかしかすみは奥義の在処を掴む事が出来ぬまま正体を見破られ、くちなわに命を奪われたのである。
2011-04-27(Wed)

小説・さやか見参!2(92)

一角衆の砦には活気や生活感というものがない。

大勢が暮らしているのに、どこか寂れた雰囲気が漂っている。

午後の陽射しを受けながら、屋敷の縁側に座っている男が一人。

断である。

やや短めの髪はぼさぼさで、本来精悍な顔に精気は感じられなかった。

高陵山での敗北をいまだに引きずっているのである。

断は片手で手裏剣をもてあそびながら、十数間先の柿の木を眺めていた。

熟していない実がまばらに生っている。

断はつまらなそうな顔で数枚の手裏剣を打った。

打ち手の表情とは裏腹に鋭く飛んだ手裏剣は、柿の実を見事に枝から切り離した。

拘束から解き放たれた果実達が一斉に地表に向かう。

しかし大地の抱擁を受ける事は出来なかった。

一旦飛び去った手裏剣が弧を描いて戻り、地面に落ちる寸前の実を真っ二つに斬り裂いたからだ。

十四の破片が鮮やかに散らばった時には、七枚の手裏剣が断の手に戻っていた。

断は相変わらず呆けた顔をしていた。

『おまえはじじぃか!』

突然罵声が響く。

断は振り向きもせず、

『うっせぇよ、血飛沫鬼』

と答えた。

しかして姿をあらわしたのは白装束の血飛沫鬼と赤装束の血塗呂、それに黒髪をなびかせた封の三人だった。

『おふう、こんなうるせぇガキ共を連れてくんなよ』

『別に私が連れてきたわけじゃないわよ』

血飛沫鬼が断の隣りに腰掛ける。

血飛沫鬼も十六になり、身体は断よりも大きくなっていた。

しかし血塗呂ともども身軽さは失っていない。

断は嫌そうな顔をした。

『いいよ来なくて』

離れようとしたが、断を挟むように血塗呂が座ったので動けない。

『なんで俺を挟むんだよ!』

血塗呂はにやにやと笑っている。

その光景を見て封が吹き出した。

『あんた達、三人並んで仲良さそうじゃないか』

『仲良くねぇよ!』

憤る断の肩に血塗呂が手を回す。

『勝手に肩組むなよ!仲良くねぇつってんだろ!』

手を振り払われて血塗呂がけたけたと笑った。

血飛沫鬼も笑う。

封も楽しげに笑っている。

『なぁ、幻龍の手練れにやられたんだって?』

血飛沫鬼が楽しそうに聞いた。

『やっぱりその話かよ…でもな、やられたのは俺だけじゃねぇぞ。おふうだって』

『あんたを担いで帰ってやったのは私だよ?』

『そりゃおまえ、あいつが手加減したから…』

必死に弁解する断の足元に突然血塗呂が寝転がり、目を見開いて口をパクパクさせた。

邪衆院天空に倒された断の真似だ。

それを見て血飛沫鬼と封が笑う。

断は顔を真っ赤にした。

『おふう!てめぇこんなネタまで仕込みやがって!』

『だって面白かったんだも~ん』

屈託なく笑う封は、ただただ美しかった。

恐ろしいほどの殺人技術を持つ事を忘れさせるほどの器量良しである。

そこへ

『楽しそうではないか』

と、隻眼の老忍者、血讐が歩いてきた。

『父上!』

血飛沫鬼と血塗呂が駆け寄る。

封は笑顔のまま背筋を伸ばし、断は座ったまま、バツが悪そうに顔をそむけた。

『断、どうした。顔が真っ赤だぞ』

『分かってて聞かないで下さいよ。…みんな意地が悪いぜ…』

『すまんすまん。どうだ、もう傷は癒えたのか?』

老忍者のねぎらいに断が答えようとすると、先に封が口を開いた。

『とっくに完治してますよ。もういつでも動けます。ねぇ?断』

『勝手に答えるなよ。…でもまぁ確かに、いつでも動けますよ』

『そうか。それは良かった』

そう言いながら血讐は、先ほどまで血飛沫鬼が座っていた場所に腰掛けた。

『ほれ、おふうも』

手招きして封を隣りに座らせる。

封は少しだけ間を空けて血讐の隣りに腰をおろす。

『なんじゃ、そんなに毛嫌いせずとも良かろうに。どうせ老い先短いこの身じゃ。もっと寄り添ってくれい』

普段の血讐はいつもこの調子だ。

封はくすりと笑って

『あらやだ、血讐様は私達より長生きしそうですけどね』

と言いながら血讐にすいと身を寄せた。

『亡くなる気がしませんわ』

血讐はそう言われてかかかと笑った。

『おふう、人を妖怪みたいに』

その隣りでそっぽを向いた断が聞こえよがしに呟く。

『妖怪みたいなもんだろうがよ。好色じじぃ』

明らかに罵倒の文句だが、それも血讐には応えないらしい。

またもかかかと笑っている。

『然り。好色こそ拙者の最大の奥義よ』

ひとしきり笑った後で血讐は声を少し落とした。

『それで、例の件だが』

ほんの短い一言だが、それで空気ががらりと変わる。

先ほどまでの穏やかな雰囲気が研ぎ澄まされた気がする。

これこそが本来の、
一角衆武術教練、血讐が放つ霊気なのだ。

すでに断と封も、鋭い忍びの顔になっていた。
2011-04-23(Sat)

小説・さやか見参!2(91)

一角衆。


それを知る者は、山岳宗教より始まりし一派だと言う。
遡ってもたかだか四十年ほどの歴史しかない。


初代頭領は赤岩(せきがん)と呼ばれる男であった。

この男、身の丈大きく妖しの術を用い、その正体は

『庚申山に棲む化け猫である』

と噂されていた。

術にて人心を操り、操られぬ者は力にてねじ伏せる、

そんな非道の者であったが、次第に同類眷属が群をなし、赤岩は少しずつ勢力を拡大していった。

それが一角衆なのである。

赤岩の野望は単純明解、

豪族さながらに一国を治める事。

そして領土を拡大していく事。

しかしながら赤岩が思い描くのは為政などではなかった。

欲しいものは奪い、

気に入らぬものは殺す。

それが一角衆の求める理想郷だったのだ。


逆らう民衆は次々に殺された。

生き残った者達はことごとくに洗脳され、一角の信者となった。

もちろん御上がそれを許そうはずがない。

かなり大掛かりな討伐隊が何度か組まれたが、一角衆の術の前に成すすべもなかった。

やがては討伐隊の中にも、そして大名達の中にも一角衆に心酔する者が増え始めたのである。


一角衆に仇なす大名達は協議の末に、

『人外の者は人外の力で討つ』

と決めた。

そして、

“私”は庚申山へ向かった。

辺り一帯にはたくさんの信者達が溢れていたが、砦に辿り着く事は難しくなかった。

そこで対峙した大きな男、

山伏のような白装束の男、

飢えた山猫のような眼をした男、

それが、

一角衆頭領、赤岩だった。


赤岩と向かい合った私は、

私は、




汗だくで目が覚めた。

心臓が激しく鳴っている。

怒り、怖さ、悔しさ、悲しさ、色々な感情が押し寄せているのに声をあげる事も出来ない。

そして、身体はまだ夢の余韻を引きずっているというのに、夢の記憶はすでに薄れかけている。

ただ、自分の荒い息が聞こえている。

ただ天井が見えている。


『かあさま』

耳元で声がする。

果たして誰の声であったか。

『かあさま、こわい夢を見たの?』

返事をする事が出来ない。

『いいのよ、かあさま。こわがっても』

優しくささやく。

『夢はかあさまの世界なんだから』


私は、再び眠りに落ちた。
プロフィール

武装代表・内野

Author:武装代表・内野
福岡・久留米を中心に、九州全域で活動している『アトラクションチーム武装』の代表です。

1972年生まれ。
1990年にキャラクターショーの世界に入り現在に至る。

2007年に武装を設立。

武装の活動内容は殺陣教室、殺陣指導、オリジナルキャラクターショー等。

現在は関西コレクションエンターテイメント福岡校さんでのアクションレッスン講師もやらせてもらってます。

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
FC2カウンター
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード